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タイトル123『始まらなかった恋』
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投稿日: 2014/05/24(Sat) 20:58
投稿者浅田明守

2014年12月24日。僕の一つ年上の幼馴染が死んだ。
 交通事故だったらしい。点滅信号を急いで渡ろうとしたその時に、よそ見運転をしていたトラックに撥ねられたとかなんとか。
 その知らせを聞いたとき、僕は酷く驚いた。
 当然といえば当然のことだ。だって、彼女が死ぬだなんてその時の僕は微塵たりとも思っていなかったのだから。
 でも、逆に言ってしまえばそれだけのことだった。
 驚いただけ。それ以外の感情は何一つとして浮かんでこなかった。お通夜にも行ったが、涙の一つ浮かんでこなかった。
 何もかもが唐突で現実味がなかった、というのもある。
 僕自身が、彼女とそれほど親しい間柄というわけでもなかったということもある。
 なにせ、良くも悪くもただの幼馴染だ。家こそ近いが、毎日顔を合わせるわけでもない。小中学校の頃ならともかく、大学にもなればご近所だろうが生活時間が合わなければまず会うことはない。彼女に最後にあったのは……一ヶ月前だったか。確かバイト帰りに駅のホームでばったりあって、なんでもない世間話をしながら帰ったんだっけか。
 まあ、その程度の関係でしかなかった。
 その程度の関係でしかないと思っていた。
 ―――その程度の関係であって欲しかった。
 最初は何ともなかった。
 ただ……ふと思い出してしまう。近所のコンビニで、駅の改札口で、あるはずもない彼女の影を探している自分がいる。彼女の姿が見えないことを悲しく思っている自分がいる。
 そして気が付いた。気が付いてしまった。
 あぁ……僕はきっと、彼女のことが好きだったんだ、と。
 何もかもが遅すぎる。失ってから気が付くなんて、本当にどうしようもない間抜けだ。ある意味で僕らしいともいえるかもしれない。
 今となっては涙を流すこともできない。ただ行き場のない寂しさと、喪失感だけが僕の中に残る。
 幼馴染を亡くしておよその一ヶ月の後、僕の恋は始まることすらなく終わりを迎えた。
 そしてその日の夜、僕は不思議な夢を見た。
 床も壁も天井も、何もかもが真っ白な部屋。そこにはドアも窓もなく、ただ部屋の中央に小さな丸テーブルと2組の椅子があるだけの場所だ。
 そこに僕ともう一人、浅黒い肌色をした長身の男がいた。
 なんというか、ひどく特徴的な男だった。身長は二メートル近くあり、それでいて腕や足は女性のように細く、全体的なイメージとしては細長い木の枝のような印象を受ける。髪は短く刈り上げられているが、なぜか頭の後ろの一部分の髪だけがこ腰のあたりまで長く伸ばされ、尻尾のようになっている。そして何よりも特徴的なのがその顔。男には顔がなかった。正確に言えば、本来顔がある部分が黒い靄がかっていて顔を見ることができないのだ。
 その男を一言で表すならば、“無貌の神”だ。ここ数年で一躍有名になったクトゥルフ神話における邪神。最凶最悪の化け物。
「やあ、こんばんは。突然だけど、一つ私と契約をしないかい?」
 男がそう語りかけてくる。
「これから君の時間を二ヶ月ほど巻き戻してあげよう。君はそこでやり残したことがあるんだろう? それを成し遂げるといい」
 顔は見えないが、男の声は酷く楽しげだった。もし顔があるのだとしたら、きっと皮肉な笑みを浮かべているのだろう。
「ただし、覚えておくといい。運命は決して変えることはできない。仮に変えることができたとしても、それは君にとって悲劇にしかならない。君にできることは、同じ一ヶ月を無意味に過ごすか、あるいはその一ヶ月でやり残したことを成し遂げるか。その2択だ。契約の代償は君の絶望だ。私は絶望する人間が大好物なんだよ。あぁ……もちろん、受けるか受けないかは君の自由だ」
 最後にとって付けたかのように言う。まるで最初から僕が断らないことを知っているかのような口ぶりだ。
 …………いや、まあその通りなんだけど。
 せめてもの反撃として「随分な悪趣味だな」と返事をする。
「あぁ……私はそうあれかしと望まれて生まれた存在だからね」
 終始楽しげだった男だったが、その時だけはどこか悲しげな声をしていた。
 夢はそこで終わり、僕はいつもの自室で目を覚ます。
 枕元に置いてあるデジタル時計は、2ヶ月前の午前7時半を表示していた…………

【あらすじ】
顔のない男と契約をして、幼馴染と最後にあった日の朝に戻ってきた僕。
彼女が死ぬ実感を持てないままに、自分の始まることすらせずに終わってしまった恋をきちんとした形で終わらせるために、彼女と最後の一ヶ月を過ごす。

とまあこんな感じの話です。どう考えてもバッドエンド一直線でございます。
しばらく来ない間に面白そうなことをやっていたので思わず参加(?)してみました。
全体の流れはできているものの、作者本人がリア中爆発しろを素で言っている側の人間なため、僕と彼女の関係をうまく書くことができずに挫折しました。
というかぶっちゃけるとこんな感じの小説を誰かに書いて欲しいなー(チラ 誰か書いてくれないかなー(チラ といった感じですねw
問題があれば即消します。何かあればおっしゃってください。


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