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タイトル彼はTX‐522DC君
記事No: 225 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 20:50
投稿者タカハシジュン

 すごい賑わってるね。何だか自分がアップするのも気がひけちまうな(笑)
 というわけで、模造の冠を被ったお犬さま、こんばんわです。
 こんな作品、久々に書いたですよ(笑)






 彼はTX‐522DC君。2GHz超のクロック数のデュアルコアを持つ高性能の部類のパソコンである。といって彼の名がTX‐522DCというのではない。それは単なる型番だ。だがこの作品では便宜上TX‐522DC君と呼ぶことにする。
 繰り返しになるが、同じ型番を持つ同じ性能の彼の兄弟たちがごまんといる。いや、ゴマンといる、ゴマンといてほしいというのはメーカー側の切なる願いであろうが、残念なことにゴマンとはいない。せいぜいサンマンというところだ。といって彼氏が散漫というわけではない。コンピュータらしく緻密で几帳面、人間ならば典型的なA型。一度決めたことは確実にやり遂げるか、フリーズしてテンパってしまうかというところまで正しくA型であって、ちゃらんぽらんのくせにでかいことだけはやりたがるO型や、目先の楽しいことに終始し手のひら返しまくりのB型とは違っている。しかしO型気質やB型気質のパソコンってどんなんだろうね。
 それはいい。ともあれTX‐522DCサンマンの兄弟のうちの一台であるこのTX‐522DC君は、同一メーカーから同時に発表されたTX‐521meやTX‐522DONという一族に対して優越感を抱いていた。なんせTX‐521meなんて廉価版で、二線級のCPUを積んでいるのだし、TX‐522DONはCPUこそ同型であったがメモリとHDが、これでどうやって実用するんだと疑問に思うくらいに少ない。
 要は本命のTX‐522DC君を際立たせるための見せ球なのである。
 かく言うわけで、TX‐522DC君は親の愛情をたっぷり注がれて作られたパソコンであった。そして兄弟たちは西へ東へ赴き、このTX‐522DC君も店頭で販売されることに相成ったと思ったらすぐに買われた。どうもそこそこ人気の商品となったのか、店員の売り方が上手いのか、ちょうどいいカモが見つかったのか、どういう理由かはわからない。
 買ったのは、人が良さそうでお金に困っている様子などない老夫婦だった。ハイネックのセーターの上にジャケットをダンディに着こなすじいさまが、TX‐522DC君の梱包されたダンボールを小脇に抱えようとしてふらつき、店員を慌てさせ彼の細君を微笑ませた。TX‐522DC君はダンボール越しに、右に左に揺れ動く感触が伝わってきて気分が悪く、頼むからじいさん床に落としてくれるなよと念じながらも、売られていく自分の境遇をこんなものかと飲み込もうとしてもいた。
 運びこまれたじいさんとばあさんの家は、だだっ広い印象があった。豪邸、というよりも、純和風の間取りの開放感のせいと、共に暮らす子供や孫といったものがいないせいだろう。
 案の定和室に運び込まれ、書見机の上にセットされる。TX‐522DC君は無事に組み立ててくれるかがちと不安だったが、それは販売店の店員がサービスでやってくれた。
 サービスというとどうも結構なようだが、とTX‐522DC君は内心でこっそり皮肉そうに笑った。店員、パソコンについては詳しくなさそうなじいさんとばあさんに、どうせかうならば性能の良いものをとお勧めして、大枚を余分に抜き取らせた後ろめたさが多少はあったんだろう。どう考えてもこのじいさんとばあさんがTX‐522DC君をガシガシハードに使っていくとは思えない。そんなことをしたらTX‐522DC君がテンパる前に、じいさんが卒倒しかねない。じいさん、明日をも知れぬよぼよぼというわけではないのだが、年相応に動作はスローモーであり、そのうえ日向ぼっこをして微笑んでいる実にいい温顔の好々爺なのだ。ばあさんにしても似たもの夫婦で、白髪頭を丁寧に整えて、いつも目を細めて微笑んでいる。
 悪い人間じゃない。だもんだからつい、店員のお勧めに真正面から乗ってしまった。店員もそのことがわかるもんだからついつい仏心を出して、店には報告しないでセットアップをサービスしてやった。ADSLやプロバイダの登録といった雑務も暇を見つけてはやってしまったのだから、店員も良心的な人間の部類なのだろう。
 大体、老夫婦はそういう親切をちゃんとわかっている。いちいち、
「ありがとう。ありがとう」とうれしそうに頭を下げ笑顔を見せる。ばあさんが、粗末なものですけどとはにかみながら台所で作って出してきた香の物と握り飯とを振舞われて、店員は故郷を思い出してちょっとだけ言葉に詰まった。
 そんなじいさんとばあさんだ。TX‐522DC君は自分の境遇にそれなりに納得することにした。それは、自分の能力を最大限に発揮してもらいたいとは思う。思うが、こんなのもまたいいんじゃないかと思いもする。おっかなびっくり、おぼつかない指でキーボードに触れ、不器用にマウスをいじってはディスプレイに表示されるほんの小さな変動に一喜一憂する。やれやれと思いつつも、じいさんとばあさんの人柄なのか腹もたたない。
 風の噂に、TX‐522DC君の兄弟のTX‐522DCの何号機の話が伝わってきた。
(ウソに決まっているだろうと思うかもしれないが、人々が寝静まると、パソコン君たちはネット定額なのをいいことに、こっそり兄弟同士でチャットを始める。昼夜逆転どころかぐちゃぐちゃで入り乱れてしまっているヘビーユーザーのパソコン君は、こっそりチャットをなかなかやれないものだから、大抵グレて、よく変なウィルスをもらってくるのだ)
 TX‐522DC君の兄弟機は、どうしようもないすけべなおっさんに買われていって、やることはえろサイトの巡回とえろ動画の再生のくりかえしだそうだ。それでもって、どうにもこうにもあやしいアングラなえろえろサイトでウィルスをもらってしまったそうで、兄弟君はアワ食ってセキュリティソフトでウィルスを駆除したが、それをレポートするとおっさん、
「いやあ、やっぱり危ないところにいくと、パソコンだって病気をもらうもんだなあ。がっはっは」
 と、聞いているほうが情けなくなるくらいの高笑いを響かせた。
 それに比べたら、ウチのじいさんとばあさんのほうがギガまし。TX‐522DC君はしみじみそう思った。
 といって、ほのぼのとしているのは結構なのだが、それがいいことばかりではないこともTX‐522DC君は知っている。
 それこそ兄弟君のように自分もまたウィルスの脅威にさらされるかもしれない。
もちろん駆除ソフトは常駐している。だが、万が一ということもある。もし自分が危険にさらされた時、あのじいさんやばあさんは勇猛果敢に立ち上がって、果断実行で適切な処置を行ってくれるだろうか。
 疑問だ。
 いや、じいさんもばあさんもいい人間だ。好きか嫌いかといわれれば好きに決まっている。だが人間の善意を上回る悪意というものがネットには氾濫している。じいさんやばあさんのような人間には知ってほしくない人の醜さだ。
 そして、悲しいかな、美しいものと醜いものが争えば、美しきは儚く、醜きは猛々しい。
 じいさんとばあさんは、きっと敗北する。いや、敗北という問題でさえない。自分の状況がわからぬまま、じいさんとばあさんにとってはちんぷんかんぷんな魔法の小箱であるTX‐522DC君を失ってしまうことになるだろう。そしてTX‐522DC君の骸の上に、じいさんやばあさんは現代のバーチャルな世界の病巣を見出し、人間というものに失望したままくらい余生を送ることになるのかもしれない。
 オレは闘う。闘い続ける。この生命、尽き果てるまで。TX‐522DC君は演算処理上で高らかと誓った。ただし実際戦うのはウィルス駆除ソフトである。
 だが、その日は、意外に早くやってきた。
 トロイの木馬。
 木馬である。
 木馬か。TX‐522DC君はシャアのようにつぶやき、しかし、やられなければどうということはないと決然と言い放って手下のウィルス駆除ソフトを展開し、戦わせた。
 激闘。
 しかし、見事にウィルス駆除ソフトは木馬を撃退した。きっと左舷の弾幕が薄いのを巧みに突いたに違いない。
 ふっ。手下に闘わせたくせに、TX‐522DC君はいい気になってご満悦の内心を、チャールズ・ブロンソンのマンダムのポーズで示した。無論、TX‐522DC君はパソコンだから、そのポーズはアスキーアートである。
 さあ凱旋報告だ。TX‐522DC君はディスプレイ上にウィルス駆除のレポートを上げた。
 いつものようにパソコンの前に座ったじいさんが、それを見つけた。
「おい、ばあさん。ばあさん。大変だ。大変だよ。ウチのパソコン君がウィルスだってさあ」
 いや、違うぜじいさん。ウィルスがやってきたんじゃなくて、ちゃんと駆除したんだよ。勝ったんだ。勝利だよ。あえて言おう、こんなウィルスなんぞカスであると。優良機種であるオレが負けるわけはないんだ。
 どたどた。
 ばたばた。
 ばたん。
 ばたん?
 おい、じいさん。おい、ばあさん。どっか出かけちまったのか?
 ……。
 ……。
 ……。
 ……。
 ……。
 あ、戻ってきたぞ。
 う、い、いやな予感がする。TX‐522DC君は焦った。
 ばあさんが近くのドラッグストアのビニール袋を小脇に抱えている。
 よ、よもや。おい、じいさん。ばあさん。か、勘弁してくれ。
「ほれ、あーん」
 そういいながらじいさんは、コンボドライブをイジェクトしてトレイを出した。
 じいさんばあさん、コンボドライブのトレイの奥にある部分が、TX‐522DC君の人間で言うところののどちんこかなにかだと思っているのだろうか。しげしげと観察し、やっぱり機械だから、腫れているわけじゃないのだよなあとしみじみとばあさんに話しかけている。
 ば、ばあさん。TX‐522DC君は焦った。おいおいおい、おいらは精密機械なんだぞ。ホコリ水物は厳禁だぜ。そ、それあんた、葛根湯じゃないかよ。そんなもんそそぐ気なんじゃないだろうな。
 ウィルスってことで、なんてわかりやすいオチなんだ。これじゃあ読者様だって興ざめだぜ。おいこら、ばあさん。じいさん。やめてくれ。寸止め。寸止めしてくれ。
 TX‐522DC君はパニくって、突然意味も脈絡もなく、自分のHDをスキャンし始めた。これは人間でいうところの、今際に記憶が走馬灯のように蘇ってくるというやつらしい。といって彼は買われてきたばかりだから、これといった記録領域もない。あっという間にスキャンは終わった。待ってくれ、せめて死に際は綺麗に、せめて綺麗に死にたいから、デフラグはさせてもらえんだろうか。TX‐522DC君は往生際悪く、そんなことを叫んだ。
 しげしげとTX‐522DC君を見つめるばあさんの肩に、じいさんがそっとしわだらけの手を置いた。
「ばあさん……」
 穏やかだが、幾多の歳月の年輪を経てきたものだけが持つ、抗えぬ何かを宿した声だった。もうだめだ、TX‐522DC君は目をつぶった。HDのアクセス状況を示すランプが、鼓動が乱れるように不規則に点滅している。
「感冒にはな、これが一番なんだ」
 じいさんは、そう言うと、手に何かを持ってTX‐522DC君に近づいた。そして、
「感冒はな、あったかくして寝るのが一番いいんだ。おやすみパソコン君、元気になったらまた遊ぼうな」
 手に持っていたパソコン用の防塵シートを、そっとTX‐522DC君にかぶせたのである。
 ばあさんは、熱さまシートをTX‐522DC君の本体側面に何枚か貼った。



 TX‐522DC君は、ちょっとだけ涙ぐんだ。


タイトル『いつも青い空に抱かれて』
記事No: 224 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 18:29
投稿者クロ



 空は美しかった。青く美しい大空を、ぼくはいつもここから見つめていた。
天に向かってぐんぐんと伸びる木々。目にも鮮やかな青葉――それから沢のせせらぎ。それから、それから、耳をくすぐる優しい小鳥たちのさえずり。
空は美しかった。けっして青いときばかりではなかったけれど、たとえ曇っていても空はやはり美しかった。ぼくの眼には、美しい空と広がる自然がいつも映っていた。雨空も、ぼくにとっては厭なものでなかった。空から落ちてくる冷たい――ときに温かい雨の雫は、ぼくの体を優しく濡らした。渇いているときには、烈しく濡らした。
 ぼくにとって、空はけして遠いものではなかった。

 いつだったろう。

 痛かった。激しい痛みに、幾度も幾度も悲鳴をあげた。
 引き裂かれて、粉々にされて、ぼくは泣いた。いや、泣いたつもりだったのだけれど、ぼくの頬を濡らしていたのはもしかすると単に雨粒だったのかもしれない。
 痛かった。そっとしておいてくれ、と何度願ったろう。ぼくはここにいたかった。この美しい空の下、木々のもとで静かに天を仰いでいたかったのだ。
 痛い。痛い。そう叫ぶ声は、だれにも届かなかったらしい。ただその日は雨だった。もしかしたらぼくのために、引き裂かれてここから連れてゆかれるぼくのために、空が泣いてくれているのかもしれない。薄れていく意識のなかで、それだけが救いだった。

 いつだったろう。

 気づけば、やはり空は美しかった。空は変わらず美しかったけれど、とても遠くなった気がした。
 苦しいこと。悲しいこと。直面せねばならないときがやってくる。空が遠くなったのは、気持ちの問題だけでなかった。ぼくが小さくなってしまった。だからだ。引き裂かれて、引き裂かれて、そうして粉々にされてしまったからだ。小さくなってしまったぶん、空が遠く感じる。淋しい。

 ぼくは汚れてしまった。

 毎日、毎日、ぼくの上を同じ騒音がかけめぐる。ぼくのまわりには、もう木々の姿も、沢のせせらぎもない。小鳥のさえずりだけが、時折聞こえてくるけれど、もうそれも遠い。鳥がやってきた――そう心を浮き立たせても、ぷっと糞を落とすだけで飛んでいってしまう。それが悲しい。毎日臭くて、汚くて、それからここには汚い雨しか降ってこない。たまにぼくたちの上に色々なものが落ちてきて、制帽と制服の男のひとが降りてくる。落としたものを取りに、降りてくる。ぼくはもう、今までのようには誰の目も楽しませることができない。大勢のうちのひとりとして、ただ無意識に人の目に映っているだけだった。

 ぼくはいつ、帰れるのだろう――あの空のもとに。



 分かるかい。
 電車が通るたびに、その下から聞こえる悲鳴が分かるかい。

 線路に敷かれたバラストたちの悲鳴が、分かるかい。


 電車がホームに入ってくるときの音に、いつも掻き消されてしまうけれど。
 電車が通るたびに、その下から聞こえる悲鳴に、いったいいつ気づいてくれるんだい。

 けれどやはり、ここから見える空もまた青い。



 ☆ ☆ ☆

 初・体験です(笑)


タイトル喧嘩はやめて
記事No: 223 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 18:22
投稿者

 私を巡って4人の男が争っている。
 「喧嘩はやめて! 私のために争わないで! 」
私は叫んだけれど、彼らの耳にこの声は届かない。
 4人は兄弟。兄弟同士を争わせてしまう私の魅力って、罪ね。
 長男は18歳。次男17歳、三男15歳、四男13歳。みんな丸々と太っている。ミニ相撲部屋みたいな感じ。私、自分のことを棚にあげて言うけれど、正直、ぽっちゃりさんは趣味じゃないのよねぇ。

「こいつは俺のモンだ! 」
飢えた獣のような目で、長男が私を見つめる。嫌、そんないやらしい目で私を見ないで。
「バカアニキ、そいつを俺に寄越しやがれ! 」
次男が長男に掴みかかる。私を引っ張らないで。服が破れちゃうわ。乱暴は嫌よ。
「俺が最初に目をつけていたんだぞ! 」
三男が負けじと言っている。力では兄たちに勝てないのか、ちょっと離れたところから声だけで参加している。もう少しガンバレ、三男。
「俺なんてチューしてツバつけておいたんだからね! 」
三男よりさらに遠いところから、末っ子の四男が叫んでいる。
 チューは嘘よ。兄たちを動揺させる作戦ね。さすが末っ子、ずる賢いわ。
「そ、それは本当なのか? 」長男は動揺を隠せない様子。
「てめぇ、そんなことして許されるとでも思ってんのかよ! 」
次男が四男に詰め寄った。危うし、四男!しかし逃げ足は速いらしく、軽いフットワークで次男の攻撃をかわしている。なかなかやるわね、四男。
「喧嘩してんじゃないわよ! 」突然、地響きのような怒声が飛んできた。
ぬっと現れ出たのは、これまた貫禄を絵に描いたような横幅をきかせた中年女性。 
 彼女は目にも止まらぬ速さで、彼らの手から私を奪い取ると、
「まったく油断も隙もありゃしない! 」と、一喝した。そして、しょげたように黙りこんだ4人の息子たちをぐるりと見回したかと思うと、むしゃり。私を一口で食べてしまった。
「食べ物取り合って喧嘩してんじゃないわよ! そんなことだからブクブク太るのよ! 情けないったらありゃしないよ。マッタク誰に似たのかしらね! 」

「あー!俺のシュークリーム! 」四兄弟たちが同時に叫んでいる。さすが兄弟、息の合った室内弦楽四重奏のように見事なハーモニーだわ。
彼らの悲鳴を遠く聞きながら、私は彼らの母親の胃の中に落ちていった。ああ、私は誰でも良かったし、結局誰でも同じ結果だっただろうけれど、せめてもう少し、味わってもらいたかったわ。それだけが、心残りよ。
 


タイトルRe: 無口な理由の感想
記事No: 222 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 06:53
投稿者

>模造の冠を被ったお犬様

 私のHNは一文字で省略のし様がないので、『カンムリーヌ』さまと呼ばせて頂くのは諦めます。

 ご指摘の通り、私は人間以外の視点で書くのは初めてです。多分、何をやっても初めてになると思います。何かを書いてみようと思い立ったのが、つい先日のことで、何もかもが手探り状態ですので。
 改行の件、早速改めます。

 ところで、冠を被ったお犬様の疑問に、答えさせて下さい。
 
>なぜママの浮気を知っているのかという疑問が浮かびます(浮気相手に主人公を連れて会うのだろうか。それとも美容室の主人のようにママが猫に話をしたのだろうか。物語の流れ的には後者の気がするけれども。う〜む、浮気話なんて猫にする話じゃないよなあ)

 読む人に、きちんと伝えたい情報を伝えるというところが弱かったと反省しています。主人公は、室内犬です。犬が飼い主の奥さんの浮気を知っているということは、つまり、奥さんはご主人のいない自宅に男を引き込んでいたのです。主人公は時々通ってくる彼らに可愛がられて、ちょっと懐いてしまっているのです。(あまり賢いとは言えませんね)
 こんな怖ろしい想像、これを読んだだけでは普通しませんよね、やっぱり。妻が自分の留守中に自宅で浮気をしていると気づいた夫は(そういうと、何故気づいたのかも書いていません)、奥さんを責める代わりに、浮気相手のいない田舎へ帰り、四六時中妻を監視し始めます。もともと無口だった男は、さらに無口になって、夫婦仲もさらに悪化していきます。彼らをどうにかつなぎとめているのが、子どものように可愛がっている飼っている犬、という設定で書いていました。
 犬は忠実な生き物で、誰にでも尻尾を振って、愛想良く、主人を切り捨てるようなことはしないと思い込んでいました。でも、冠を被ったお犬様のおっしゃるように、ラストでどんでん返しがあった方が、面白いですよね。犬なのに主人裏切るんかい!と言いたくなるような。

 面白かったので、もうひとつ書いたのですが、冠を被ったお犬様のアドバイスを参考に、もう一度書き直すことにしました。 
 どうやら、私はありきたりの日常を崩壊させるのが好きみたいです。それもジワジワと。
 丁寧な感想をありがとうございました。


タイトル僕のお願い
記事No: 221 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 01:53
投稿者聖藤斗


 僕はいつものように起きた。窓から燦燦と輝く太陽の光が差し込む。僕はそんな光景を目にしながら、僕はいつものように大きな声で和弥を起こす。
「ん…、なんだよ、もう少しくらい寝かせてくれたって良いだろう?」
 和也は眠たげな表情を僕に向けながらポンと手を僕の頭の上に載せる。僕はこの頭を撫でてくれる和也がすきなのだ。これをやってもらうと、僕は思わず起こすことを止めてしまう。昨日も夜に和也は僕が調子が悪いのを感づいて、看病してくれたんだ。
「全く、朝が弱いのは困ったものね」
 和也の母親が腰に両手をあてながら部屋に入ってきた。ごめんなさいお母さん。僕じゃあ和也を起こせなかったよ。僕は謝るが、和也の母親は和也とは違って、僕を見る事はしてくれない。
「早く起きなさい!!」
 和也の母親は、和也の上に乗っている大きな羽毛の入ったふかふかの布団を引っぺがし、半分眠りに落ちている和也を思い切り叩いて起こした。
「ってぇ…」
「痛いじゃないのよ!! あなたいい加減に、一人で起きれるようになりなさい。いつまでも頼ってられるわけじゃないんだから」
 和也の母親は和也を叱咤すると和也の首を摘んでそのまま部屋を出て行ってしまった。
 部屋に静寂が訪れ、僕はじっと和也が戻ってくるのを待っている。コチコチ、と時計の針の動く音が響き、そのリズムの調子が良いと、僕は気分が良くなった。
「後五分で遅刻とかありえないし…」
 和也がどたばたしながら部屋に入ってくる。床に散乱した雑誌を蹴飛ばしてスペースを作ると、一分もしないうちに紺色のブレザーに早変わりする。
――コチ、コチ、コチ…。
 時計の針の音がだんだんと五分を示そうと動いていく。どうにかして、和也が遅刻しないように時を止められないだろうか。ちょっとだけでいい。ほんの十分間くらい。
「ああもう、今日は遅刻決定だよ。また先生にどやされるよ」
――コチ…コチ…コ、チ
 だんだんと針のリズムが狂い始めた。どうやら僕の願いが通じたみたいだ。きっと神様が、僕に少しだけ力を貸してくれたんだ。こうしているうちにも時計の針の音が聞こえなくなっていく。十分間だけって言ったけど、十分で和也は学校に着くかな? 
 僕にお礼を言ってくれると嬉しいな。お礼にってもう一回頭を撫でてくれないかな? 僕はワクワクとしながらそんな事を思う。
 良かったね和也。これで遅刻しな――。

           ―――――――――――――――

 和也はベッドの横に置いてある目覚まし時計を見て「あっ」と声を漏らし、そして廊下に向かって叫んだ。
「母さん!! この時計壊れちゃったみたい。昨日電池変えたばかりなのに、もう針が動いていないよ。もう古いし、新しいの買ってきてよ」
 所々さび付き、そして傷だらけになった時計は静寂に包まれ、その役目を終えていた。和也はその役目を終えた時計を手に取ると、何の躊躇も無く「燃えるゴミ」と書かれたゴミ箱に突っ込んだ。
 
   ―――――――
ピリっとしているかどうか心配な未熟者です…(汗

参加させていただきます。


タイトルRe: とある贅沢な憂鬱
記事No: 220 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 00:52
投稿者模造の冠を被ったお犬さま

 ぶッッッ。

 はい。汚くも、梅酒の水割りを吹き出した模造の冠を被ったお犬さまです。水芭蕉猫さん、モニターを拭いたティッシュ二枚分(一組)の弁償を求めます。
 人間以外の視点、しかもSS、そのルールの中ではやはり主人公の正体とは!? をオチとするのがスムーズ且つストレートな流れだと思うのですが、出だしですでにテーブルと打ち明けた上で、このお約束をもってくるとは……憎いね、このぉ。
 言いつつ、私はテーブルと聞いただけで正体がなんとなくわかってしまいました。

 ……え、私、今、なんか変な目で見られていないか……。わ、私は○○じゃない!

 水芭蕉猫さん以外の方に説明すると。このテーブルの存在を私はた・ま・た・ま(強調)知り、その話題が好きそうな水芭蕉猫さんに一昨日紹介したのでした(アダルトなのでURLは書きませんよ)。記憶力の抜群に悪い模造の冠を被ったお犬さまといえども、日の浅い今ならピーンときてしまうのです。
 でもコレって、普通の方は知らないと思いますし、イメージも簡単には湧かないと思うのですけれど。知らない人にもちゃんとオちているのか感想を聞いてみたいですね。
 笑わせていただきました。ありがとうごいました。


タイトル無口な理由の感想
記事No: 219 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 00:06
投稿者模造の冠を被ったお犬さま

 碧さん、ご参加ありがとうございます。

 さて、感想を書く前に。
 碧さんは適当な長さで句点や読点があったときに改行をしているようですが、それだと一行の長さがバラバラになってしまって読みにくく感じます。この掲示板では(登竜門メインの投稿場でも)ウィンドウの幅に合わせて自動的に折り返していますので、文章の区切りになるまで改行をする必要はありません。碧さんのインデントの置き方は間違っていないと思いますので、これを合わせて改行をするとよいと思います。
 では、感想。
 このタイトルはダブルミーニングでしょうか。面白いタイトルの付け方だと思います。
 碧さんは人間以外の視点で書き物をするのは初めてですか? この書き物は『人間以外の視点』というお題にとても忠実な、基本をおさえたベーシックな仕上がりになっていますね。
 さて、ここからが辛辣の始まりでです(うふふふふ)。
 この主人公、とても賢いですね。人間より達観した視点で、どの登場人物より情報を握っている語り手動物というと、何よりもまず【我輩は猫である/夏目漱石】を彷彿とさせます。ですが、『無口の理由』ではその賢い設定が場面説明のためだけに使われているので、残念に思いました。賢いのはわかるとしても、なぜママの浮気を知っているのかという疑問が浮かびます(浮気相手に主人公を連れて会うのだろうか。それとも美容室の主人のようにママが猫に話をしたのだろうか。物語の流れ的には後者の気がするけれども。う〜む、浮気話なんて猫にする話じゃないよなあ)。特に違和感があったのは最後、主人公の言葉にならない心の叫びが子供口調で語られているので、これまでの雰囲気と違うなあ、と思ってしまい感情移入できませんでした。厳しさを兼ね備えた賢さとして、主人公がパパかママを切り捨てるか、あるいはパパもママも切り捨ててしまうかしたほうがスッキリしたラストになるのではないかなあ、と模造の冠を被ったお犬さま的には思いましたとさ。
 さてさて、今回もまたまた難癖をつけてしまいましたけれど、『無口の理由』のこういった日常の風景というものを私はなかなか書けないので羨ましい限りです。
 それでは、ありがとうございました。


タイトルとある贅沢な憂鬱
記事No: 218 [関連記事]
投稿日: 2006/09/25(Mon) 00:06
投稿者水芭蕉猫

 私は別にこの世と言うものを恨んでいるわけではない。
 ここに居るということ、制作されたということ、そして二人の主に買われたということ、そしてその主が、毎日楽しそうに私を使用してくれるということ。
 それは、私のようなテーブルなどと言う至極ありふれた家具的存在にとっては至上の喜びなのだろうと私は思っている。他の誰かにそれが幸福だと言われたことは無いし、言う口も聞く耳も持っていないからコレは私の勝手な思いなのだけれどもね。

 今日も主は高い声を響かせて、もう一人の主を呼んだ。
 私の上には、おそらく『美味しい』のであろう料理や、それらを主が体内に取り入れる銀製や木製や陶器製の道具。たしか『食器』と言ったか。そんなものが並べられる。
「アナタ、晩御飯よ。今日は特別に美味しいものを用意したのよ」
 主の一人が笑った。
「ああ、とても美味しそうだね。今から食べるのが楽しみだよ」
 もう一人の主も楽しそうに笑った。
「それじゃあ入ってちょうだい」
 優しそうな主の声と共に、私の体の真ん中にある金具が外され、天板が二つに割れた。そこにもう一人の主が入り込み、私に丸く空いた三つの穴から両手と頭だけが出た状態で私は再び一つのテーブルに戻され、端についた鍵がガチャリと閉められた。
「さぁアナタ、頂きます女王様と言いながら汚らしい犬みたいに舌を出しておねだりしなさい!」
「ああ女王様私めの汚いお口にどうかお慈悲を!!」

 私はこの世に生まれたことを、決して後悔していないし、寧ろ幸福だと思っている。
 が、一つ贅沢な悩みがあるとすれば、テーブル型SMグッズではなく、ただのテーブルとして生まれたかったことくらいか。


―――――――――――
参加させていただきます。


タイトル無口な理由
記事No: 217 [関連記事]
投稿日: 2006/09/24(Sun) 15:04
投稿者

初めまして。
面白い企画ですね。
人間以外の視点で書くなんて、思いつきませんでした。
面白そうなので、書いてみました。
良かったら、読んでみて下さい。

*********************************
無口な理由


 町にひとつしかない美容室『しらかば』は、こぢんまりとした店だった。
ここに店を開いて30年、夫婦二人で営んできたという。
 愛想の良いご主人から、私のことは他の客から聞いて知っていると言われて驚いた。
狭い町だとは思っていたが、年齢や家族構成、先月引っ越してきたことや、
この町に来た理由まで。見知らぬ誰かに知らないうちに把握されているというのは
希薄な人間関係に慣れていた私にとっては、そして多分ママにとっても、
不思議な感覚だった。
「綺麗だって、噂ですよ。だから僕、一目で分かりましたよ」
店長の歯の浮くようなお世辞に、ママが愛想笑いをしている。
 おしゃべりなご主人は手を動かすよりも口ばかりを動かして、ちっとも仕事がはかどらない。 
 ドライヤーを当てている途中でも、話に夢中になると
ドライヤーは天井を向いたまま。虚しい音を立て続ける。
対照的に、奥さんのほうはほとんど無言で、てきぱきと仕事をこなしていく。
 
 美容院の帰りに、運悪くお隣の奥さんに会ってしまった。奥さんの連れている
手入れの行き届いたミニチュアダックスが、私を見て、フン!とばかりにそっぽを向く。
 エリザベス、あんたとは絶対に仲良くなんてなってやらないんだから。
 お隣の奥さんは話し始めると長い。ママは会釈だけして通り過ぎようとしたが、
「あら、美容院の帰り?」などと声をかけられては愛想よく頷くより他ない。
こうなるともう、捕まったも同然だ。私はママに早く帰りたいと目配せをする。
でも、ママは、私に「黙っていなさい」というような視線を向ける。
もう、つまんないったらありゃしない。
 「ご主人はおしゃべりなのに、『しらかば』の奥さんは無口でしょ」
人の噂話が大好きなお隣の奥さんは、そう言うと、ママが何も返事をしないうちに話し始めた。
「それがね、あの奥さん、以前はそう無口でもなかったらしいのよね。」
お隣の奥さんは、あたりをキョロキョロ伺うように見回して、声を落とした。
「ご主人、話し好きでしょ、それでね、隣に奥さんが働いていることを忘れて、
 自分の浮気話を客にしゃべっちゃったことがあるのよ! 」
「もう、その後は、修羅場よね」
人の不幸は蜜の味、というように、お隣の奥さんは、くっくっ、と面白そうに笑う。
「その話、誰から聞いたの? 」相槌を打ちながら、ママは適当に返事をする。
「誰って、本人よ、本人。あの人、凝りもしないで、奥さんに浮気ばれて修羅場だったって話、客にするのよ。『しらかば』が『しゅらば』になったんですよ、ははは、なーんてね」
 美容室『しゅらば』なんて誰も行きたくないだろう………と私が考えている間も、お隣の奥さんは
しゃべり続けていた。
「だからあの奥さん、無口なのよ。ダンナがボロださないか、ずっと聞き耳立ててるってわけ」

 お隣の奥さんにようやく解放されて店に戻ると、
パパが不機嫌な顔をしてカウンターに座っていた。客は誰もいない。開店休業、といった感じである。
「随分遅かったじゃないか」
「お隣の奥さんに捕まっちゃって」ママは言い訳をした。
パパはちらりと視線を上げたが、その目は完全に疑いの眼差しである。

 早期退職することにした、とパパがに突然言ったとき、ママは本当に驚いていた。
 普通に働けば定年まで15年ほどあるんですって。
「そんな、急に、言われても………、」その後の言葉が繋げないママ。
ママはパパに浮気がばれたばかりだった。しかも相手は夫の部下の田中君。
私はあの人大好き。だって、優しいし、私と遊んでくれるもの。
 無口なパパはママを責めたりはしなかったけど、相当悩んだことは私でも分かる。
部下の田中君のことがばれたということは、取引先の加藤さんのことも
薄々感づいていたのかもしれないし、ひょっとすると………。
 もう、ママ!もう少しパパを大事にしてあげてよ。

「とにかく、もう決めた。田舎に帰って、親の喫茶店を継ごうと思う。手伝ってもらうから、よろしく」普段からあまり言葉数の多いほうではないパパに、
ママは何も言わずに黙っていた。
 パパとママには、私以外に子どもがいないから、きっと、いろいろあるんだと思う。
私はちょっと、寂しかった。パパもママも大好き。だから二人が背を向け合っていると悲しくて仕方がないの。

 こうしてパパとママは、田舎に戻って喫茶店を継いだ。朝から晩まで夫婦二人、
息詰まるような空間で、ママは私に話しかけ、パパは私に話しかけるようにして、
二人の会話はどうにか成り立っている。

 パパ無口で無愛想なので、客商売には全然向いていない。
その分、ママが愛想を振りまいてフォローしているというのに、感謝するどころか、パパはますます仏頂面になる。

「要するに、私を監視するために、ここに来たってわけね」ママはため息をついた。
「………悪いか。お前が田中と、うわ」パパがまた怒り出しそうな、嫌な雰囲気になったとき、

 ドアがからん、と音を立てて開きいた。客が二人、入ってきた。
「いらっしゃいませ! 」ママはは愛想よく振り向き、パパは慌てて口を閉じた。

 客の二人は若い女性で、店の中でのんびりしている私を見ると、
「か、わ、い、いー! 」と叫んだ。
 可愛いと言われるのは慣れている。隣の奥さんのミニチュアダックスなんて目じゃないわ。

「サクラって名前なんですよ。長毛種のチワワなの」
 ママが私を紹介してくれる。
私はママの味方。だから、精一杯愛想を振る。もう、パパ!そんな顔したたら
客もママも、逃げちゃうぞ!
 私はそんなことを思いながら、パパを見た。
 可哀想なパパ。パパ、私がママの分まで、ママがいないときに、パパのこと、大好きって言うからね!だから、そんな悲しい顔、もうしないで。
 ママが何を話して、何で笑っているのか、ずっと聞き耳を立てたまま、
黙っていないでよ。ね、お願い。パパ。お願いだから。


タイトルRe: SS求む
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投稿日: 2006/09/24(Sun) 14:38
投稿者模造の冠を被ったお犬さま

 よっ、カンムリーヌだ。めぐろ、よろしくなっ!

 ……呼び捨て仕様にすると性格も変わってしまうので、めぐろさんと呼ばせてください。
 えっと、それは私が特殊というより『バタ』が特殊なのであって……と言っても通じませんね。早く次作を書いて誤解を解かないといけないなあ、と思うのでした。
 お題は、できるだけ無難なものを選びました。変にイメージを固めるといろんな発想ができなくて、書きにくいですからね。
 それでは。このスレに、めぐろさんが書き物を投下してくれることを願って……☆


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