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タイトル残骸置き場
記事No: 1062 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 21:55
投稿者神夜

 せっかくの雑談掲示板なので、本当に雑談を含んで私的に使用。

 神夜がチマチマ書いていた物語で、途中で力尽きたものが多々ある。
 それは勿論、投稿掲示板を使うには至らないものである。そこで下記。

 1「中途半端に書いたけど、とりあえず人の意見を聞いてみたい」
 2「何かここから良いアイディアとかないだろうか。閃きみたいなものをくれ」
 3「ここまで書いて力尽きた物語を、誰か引き取って新しく書いてみてくれ」
 4「プロットだけど、全体を通して意見やアドバイスくれ」

 大きく分けてこの四つ。
 題名に上の番号つけて、その内容を突っ込んで書き込む。

 例  1:『題名』

 ルールとしては、
 
 1:ただ単純に投稿掲示板の簡易版。
 2:途切れた先のあらすじを書く。起承転結まで簡潔にまとめてあると吉。
 3:基本は2と同じ。ただし、設定が一部しか引き継がれない物語で誰かに新規投稿されても拗ねない。
   ※3に関しては規約的に大丈夫だろうか。ダメならすんません。
 4:プロットなんぞ神夜は書かいたことがないから知らない。
   とりあえずプロット乗せて意見交換してアドバイス貰うとかそんな感じ。

 また、幾つか重複することも可。

 例  23:『題名』 等

 3でアイディアを引っ張って新規投稿する場合は、何か判るような題名なり記号なりをつければ良いと思う。
 やってくれる人がいるかどうか判らないから、そこはその時に詳細決定。

 とりあえず試しに幾つか神夜が投下。
 いつか誰かが便乗してくれればいいなぁ、などと思いながら書き書き。
 
 ※ただし、これは本当に残骸置き場であって、
 誰かに意見を頂いて返信することは必須としても、
 当人がそこから正規の物語として昇格させるかどうか、書けるかどうかはまったくの別問題でござる。
 
 つまり、結局何が言いたいのかと言うと、
 最終目的は3で、何か面白そうなのがあったらパクって自分で書いてしまえばええんや。そういう場所や!


タイトル123:『ポンコツLIVING(仮)』
記事No: 1063 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 21:56
投稿者神夜





 ねえ。ねえってば。
 返事してポンコツ。
 うるさい、静かにして。
 それでさ、質問なんだけど。
 いいから黙って聞いてよ。

 ――わたしたちってさ、

     *

 姉さんに子供が出来た。
 ただそれは姉さんが妊娠したとかじゃなくて、どちらかと言うとコウノトリさんが運んで来てくれた方の子供であった。そしてさらに言うのであれば、それは全然おめでたい話とかではなくて、実は結構、重い話だった。
 姉さんが結婚したのは二年ほど前のことで、今は人の良いほんわかした旦那さんと近くのマンションで同棲している。二年も同棲しているのだから、そろそろ二人の間に子供が出来ても何ら不思議ではなかったのだが、姉さん曰く、「セックスはしてもいいが子供は二十九歳まで絶対に作らん」とのことで、二人とも朝から晩まで仕事に精を出していた。
 そんな姉さんとは対照的に、こっちはまぁ酷いもので、セックスどころか大学すら行かなくなってしまったニート同然の分際だった訳だけれども、幸いにしてそれには一応の理由もあり、家族も理解してくれていた。ただ姉さんだけは「甘ったれるなこのうんこ製造機」と暴言を吐いて蹴り倒してくるけど、それでもたまには実家に帰って来て、「ほれうんこ製造機。小遣いだ」と言ってお小遣いをくれたりする。
 いろいろなことがあるにせよ、それでも世界は案外平和に回っていた。
 そんな折、何の前触れもなく、家に姉さんが帰って来た。
 帰って来ただけなら良かったのだが、姉さんの後ろには、小学生くらいの女の子が一緒にいた。
 俯いていて、そこからは何の気力も感じられない子供であった。まるで抜け殻や人形を思わせるような無気力感。
 戸惑う家族共を順に見渡して、姉さんはその子の背中に手を添えながら笑った。
「父さんに母さん。あとうんこ製造機。報告がある。――あたし、子供出来たわ」
 うそつけ、と家族全員が思ったが、姉の笑顔に、その時は誰一人、反論することが出来なかった。

 最初はえらい騒ぎだった。
 ついに姉さんがどっかから子供を拉致して来たのかと家族会議が開かれた。父さんは大慌てて警察に連絡しようとして、母さんは現実逃避としてお隣の西岡さんにランチのお誘いメールを送った。てんてこ舞いの事態に一家崩壊の危機に陥り、終いには父さんが涙を流しながら「今ならまだ間に合う。頼む。頼むから自主してくれ」と姉さんにしがみ付いて懇願していた。不憫でならなかった。
 そして、真実の蓋を開けてみれば、それはそれで、結構な大問題であった。
 無論、その女の子は姉さんの子供ではなかった。旦那さんの隠し子でもなかった。血の繋がりなんて一滴も無い、正真正銘の、赤の他人であった。ではなぜそんな子供を連れて来たのかと言うと、家族の予想は半分当たっていた。
 姉さんはその子を「誘拐して来た」のだと言う。
 姉さんは破天荒なところがあるとは思っていたが、それでも人道を踏み外すことは無いと思って信じていたのに、まさか誘拐して来るとは本当に予想外であったがしかし、その「誘拐」には、姉さんなりの理由があった。
 今から一年くらい前に、その子の母親に相談を受けたらしい。ちなみにその母親というのは、姉さんの古い知り合いで、高校生の時の同級生だそうだ。その母親が言うには、何でも父親が典型的な暴力男で、酒を飲むと見境無く暴力を振るったり、モノを壊してしまう癖があったらしい。その行動に母親も、そしてその子ももはや精神的に限界で、そんな生活についに耐えられなくなり、ノイローゼ一歩手前のその時、藁に縋る思いで姉さんを頼った、と。
 姉さんは破天荒で口が悪くて、暴言と一緒に手と足と頭突きが出るような人だったけど、それでも元来姉御肌で、昔から自然と人に頼られる性質を持っていた。そんな姉さんに相談したら、どうなるかなんて判り切っていた。案の定、姉さんは怒り狂ってその家に突入して、包丁を突きつけて抵抗する父親を問答無用でボッコボコの病院送りにしただけでは飽き足らず、母親までも「てめえが不甲斐無いせいだろうが」と一喝して張り倒してしまったらしい。よく逮捕されなかったなと思う。
 そんなことがあったにせよ、しかし結果的には、世界は平和になった。一ヶ月の入院を経て戻って来たその父親は、心を入れ替えて物凄く優しい人になったとのことで、母親も人間が変わったかのように頼り甲斐のある人となった。暴力に怯えて塞ぎ込んでいたその子もまた、徐々に明るさを取り戻していった。
 そこで終わればハッピーエンドだったのだが、世界は再び、壊れてしまった。
 交通事故だった。父親の運転する車に家族三人が乗って、隣の県のテーマパークへ遊びに行く時のことだった。高速道路での事故で、両親は即死。奇跡的にその子だけが生き残る結果となった。なったのだが、そこから先はもう、転げ落ちて行くだけだった。人が変わったかのように良い人間となったその両親だったが、それまでの行動が直ちに清算される訳もなく、親戚からの風当たりは冷たかった。それは二人の子供であるその子にも例外無く吹き荒れ、親戚間を酷い扱いでたらい回しにされた挙句、最後には施設に放り込まれることとなった。
 そのことを耳にした姉さんが再び怒り狂った。
 そしてその結果、誘拐して来た、と。
「大丈夫、話はちゃんとつけてある。でもふざけんなって感じよあのクソハゲ共。あたしがこの子を預かるっつったらどうしたと思う? 快く頭を下げて来たのよ。それだけじゃなくて、耳打ちで生活費等は一切出さないとか抜かしやがって。マジでぶっ殺してやろうかと思ったわ」
 姉さんは破天荒だ。破天荒で口も悪くて、暴言と一緒に手と足と頭突きが出るような人だ。
 それでも思うことがある。
 そんな姉さんでも、この人は、唯一胸を張って言える、自慢の姉だ。

「おい、うんこ製造機。昼間はあたしもトッシーも仕事だから、お前が優奈(ゆな)の遊び相手になれ」
 最終的に、姉さんにそう言われた。
 そう言われた結果、反論することも出来ず、遊び相手になることが決定した。
 ただ、いきなり小学六年生の女の子の遊び相手になれと言われても、正直困った。男の子であればゲームをしたりチャンバラをしたりサッカーや野球をしたりとやりようは幾らでもあったのだろうが、さすがに喋ったこともない女の子といきなり遊べるはずがなかった。そもそも小学生高学年くらいの女の子が、普段何をして遊んでいるのかなんてまったく知らなかった。おまけに優奈は、最初の頃、ほとんど何の感情も表に出さない子供だった。
 しかし、それも仕方が無いことだったのかもしれない。何せやっと世界が平和になったと思ったら、再び一気に地獄の底に叩き込まれたのだから。この子のことを立て直すのは、ちょっとやそっとのことでは不可能だとすら思った。だから接し方には一番悩んだし、悩み過ぎた結果、体重が五キロも減った。そしてそんな中で出した結論は、自然解決、という本当にうんこ製造機並の答えであった。
 随分と長い間、一緒の部屋で過ごしながらも、互いにほとんど干渉しない生活が続いた。
 しかしそれでも、自然解決なんて答えを出したうんこ製造機を他所に、世界は順調に回る。
 姉さんの手に掛かれば、きっと不可能なんて何ひとつとしてないのだと思った。
 優奈は見る見る内に元気を取り戻していって、最終的に、こちらのことを姉さんにあやかって、出来損ないの機械――「ポンコツ」と呼ぶようになった。
 勘弁して欲しかった。

 世界は回る。
 そして、姉さんの言う、宣言の歳となった。
 その宣言通り、姉さんは本当に妊娠した。

 優奈は、中学二年生になっていた。




 【あらすじ】
 
 ポンコツの姉の家で元気を取り戻し、再びに前を向いて歩き出した優奈。
 しかし、そんな折に姉が子供を授かったことで、
 本当に自分はこの家に居ていいのか?
 子供が産まれてしまったら、自分は要らない存在になるのではないか?
 という葛藤に苛まれ、どうしようもなくなった時、ポンコツに相談する。
 そしてその葛藤を知らないポンコツは、深く考えずに発言したことにより、優奈を傷つけてしまう。
 そのことが発端となって、とうとうその重圧に耐え切れなくなった優奈は、家出してしまう。
 果てない逃避行の先、行き止まりの道標の中、優奈を見つけたのはまさかのポンコツだった。
 不器用ながらに差し出された手に対し、優奈は――
 
 
 いかん、いかんぞ。あらすじって難しいなオイ。
 プロットすら書かいたことがない神夜では、そもそもこの企画がダメかもしれん。
 ここで起承転結まで書くことが出来るのだろうか。
 
 しかし、とりあえず大枠はこんな感じ。
 ここから幾つかポンコツと優奈、そして姉さんとのエピソードを交えつつ、
 上記葛藤を匂わせて、家出した優奈を姉さんにぶっ飛ばされながらポンコツが必死に探す。
 
 で、やっぱり在り来たりなんだけれども、
 小さな頃、一緒の部屋でずっと過ごしていたその情けないけど優しい背中に、
 優奈は気づかない内に淡い気持ちを抱いていて――、とかとか。まぁいつもの神夜の物語だ、うん。
 
 たぶん勢いがつけば一気に書けそうではあるんだけれども、力尽きてしまった物語のひとつ。


タイトル13:『どぅぺぇいうる、げぇんぅんがぁー』
記事No: 1064 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 21:57
投稿者神夜





 ハローワークに行くつもりが、気づいたらパチンコ屋経由の風俗帰りとなっていた。
 自分でもびっくりした。自分でもびっくりしたが、ハローワークなんていつでも行けるのだから、パチンコ屋の月一イベントの方が優先度が高いなんてのは至極当たり前のことであり、おまけにさすが月一イベントである、日給換算にして八万の儲けとなった。そうであれば所詮あぶく銭なのである、盛大に性欲を満たすことに費やすべきであろう。こういう時にしか行けない高級店に意気揚々と向かい、得意気に「ナナちゃん指名の花弁大回転で」と注文した結果、自分でもびっくりするくらい大満足した。
 アパートの近くのコンビニへ鼻歌混じりに立ち寄り、雑誌コーナーで週刊誌と風俗雑誌に目を通し、冷やかし程度にコンビニのアルバイト募集の紙をちらりと見つめるが、あまりの時給の低さに鼻で笑って素通りする。酒コーナーからお気に入りの缶ビールを二本取り出して、ツマミのコーナーでビーフジャーキーをあるだけ囲い込み、レジが可愛い女の子だったためにいつもよりクールを装って「二十七番の煙草を三つと、あとフランクフルトと唐揚げ棒」とすまし顔で注文する。お釣りを渡される時に手が触れ合わないかと期待したが、そんなことはなかったのが少し残念である。
 買った物が入った袋を手に提げ、フランクフルトをもりもりと食しながら帰路に着く。コンビニから歩いて僅か二分、フランクフルトを食い終わる前に自分の住む二階建てのボロアパートに辿り着いた。ズボンの後ろポケットを弄って鍵を探し当て、フランクフルトの棒を咥えたままロックを外し、ドアを開けた。
 その瞬間、恐ろしいまでの違和感が浮上した。
 腕時計で時刻を確認する。夜の十一時過ぎである。辺りが暗闇に支配されているのは当然だ。だからこそ、部屋の中も真っ暗であるはずだった。にも関わらず、自らのアパートの一室の奥から、灯りが漏れている。今朝に出掛ける際に電気を消し忘れた、なんてことはあるはずがない。なぜならいつも、朝は窓から射す明かりだけを頼りに活動しているため、「朝に電気を点ける」という習慣自体が無いからだ。だとするのなら。なぜ、部屋の奥から灯りが漏れているのか。おまけによくよく意識を澄ましていくと、テレビの音まで聞こえてくる。
 合鍵を持っている誰か、という線はまずない。合鍵を誰かに渡すなんてこと、今までしたことは一度も無い。ならば両親などが何かしらの理由で来たのか、ということに関してはさらにない。なぜなら両親とは十年前の二十二歳の時に死別していた。事故死だった。だからもし仮に両親がこのアパートに来るのだとすれば、それはきっとお盆だけであろう。
 なら。なら、今にこのボロアパートにいるのは、果たして誰なのか。
 泥棒、ではないだろう。泥棒がのんびりとテレビなんて見ているはずがない。じゃあストーカーか、と言えば悪い意味で心当たりが無い訳ではないが、ストーカーされるほど良いツラを持っている覚えもない。では一体、今にこの部屋の中にいる奴は、果たして誰だろう。
 小さく息を吸い込み、ワザと音を大げさに立てて室内へ入り込み、灯りの漏れる部屋のドアを無造作に開け放った。
 ゴミ袋やコンビニ弁当のタッパーやビールの缶が散乱しているクソ汚いアパートの一室。そこに、禿げ散らかした薄汚いおっさんが一人、横に寝転がりながらテレビを見て「げははははは」と笑ってケツをボリボリと掻き毟っていた。そのおっさんが扉を開け放ったこちらに気づき、「おっ」と意外そうな顔をした後、のっそりと起き上がって再びに「げははははは」と笑って片手を上げてきた。
「よお、遅かったやないかい。どないや、ええ仕事あったか?」
 殺すぞ、と口が出そうになったが何とか踏み止まる。
 しかし、なんだ、これ。
 薄汚いおっさんと対峙しながら、呆然と立ち尽くすしか出来なかった。
 なぜなら、
 なぜならそのおっさんが、どう見ても、どこからどう見ても、――自分自身、だったからである。



     「どぅぺぇいうる、げぇんぅんがぁー」



「おーおー、気ぃ利くやん。ちょうどビール飲みたかってん。おまけにビーフジャーキーに唐揚げ棒。致せり尽くせりやな」
 コンビニのビニール袋を勝手に引っ手繰った挙句、中の物を遠慮なく穿り出し、缶ビールのプルタブを開け放ち、実に意地汚く唐揚げ棒を貪り、ビールを煽った時に「かぁあーっ」と歓喜の声と共に屁をぶっ放して、薄汚いおっさんは「げははははは」と笑う。
 対面に座り込んだまま、同じようにコンビニの袋から缶ビールを手繰り寄せてプルタブを開け、ビーフジャーキーをつまみとしてビールを煽る。思わず同じように声を出しそうなところで何とか踏み止まったが、そのせいとでも言うべきか、無意識の内にケツが浮くような屁が出てしまった。その屁に対して、対面のおっさんは目を真ん丸にしながら再び「げははははは」と一人で大爆笑する。殺してやろうかと本気で思う。
 ビーフジャーキーを貪りながら、大きなため息を吐いた。
 クソ狭いアパートの一室で、何が楽しくて不細工なおっさんと二人で酒を飲まねばならないのか。おまけに、その相手が自分自身と瓜二つのおっさんだと来たものだ。意味がわからない。生き別れた双子の兄弟、とかではもちろんないであろう。しかし、鏡を見ている分には気づかなかったことがある。実際、鏡に映る角度によっては「あれおれって実はイケメンなんじゃね?」と思ったことも一度や二度じゃない馴染みのツラであるはずなのに、実際に実物をこの目で見てみるとそれはもう酷いものだった。なんだこの妖怪みたいな物体。仕事とは言え、今日に相手をしてくれたナナちゃんはよくもまぁ嫌な顔ひとつせずに頑張れたものだ。見上げたものだ。今度また指名をしてあげよう。
 缶ビールを埃が転がる床に置きながら、再びのため息を吐いた。
「――で、お前。結局の話、一体何やねん」
「何やねんって、何がやねん」
「ワレが誰や言うてんじゃボケ」
「誰やてお前。アホちゃうか。見て判らんのか、お前やお前」
「そういうこと言うてんちゃうわボケ、殺すぞ。何でおれがもう一人おんねん。んなわけあるかい」
「あるんやからしゃあないやろ」
「何であんねんな。ふざけてんのやったら殺すぞお前」
「待て待て。そんなもん決まってんやろ。おれがお前のドッペルゲンガーやからや」
「どっぺ、あ? なんて言うた?」
「ドッペルゲンガー。知らへんか? 有名やん、どぅぺぇいうる、げぇんぅんがぁー」
 そう言って不細工なツラで「げははははは」と笑う目の前のこのおっさんに本気で殺意を覚える。
 しかし。――しかし、ドッペルゲンガー。ドッペルゲンガーってあれか。この世界には自分がもう一人いて、そのもう一人と出会ってしまったら死ぬとかいう、あの都市伝説か。じゃあ何か。今にこのドッペルゲンガーに遭遇したため、自分は死ぬというのか。ふざけんな。家の中で寝転がってテレビ見てケツを掻き毟るドッペルゲンガーなんぞいてたまるものか。
 未だに「げははははは」と笑い続ける自分自身を睨みつける、
「とりあえず笑うのやめろや」
「何でやねん、おもろいやろ? これな、最近流行のおれのギャグやねんで? いくで、顔にも注目してよく見て聞いとけよ、いくで。――……どぅぺぇいうる、げぇんぅんがぁー、げはははははっ!」
「待て、待てコラ。本気で殺すぞお前。一回黙れや」
「どぅぺぇいうるげぇんぅんがぁーぁあげはははははあべびッ! ってーな何すんねんお前ッ!! ビール投げるかフツー!? 中身入ってんねんで!?」
「やかましいわボケコラァッ!! 本気で殺すぞワレェッ!!」
「あーあーあーあー見てみぃこれ勿体無い!! びちゃびちゃやないかい!! 勿体無いお化けが出んぞ!!」
「ワレがそもそもお化けやろが殺すぞッ!!」
「お化けは殺せませんー、残念でしたー、げはははははは!!」
「っんのボケカスコラァッ!!」
 目の前の不細工に向かって殴り掛かる。「おおッ!? やんのかコラァッ!!」と対抗してくる不細工。
 クソ汚いボロアパートの一室で、不細工なおっさん二人が本気で殴り合う。一発殴ったら一発殴られる。一発蹴ったら一発蹴られる。ただし暗黙のルールとして、髪の毛にはどちらも絶対に手は出さない。手は出さない代わりに顔面とボディに遠慮無く拳と蹴りが炸裂し合う。
 幾度目かの拳の応酬の後、ついに力尽きて互いにその場に倒れ込んだ。
 ビールを飲んだせいか、それとも殴られたせいか。身体中が高熱を出したみたいに熱く、息がまともに出来ないくらいに苦しい。汚らしい床に大の字に倒れ込んだまま、互いの荒い息だけが室内に木霊し続ける。年齢はもうすでに三十を越えているせいか、なかなかに呼吸が落ち着かない。スポーツや運動を真面目にしたのなんて随分と昔の気がする。体力がここまで落ちていることに正直驚いた。喉の奥から嫌な唾が競り上がってくる。
 それから約数分後、ようやっと落ち着いた呼吸を意識して、倒れ込んだまま、大きな、本当に大きなため息を吐き出して、こう言った。
「……結局の話、……お前は、何やねん……」
 それに対して不細工なおっさんは鼻血を垂れ流したまま答える。
「いやせやから……お前の、ドッペルゲンガーやっちゅうとるに……。しかしお前、めちゃくちゃに殴り腐りよってからに……。おーイタ……」
 お互い様だ不細工野郎が。そう思いながらも、いつまでも起き上がることが出来ないまま、寝転がり続けていた。

     ◎

 互いに煙草を吸いながら、話をまとめるとこうなる。
 自分と瓜二つの、不細工なこのおっさんはどうやら本当に「ドッペルゲンガー」らしい。信じた訳では勿論無いが、それでもドッペルゲンガーらしい。呼称が面倒だったので、取り敢えずは「ドッペル」と呼ぶことにした。本当は「ゴミ親父」というあだ名で通すつもりだったのだが、再びの殴り合いに発展したために「ドッペル」で落ち着いた。
 そしてそのドッペルの言うことをまとめていくと、こうなる。
 この世界には、「もうひとつの世界」が存在している。イメージとしては鏡の中のような世界。その世界には、こっちとまったく同じ世界があって、同じ時間が流れ、同じことが起きている。ただし、極稀に、こっちの世界と違うことが発生することがあるという。それが今回、このドッペルに起こった。
 ドッペルは向こうの世界で、今日の自分と同じように朝起きて、ハローワークに行こうしたところ、悲運にも交通事故に巻き込まれてしまった。向こうの世界の自分はそこで即死したのだという。どうも話を聞いていると、今日に自分が偶然にもパチンコ屋の月一イベントの幟を見つけたために、進行方向を変えたことによって死ぬ運命が書き換わったみたいだった。
 そしてここから少し面倒な話になるのだが、どうやらその世界で死んだ場合、一時的にこちらの世界に放り出されるらしい。そこでもう一人の自分と、「役目を入れ替える」ことが可能だそうだ。つまり、死ぬ役を替われるということ。その場合、こちらの世界でドッペルが生き残り、向こうの世界ではこっちの世界の自分が死ぬ、と。そういうことらしい。
「せやったら何か。ワレはおれを殺そ思てここにおるんか?」
 的確に意図を見抜いてそう言ってやったのにも関わらず、ドッペルはケツを掻き毟りながら少し困った顔をして、
「いやまぁ、最初はそう思たんやけどな。でもお前を待ってる間によくよく考えてみると、別におれらそこまでして生きる必要ないやん? どーでもええこんな人生に、そこまで未練もあらへんし。せやけど他に行くところあらへんし、どうやって向こう側に帰るのかもわからへんしで、とりあえずここでお前待っとろーかな、と」
 そう言われてみればそうかもしれない、と素直に納得してしまう。
 別にいつに死のうが、結構真面目な話、本当にどうでもよかった。どうせこのまま適当に過ごすくらいであれば、いつか綺麗さっぱり苦痛もなくスパーンと死んだ方が良いかもしれない。無論、自殺などをするつもりは毛ほども無いが、たまたま交通事故に巻き込まれて何を思う暇も無く、とかだったら正直、結構歓迎するレベルの話だと思う。悔いはあると言えばあるのだろうが、幽霊になってまでそれを達成しようなどと、微塵も思わない。
 煙草を片手に缶ビールに口をつける。
「まぁ、ワレの話は大体わかったわ。信じろ言うても無理な話やけど」
「せやろな。おれもいきなりそんなこと言われても信じへんどころか、たぶんぶん殴るやろな」
「やけどそうなると、お前がここにいることの理由が不明や。せやからしゃあないから、話はわかったことにしといたる。せやからとっとと消えろ。今すぐ向こう側に帰って一人で大人しく死ね」
「そうしたいんはやまやまなんやけど、その方法が判らんねん」
「あ?」
 ドッペルも同じようにビールに口をつけつつ、
「さっき言うたやろ? どうやって向こう側に帰るんかわからんのや」
「ワレ、ふざけてんのやったらマジで殺すぞ。来たんなら帰る方法くらいわかるやろ」
「わかったら苦労せん言う話や。何やったらここでお前に殺されたら帰れるんかな?」
 馬鹿にするでもなく。素で、ドッペルはそう言った。




 【あらすじ】

 とりあえず、どうしようも無くなって奇妙な共同生活を送ることになった不細工なおっさん二人。
 しかし自分自身であるがゆえに次第に意気投合し、
 一緒にパチンコや風俗に行ったり、どっちがハローワークへ行くかで喧嘩になったり、
 顔が一緒のことを利用してコンビニで「ルパンごっこ」をやったりとやりたい放題していた頃、
 クソみたいな底辺でも、こんな底辺なら悪くないと初めて思った時、
 「この世界」でも交通事故が発生する。
 大きな事故、死を覚悟して意識が途切れ、ふとした拍子に気づくと、
 自分の目の前で身代わりとなったドッペルが居た。
 そこで交わした最期の言葉と同時に、ドッペルは在るべき世界へと還っていく。
 そして残された不細工なおっさんは一人、ほんの少しだけ、真面目に生きようとする。
 
 
 息抜きに書いてた物語。
 女の子なんてひとりも出ない。萌えもなければニーソもない。
 不細工な汚いおっさんがひたすらに馬鹿する話。そんなものがあってもいいじゃないか。うん。


タイトル123:『しっ、死んじゃえばーかっ』
記事No: 1065 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 21:58
投稿者神夜






 ねえ、※※。

 ――わたしたちって、幸せ、……だったのかな?


     ◎


 いつの間にか、そこにいた。
 真っ白い空間だった。周りには何もなく、ただ目が痛くなるくらいの白い空間が、永遠と続いていた。床や天井、壁の境目なんてまったく判らない、本当にただ真っ白な空間が続いている。距離感なんてものはここでは意味を成さず、歩き出してもたぶん、自分が進んでいるのかどうなのかさえ、きっと判らないんだと思う。
 どこだろう、此処。
 ようやくそう思った。思ったのも束の間、ここに来て初めて、自分がこの空間の中で椅子に座っていたのだということに気づいた。そっと立ち上がって自らが座っていた椅子を見つめる。安っぽい鉄パイプと、茶色の木板。昔に良く使っていたような気がする、どこか馴染みのある椅子が、真っ白い空間にただポツンと、そこにはあった。
 どこだろう、此処。
 再びにそう思う。そう思うのも束の間、胸に大きな穴が空いているかのような違和感に気づいた。そしてその違和感の正体に気づいた時、愕然とした。
 此処がどこなのか。それ以前の問題であった。
 何も思い出せなかった。自分が何で此処にいるのか。自分が今まで何をしていたのか。自分がこれから何をしなくちゃいけないのか。自分がこれから何をするべきなのか。自分自身の過去のこと、自分自身のすべてのこと、そして、自分自身の名前さえ、何も思い出せなかった。胸に空いた穴のような違和感はたちまちにその大きさを増し、この白い空間のように、すべてを空白に染め上げていく。
 気が狂いそうになる。言いようの無い焦燥感のようなものが急激に込み上げて来て、堪らずに叫び声を上げようとしたその瞬間、
 真っ白い空間に、黒い線が入った。その線は下からすーっと真っ直ぐに上へ伸びていき、二メートルくらいのところで緩やかな曲線を描いて方向を変え、再び下へ向かって落ちていく。最初の線の位置まできたところでぴたりと止まり、じっと見つめるそこで、いきなりその線が、いや、その線で囲った空間が開いた。
 まるでドアのように、その空間が切り取られて、『こちら側』へと押し開かれていく。
 白に慣れ切った目にはそれは酷く新鮮に思えてならず、食い入るように見つめていたそこから、一人の女の子が出て来た。
 この空間の中にあってなお真っ白な服、真っ白な髪、しかし眼だけが綺麗な空色をしている。小さな輪郭を作る頬のライン、澄ん蒼い瞳と綺麗な唇、白い肌と細い肩、華奢な身体と幼い雰囲気。歳はたぶん中学生、あるいは小学生高学年くらいであろうか。身長はこちらの胸にも達しておらず、ただ彼女の頭の上にはなぜか、白く薄く輝く変なリングのようなものが浮いている。
 空間に現れたドアのようなモノを押し開け、彼女は手をにしたメモ用紙みたいなものを見ながら『こちら側』に現れた。
 やがてその視線がメモ用紙から離れ、その光景を呆然と見ていたこっちと噛み合う。
 空色の蒼い瞳が、無表情にじっと見つめて来る。
 不思議な時間。この少女は、一体、誰なのだろう。
 その疑問を口にしようとした瞬間、突然に、目前の少女は言った。
「番号9921」
 幼さを漂わせる口調で、少女はそうつぶやく。
 意味が判らずに戸惑っていると、少女は少しだけ口調を荒げ、
「番号9921っ」
 ますます意味が判らない。番号9921が果たして何であるのかも判らない。
 どこか怒っているかのような表情を浮かべる少女を戸惑いながらも見つめていると、その顔がいきなり泣きそうな雰囲気を彩らせ、再びに口調を荒げたまま、
「ばんごうきゅーきゅーにーいちっ! へんじっ!」
 へんじ。返事? 番号9921というのは、もしかして自分のことを言っているのではないか。
 そう理解した時には、もう全部が遅かった。
 少女はその場にへたり込んで、急に泣き出してしまった。
 知らない真っ白い空間にいつの間にか自分は居て、自分が誰であるのかも思い出せないこの状況で、いきなり、目の前で少女に意味も判らず泣き出されてしまった。どうしていいのか、まったく判らなかった。
 しかし、状況は一切判らないままでも、目の前で泣き続けるこの少女をいつまでもへたり込ませている訳にもいくまい、と心のどこかが思う。だからこそ、何とか少女を宥めて椅子に座らせたまでは良かったのだが、しゃくり上げるように嗚咽を漏らす少女はなかなか落ち着かず、その前にしゃがんでずっと慰めていた。
 ただ、すべての状況が判らないこの状況ではどうすればいいのかなんて理解出来るはずもなく、慰める言葉なんて「ごめんね。僕が悪かったね。ごめんね」以外に出て来なかった。だから何が悪かったのかなんて知る由も無いことだったが、ただひたすらに、少女に対して「ごめんね」と謝り続けた。
 その甲斐があったのか無かったのかは判らないが、それでもそれから随分経った後、空色の瞳を赤めらせながらも、ようやく少女は泣き止んだ。少女は小さく鼻を啜りながらも、幾分か落ち着いた感じでじっとしていたが、やがて本当に小さく、先ほどと同じ事をつぶやいた。
「……番号……9921……」
 意味なんてこれっぽっちも判らなかったけど。それでも、何となく雰囲気でそれは自分のことを呼んでいて、そしてここで返事をしないと、少女はまた泣き出すんだろうな、というのは、何処と無く理解してしまった。
 小さく笑いながら返事をした。
「はい」
 そのことに対して、少女は、どうしてか、笑った。
 綺麗な向日葵のような笑顔を咲かせ、彼女はこちらに向かって笑っていた。
 その笑顔があまりに眩しくて、本当に可愛くて、そしてどこか、どうしてか、――無性に、懐かしくて。
 思わずその笑顔を見つめていたその瞬間、
「――最初から返事してよっ!!」
 耳を劈くような叫びと共に、顎を思いっきり蹴り上げられた。
 しゃがみ込んでいたせいで、椅子に座っていた少女の足がベストな距離感で顎を打ち抜く形となった。ひとたまりもなかった。そのまま背後に蛙のように引っ繰り返り、おまけに顎を強打されたせいで、意識が驚くほど混濁した。思考と共に世界が揺れる。一発でどっちが天でどっちが地なのかさえ判らなくなった。立ち上がることなんて当たり前のように出来ず、ぐわんぐわんと揺れる世界の中で意識を保つことだけが精一杯の行動で、
 曲線の揺れ動く中で、少女が椅子から立ち上がるのが見えた。
 声が降って来る。
「なんでさっき返事しなかったの!? 意味わっかんないっ!! 聞こえてたなら返事してよっ!!」
 返事って、そもそも番号9921というのが何だという説明すらないのに、いきなり返事なんて出来るはずもない。そう反論しようと思うものの、未だに脳に受けたダメージは抜け切らず、口からは言葉らしい言葉なんてものはついに出て来ない。
 それを黙秘と受け取ったのか、少女はさらに声を荒げ、
「なんとか言ってよ!! 喋れるんでしょ!? 知ってるんだからねっ!!」
 喋れるよ、喋れるけど、今は喋れないんだよ君のせいで、とも反論しようとするも、口は相変わらずまともに動いてくれず、そして少女の言葉は続く、
「そんなんだからフィル姉様が貴方達のことを蛆虫だって言うのよっ!! この蛆虫っ!! ばーかばーかっ!! 死んじゃえばかーかっ!!」
 ばーかばーか、と涙目で罵り続ける少女は、名前をスピカ・フィーフィットと名乗った。

 そして少女は、自分のことを、

 ――天使見習いだと、そう、言った。



     「しっ、死んじゃえばーかっ」



 スピカは結局、自分の喉が枯れるまでこっちを罵倒し続けた。
 散々に罵倒した後に、どこからともなく白い水筒みたいなものを取り出して、その蓋となっていたものをコップ代わりに、中の透明な水のようなものを椅子に座りながらこくこくと飲んだ。そして小さく息を吐いてから、ものすごく勝ち誇った顔で笑い、未だに白い空間に倒れこんでいたこちらを見下した。ただ、その見下しに関しては別段に苛立ちを覚えなかった。それはゲームで大人に勝った子供がするような、無邪気な勝ち誇りの笑みで、苛立ちどころか、それはどこか、逆に微笑ましい気持ちにさせた。そしてその微笑ましさを、どうしてか自分は、ものすごく愛おしく、そして、――懐かしく、感じてしまった。
 受けたダメージから回復しつつある脳がようやく正常に稼動する。
 その場に座り直し、一度だけ深呼吸をして、椅子に座ったスピカを見上げるように見つめた後、こう言った。
「……質問をしてもいいかな」
「どうぞ?」
 勝ち誇った子供顔で、スピカは返答する。
 どこから聞こう、とは思ったものの、結局はどこからでも同じだという結論に至る。
「此処は、どこなの?」
「狭間」
「狭間、……って何?」
 そんなことも知らないの、とスピカは呆れ顔になり、
「人間界と天界の狭間に決まってるでしょ」
 人間界と天界。そのあまりの漫画やゲームのような単語に、思わず笑ってしまった。
 するとスピカが急に顔を真っ赤にして、
「なんで笑うのっ!」
 ごめん、そんなつもりはなかったんだ、とスピカに対して肩をひくひくさせながら謝る。
 しかし、スピカは自分のことを天使見習いだと言った。天使と言い切らずに見習いだと言うあたり、子供なのに謙虚だと思う。そしてその設定に順ずるように、ここは人間界と天界、つまりは普通の世界と天国の間である、と。たぶんスピカはそう言いたいんだろう。子供がよく考えているようなファンタジー物語の世界観。スピカもきっと、例外ではないのだろう。
 少しだけ付き合おうと思った。今はここに、自分とスピカしかないのだから。
「じゃあ、僕は死んじゃったのかな」
 先ほど笑ったことに対してまだ怒っているのか、スピカはムスッとしながら、
「正確にはまだ死んでない。死にそうになってるだけ」
 瀕死状態であるから、狭間というどっちつかずな所にいるのか。
 何となく自分の置かれた設定上の話が判って来た。
「僕はどうして死にそうになってるの?」
「そんなの決まってるでしょ。貴方が、自殺しようとしたからよ」
「自殺って。なんで僕が自殺なん――、っ、かっ……ッ」
 違和感を感じた時には、頭の中を金槌で叩きつけられたような痛みに襲われた。
 思わずその場に蹲り、頭を抱えて歯を食い縛った。金槌の次は頭の中を鋸で切り刻まれるかのような断続的な痛みが続く。忘れ掛けていた胸に空いた穴のような違和感。何か。何か忘れていた。そう、思っていた。忘れているのだ。思い出せない何か。自分が何で此処にいるのか、自分が今まで何をしていたのか。自分がこれから何をしなくちゃいけないのか、自分がこれから何をするべきなのか。自分自身の過去のこと、自分自身のすべてのこと、そして、自分自身の名前。胸に空いた穴のような違和感。
 何を忘れているのか。何か。本当に、本当に大切な、何か。
 形の見えない、この大切なものは、果たして、――なん、なのだろう。
 始まったのと同じくらい唐突に、痛みが引いた。流れる嫌な汗と共に荒い息を繰り返しながら、何とか思考を落ち着かせようとしていると、再びに声が降って来た。
「思い出そうとしても無理だよ。貴方達じゃ、絶対に」
 僅かに視線を上げたそこに、なぜか少しだけ哀しそうな顔をするスピカを見た。
 視線が合わさっていたのは数秒だっただろうか。やがてスピカは椅子から立ち上がり、
「番号9921。これから貴方に、選択肢を二つ、与えます」
 その言葉と同時に、スピカが現れた時のように、白い空間に線が二本、距離を隔てて現れた。それはそのまま先ほどと同じような動きをした後に、二つのドアを作り出した。
 その前に立ち、スピカは言った。
「番号9921。貴方は今、狭間にいる。ここから貴方が選べる選択肢は二つある。一つは、このまま天界へ行く道。一つは、貴方の心の欠片を捜す道。好きな方を選んでいいよ。どっちを選んでも、わたしが責任を持って貴方を導くから。わたしはそのために、ここにいる」
 何を言っているのだろう。この状況は、一体、――何なんだろう。
「……心の欠片、っていうのは……なに……?」
「貴方が忘れてしまった記憶だよ」
「……記憶、」
 この胸に空いた穴のような違和感。思い出せない、何か。何か、本当に大切な何かを、たぶん自分は、どこかに置いて来てしまった。スピカの言う、心の欠片を捜す道というのは、きっとそれを取り戻す道。だったら取るべき道なんていうのは決まって、
「……あのね。一つだけ、貴方に言っておかなくちゃならないの」
 見上げた先のスピカはこちらから視線を外し、白い空間のどこか一点を見つめながら、こう言った。
「記憶を取り戻すことが、必ずしも良いことだとは思わないで。貴方は自殺しようとした。……ううん。貴方は、自殺をしたの。だから、それ相応の記憶が、貴方の心の欠片にはある。……それを全部集める覚悟が、貴方には、ある?」
 今は忘れてしまった何か。それがどんなものだったのかは判らないけれど。それでも、自殺をしようと思うくらいだから、きっと何か、とても辛いことがあったのだと思う。そのことを聞くのは怖いとは思う。だが、それ以上に今は、自分が置いて来てしまった何か大切なものの方が、重要に思えてならなかった。辛いことを思い出そうとも、それでも、自分は大切なものを、取り戻さなければならない。
 なぜなら、

 なぜならあの日、僕は、――僕たちは、この手を離さないと、そう、決めたはずだから。

     ◎


 【あらすじ】
 
 失った記憶。
 それは、かつて最も愛した女性の記憶。
 二人は手を繋ぎ、そしてもう二度と離さないと誓った。――はずだった。
 
 
 とまぁ、これもまた在り来たりな物語である。
 題名とフィルで、読んだことがある方ならお解かりのように、
 「うるせえばーか。死ね」「生意気言うんじゃねえよばーか。死ね」の続編というか派生というか。
 
 結局、かなり暗い出だしになったことと、
 自殺に辿り着くまでの仮定がどうもしっくり来なかったから止まってしまった。
 
 大枠としては、
 世界は、ひとつの事故によって無残にも砕け散った。
 偶然にも助かった主人公だが、女性は長く生死の境を彷徨っていた。
 不幸なことに、相手方の女性とは駆け落ち同然で、互いの両親の反対を押し切っての逃避行中だった。
 散々に互いの両家から呪いの言葉を掛けられ、関係は最悪に悪化し、
 自らの弱さが最大の原因となり、やがて主人公はその身を投げた。
 
 そして辿り着いた狭間で、主人公は記憶の欠片を集め出す。
 そのひとつひとつの大切さと、自らの愚かさを悔いた主人公は、
 スピカとひとつの約束をして、自らの世界へと還り、未だ生死の境を彷徨う彼女の傍へ――。
 
 


タイトルRe: 123:『しっ、死んじゃえばーかっ』
記事No: 1074 [関連記事]
投稿日: 2014/05/19(Mon) 21:25
投稿者天野橋立

タイトルを見た時点から、ああこれはあれだ、ニーソで踏まれる奴の続編か何かだ、と思って読んでみたんですが、なるほど確かにちょっと重いかなあ……。
まあ、あのシリーズ自体、重いところをひっくり返して感動の結末へ、って感じなので、ここからいくらでも面白くは出来そうですけどもね。僕ならこのまま救いの無いバッドエンドで終わらせちゃいそうですが。


タイトルRe: 123:『しっ、死んじゃえばーかっ』
記事No: 1076 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 20:37
投稿者神夜

ご意見ありがとうございます。
たぶん、頭の中で描いている構想通りに進めば書けると思うんだけれども。ただニーソで踏まれることもなければ、何かちょっとギャグを入れることもできない話の流れ上、たぶん気力が持たない。そこが一番の問題。いっそのこと、主人公がいつも通り馬鹿でクズならどうとでもなるんだけど、そうしてしまうとこの物語自体が破綻しそうで……
こうして分解してみると、やっぱり「途中で止まってしまった物語」には、ちゃんとした理由があるんだなあ。


タイトル23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1066 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 21:59
投稿者神夜






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 煙草に火を点けがてら、せっかくだからもう一回送信釦を押す。ちなみにこれで、さっきとは違う十万件の個人アドレスにメールが送信されたことになる。一回押せば十万件、二回押せば二十万件、三回押せば三十万件、というように簡単に増えていく。ちょろいものである。
 薄暗いオフィスの天井に向かって煙草の煙を吐き出す。吐き出しながらも一定間隔で送信釦を押下し続けた。
 今のご時世、こんなクソみたいなスパムメールに引っ掛かるヤツなんてそうはいないが、百万人に一人くらいの割合で極稀に釣れたりする。そんなヤツが釣れるだけで、実は採算がかなり取れたりする。なんたって一分で書いたゴミみたいな文章を、煙草吸いながら釦ポチポチして送信しただけで何万、上手くいけば何十万の儲けにもなるのだ。ボロイ商売である。
 煙草を吸い終わると同時に送信釦を押下することを止めた。灰皿で火種の息の根を消していると、右斜め後ろにあるオフィスへの扉が開いて、誰かが入って来た。首だけで振り返る。
 入って来たのはハゲ頭だった。いや、ハゲ頭というか、スキンヘッドである。おまけにこのスキンヘッド、身長が190センチもある。体重も100キロを超えている。眉毛もない。筋肉で出来ているような人間。たぶん悪の秘密結社の戦闘員の実力で言えば、自分がショッカーで、このスキンヘッドが幹部クラスである。そのスキンヘッド幹部が怪訝な顔をして、
「おう。なんだ、哲弘だけか」
「うす。おれだけっす」
「他の連中どうした。金田と誰だっけ、あの猫背のクズ」
「あー。金田は確か今日は休みっす。猫背のクズは知りません」
「そうか。猫背のクズが次来たら教えろ。お仕置きしてやらにゃならん」
「うす」
 まあ猫背のクズは逃げたんだろうな、とは思っている。もともとどっかから迷い込んだかのような学生のアルバイトだったし、いつもビクビクしながら仕事をしていたのを憶えている。仕事が遅いとスキンヘッド幹部に何度か優しくどつき回されていたし、もうそろそろ限界だとは薄々感づいてはいた。だから今日ここに出勤した際、金田はともかくとして、猫背のクズがいなかった時、「ああ、バックレたな」と一発で理解した。
 スキンヘッド幹部が少し離れた大きなデスクチェアーに腰掛け、ポケットからスマートフォンを取り出し、それを操作しながら、
「で。今日の調子はどうだ」
「んー。ぼちぼち、っすかね。電話対応の方は相変わらず知りませんけど、クリック数はすでに8件あります。注文数は2件だけですけど」
「2件か。まぁ搾り取れるだけ絞り取っとけよ。両方10は取れるだろ」
「10、っすか。何とか頑張ってみますわ」
「ちゃんとやれよ。お前のことは信用してんだ。両方10の20取れたら、2はボーナスしてくれるよう、おやっさんに頼んでやるから」
「え。マジっすか。それホントっすね? おけ、任せてください、ちょっち頑張ります」
 無言のスキンヘッド幹部から視線を外してディスプレイと向き合う。
 最大90%OFF!! ――嘘じゃない。表示定価\300,000の物を\30,000で販売するなんてほとんど当たり前だ。
 国外へも進出中の最強ネット通販ショップ!! ――嘘じゃない。日本だけじゃなく、お隣の国とも協定を結んでいる。
 あの有名なブランド品も数多く取り揃えられています!! ――嘘じゃない。ブランド品も数多くある。有名かどうかなんてのは個人の判断だ。
 どこにも嘘なんて書いてない。ただそれが、「お客が望んだ品」かどうかなんて、こっちの知ったこっちゃないだけの話。が、それでもまだ優良的な方だとは自負している。こっちは中の国の製品ではあるが、ちゃんと見た目がそれらしい商品を提供しているのだ。酷いところだと、どっかで拾ってきた布に平仮名で「ぐっち」や「しゃねる」とだけ書かれているだけの場合もある。そこから考えたら、まだ良心的であろう。
 しかし何はともあれ、今は目先の二人である。一人はすでに何を血迷ったか、5万分も注文を確定させて来ていた。本当に何を考えているのかさっぱり判らないが、せっかくだからあと5万は搾り取りたい。少々小細工を織り交ぜつつも、注文返信メールに幾つか常套句を書いて返信しておく。これで基本的に馬鹿なら、あと5万は絞り落としてくれる。基本的な馬鹿じゃない場合でも、あの手この手で何としても5万は絞り落とす。
 そしてもう一人だ。こいつは一体幾ら落として、
「……んぅ?」
「なんだよ気持ち悪い声出して。おれは今ナメコ狩ってんだ、邪魔すんじゃねえ」
「え、あ。すんません」
 思わず変な声を出してしまった。
 いやそれよりも、注文確定メールの表示金額は、\0。これではただのイタズラである。こういう場合はさらに違う手段を用いてもっとえげつなく金を毟り取るところであるのだが、どうやらこのイタズラメールに関しては、少しだけ趣向が異なっているらしい。
 備考欄に、メッセージが書いてあった。
『お忙しい中、申し訳ありません。お値段のことでご相談したいのですが、よろしいでしょうか?』
 なんだこれ、と首を傾げつつも、煙草を咥えて火を点けた。



 【あらすじ】

 一通のメールから始まった、ある不思議な話。
 最初はどれだけ搾り取ってやろうかと思っていた哲弘だったが、
 メールを繰り返していく度、その送り主が、ただの女子中学生であることに気づく。
 おまけに、母への誕生日プレゼントを買いたいのだと言う。
 さすがにそこでパチモンを買わせる気も失せ、上からの制裁覚悟でこのサイトの真実を告げる。
 しかしそこから思いもよらぬ方向に事態は流れて行き――
 
 
 どんでん返しにするか、はたまた普通に素朴な少し甘い恋愛モノにするか、
 最期まで決めきれずにこのプロローグで力尽きた物語。
 発端は確か、何年か前に酷かった、投稿掲示板の方の通販ショップの荒らし書き込み。
 だから題名はそれをほとんど真似てやろうフヒヒ、とか思った。
 


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1075 [関連記事]
投稿日: 2014/05/19(Mon) 22:06
投稿者天野橋立

これ面白そうだ! タイトルを見て、反射的に「-90」を付けちゃいそうなところも笑えます。ただ、「ただの女子中学生が、母のプレゼントを」ってだけの展開だと確かに物足りないかなあ。
実はその「女子中学生」の正体は、「母へのプレゼントを買おうとして悪質サイトに引っかかってお金を全て取られ、そのショックで引きこもりだかなんだかになった実在の中学生の姉」とかで、妹をそんな目に遭わせたスパムサイトを憎むあまり、悪質サイトに近づいては何らかの報復をしている、とかいう展開だと、何となく神夜さんスタイルの作品になっていきそうな気がします。
もちろん主人公は、途中からその姉に力を貸すわけですな。スキンヘッドも実はそんなに悪い奴ではなく、加勢してくれます。頭脳で闘う主人公と、いざというときは鉄拳をうならせるスキンヘッド、そんな感じでバトルシーンがあって、みたいな。
いかがでしょうか。


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1077 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 20:52
投稿者神夜


相変わらず良いアイディアをくれる。なるほど、そういう手も有か。
飯作りながら頭に浮かんだモノをまとめてみる。

【メールの送り主】
女子高生 or 女子大生 (物語の関係上、二十歳前後が吉)

【経緯】
・母へのプレゼントを買おうとして、悪質なサイトに引っ掛かってお金を全て取られた中学生の妹。
・その際、学生手帳のコピーをデータ送信してしまったことから、鴨に認定される。
・その悪徳サイトは、ヤクザをバックにしたギャング集団の小遣い稼ぎだった。
・注文時に携帯メールアドレスを伝えてしまったため、脅迫紛いのメール攻撃が始まる。
・恐怖に負けて親のお金を盗んでは渡している内、ついに妹が精神的にちょっとアレになる。
・事の全貌に気づいた姉が、復讐(というより、事の解決の方が適切かな)を行うため、情報収集を開始する。

【流れ】
1.数回のメールをやり取りした後、「例の悪徳サイトを知っているか」と聞かれた主人公。
2.心当たりはあったが、「ない」と返答する。
3.それからメールはパッタリ途絶える
4.数日間忘れていたが、ある日ふと嫌な予感がして、同業者に何となく確認してみる。
5.同業者から、例のメールが噂になっていることを聞き、おまけにそのメールの送り主を特定する動きを見せていた。
6.メールの送り主と再接触を試みる主人公。
7.状況と目的を理解。
8.そんでまあ、こっからはあれや。幾つかエピソードぶっ込んで、最終的には何とかするヤツや。
 スキンヘッド参入もいい案だ。あれ、案外書けるんじゃねこれ。いいね、こういう閃きはやっぱり大切だ、ありがとう。
 
時間があったら書いてみる。時間があったら。……あったら。


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1081 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 22:19
投稿者天野橋立

おお、なんか整理されて、それらしくなってきましたがな。
行けるんじゃないかという気がしてきました。

書く時間を作るにはどうするかというとですね、恐らく新婚旅行くらいは行くのでしょうから、例えばハワイへの往復の機内にタブレットかなんか持ち込んでですね、今のタブレットは十時間くらい使えてしまったりするので、奥さんをほっぽらかしてぽちぽちと原稿を書けば、あら不思議完成だ、ってこんな感じでどうでしょうか。


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1082 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 22:38
投稿者神夜


> 書く時間を作るにはどうするかというとですね、恐らく新婚旅行くらいは行くのでしょうから、例えばハワイへの往復の機内にタブレットかなんか持ち込んでですね、今のタブレットは十時間くらい使えてしまったりするので、奥さんをほっぽらかしてぽちぽちと原稿を書けば、あら不思議完成だ、ってこんな感じでどうでしょうか。

ダメなんだ。神夜の小説書く時の集中モードって結構特殊で、決まった場所(環境)&馴染んだキーボードとディスプレイじゃないとダメなんだ。今のそれっていうのがまさに会社のオフィスで、会社のノートPCなんだよ。それじゃなきゃ今は書けない。家で小説書けとか言われても絶対に無理だと思う。
だから天野さんとかもそうなんだけど、よくもまあタブレットなんかで小説書けるもんだ。すごい。
それに新婚旅行は行かないんだ。婚前旅行みたいなもんでグアムに連れて行かれたことを盾に、絶対に行かんと宣言しておいた。海外嫌いやねん。沖縄には行くかもしれないけど。


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1084 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 22:53
投稿者天野橋立

「俺は会社でしか小説を書かねえ!!」
…ってのは格好いいんだかなんだかw

いや冗談はさておき、なじんだ環境でないと、って人も結構いるみたいですしね。
僕はのってきたらどんな機械使っててもいくらでも書けてしまったりします。例え10ミリピッチの極小キーボードであっても平気です。前は物理キーボードは必須、とずっと思ってましたが、タブレットの仮想キーボードでもそこそこ行けるようになってきました。
ただ、基本的には家では書かないですね。カフェかファーストフードか、あるいは図書館とかでないと集中できません。電車とかもOKですが。

行くなら沖縄でいいんじゃないでしょうかね、海綺麗ですよ。グアムよりも綺麗なんじゃないかと思いますよ。グアム行ったことないけどね!


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1087 [関連記事]
投稿日: 2014/05/28(Wed) 21:30
投稿者神夜

返信遅れて申し訳なかった。
結婚式やったりオービス光らせた通知来て出頭してたりでテンヤワンヤやで。

この作品の構想は頭の中でおおよそ固まって、たぶん書き出したら一気に書けると思うんだけど、如何せん仕事環境がキツキツで書ける時間がない。
いつか落ち着いたら書かせてもらいます。それまでどうか天野さんが生きていますように。


タイトルRe: 23:『最大90%OFF!!(仮)』
記事No: 1092 [関連記事]
投稿日: 2014/05/29(Thu) 19:14
投稿者天野橋立

おお、すごい。構想が固まったとは。さっそくこの置き場が役に立ったわけですね。
まあ、気長に待ってますわ。

そうそう、ご結婚おめでとうございます。一度もまともにお祝い言ってなかったww


タイトル3:『言葉 ―コトバ・コトノハ―』
記事No: 1067 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 22:00
投稿者神夜






 肌が触れる度、僕たちは喧嘩をする。
 心が重なる度、僕たちは喧嘩をする。

 だけど僕は、君を愛している。

 肌が触れ、心が重なり、喧嘩をしても、
 それでも、
 
 それでも僕は、君を、愛している。


 ――ごめん。
 僕は泣いて、そう言った。

 ――背負わせて、ごめんなさい。
 君は笑って、そう言った。

 だから、僕は。
 そして、君は。


 僕は。

 僕は、君を――、愛して、いた。



     「言葉 ―コトバ・コトノハ―」



 いつも同じ場所で、同じことをしている女の子が居た。
 都筑市の市営図書館「つづきプラザ」の、二階の奥にある自習室。そこの窓際の一番後ろの席。そこに座って、彼女はただ、本を読み続けていた。晴れの日も曇りの、雨の日も雪の日も、図書館が空いている限り、彼女は必ずそこにいて、いつもと同じように、ただ本を読み続けていた。
 歳はたぶん高校生くらいだと思う。制服は着ていなくて私服であったが、見た目も随分と幼く見えたし、何よりも雰囲気がまだ子供だった。今までの約二ヵ月間弱で、彼女の私服の種類は僅か七種類しか見たことがなく、一週間でその七種類の服装をローテーションで着用していた。余程お洒落に興味が無いのか、あるいは何かそうしなければならない理由でもあるのか。
 図書館へは、いつも開館五分前後に着くように家を出ていた。図書館程度の開館時間を外で待つのはどこか気が引けたし、休日ならともかくとして、平日の自習室なんて人がいることの方が珍しいから、それでも十分だった。しかし、開館五分前後に到着しているのにも関わらず、毎日、彼女は先に自習室にいた。そして閉館五分前になると、彼女は誰に何を言われるでもなく、すっと席を立って、静かに帰って行く。
 彼女が、本当は図書館に住まう幽霊かそれに類する何かだと思ったことがある。彼女は自分にしか見えていないのではないか、と考えたこともある。だから自習室の清掃に来た職員に尋ねた。するとどうやら彼女は幽霊ではなくちゃんとした生きている人であり、全員に見えているとのこと。ただ素性の深くは職員も知らないらしく、話し掛けても一切、返事をしないという。そのことが積み重なるにつれ、やがて職員も深くを追求することを辞めた。何分、ただ朝から晩まで本を読んでいるだけであり、人畜無害であるため、職員間でも特に気にされていないらしい。それどころか、つい最近になってそこに追加された自分の方が職員間ではマークされていると言われて少しショックだった。
 いつも同じ場所で、同じように本を読んでいる女の子が居た。
 この二ヶ月間で、たぶん彼女と同じ空間を最も共有しているのは自分だと言う思いはあったが、ただそれは、あくまで『同じ空間に居る』だけであって、喋ったことは愚か、名前すらも知らない。そもそも相手の瞳に自分が映ったことがあるのかどうかさえ、判らなかった。喋ったこともなければ名前も知らない、そして目すら合ったことが無い。彼女はきっと、こちらのことなど本当に『空気』としか思っていないのかもしれない。
 でも、それを敢えて飛び越えようとは思わなかった。
 いつも同じ場所で、同じように本を読んでいるその子のように、自分もまた、いつも同じ場所で、同じように本を読み続けた。
 そのことに変化が起きたのは、そんな空間を二ヶ月間、共有した日のことだった。
 いつものように本を読み、物語の中では蛙に姿を変えられてしまった主人公が何とか元の姿に戻ろうと奮闘していたその時、意識の彼方で小さな悲鳴を聞いた。予想外のことに遭遇した際に出るような、そんな悲鳴。それは本当に小さな小さな、普段の雑踏の中でなら絶対に気づかないであろうくらいの小さな悲鳴であったが、誰も居ない自習室では、それは思いの他、よく耳に通った。
 顔を上げて視線を向けると、いつも座って黙々と本を読んでいるはずの彼女が椅子から立ち上がり、自習室の壁の方をじっと見つめていた。何を見ているのだろう、そう思って彼女の視線の先に目を凝らして初めて、白い壁に小さな黒の点があることに気づいた。よくよく見ればその点がゆっくりと動いているような気がする。
 ――蜘蛛?
 たぶん、蜘蛛。それもかなり小さい、小指の爪ほどの小さな蜘蛛だ。あれがなんていう種類の蜘蛛かなんてのはさすがに知らないが、よく家の中とかに現れるタイプである。女の子はその蜘蛛をじっと見つめたまま、それが僅かに動く度に大袈裟なまでに肩を震わしてその行方を追い続ける。
 怖いんだろうか、とぼんやり考える。
 蜘蛛が好きだ、とは冗談でも言えないが、あのくらいのサイズであれば別段怖くはなかった。ただ、どうもあの女の子は相当に怯えているらしい。女の子は虫とかが苦手だと聞くし、あの子もまた、例外ではないのかもしれない。どうしよう、とは思ったものの、このまま放っておくのは少し忍びなかった。
 二ヶ月間一緒の空間に居たが、彼女とコンタクトを取るのは、これが初めてであった。
 自らの席を立ってゆっくりと近づいて行く。気配としてそのことを彼女が気づいたのだ、ということは背中を見ていて何となく判ったのだが、どうやら蜘蛛から目を離せないらしい。その気持ちは何となく判る。部屋の中にゴキブリとかが出たら、たぶん自分も何も出来ずにただ見ていることだけしか出来ないと思う。
 彼女のすぐ傍まで歩み寄って、改めて蜘蛛を見る。本当に小さい。
 彼女はただ、その蜘蛛をじっと見つめ続けている。
 さすがに、ここでいきなりこの蜘蛛を叩き潰したら、思いっきり引かれると思う。
 どうしよう、とは思ったものの、殺さないのであれば、取るべき道はひとつしかない。
 壁の上にあった窓をそっと開け、蜘蛛の下の方に手を回してぶんぶんと振ってみる。動いているものに反応したのか、あるいは手から出る風に反応したのか、蜘蛛は思惑通りに動いてくれた。慌てて上に歩き出して、そのまま綺麗に窓枠を乗り越えて外へと旅立って行った。外に出たことを確認した後、窓をゆっくりと閉めて一息着く。
 ここで、ようやく彼女の方を振り返った。
 振り返って初めて、二ヶ月間一緒の空間に居て初めて、彼女と目が合った。
 真っ直ぐに見つめ合った彼女は、横顔で見るよりも随分と幼く見えた。短めの髪と小さな輪郭を作る頬のライン、澄んだ瞳と綺麗な唇、白い肌と細い肩、華奢な身体と幼い雰囲気。高校生くらいだと思っていたが、向き合った彼女の身長はこちらの胸くらいまでしかなくて、もしかしたらもっと幼い、それこそ中学生くらいなのではないかと思わせた。
 数秒間、彼女と見つめ合っていた。しかしやがて沈黙に耐え切れなくって口を開こうと思った時、先に動いたのは彼女だった。
 すっと手を動かしたと思った時には、その手が胸の前で瞬時に幾つかの形を作っていった。
 あ、これって――、
 それが何であるのかを、すぐに理解した。
 手話だった。何度かテレビで見たことがある。ただ、それが手話だということは判ったのだが、果たして形を作り変えるその手が何という言葉を伝えようとしているのかは、まったく判らなかった。手話の基礎でさえ習ったことなんてなかった。こちらを切実な瞳で見上げながらも、彼女は次々と手の形を変化させていく。
 何かを伝えようとしている彼女と、それを理解出来ない自分。
「え、っと……あの、ごめん。判らないや……」
 そう呟いたところで、手話を使う彼女にはきっとこの言葉は伝わらないのであろう。
 こちらを見上げていた彼女が、突然に手話を止めた。少しだけ悩むような素振りを見せた後、身体の向きを変え、自習室の机の上に置きっぱなしになっていた鞄の方へと手を伸ばして、そこから何かを取り出した。
 携帯電話だった。
 それを開けると同時に、びっくりするくらいの速度でキーを叩いたと思った次の瞬間には、そのディスプレイがこちらに向けられた。ディスプレイはどうやらメモ帳を開いているらしく、そこにはただ一言だけ、こう、書かれていた。
『ありがとう』
 手話もそう伝えようとしていたんだろうか、とふと思った。
 敢えて言葉は返さなかった。ただ、どう致しまして、という意味を込めて、笑って見せた。
 そのことに対して、彼女もまた、こちらに向かって、綺麗に、笑った。

 彼女との距離が近づくのに、そう時間は掛からなかった。
 一度切っ掛けを手に入れたら、あとは流れに身を任せるだけで良かった。
 朝に自習室に行けば会釈をするようになった。お昼を別々で食べていたのが一緒の机で食べるようになった。三時の休憩には一緒にベンチに座ってジュースを飲むようになった。閉館時間の五分前には図書館の入り口まで一緒に帰るようになった。一緒の空間を共有して、一緒の机で、一緒に本を読むようになった。
 三人用の長机の両端に二人が座って、その真ん中に家から持って来たタブレットを置き、何か伝えたいことがある時は、それに文字を打ち込んで会話をした。
『この図書館でオススメの本とかある?』『そうですねー、わたしが見た中ではE-5とかにあるの全般、面白かったですよ。貴方は何かありますか?』『好きなジャンルは?』『大体なんでもいけますよ。虫関係以外であれば』『さすがに昆虫図鑑なんてオススメはしないよ』『そうですよね(笑)』
『そう言えば君はどれくらい前からここに通ってたの?』『一年くらい前からです』『一年ってすごいね。学校は?』『もう卒業してますよ』『卒業って、中学校? 高校は?』『中学校って、どうしてそうなるんですか。高校に決まってるじゃないですか』『うそ。歳いくつ?』『今年で20歳ですね』『   』『どうしました?』『……ごめん。中学生くらいだと思ってた』『やっぱり。よくそう言われますけど、正真正銘のハタチです』『すごいね、ものすごく若く見える』『20歳に対してそれって、単純に子供に見えるってことじゃないですか』
『前に聞きそびれてたんですけど、貴方の歳は幾つなんですか?』『唐突だね。僕は今年で27になるよ』『おじさんだ(笑)』『それちょっとショック受ける』『(笑) でも、おじさんもいつもここにいますけど、会社はいいんですか?』『おじさんって言うのやめて。本当に凹む』『すみません(笑)』『僕は会社には行ってないよ。ちょっと前に辞めちゃった。だから今はニートかな』『じゃあわたしと一緒。ニート仲間ですね』『君もニートなんだ』『君もニートです』
 二ヶ月間、一度も喋ったことがなかったはずの彼女は、距離が近づくにつれ、タブレットの中では饒舌に話した。
 会話もせずに一日中、一緒の長机で本を読んでいる時もあれば、タブレットの充電が切れるまで永遠と話をしていた時もあった。彼女は自分のことを人見知りだと言った。というよりは、言葉を扱うことが出来ない彼女にとって、初めて人と『会話』をする時は、相当の勇気がいるのであろう。何しろ手話、あるいはいつかのように携帯電話などの文字で会話するしかないのだから。だから彼女は、この図書館の職員に声を掛けられても、一切返事をしなかったのだ。もしかしたら職員に話し掛けられていたことにすら、気づいていなかったのかもしれない。
『よく考えたらわたしたちって、お互いの名前知りませんでしたよね』『そう言えばそうだね』『名前、教えてもらってもいいですか?』『いいよ。名前は佐藤光宙』『あの、すみません。光宙ってなんて読むんですか?』『ピカチュウ』『ピカチュウって、あの黄色いピカチュウ?』『そう、その黄色いピカチュウ』『   』『  い 』『   』『 ご  』『   』『本当にすみませんでした。ごめんなさい。もう叩かないでください』『次やったら本気で怒りますよ』『本当は佐藤統弥』『……それって、とうや、って読むんですか?』『そうだよ。君は?』『南野言葉』『ことば、っていうの?』『そうですよ。言葉って書いて、そのままことば』『変わった名前だね』『ピカチュウなんて名前の人に言われたくありません(笑)』
『でも、少しこの名前、コンプレックスなんですよ』
『なぜ、って。言葉を喋れないのに、名前は言葉。そんなの、おかしいじゃないですか(笑)』
 彼女は喋れないのではなく、耳が聞こえなかった。
 産まれた時から、彼女はこの世界が発する音から離れた世界で過ごして来ていた。それはたぶん、自分にはまったく想像出来ない世界のことで、そして考えたとしても、そこにどんな想いがあるのかなんて、まったく判らない。そう。それは本人にしか判らないこと。そのことに対して、何も知らない健全者である自分が客観的に「寂しい」だとか「辛い」だとか、そういうことは言ってはいけないのだと、知っていた。
 なぜなら、

 なぜならあの時、『彼女』は――、

     ◎

 昔から、感情をあまり表に出さなかった。
 嬉しいことがあっても、楽しいことがあっても、辛いことがあっても、嫌なことがあっても、それを表に出して、表情を変えることを、昔からあまりしなかった。ただ、内面的にはもちろん嬉しければ嬉しいし、楽しければ楽しいし、辛ければ落ち込みもするし、嫌であれば腹を立てることもあった。だけどそれを表情として表に出すことが、小さな頃からどうしてか苦手で、よく人に「無表情」や「ポーカーフェイス」だと言われた。
 そんな自分が唯一、表情を素直に変えられる人が居た。
 大学生の頃に、その子と出会った。
 大学の入学式の日。偶然にも肩がぶつかってしまったことが切っ掛け。
 その子はひとつ年上の女の子で、勝気で、男勝りで、喧嘩をすれば口よりも先に手と足が出るような性格をしていたけれど、でも綺麗な花や可愛いぬいぐるみを眺めてニコニコするような一面も持ち合わせていた。彼女の前でだけは、どうしてか自分は、感情をありのまま、表情として表に出すことが出来た。
 嬉しいことが合ったら一緒に分かち合い、楽しいことがあったら一緒に笑い、辛いことがあれば一緒に泣き、嫌なことがあれば一緒に怒った。
 自分が今まで生きて来た中で、初めて喧嘩をした相手は、その子だった。その子以外と喧嘩をしたことは、一度もない。そしてこれからもきっと、その子以外と喧嘩をすることなんて、無いのだと思う。
 彼女とはよく喧嘩をした。口論もしたし、グーでの殴り合いもしょっちゅうだった。ただ、口論であればともかくとして、喧嘩をすれば口よりも先に手と足が出るその子に、自分はいつもこてんぱんにされていた。たまに苦し紛れの一発が彼女に入った時は、その百倍以上の仕打ちを余儀無くされた。それでも。一度も彼女に喧嘩で勝ったことなんてなかったけど。それでも自分は、よく彼女と喧嘩をした。白状すると、いっつも負けていたけれど、彼女と喧嘩をするのは、――楽しかった。それはきっと、喧嘩をした次の日、どっちが悪かろうが、必ず彼女が歩み寄ってきて、本当に申し訳なさそうに、「……ごめんなさい」と謝ってくれていたからだろう。

 僕は、彼女が好きだった。
 彼女と過ごした日々が、僕の人生のすべてだった。
 素直にそう思えて、そう言えるほど、僕は、彼女が好きだった。
 だから、僕はあの日――




 【あらすじ】
 
 昔、大切な人を病気で失った「僕」。
 現実逃避で通い始めた図書館。
 そこで出会った一人の「言葉を知らない少女」。
 
 二人はやがて――
 
 
 まぁよくある恋愛ものである。
 確かちょうどこの時に少女マンガ読んでて「おし、何かそれっぽいの書くか」とか思って書き始めて、
 ここで力尽きた。あらすじもクソもない。もう煮ても焼いても神夜では食えなくなった物語。
 


タイトル123:『悠久輪廻』
記事No: 1068 [関連記事]
投稿日: 2014/05/16(Fri) 22:01
投稿者神夜






 太陽の光。雨の匂い。月の灯り。星の瞬き。
 世界の、音。
 嗚呼。世界は何と美しいのか。
 この美しい世界が、どうか。どうか、永遠の刻の果てまで、続きますように。

 ――久遠。

 暁様が私の名を呼ぶ。
 世界の最果てで、暁様はただ、私の傍に居てくれる。
 繋いだ手の温もり。通じ合った心の心地良さ。
 暁様の、声。
 嗚呼。この時が、どうか。どうか永遠の刻の果てまで、続きますように。

 ――久遠。どうか。どうか君が、幸せでいられますように。

 暁様。暁様がどうか。どうか幸せで、いられますように。

 世界は、言った。
 贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄を捧げよ。贄 を 捧 げ よ。

 例えもう二度と会えないとしても。
 例え繋いだ手が引き裂かれても。
 それでもただ、通じ合った心がここに在れば。
 それでもただ、貴方を想うことが許されるのなら。
 それだけで、久遠は幸せです。最果てのここで、貴方を想えるのなら、それだけで――

 ――久遠。助けに来たよ。私と共にここを出よう。

 嗚呼。世界は何と美しく。
 嗚呼。貴方は何と優しく。

 引き裂かれた手は、再びに繋がり合い、

 世界は、言った。
 裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏 切 り 者。

 死んでしまった世界の最果てで。
 引き千切られた四肢を抱き、吊るされた身体に血の涙を流す。

 世界は何と美しく。
 世界は何と優しく。
 そして世界は何と、――残酷か。
 貴方の居ない世界ならば。貴方を想うことも許されない世界ならば。

 そう。世界なんて、

 ――……滅んで、しまえ。



     「悠久輪廻」



 連日に渡って過去最高気温の更新を大安売りで行う猛暑の被害は、我がオカルト研究部においても甚大であった。
 室内温度はついに四十度を超え、扇風機までもが煙を吹いて天寿を全うされた。クーラーなんていう偉大なる文明の利器は、全国優勝を視野に入れるほど強いバスケットボール部とサッカー部、そして吹奏楽部にだけ与えられた特権であって、ウチのようなどうでもいいクラブ活動については、「扇風機でも十分過ぎるくらいだ。経費削減の昨今、それでも仕方が無く与えてやっとるのだ。大事に、大事に使え。特にお前ら、あー……おか? ああ、そうだ、お化け部。お前らなんてこれで十分だ」とハゲデブ教頭に鼻で笑われた挙句、もう十年も前の型落ちもいいところの扇風機を譲渡された。
 そしてその鼻で笑われた扇風機でさえ天寿を全うした部室内は、もはや炎熱地獄そのもので、干乾びて死ぬのも時間の問題かもしれない。
「……ねっちゅーしょーで倒れたらー……、がっこーのたいまんだってー……うったえてやるー……」
 パイプ椅子に座り込み、長机に身体全体を預けるように突っ伏している那奈(なな)は先ほどからずっとまるでゾンビのようにそう呟き続けている。その主張も最もだから判るのだが、うだうだ言われるのはそれ以上にうるさくて暑苦しいからやめて欲しい。が、那奈に対して文句を言う気力もほとほと尽き果てていて、自分自身も今にも倒れそうである。
「がっこーのー……、たいまんをー……ゆるすなー……、えいー……えいー……おーぉぉ……」
 力無く挙げられた腕がくいくいと動くが、やがてパタリと机に倒れ込んで沈黙する。
 その光景を見つめながら、つい数分前に買って来たばかりの缶ジュースに手を伸ばす。中身に口をつけた瞬間、もう随分と温くなってしまったことに肩を落としながら、それでも無いよりかは幾分かマシであろう、と自分自身を納得させてちびちびと飲んだ。気持ち悪いくらいの中途半端な喉越しを感じながら、温くなってしまった炭酸ジュースほど味気ないものはないと途方に暮れる。
 開け放たれた窓の外からは、盛大な蝉の鳴き声が聞こえていた。
 部室のドアが開けられたのは、そんな時だった。
「やっほー、ごめんごめん、遅れ、って、あっつ!? なにこの部屋!? 暑い暑い! なにこれ!?」
 部室に一歩入った瞬間にすぐさま後退し、こちらを信じられない目で見つめる女子生徒は、オカルト研究部の幽霊部員、優衣(ゆい)である。ただ、幽霊と言う言い方は少し間違っているかもしれない。優衣は那奈の友達で、オカルト研究部を設立する際に人数集めとして無理矢理名前だけ書いて貰ったのである。だからその条件として、「好きな時に来て好きなことをしててもいい」という特待部員なのだ。ちなみに普段はバスケットボール部で、おまけにそこのエースで、本当にこの学校の特待生でもある。
 ポニーテールにした長い髪を左右に振り、優衣は理解不能とでも言いた気に、
「ちょっと何よこの暑さ。あんたら死にたいの?」
 死にたい訳ないだろ、と反論するだけの力さえ湧き上がって来ない。
 まるで死んだ人間の気分を味わいながら部室の外にいる優衣を見つめていると、大きなため息を吐き出しながら、その炎熱地獄へ足を踏み出しつつ、
「ほらもう、那奈が死にかけてる。こんなところで死なせるために、那奈をオバ研に入れたんじゃないんだからね」
 オカルト研究部、お化け研究部、略して『オバ研』。生徒にはもっぱらそう呼ばれている。
 汚染された室内へ入り込む救急隊員の如く慎重に部室に入り込み、優衣が徐々に那奈へ近づいて行く。ようやっと見つけた生存者よろしく、優衣が那奈の肩を掴んで揺さぶり、
「起きなさい那奈、ここにこのままいたらアイツみたいに脳味噌が溶けて馬鹿になって死ぬわよ」
 誰の脳味噌が溶けてんだ、と反論するだけの力さえ湧き上がって来ない。
 揺さぶられた那奈が僅かに視線を上げ、その虚ろな視線が優衣を捉える。捉えた瞬間、その口元がにへらっと緩んだ。
「天使の優衣ちゃんだー……、お迎えに来てくれたんだねー……、いいよー……わたしはもー……疲れたよー……」
「え、ちょ!? ちょっと那奈!? まっ、待ってっ、待っ、きゃあっ」
 いきなり立ち上がった那奈に抱きつかれ、優衣がバランスを崩してその場に倒れ込んで行く。
 埃っぽい床に女子高生二人が転がる。おまけに転がっている二人は、かの有名な杉原優衣と佐々木那奈だ。この光景を写真に収めてオークションに掛ければ、たぶん軽く万は越す。下着なんてものが見えているようなブツであれば、下手をすれば数十万でも出す奴もいるかもしれない。
 それくらい、校内でのこの二人の人気は凄まじかった。
 杉原優衣はバスケットボール名門高の特待生でエース、おまけに顔も体系もグラビアモデルみたいなもので、男女問わず人気者で、そしてその人気はこの高校のみに留まらず、他校にファンクラブまである始末だ。一体どこの漫画のヒロインなのかと、常日頃から思っている。
 しかし佐々木那奈もそれに通ずるものがあった。合法ロリなんて言葉はこいつのためにあるのだとすら思う。童顔から魅せる笑顔は人を魅了し、人懐っこい性格はそれをさらに際立たせる。お姉さんに憧れる人は優衣に、妹に憧れる人は那奈に、という見事な役割分担を担う二人は、小学校の頃からの幼馴染であると言う。元は那奈もバスケットボール部で優衣とコンビを組んでチームの柱だったらしいのだが、いろいろあって今はこのオカルト研究部のみに在籍している。
 そしてそんな二人がくんずほぐれずで絡み合っているこの構図は、実は物凄くエロくて、その筋に流せばきっと高値で取引されるに決まっていた。よくよく考えてみると、ここで写真を撮って売り払えば、もしかしたらこの部室に扇風機なんてちんけなものじゃなく、クーラーを設置出来るのではないかと半ば本気で思い、携帯電話に手を掛けた瞬間、しかしその事実がバレた場合、優衣に殺されるかもしれない危険が伴うことを思い出して何とか思い留まる。
 那奈に抱きつかれた優衣がじたばたと暴れて抵抗するが、暴れれば暴れるほど、那奈がその身体にさらに纏わりついて「にへへ」とだらしない顔を浮かべながら笑い続ける。その笑顔がちょっと怖くなってきた。那奈はこの暑さでついに壊れてしまったのではないか、と不安になった頃、優衣の我慢の境界線が突破され、「暑いって言ってるでしょ!?」という叫びと共に、拳が振り下ろされてしまった。
 その結果、部室の壁と棚の間に体育座りで挟まって、叩かれた頭を抑えながら那奈はしくしくと泣いてる。
 そんな光景を視界の隅に入れながらも、先ほどまで那奈が座っていた椅子に座り込んだ優衣に視線を移す。じゃれ合ったせいか、かなりの汗をかいていた。ユニフォーム姿で汗を流す優衣は何度か見たことがあるのだが、制服姿で汗を流す姿は、もしかすると初めて見たかもしれない。汗で透けたカッターシャツに、ピンク色の何かが見える。これも写真に撮れば実は高値で――、なんて考えていたことを見透かしたように、優衣がこちらをキッと睨みつけ、
「――どうすんのよ。那奈が泣いちゃったじゃない」
 僅かに動揺しつつ、
「いや知らねえよ。お前が泣かしたんだろ」
「元はと言えばあんたのせいでしょ。こんなあっつい所に那奈を閉じ込めて。もし那奈が死んだら、あたしがあんたを殺すわよ」
 そこまで大事に思っているくせに、遠慮無く那奈の頭に拳を振り落とすのはどうなのだろう。
 何度目かのため息を吐き出していると、優衣が床に転がっていた団扇を手に取って仰ぎながら、
「ていうか暑過ぎでしょこの部屋。なんで扇風機もかけてないの?」
 胸元を開けて団扇で扇ぐ優衣。風に煽られたカッターシャツの隙間から、豊満な谷間が見え隠れしている。心底思う。写真に撮って売り捌きたかった。それが捌けさえすれば、こんな馬鹿なことをしなくても済むのに。
「見て判るだろ。扇風機はこれだよ」
 目の前に広げられた部品の数々。羽があるおかげで、その残骸が扇風機だというのが判る。
 煙を噴いて天寿を全うされた扇風機である。それは今、目の前で跡形も無く分解されている。
 優衣が意外そうに身を乗り出しつつ、
「へえ。あんた、機械にも詳しいんだ。凄いじゃん」
「馬鹿言え。ドライバーなんて触ったの、小学校の工作以来だ」
「え。じゃあそれ何してるの? 直してるんじゃないの?」
「直そうとしていた、というのが正しい。もうどこかどうなっているのか、おれでも判らん」
「ダメじゃん」
 そう。ダメだった。何とかならないかと思って分解してみたが、何ともならなかった。ゴミが増えただけだった。
 優衣に言われてようやく諦めがつく。ドライバーをその場に投げ出して、椅子に深く腰掛けた。そんな中で、優衣が持っていた団扇でこちらに風を送ってくれた。学校のアイドルに団扇で扇いで貰えるなんて、これは有料サービスにしたらいい儲けになるのではないか。そして優衣は、時折こうした気遣いを誰彼構わず自然とやってしまう。そこが誰からも好かれる所以であるのだろう。それ自体は有り難い、有り難いのだが。飛んでくる風が暑過ぎて、もはやそれは嫌がらせに近かった。身を乗り出し気味だった優衣の胸元は、まだ広げられたままだった。
 ダメ元で言ってみる。
「なぁ」
「なんだい。って、この部屋四十一度あるじゃん!? うそ!? この温度計壊れてない!?」
「なぁってば」
「だからなんだい」
「写真撮っていいか」
「写真って、なんでまた」
「いや、その写真がクーラーになるかもしれないんだ」
「? どういう意味?」
 その問いに、言葉ではなく視線で答える。
 こちらの視線を追って、優衣が自らの視線を下げ、広がったままの胸元に落ちる。
 優衣の笑顔が返って来た。こちらも笑顔を返した。
 こっちはちっとも悪くないのに、思いっきりグーで殴り飛ばされた。

「……何やってんの、お前ら」
 オカルト研究部の最後の一人である高山智久(たかやまともひさ)が部室に訪れた時の第一声がそれだった。
 そう言われるのも無理はないだろう。炎熱地獄並に暑い部室の中で、優衣はご立腹で破壊した団扇をさらに粉々に粉砕しており、那奈は未だに体育座りでしくしく泣いていて、こちらは両の鼻の穴にティッシュを詰め込んで扇風機の処分作業を進めていた。端から見ても和気藹々とした雰囲気ではなく、異常な光景だというのは一目瞭然であったことであろう。
 高山の台詞に誰も答えないでいると、「まぁいいや」という小さな呟きの後、両手で持っていたそれを掲げた。
「ほれ。ウチの要らない扇風機持って来たぞ」
 その台詞に一番早く反応したのは那奈だった。先ほどまでベソをかいていたくせに、いきなりパァっと明るい顔になって隅っこから飛び出していく。そのまま高山の前まで来ると、まるで子犬のように「扇風機つけよう扇風機!」と連呼する。小さなお尻をふりふりするその後姿を見ていると、尻尾でも生えているのではないかと思う。
「まぁ待て、慌てるなナースケ」
 高山は何故か那奈のことをナースケと呼ぶ。最初は「那奈介」と呼んでいたものが訛ったのだと推測される。
 せっせと扇風機を運んで行く高山の後ろにぴったりとつく那奈。その二人を視線だけで追う自分と優衣。
 やがてコンセントまで辿り着いた二人が意気揚々と扇風機にプラグを刺し込み、自信満々にスイッチをONにした。羽の前に待機していた那奈が風が送られて来るのをわくわくと夢見ていたその瞬間、何の前触れも無く、ギャンッ!、という鈍い音と共に扇風機が飛び上がった。尻尾を踏まれた犬のような声を上げて那奈が引っ繰り返り、それとほぼ同時に扇風機から煙が上がった。
 たちまちに立ち込める焦げ臭い匂いに優衣が溜まらずに声を上げる、
「ちょっと! どうなってるのよ!」
 高山が大慌てで扇風機のスイッチを切りながら、
「うっそ、壊れたのこれ。おれ扇風機が煙噴くとか冗談だと思ってたんだけど」
「そう思ってた時期がおれにもあったよ。しかし二台目まで壊れるとはさすがに思わなかった」
 しかし、二台も連続して壊れるなんてことがあるのだろうか。
 これは扇風機が悪いとかじゃなくて、もしかしてコンセントの方に原因があるのではないだろうか。内部的に短絡しているとか、そういう原因のような気がしてきた。そうじゃなければいきなり扇風機が煙を噴くとか、普通は有り得ないと思う。だったらもう下手なことはせずに、誰か教師に言って調査して貰うべきであろう。こっちはこれっぽっちも悪くないのに、どうせまた教頭に嫌味を言われることになる。面倒なことばっかり起こるものである。
 そう言えば、と思い出して姿を捜してみると、先ほど引っ繰り返っていた那奈はもうそこには居なくて、さっきまでと同じように、隅っこに縮こまったまま放心していた。どうやら思いの他にショックだったようだ。もうしばらくは立ち直れないかもしれない。最後の希望まで絶たれたのはもはや事実であり、この状況を打破する術はもう無い。
「しかし暑いなここ。なんだこれ、蒸し風呂かよ」
 あちーあちーと言いながら高山が制服をはだけさせてバタバタする。男の裸なんて写真に撮っても金にならないのが惜しい。
 鼻に詰めたティッシュを抜き出してみる。先の方に少しだけ血がついているが、どうやら鼻血は止まったらしい。よかった。ティッシュを丸めてゴミ箱へ投げ捨てながら、ふと視線を移した壁掛け時計の針を見て、ため息を吐く。今日だけで何回目のため息かももう判らない。
「――そろそろ夕方だな。帰るか」



 【あらすじ】
 
 何だかんだで、和気藹々と過ごすオカルト研究部の面々。
 そんな折、たまには部活動らしいことをしよう、ということで、
 近頃話題となっていた心霊スポットへの肝試しを決行することになった。
 しかしその日、そこで奇妙な出来事に遭う。
 その日から、メンバーの様子が変わった。
 性格が変わったかのようなメンバーと違和感を残しながらも過ごしていたその日、
 肝試しから三日後のその日、主人公を残した全員が死亡する。
 絶望の中で夜を迎えたその時、気づけば時刻は、三日前のあの日に遡っていた。
 そしてまた、その三日後にメンバーは全員死亡し、時が遡る。
 唐突な事故、不自然な自殺。繰り返す度に死亡原因は変わるが、主にこの二つがメンバーに死を運んだ。
 何度目かは判らない繰り返しの中、ついに主人公はこの原因に気づき、
 この退行と、メンバーの運命を変えるために動き出す。
 
 
 とりあえず、純和風ホラーで、グロい何かを書きたくて始めた物語。
 冒頭のあれは、昔にあったある村の風習で、数年に一人、贄を捧げることで安泰な生活が手に入ると信じられていた。
 そんな時に起こったひとつの事件。贄を阻止しようとした若者が、村人に殺された。
 それを切っ掛けに始まった、贄による復讐。皆殺しにされた村人。
 
 そんなのがまぁ、よくある呪いとか怨念とかそんなのになって、
 それに触発されたメンバーの気が狂って次々死んで行く。
 それを止めようとあがき続けて、最終的に贄の怨霊なり何なりとどうにかこうにかして、
 皆助かる、たぶんハッピーエンドな物語。
 中間を如何にエグくグロく書くのかを突き詰めよう、と思って書き始めたけど、
 どう考えてもかなりの長編になることが判明して力尽きた物語。
 大昔に神夜が書いた『KILL YOU』のもっとちゃんとした版みたいな。


タイトルこれは面白そうだ
記事No: 1069 [関連記事]
投稿日: 2014/05/17(Sat) 10:47
投稿者天野橋立

いただいた感想のほうを読んで、見に来ました。
これは面白そう。掲示板でここまでやって大丈夫なのかな?ってのがちょっと気になるんだけど、大丈夫そうなら僕も何か置いてみたいな。未完成フォルダに、色々力尽きた残骸がありますしね。


タイトルRe: これは面白そうだ
記事No: 1071 [関連記事]
投稿日: 2014/05/19(Mon) 15:34
投稿者神夜

そう思うのなら便乗はよ!
ぐちゃぐちゃに掻き回す例題なら天野さんはいい実験台だ


タイトルRe: 1:『かぶきものがゆく』
記事No: 1078 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 21:05
投稿者神夜

どうも、魔王です。スライムを微塵切りにしに来ました。

さて。電撃コミック大賞の原作部門か。普通の電撃大賞に送ったことが、神夜にもあったなあ。一回だけ送ってやめてしまったけれども。ただ今でも夢は電撃で本出して、秋山さんにサイン貰うことなんだけど。
話がズレてしまった。しかし電撃コミック大賞の原作部門、というのが神夜にはよく判らない。これを視野に入れた場合、投稿するのは「あくまで小説」なのだろうか? それともネーム的な何かになるのかな? 後者であれば自分は正直何も言えない。前者であれば、指摘はいっぱいある。
字下げ云々なんていうのはまあここでは置いておいて、小説として見るのなら書き込みが圧倒的に足りない。容量に対して人物が多過ぎる。誰が誰だか判らない。状況的にトントン拍子で終わってしまって結局「何がどうなったんだ」と思っている内に完結してた。
これが「漫画の原作」で、最終的に「漫画として絵がついて動く」のであれば、問題ないのでしょうが、小説として体を成すのなら、人物描写、心情描写、背景描写が不可欠で、そこがまったく足りていない。……申し訳ないことに、普段の木の葉のぶさんの書き方を知らないため、「いつもはこうじゃねえんだよ、原作部門だからこう書いてんだ」と言うのならすんませんすんません。
物語としては良くも悪くも少年漫画の読み切り風。ジャンプとかにありそう。ただ、『突き抜けた何か』がなければ、平々凡々で埋もれてしまう。何でも良いと思う。昨今で言えばブヒブヒ言えるだけの萌えキャラでもいいし、少年誌ギリギリのエロ関係でもいい。ちゃんとしたものでいくのなら「引き込まれるストーリー」であったり、最後に散りばめられた複線を一気にひっくり返すラストであったり、文章からでもありあり伝わる躍動感と迫力であったり。
何か突き抜けたモノを目指して、それを磨けば物語が格段に良くなると思う。
しかし何を偉そうに言ってんだ自分は。これだから「他人に厳しく自分に甘く」の神夜はクズなんだ。

1で「とりあえず感想くれ」のはずなのに、ものすごい批判みたいになって申し訳ないです。煽っておいて落とすとかゴミ屑ですんません。でも神夜なんてこんなもんだテヘペロ。

便乗してくださりありがとうございました。
物語としての意見が言えずにすみません。神夜は王道しか考えられへんのや。


タイトルRe: 1:『かぶきものがゆく』
記事No: 1080 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 21:58
投稿者木の葉のぶ

こんばんは、スライムです。微塵切りにされました。もう原型をとどめてません。

> しかし電撃コミック大賞の原作部門、というのが神夜にはよく判らない。これを視野に入れた場合、投稿するのは「あくまで小説」なのだろうか? それともネーム的な何かになるのかな? 
これが私にもよくわからないのです。サイトには「小説」とは一言も書いておらず、「漫画を想定したテキスト」みたいに書いてあったので……どういうふうに書けばいいのかまったくわからないまま、「まあ漫画だし絵がつくんだし描写とかそんなにいらないのでは」などと考えてなんとなくのノリで書いてしまったのがこれです。ただ、小説として見ないにしろ、
> 容量に対して人物が多過ぎる。誰が誰だか判らない。状況的にトントン拍子で終わってしまって結局「何がどうなったんだ」と思っている内に完結してた。
これはごもっともです。自分でも何が何だかよくわかっていません。詰め込むだけ詰め込んであとはなんとかなるだろうと思っていましたが全然なんとかなりませんでした。
> 申し訳ないことに、普段の木の葉のぶさんの書き方を知らないため、「いつもはこうじゃねえんだよ、原作部門だからこう書いてんだ」と言うのならすんませんすんません。
普段は、「ちょっといい話」みたいなほわっとしたものを書いている……いや最近あんまり書いてません……バトルものとか書いたことないのにいきなりぶっとんだことをしてしまいました。まあ、いつもとは違う感じで書いたので、「原作部門だからこう書いた」という言い訳もできるのですが、それでもやっぱり自分の力量不足としか言いようがないですね。
> 何か突き抜けたモノを目指して、それを磨けば物語が格段に良くなると思う。
突き抜けたもの、ですか……どうやってそれを見出して磨けばよいのでしょうか……「「引き込まれるストーリー」であったり、最後に散りばめられた複線を一気にひっくり返すラストであったり、文章からでもありあり伝わる躍動感と迫力であったり」は、一体どこからやってくるんでしょうか。

貴重なご意見ありがとうございました。精進します。


タイトルRe: 1:『かぶきものがゆく』
記事No: 1085 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 23:10
投稿者神夜


> > 何か突き抜けたモノを目指して、それを磨けば物語が格段に良くなると思う。
> 突き抜けたもの、ですか……どうやってそれを見出して磨けばよいのでしょうか……「「引き込まれるストーリー」であったり、最後に散りばめられた複線を一気にひっくり返すラストであったり、文章からでもありあり伝わる躍動感と迫力であったり」は、一体どこからやってくるんでしょうか。

そんなもの魔王様が知る訳ないだろう!
いや半分冗談だけど。これは結局、木の葉のぶさんが「何をしたいか」「どうしたいか」だけの話だと思います。
自分は理論的に物事を喋ることを得意としないから感覚の話になりますが、例えば、「小説を書く上での定義」を決める。

■別に誰に見せる訳でもないから、好きなように書くぞ
 →好きにすりゃいい。萌えキャラでもエロでも、自分がニヤニヤできるもん書けばそれでいい。
 
■誰かに読んで貰った時に、楽しんで貰いたい
 →じゃあ楽しんで貰うにはどうすればいいかを考える。
  1.ストーリーで楽しんで貰う
  2.最後のどんでん返しで驚きを与えて楽しんで貰う
  3.躍動感と迫力で楽しんで貰う
  
  こんな感じに考えたら、そこから自分に合うもの、あるいは突き詰めたいものを探す。
  1とか2ならいろんな作品を読むしかない。ジャンル問わず、ラノベとかのみとかじゃなくて、本当にいろんなものを読まないと手に入らないと思う。ソースは神夜。ラノベしか読んでなかった神夜では、1・2は手に入らなかった。だから今でも王道の物語しか書けない。そこで言うと、知ってるかどうか判りませんが、カフェオレ、じゃなかった、コーヒーCUPさんの「CUBE」はよくできてると思う。クソ長いけど。あの野郎たぶん、神夜が引くくらい推理小説やら何やら読んでると思う。だから、そういうので楽しんで貰おうと思うのであれば、知識を集めて、繰り返し繰り返し作って煮詰めるしかない。
  
  で、1・2で楽しませる力が無い神夜が辿り着いた結論が3、というか、描写力だった。まあ、秋山瑞人さんを目標にしている分、あの人の模倣なんだけど。それを突き詰めて突き詰めて、今の神夜がある。ただ今の描写が完成型かと言われれば、首を振りますが。ここも結局、どこまで書き続けるかだけの話だと思います。
  自分もここに初めて投稿したのは確か中学三年生くらいの頃だった。そこから神夜が書いた作品は、たぶん全部ここにある。今に当時のヤツを読み返すと、「よくもまあこんなもんを嬉々として投稿したもんだ」と思ってしまう訳ですが、さすがに十年も描写のみに拘り続けていたら、自分でもびっくりするくらい成長してたりする訳で。その結果として、魔王と呼ばれたりする訳で。

まずは木の葉のぶさんが、「どうしたいのか」を決めるのが先決かと。
というより素朴な質問で、木の葉のぶさんは何で小説書いているのだろう?

神夜? 神夜はほら。妄想の中でくらい、ニーソ穿いた美少女に踏まれたいから書いてるんだよ。案外マジで。
あとは、自分の妄想を、人に知って楽しんで貰いたいから、だろうか。


タイトルRe: 1:『かぶきものがゆく』
記事No: 1090 [関連記事]
投稿日: 2014/05/29(Thu) 16:03
投稿者木の葉のぶ

今日、先日ここに投稿させていただいたものを、印刷して封筒に入れて郵便局に出してきてしまいました。箸にも棒にもひっかからないことはわかっているのですが、もったいない気がするので一応。
応募期間中はWebサイトへの掲載を取りやめるようにと書いてあったので、とりあえず投稿したものは一旦下げさせていただきました。

> まずは木の葉のぶさんが、「どうしたいのか」を決めるのが先決かと。

これをずっと考えていたらこんなに日にちが経ってしまいました。
たぶん、「楽しいから」こういうことしてるんだと思います。ほかにも色々と理由はあるのですが、全部を要約するとこの一言に尽きる、ような気がします。

本家の掲示板の方にもそのうち作品を投稿できるよう頑張りたいです。


タイトル123:『怪獣輪舞曲』
記事No: 1073 [関連記事]
投稿日: 2014/05/19(Mon) 20:48
投稿者天野橋立

 総理大臣執務室は穏やかな白い光に満たされて、平和な夏の午後に時が止まったようだった。しかし、総理の顔はちっとも平和ではない。 今すぐ総辞職したい、とでも言いたげな苦悩を浮かべている。でっぷり太った巨体も、溶けて流れ出しそうだ。
 なんでわしが大臣の時に、と大曽根総理は思う。よりによってこんなけったいな事件に出くわすのだ。怪獣が暴れているだと? 一体それはなんなのだ。確かにわしは強引なことも随分やってきた。恨んでるやつは多いことだろう。しかし、怪獣の恨みを買う覚えはないぞ。自衛隊を強化はしたが、あれはシーレーン防衛のためで、別に怪獣を退治するためじゃない。そう思ってるんだとしたら、それは勘違いだというものだよ、君。
 そう、怪獣が出現したのである。フィルムの中にでも、液晶画面の上にでもなく、現実世界に現れたのである。出現地点は京都市中京区四条河原町西入、ちょうど高島屋京都店の正面辺りであった。出現時刻は7月13日の午後1時頃、つまりは祇園祭山鉾巡行のまっただ中に、突如出現したのである。その日の人出は京都府警によれば約四十万人、たちまちのうちに数千人の死者が出ることになった。
 総理はゆっくりとかぶりを振った。二回振り、三回振った。何度振っても彼の脳裏から怪獣の異様な姿は消えはしなかったが、しかしそれでもぶんぶん振り続けた。考えまい、考えても仕方が無い。なにか違うことを考えよう、楽しいことを思い出そう。彼は救いを求めるように執務室の中を見回した。そうだ、この執務机は卓球台くらいの大きさがあるぞ。真ん中にネットを立てて、試合をすればどうだろう。ほうらほらほら見えてきた。机の両側で弁髪の子供がラケットを振り回してるぞ。「やあっ! とおっ!」行き交うピンポン玉。かん、こん、かん、
「総理、怪獣対策委の第一回報告が」木村官房長官がドアを開けて入ってきた。やせて背が高く、ロマンス・グレーがすてきな「少女漫画のおじさん」的知性派である。
 総理はうすら笑いを浮かべ、踏切の警報機みたいにリズミカルに目玉を左右に動かしている。いかん、壊れとる。官房長官はあわててそばに駆け寄り、肩をつかんで揺さぶる。「総理、総理。お気を確かに」
「そうとも、吉本君」目玉をふらつかせながら、総理は重々しくうなずく。「見たまえ、この子供たちの華麗なラケットさばきを。風のように! 鳥のように! まるで踊っているみたいじゃないかね!」
「総理、頼むからここで壊れないで下さいよお」官房長官は泣き声になる。「せっかく総選挙に勝ったのに、怪獣のせいで失脚なんて洒落になんないですよ」
「懐柔? それならわしの得意技だぞ。たとえどんな相手でもこの笑顔で丸め込んでみせるぞ」うすら笑いを浮かべる。
「怪獣でもですか?」
「怪獣を懐柔。わはははは、面白いぞ」急に真顔になった。「全然、面白くない」
 今だ、と木村長官は総理を連れ戻しにかかる。「そうです、面白くありません。怪獣でそれはもう大変なのです」
「そうだ、大変なんだった」総理はまだ痙攣気味の目玉を木村長官に向けた。「世界が揺れとる」
「全部怪獣のせいです」
「そうか。なんとかしなきゃなあ、木村君」
「そうですとも」長官はうなずいて、「で、怪獣対策委員会の第一回報告が出ました」
「何か有効な対策でも見つかったかね」
「いや、それはまだです。とりあえず、」書類に目を落とした。「怪獣の名前が決まりました」
「名前?」
「は。やっぱり名前が無いと呼びにくいだろうと言うことで。決まった名前は、「アシデナギナタ」だそうです」
「それ、だけか」
「それだけですな」
 総理の目線がまた左右をさまよい始めた。木村はあわてて、「待った、それ駄目です」と肩を揺さぶる。

 怪獣出現のニュースを、もちろん最初は誰も信じはしなかった。怪獣の姿を今まさに撮影しているカメラマンさえ、その存在を信じることはできなかった。そんな馬鹿なことがあるはずはないのである。しかしあるはずがないにもかかわらず、それは現実であった。彼は踏み潰される瞬間、やっとそれを理解した。
 全員が半信半疑のまま、行政システムはマニュアルに従って勝手に動いて行った。もちろん怪獣出現などというケースは想定されていないが、死者が出て、ビルが崩れ、大災害が発生しているのは確かである。とにかくこういう場合は対策委員会を作れと言うことで、政府に「怪獣対策委員会」が創設されることになった。
 委員会のメンバーはそうそうたるものである。防衛庁長官、警察庁長官、公安調査庁長官、消防庁長官、海上保安庁長官、気象庁長官、文化庁長官と長官揃い踏みである。治安維持のトップばかりであり、この場を襲撃されたら日本の明日は暗黒であろう。あとなぜだか知らないが社会保険庁長官が加わっていて、左右の長官たちに「なぜ私が呼ばれたんでしょう」と聞いて回っている。長官連の他には京都府警本部長他被災自治体の代表者と動物学者を始め学識経験者が加わっていた。しかし彼らの誰一人として、一体何が起こっているのか、正確に理解している者はいなかった。
 全員が円卓に着くと、進行役の警察庁長官の合図で部屋の照明が落ち、スクリーンが降りてきた。映し出されたのは、祇園祭宵山の風景である。大通りを進みゆくいくつもの山鉾、沿道は気の狂ったような大変な人出でにぎわっている。打ち鳴らされる鐘の音でコンチキコンチキやかましいことこの上ない。
「やっぱり京都はいいですなあ」と海上保安庁長官がうなずく。「何と雅な」
「どうぞ、一度おいで下さい」京都府警本部長がにこやかに答える。「私も京都、大分覚えてきましてね。ご案内しますよ。先斗町に、私のとっておきの、いい店があるんですよ」
「お、いいですな。しかし、京都は港が遠いですからなあ。巡視艇で行くとなると少々不便ですな」
「哨戒機で琵琶湖に着水していただければ、あとは浜大津から京阪電車ですぐですよ」
「なるほど、それでは来月辺りお願いしましょうか」
 突然スピーカーが悲鳴を上げた。何か異変が起きたようだ。群衆が混乱を起こしている。カメラがぐっとズームする。大写しになったのは長刀鉾だが、なんだか変である。群衆を蹴散らしてうろうろ動き回ってるみたいだ。
「おい、足が生えとるぞ」警察庁長官がそう叫んでスクリーンを指差した。
「歩いてますな」国家公安委員長が呟く。
 確かに総監の言う通り、長刀鉾の車輪の下から二本の足がにょきっと生えていた。足だけじゃない、腕も生えている。屋根の上には首も突き出している。古代の恐竜、というか例の有名映画の主人公にそっくりの顔をしていて、しかし心なしかにやにや笑っているようだ。怪獣が鉾を甲冑のように着込んで通りをしゃなりしゃなり闊歩している、そんな感じである。
 全員が一斉に動物学者の方を見た。
「ありゃ、なんですか」防衛庁長官が訊ねた。「どういう生き物なんです」
「いやー、分からないんですねえ、それが」むしろタレントとして有名なその動物学者は、にこやかに言った。「これが生命の神秘なんですねえ。もし捕まえたら、私の経営する動物帝国で引き取らせてもらいますよ。帝国の仲間たちと仲良くして欲しいものですねえ」
「いや、あれは文化財ですから。国立博物館が引き取ります」文化庁長官が、真顔で言った。
「しかし、まずいな」警察庁長官が顔をしかめた。「こんなでたらめ怪獣じゃ、まず誰も信じてくれんぞ」
「テレビのバラエティーだとしか思ってもらえんだろうなあ」
「怪獣が出るなら出るで、もっとまともな格好で出てきてもらいたかった」
「監督不行き届きじゃないのかね」
「大体、最近の若者の服装は奇抜過ぎるぞ」
 怪獣は時々ビルに蹴りを加えたりしながら、四条通りを西方向、つまり烏丸通りを目指して楽しげに群衆を踏み潰し、進んでいく。なにせ数十万の人出である、踏む気が無くたって踏みつぶされる。
 大丸京都店の前まで来たところで、怪獣は何を思ったか大丸のゴシック建築に顔を向け、大きく開いた口から火炎を放った。大丸は一瞬にして炎に包まれ、煙を噴き出し始めた。京都では、デパートと言えば高島屋か大丸が有力で、それぞれのファンで市民は二分されているような状況なのだが、恐らくこの怪獣はバラの包み紙がお気に入りだったのだろう。
(つづく、はずだった)

……随分昔に書きかけたギャグ小説です。
あらすじ、というほどのものは考えてないのですが、この後巨大なスーパーヒーローが突然出現し、政府と契約して「怪獣退治専門官」となって怪獣を次々と倒す、という展開になる予定です。この「専門官」はすさまじく金にうるさく、何かというと「もっと金を出さんなら俺は降りる」などと言ってごねまくります。こんなヒーローに振り回されまくる政府のドタバタぶりを中心に書くつもりでした。

神夜さんに「便乗はよ」とかせっつかれたし、最近あんまり書いていないタイプのものなので、試しにここへ上げてみました。これをぐちゃぐちゃに掻き回すのは難しかろう(元がぐちゃぐちゃなので)

なお、もし紅堂さまから、「掲示板の使い方として不適当」とのご指摘がありましたら、すぐに削除する所存です。


タイトルRe: 123:『怪獣輪舞曲』
記事No: 1079 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 21:20
投稿者神夜

おいおい……とんでもねえもん出して来やがったぞコイツ……。
誰だこれ書いてんの、と思いつつ読んでいくと、ああやっぱり天野さんの小説だと思ってしまう訳だけど、でも誰だコイツ。

>「そうとも、吉本君」目玉をふらつかせながら、総理は重々しくうなずく。「見たまえ、この子供たちの華麗なラケットさばきを。風のように! 鳥のように! まるで踊っているみたいじゃないかね!」

天野さんてこういう見せ方好きですよね。「幕の内マンハッタン」とか「ここはどこ」とか思い出した。

>「怪獣を懐柔。わはははは、面白いぞ」急に真顔になった。「全然、面白くない」

そしてここの緩急で、おそらく天野さんの小説で初めて素で笑った。だからこそ言う。これ書いたの誰だよ。
白滝が座席から転げ落ちる所や、わははははと笑い続ける場面を思い出した。

しかしぶっ飛び過ぎてて、本当にこれ以上どうしていいのかが判らんぞ。
これはもともと長編として書くつもりだったのだろうか?
そして、そうであればこのエンディングは一体どこだ?

いっそのこと、少年漫画の読み切り風に、この怪獣を倒したところで一回叩き切って、
気が向いた時に続きを書けるような大凡の一話完結型の方がいいんじゃないだろうか。
だってここまで読んだ限り、この物語の終わりすら見えねえんだもん。

なら五十枚以内くらいでサクサクっと進んで行くのも有じゃなかろうか。

京都の建造物って何があったっけ、まあそれを壊すかどうかの瞬間に巨大ヒーローが参上、
「おおいけやったれやったれ」言う時に、「おいちょっと待て。ギャラはどうなってんだよ」みたいなストップが掛かり、怪獣に「少しタイムだ」とか宣言して怪獣対策委員会に乗り込んで来て、「宇宙から地球の平和を守るためにやってきた。しかし金を出さんなら怪獣と一緒に地球壊すぞコラ」みたいな話があって、何とかかんとかあって金を払い、怪獣を退治しに出掛けて行くが、少しピンチに陥ると、「やばいわー金切れたわーやられるわー地球壊れるわー」とか言ってさらに金を要求したりする。最後は「これからもバンバン怪獣出て来るからジャンジャン金よこせやわはははは」で終わり。
うん。ダメだ。ここまでやってしまうと神夜のクズな主人公になってしまうな。
しかしこれを長編でやるには相当な根気が要りそうなので、一話完結型ギャグ小説、というのは如何か。

そして木の葉のぶさんもそうだが、貴様ら予防線張りよってからに。
大丈夫だ、紅堂さんから怒られたら勝手におっぱじめた神夜の責任だ。自分が本気で謝る。「天野さんに唆されたんや」って本気で謝る。

ただもうひとつの目的として、神夜としては昔の登竜門みたいに賑やかにしたいというのがあったりなかったり。
こういう場所で気軽に何か意見言い合えれば、何か楽しいかなー、と。スライム叩き切ってる神夜が言うことじゃないけど。


タイトルRe: 123:『怪獣輪舞曲』
記事No: 1083 [関連記事]
投稿日: 2014/05/20(Tue) 22:38
投稿者天野橋立

おお、神夜さんのおっしゃるとおり、新しい怪獣ごとに一話完結型の連作みたいな感じで、主人公もそんな感じ(金持ち怪獣が「もっと高い金を出す」とか言い出して、怪獣側に寝返るみたいな)のを考えてました。

金閣寺を人質に取ったりってのは面白いかも知れませんね。「金を出さんなら、この俺がもう一度三島(由紀夫=「金閣寺」)の再来をみせてやる」とか訳の分からないことを言い出したり。政府側が値切ろうとすると、何とか光線を少しだけ出して、柱を一本へし折って見せたりするんですが、それを見た怪獣が逆に顔色を変えて「もうやめてくれ、俺はそこまでやるつもりはなかった」とか言い出したり…。
いくらでも話が出来そうです。

確かに、こういう場で気軽に意見を、ってのは面白いですね。
これぞまさに雑談板、ってことになるかも知れませんね。
長い文章が次々投稿されると容量とかどうなのかなと心配していたんですが、そのときは神夜さんが得意のCOBOLだかFORTRANだかでサーバーを拡張してくれはるはずや!


タイトルRe: 123:『怪獣輪舞曲』
記事No: 1088 [関連記事]
投稿日: 2014/05/28(Wed) 21:35
投稿者神夜

この物語の肝は、「天野さんがギャグ小説を書く」ところにあると思う。
例えば神夜が書いたとしても、「おいまた馬鹿が変なもん持ってきたぞ」で終わる可能性大ですが、これを天野さんがちゃんとした小説として仕上げれば、「おいロリコンさんが面白いことやってんぞ」になる。この差は天と地やで。うん。

物凄く読んでみたい。読んでみたいんだが、その前に一言。

おんどれア、いつになったら長編の続き投稿すんじゃい。

> 確かに、こういう場で気軽に意見を、ってのは面白いですね。
> これぞまさに雑談板、ってことになるかも知れませんね。
> 長い文章が次々投稿されると容量とかどうなのかなと心配していたんですが、そのときは神夜さんが得意のCOBOLだかFORTRANだかでサーバーを拡張してくれはるはずや!

残念だ。神夜はそういうところとは実は無縁なんや。軽いソースコードチェックはできても、書くことは不可能だ。たぶん、というか絶対にそういう知識は天野さんの方がある。だから天野さんが拡張するんや。無理なら費用出すんや!


タイトルRe: 123:『怪獣輪舞曲』
記事No: 1091 [関連記事]
投稿日: 2014/05/29(Thu) 19:12
投稿者天野橋立

いやー、長編の続きについては辛いところで…。女性二人の扱いを未だに決めかねてて、ほかの部分の展開は大体決まってるのに、なかなか先に進まんのですよ。怜子ちゃんの存在があんなに大きくなってしまうのは想定してなかったんですよね。まさにキャラが勝手に動いてる状態で、長編連載は怖いなあ。

神夜さんはIT屋さんだと思ってたんですが、PGとかSEじゃないのか。営業系なのかな。
僕はBASICしか使えませんぜ。クライアント側として関わったことはあるけどね。


タイトル123『始まらなかった恋』
記事No: 1086 [関連記事]
投稿日: 2014/05/24(Sat) 20:58
投稿者浅田明守

2014年12月24日。僕の一つ年上の幼馴染が死んだ。
 交通事故だったらしい。点滅信号を急いで渡ろうとしたその時に、よそ見運転をしていたトラックに撥ねられたとかなんとか。
 その知らせを聞いたとき、僕は酷く驚いた。
 当然といえば当然のことだ。だって、彼女が死ぬだなんてその時の僕は微塵たりとも思っていなかったのだから。
 でも、逆に言ってしまえばそれだけのことだった。
 驚いただけ。それ以外の感情は何一つとして浮かんでこなかった。お通夜にも行ったが、涙の一つ浮かんでこなかった。
 何もかもが唐突で現実味がなかった、というのもある。
 僕自身が、彼女とそれほど親しい間柄というわけでもなかったということもある。
 なにせ、良くも悪くもただの幼馴染だ。家こそ近いが、毎日顔を合わせるわけでもない。小中学校の頃ならともかく、大学にもなればご近所だろうが生活時間が合わなければまず会うことはない。彼女に最後にあったのは……一ヶ月前だったか。確かバイト帰りに駅のホームでばったりあって、なんでもない世間話をしながら帰ったんだっけか。
 まあ、その程度の関係でしかなかった。
 その程度の関係でしかないと思っていた。
 ―――その程度の関係であって欲しかった。
 最初は何ともなかった。
 ただ……ふと思い出してしまう。近所のコンビニで、駅の改札口で、あるはずもない彼女の影を探している自分がいる。彼女の姿が見えないことを悲しく思っている自分がいる。
 そして気が付いた。気が付いてしまった。
 あぁ……僕はきっと、彼女のことが好きだったんだ、と。
 何もかもが遅すぎる。失ってから気が付くなんて、本当にどうしようもない間抜けだ。ある意味で僕らしいともいえるかもしれない。
 今となっては涙を流すこともできない。ただ行き場のない寂しさと、喪失感だけが僕の中に残る。
 幼馴染を亡くしておよその一ヶ月の後、僕の恋は始まることすらなく終わりを迎えた。
 そしてその日の夜、僕は不思議な夢を見た。
 床も壁も天井も、何もかもが真っ白な部屋。そこにはドアも窓もなく、ただ部屋の中央に小さな丸テーブルと2組の椅子があるだけの場所だ。
 そこに僕ともう一人、浅黒い肌色をした長身の男がいた。
 なんというか、ひどく特徴的な男だった。身長は二メートル近くあり、それでいて腕や足は女性のように細く、全体的なイメージとしては細長い木の枝のような印象を受ける。髪は短く刈り上げられているが、なぜか頭の後ろの一部分の髪だけがこ腰のあたりまで長く伸ばされ、尻尾のようになっている。そして何よりも特徴的なのがその顔。男には顔がなかった。正確に言えば、本来顔がある部分が黒い靄がかっていて顔を見ることができないのだ。
 その男を一言で表すならば、“無貌の神”だ。ここ数年で一躍有名になったクトゥルフ神話における邪神。最凶最悪の化け物。
「やあ、こんばんは。突然だけど、一つ私と契約をしないかい?」
 男がそう語りかけてくる。
「これから君の時間を二ヶ月ほど巻き戻してあげよう。君はそこでやり残したことがあるんだろう? それを成し遂げるといい」
 顔は見えないが、男の声は酷く楽しげだった。もし顔があるのだとしたら、きっと皮肉な笑みを浮かべているのだろう。
「ただし、覚えておくといい。運命は決して変えることはできない。仮に変えることができたとしても、それは君にとって悲劇にしかならない。君にできることは、同じ一ヶ月を無意味に過ごすか、あるいはその一ヶ月でやり残したことを成し遂げるか。その2択だ。契約の代償は君の絶望だ。私は絶望する人間が大好物なんだよ。あぁ……もちろん、受けるか受けないかは君の自由だ」
 最後にとって付けたかのように言う。まるで最初から僕が断らないことを知っているかのような口ぶりだ。
 …………いや、まあその通りなんだけど。
 せめてもの反撃として「随分な悪趣味だな」と返事をする。
「あぁ……私はそうあれかしと望まれて生まれた存在だからね」
 終始楽しげだった男だったが、その時だけはどこか悲しげな声をしていた。
 夢はそこで終わり、僕はいつもの自室で目を覚ます。
 枕元に置いてあるデジタル時計は、2ヶ月前の午前7時半を表示していた…………

【あらすじ】
顔のない男と契約をして、幼馴染と最後にあった日の朝に戻ってきた僕。
彼女が死ぬ実感を持てないままに、自分の始まることすらせずに終わってしまった恋をきちんとした形で終わらせるために、彼女と最後の一ヶ月を過ごす。

とまあこんな感じの話です。どう考えてもバッドエンド一直線でございます。
しばらく来ない間に面白そうなことをやっていたので思わず参加(?)してみました。
全体の流れはできているものの、作者本人がリア中爆発しろを素で言っている側の人間なため、僕と彼女の関係をうまく書くことができずに挫折しました。
というかぶっちゃけるとこんな感じの小説を誰かに書いて欲しいなー(チラ 誰か書いてくれないかなー(チラ といった感じですねw
問題があれば即消します。何かあればおっしゃってください。


タイトルRe: 123『始まらなかった恋』
記事No: 1089 [関連記事]
投稿日: 2014/05/28(Wed) 21:39
投稿者神夜

便乗大歓迎、バンバンこいや。……コメント遅れて申し訳なかったです。

読んだ感想。
時間退行して、過去をやり直すというのは使い古されたアイディアである。だからこそ、そこを敢えてやるのなら内容が大切で、未来を捻じ曲げてハッピーエンドにするのか、未来を受け入れてお涙頂戴にするのか、はたまた全滅エンドにするのか、着地点はともかくとして、大きなポイントはその魅せ方である。

ここまで読んだ限り、正直なことを言うのであれば、顔のない男ってこれ、必要なのだろうか? 理由理屈抜きにして、気づいたら退行していた、の方が物語的にあっているような気がしないでもない。
全体の流れが完成しているのであれば、簡潔に箇条書きでもいいので、書いて頂ければ閃くかもしれない。


タイトル1:『鉄塔広告』
記事No: 1099 [関連記事]
投稿日: 2014/09/08(Mon) 22:35
投稿者天野橋立

私の生まれた町は、日本海に浮かぶ日本で三番目に大きな島である毬之島の中央部にある、毬島市と呼ばれるところです。これは意外と知られていないことですが、毬之島は対岸に位置する新潟県に属しているわけではなく、実はより西側の豊島県に属しています。ご承知のこととは思いますが、豊島県はあまり大きな県ではありませんので、毬之島が県全体の面積に占める割合は相当大きなものとなります。
 豊島県という名ももちろんこの豊かな大きな島を抱えていることからついた名前で、明治時代の廃藩置県の際に当時の知藩事であった毬之島由旨が名づけたと言われています。毬之島が対岸の新潟県ではなく、豊島県に属することになった原因は、鎌倉時代にさかのぼります。この頃、豊島県に当たる地域は越間と呼ばれ、地方豪族である藤山氏によって支配されていました。しかしやがて源頼仲の軍勢がこの地域にも進出し始め、藤山氏の一族は海岸の陸果(おかはて−現在の西豊島市)まで追い詰められることとなりました。その際救いの手を差し伸べたのが毬之島を支配していた毬之島雪旨でした。結局最後には雪旨の差し向けた援軍の奮闘もむなしく藤山氏は現時の大軍勢の前に破れ去ったのですが、その時以来、毬之島と越間の人々の間には固い絆が結ばれたのでした。
 そのきずなの固さを物語る逸話として、戦国時代上杉氏が毬之島に攻め込んでは見たものの毬之島氏は山奥の盆地にある毬盾城に立てこもり住民たちも「おらごたちはえぢかんのもんだ。えぢごのものにはなんねど」と上杉氏に全くなびかず、ついに軍勢はあきらめて去ったという物語が伝えられています。今でもこの毬盾城はほぼ完全な形で残されており、毎年10月には上杉氏撃退の物語を模した毬祭りが行われます。
何をするにも毬の名が付くこの島ですが、この名が付いたのがいつ頃なのかはよくわかっていません。ただ、風土記のなかに「毬島から金塊一斤」との記述がありますから、この頃からその名が使われていたのは間違いありません。もちろん伝説という形では毬之島の名の由来はたくさん残されています。それらの伝説に共通する要素としては、超越的な強い者(神、天皇、中国の武人)が毬を放りあげるとそれがどこかに消えてしまい、海に落ちて島になったとされていることがあげられそれを裏づけるようにこの島は毬のような真ん丸い形をしています。また真ん中が山がちで丸く盛り上がっているので海から見ると大きな毬が海に半分沈んで浮かんでいるようにも見えるのです。
豊島県毬島市、この町は現在人口5万2千人の小さな市です。二十年ほど前までは炭坑町として日本中に知られる活気に満ちた町で、人口も最大三十万人に達しました。この当時は先ほど述べた毬祭りも大企業からの協賛金で大変盛大に行われていました。当時子供だった私もこの毬祭りが大変楽しみで、母親に「まりまづまだげ。まだげ」と一ヵ月も前から何度も聞いて大変困らせたということです。
あの大落盤事故が起こったのは私が十才のときのことでした。その日の夕方父が青ざめた顔で会社から戻ってくるなり母親に向かってこう叫びました。「山がおぢたど」母親の顔色も一瞬にして変わりました。父の勤める会社は毬島市に本社をおく大手の石炭採掘会社でした。幸いにして父は自ら炭坑に入っていくような仕事ではなくむしろそれを管理する部門に勤めていたために命拾いしましたが後で聞いたところによると同期で入った同僚十数名がこの事故で命を落としたということです。その夜は大変な騒ぎでした。警察、消防、全てが事故現場に向かい、父もいったん帰ってきたもののすぐに母を炊き出しの手伝いをさせるために連れて家を出ていきました。暑い夏の日で、一人残された私には美しい夕焼けの色が血の色に見え、その情景が強く私の心に焼きつけられました。落盤事故は数百人の死者と毬之島最大の炭鉱の閉鎖という結果を残しました。石炭採掘各社は補償に追われ何社も倒産しました。父の会社も例外ではなくついに倒産してしまいました。しかし父も母も案外落ち込む様子もなく、「死ななかっただけよかんさ」とまた新しい仕事を見つけて働き始めました。
 島はそれからだんだんと目に見えるように活気を失っていきました。なかでももっとも衝撃の大きかった出来事が、毬島電気軌道の営業休止でした。休止とはいえ事実上の廃線といっても差し支えなく、島の人々も猛反対しましたが、炭坑への人員輸送を頼みの綱としていたこの鉄道はもはや存続不可能な状態でした。毬島電気軌道は大正13年毬島町立汽車鉄道としてスタートしたもので、当時は日本の島で唯一の鉄道として評判になりました。戦後電化されて電気軌道となり私立鉄道として地元の石炭採掘会社の共同出資で再スタートを切り最盛期には準急も運転されゆくゆくは軌道線から地方鉄道線に昇格されて急行が運転されるはずでした。それだけに島の人々の失望も大きかったようです。私は毬電(地元の人々はそう呼んでいました)のお別れ運転に乗った時のことをはっきりと記憶しています。

「毬電毬島市」の駅は人でごった返していた。実をいうと毬電で駅と呼べるのはこの「毬島市」駅ぐらいのものである。悲しげな顔をした電車がホームに入ってくる。そう、どうして電車というものはこんなに人の顔をしているのか。別れを惜しむ周りの人間達よりも電車のほうがもっと悲しそうだ。私は電車に乗りこむ。満員である。少し苦しげに電車は発車する。この電車はもともとどこかの大手私鉄で走っていたものであることを私は知っている。もしかすると戦前のものであるかもしれない。この鉄道はほとんどの部分が軌道線であり、道路の上を走っている。沿線の人々が見送る。観光客らしい人々だけが大して気にも留めずに歩いて行く。「離れ島で唯一の鉄道」ということも、今日で最後ということも彼らは知らないのであろう。そんなことを誇りに思ってきたのは島の人だけであり、実は全くよその人々には知られていないのではないか、そんな思いが心をよぎる。
 電車は町を離れ、山地に差しかかる。その時、ふと目に付いたものがあった。町の外れに立てられた鉄塔広告である。高さは50メートルほどであろうか。もちろんこの町では最も高い建造物であり、この街が賑わっていた当時東京からやってきてこの町を席捲せんとした大手の製菓会社が金に任せて作ったものである。幅はほとんどなく、この距離から見るとまるで30cm位しかないのではないかと思える。まるで盆地の中程に針が立っているかのようだ。その針からはみ出して大きな文字が張りつけられている。
「森林ミルクチョコレート/プリンスチョコレート」
 反対側から見ればまた違う文字が見えるのであろうか、文字の合間に裏返し文字らしいものが見える。鉄塔の天辺からは二本の棒が突き出していてその先には飛行機の形をした飾りが付けられている。棒と二機の飛行機は鉄塔を中心としてゆっくりと回転している。製菓会社が撤退して数年が経過しており、手入れもしていないのであろう、飛行機はすっかり古くなり赤と青のペイントが剥げかかっている。このとき初めて気付いたのであるが、目を凝らすとはるか彼方にさらに数本の鉄塔広告が立っているのが見える。すると各町に一本ずつ立っているのだろうか。さらに私は一つの奇妙な疑問にとらわれていた。なぜ製菓会社が撤退して何年にもなるのにいまだにあの飛行機は回転しているのであろうか。もしかするとあの針のような鉄塔はあの二機の回転するバランスで立っているのではあるまいか。そう思うと同時に一つの計画が私のなかで持ち上がった。そんな塔なら簡単に倒せるぞ。島を見捨てていった者達への怒りが鉄塔を倒すという行為への情熱となって私のなかで燃え上がった。 
鉄塔は町のどこからでも見えるので近いものだと思っていた私の予想は簡単に裏切られた。いくら歩いても鉄塔は少しも近づいてこなかった。ふだんあまり歩いたことのない町の繁華街に差しかかったが、鉄塔はまだはるかかなたであった。だがその失望以上に私の胸を打ったのは繁華街の激しいさびれ方であった。かつて両親に連れていってもらった映画館は既に閉館となり、最後に上映されたらしい映画のポスターが雨にさらされてぼろぼろになってぶら下がっていた。パチンコ屋(木造であった)はまだ営業していたが活気とは程遠く何をしてよいのか分からないような男たちがぼんやりと時間をつぶしていた。鉄塔はそんな繁華街の通りの真ん中に見下ろすようにそびえていた。繁華街を抜けると町は背の低い住宅地に変わった。家並はみすぼらしく、生活水準の低さを思わせた。この辺りまでくると例の飛行機はほとんど真上を回転しているように思え、鉄塔の天辺は仰ぎ見なければ見ることができなかった。さらに進むと地面を黒い影が横切るところがあった。飛行機の影がここに落ちているのだ。太陽はほぼ真上に位置し、飛行機が回転してくるたびにそれは遮られた。鉄塔の直前で道は行き止まり、別の道につき当たってT字路を形成していた。その辺りの町並みは迷路のようになっていて私は必死で鉄塔のほうに向かおうとしたがそのたびに道はつき当たった。私は疲れ切っていたがそれでもあきらめずに何度も角を曲がった。古い酒屋の横の辻に入ったとき。そこに鉄塔があった。広い広場のようなところにぽつんと立っている。私の思い込みは完全に外れていた。鉄塔は家と家の間の三平方メートル程のところから天高くそびえていた。特に基礎になる台のようなものは見当たらずコンクリートの地面から直接生えていた。思っていたよりも幅は広く、一メートルぐらいはあった。これでは倒すことができない。私は焦って鉄塔を押してみたが鉄塔はびくともしなかった。そうだ、飛行機を止めねば。私は次に飛行機を動かしている機械を捜した。2メートル程の高さのところに配電板らしい機械があった。これを壊せば飛行機は止まる。私は思い切って電線を引きちぎった。
今では何故あんなことを考えたのかはよくわかりません。結局飛行機は見事に止まり、鉄塔は倒れませんでした。私が逃げ帰ったその日以来飛行機が動くことを見た日はついにありませんでした。誰もこの鉄塔広告に注意を払う人はいなかったのでしょう。それなら何故あの飛行機は動いていたのか。誰が電気代を負担していたのか。それも今となっては分からないことなのです。

(後日談)この文章を書いた後、偶然あの製菓会社で鉄塔広告の建設を担当していた方(今では重役さんですが)にお会いしてお話を聞くことができました。あの鉄塔広告は全国で40本あまり、しかも地方にばかり立てられ今でも10本ほどが残っているそうです。会社の撤退後取り壊すに取り壊せず残った物ばかりで、飛行機を止めれば倒れると信じた人が多くいたために今でも飛行機は止めずに電気代だけは負担しているということです。ちなみに私が止めたあの鉄塔広告は現在は取り壊されてもうないそうです。



ひっそり投稿。
二十数年前、本当に初めて書いた小説です。やたらと文章が長かったり、改行が少ないのは完全に筒井康隆氏の影響ですね。書きたいことの基本的な方向は今でも変わらず。この短編も、いつかはまたリメイクするつもりです。


タイトルRe: 1:『鉄塔広告』
記事No: 1100 [関連記事]
投稿日: 2014/09/16(Tue) 19:08
投稿者神夜

どうも。読むのが遅れて申し訳ないです。
しかしまぁ、1だけど、天野さんだからこそ、ここはいっそぶっちゃけて言う。

面白いか面白くないかで聞かれたら、ただ一言、「面白くない」と答える。
これはそもそも小説だろうか。神夜が知らないだけで、これでも一般小説内では体を成しているのだろうか?
ナレーションを聞いている、あるいは2chの体験記を見ている気分だ。

だけれども。これが小説か否かは置いておいて、もうひとつ言わせて貰うと。
――これが初めて書いたモノってマジか。内容や描写はさて置き、これが初めての作品か。これはこれで素直に凄いと思う。ロリコンの原点がこれな訳だ。神夜の処女作なんておしっこちびるレベルの作品なんだけど。

重ねて失礼なことを言うけど、現段階で正直、「面白くない」この作品を、
「今の天野さんがリメイク」すれば、どれほどの物語に昇華するのか、非常に楽しみである。

――そして神夜は何度でも言うぞ。言ってやるぞ。
こんな所で遊んでる暇あったら、とっとと『全体』を完結させんかいおんどれァッ!!


タイトルRe: 1:『鉄塔広告』
記事No: 1101 [関連記事]
投稿日: 2014/09/18(Thu) 23:07
投稿者天野橋立

感想ありがとうございます。
そうですね、こういう小説があるのか? と言うと、まああるんじゃないかと思いつつ、しかしちゃんとそう言う形式の小説として完成しているかというと怪しいわけですが(どやねん)。

 やっぱり、面白くないですか。いや、元々僕は架空の町の情景みたいなものを描きたくて小説書き始めたみたいなものなので、最初は物語を作るほうにはあんまり興味が無かった(ギャグを書くのには興味があった)という珍しい入り方をしてるんですね。
 しかしそれだとやっぱり小説として読めるものにはなりにくいわけで、その架空の情景を舞台に物語を載っけていかに面白く読めるようにしていくか、というそういう進化で来たわけなんです。そうやってるうちに、物語を書くの自体が面白くなってきたという。
 その方向での最新の到達点が神夜さんにも何度か読んでいただいた「架空索道」なのだったりします。あれは僕としてはこの「鉄塔広告」に非常に近い感じです。だからこれをリメイクするとしたら、「架空索道」の空気に近づくかなと思います。

 感想をいただけて、改めて自分の中で整理ができました。ありがとうございます。
 ちなみに、「全体」のほうは完結まであと数枚というところまで来ましたが、ここでなかなか納得が行かなくて、手直しを続けている状態です。ふと書けてしまうこともあるので、近いうちには投稿するつもり(あくまでつもり)なので、またお願いします。
 最後に……ロリコンじゃない!


タイトル123『ラブコメイター』
記事No: 1107 [関連記事]
投稿日: 2021/02/09(Tue) 04:23
投稿者みたらし

「アナタ(人類)に恋する為に産まれて来たんダヨ!」

プロローグ

日本の科学者に発見された(通称:ラブコメ細胞)
これにより、造られた人造生物…
しかし、研究室の上
会社の幹部達はこの実験を危険視して
全データの抹消を決定する。
それに反発し新造生物ベビーを外に連れ出し
主任を含む複数名のラボメンバーが逃亡、潜伏し研究を続けた。
会社は最初は極秘裏に、メディアにベビー、
ラブコメ細胞の有用性をアピールするはずが
失敗し、政府機関と協力した自衛隊のレンジャー部隊を主軸の特殊部署にベビーを狙われ、数々の仲間の裏切り、恋人を失い世界中を放浪し主任だけが生き残り、その心はいつしか人類への憎しみで一杯になっていた。

中東のテログループに拾われ、生物兵器を造り続け、ノウハウが全て奪われ、テログループが大陸を制した頃、処分された主任
それがトリガーで、ラブコメ細胞生物が
暴走し、人類文明を十数年で食い尽くし
国々は分裂し、人々は点々と跋扈するラブコメ細胞生命体に食べられないように、怯え暮らした。


タイトルRe: 1『ラブコメイター』
記事No: 1108 [関連記事]
投稿日: 2021/02/09(Tue) 05:01
投稿者みたらし

ポチ=ピーチ

人類と、人工物を食べる暴走したラブコメ細胞生物兵器ーーこれに対抗する少女兵器が生き残ったラブコメ細胞研究者によって開発された。
通称:コスプレイヤー
女の子の股間に装着される飛行可変兵態と、それの適性者
全て若い女性で年を、30代で力を失い。
処女の方が適性率が高い。
彼女らは海水を苦手とするラブコメ細胞生命体が来ない孤島に隔離され、男子禁制の空間で日々ラブコメ細胞兵器と戦う訓練をしている。
最新のコスプレイヤー
人造コスプレイヤー人間 KANAKOシリーズ
最強のコスプレイヤーだった要子のクローン兵器
期待の新星 里見要子

彼女によって倒される魔王と呼ばれる
ラブコメ生命体の知性、文化を持つ上位体の王、その一体とされる。
ツンドラゴン−−白龍、それらの女王
憤怒を司る、彼女。
数々のコスプレイヤーが彼女の前に散り、人類に討伐不可能とされていた彼女をほぼ一方的に倒してしまった怒りの里見要子。
しかし、倒されてしまってもコアが無事だったのでコアを小型ドラゴンに変形、脱皮し再起を図るが、初めて見る生き物を仔犬か何か、誰かのペットだと勘違いして孤島の学園基地に連れててしまう!


タイトル3『ラブコメイター』
記事No: 1109 [関連記事]
投稿日: 2021/02/09(Tue) 06:19
投稿者みたらし

『ツン寄れば姦しい』

故郷に帰り、再び女王になる憤怒だったが、心はここに在らず…

その時、他の女王の使者がやって来て
淫蕩の女王は、魔法のような力で願いを叶える存在(要子)だと聞く。
淫蕩の女王のテリトリーで女王に遭い、胸のモヤモヤを吐露する。
それを恋だと指摘する淫蕩の女王だが、憤怒は頑なに認めない。
だけど、強欲が既に人間形態になり
要子がいる学園で、人間達に協力していることを知り、淫蕩の女王に人間の女の子(ふたなり)にして貰う。

その時、説明をよく聞かなかったせいで
記憶を失った憤怒は
偶然、大怪我しピンチの要子に出遭う。
大食の対の嫉妬の女王に大敗した後だった。
無理をして決死の作戦に臨む要子を止める為、一人嫉妬の女王に挑む憤怒。
倒れても、倒れても立ち上がる憤怒!!!
共同戦線から絶対絶命になるが、白龍の力が覚醒し嫉妬の女王を撃退する。

その時、運命を憤怒に感じた嫉妬は淫蕩に人間の女性(ふたなり)にして貰い、声を失う。
興味が沸いた淫蕩は自分の番の怠惰を誘い
女性の姿ラブコメイターとなり一緒に学園の生徒になる。
しかし、目的はもう一つあり、最初のコスプレイヤー開発の礎となった四角関係−ー人に恋した傲慢、怠惰、淫蕩の恋模様。
人を愛し裏切られ、地下のラブコメ細胞の城『パンデモニウム』の奥深くに幽閉される傲慢を助け出すことだった!

王女たちはラブコメの末団結し、地球軍側コスプレイヤーを撃破して行く。

しかし、人類を騙し女性の姿ラブコメイターとしてコスプレイヤーに化けていた。
彼女は創造主の記憶を持つラブコメイターを造り出し、さらに偽りと悲しみの双子のラブコメイターの女王から十の臣下コスプレイヤーを要子クローンベースに造り出し、創造主は一瞬で女王たちすら苦戦する人類軍の主力を壊滅させた。
その怒りは女王たちに向けられ、「何故、人類を滅ぼさない!」
最後まで抵抗する憤怒に人類を滅ぼす力のキー爆弾を植え付け、月に拠点を造り、地球の破壊を眺めるつもりだった。
その破滅は全てのラブコメを救うものでなく
ドグマコードで創造主を妄信するラブコメ生命体から、選ばれた番をパンデモニウム=ノア
に搭載し月に退避した。


タイトル4『ラブコメイター』
記事No: 1110 [関連記事]
投稿日: 2021/02/16(Tue) 03:51
投稿者みたらし

「だから、生きものは弱いまま産まれ来るんだね」

復活した創造主の記憶を持つラブコメイターに人類と一緒に地球をも破壊する力を埋め混まれた憤怒のラブコメイター

その力は、恋してドキドキするほど力を増し暴走していく…

人類総力を結集しての最終決戦前夜ーー憤怒は決意する。

傲慢に告白のタイミングを譲られ、里見と星を見ながら二人きりー…止まらないドキドキ、この星と、そこに生きる里見、ただ一人の為に…
ツンを拗らせ、あるはずも無い陰謀を語り、人類の敵として悪役と成ることで暴走する力を誤魔化し、悲恋でドキドキを止めようとする。

人類軍を壊滅させ、残りの大食の女王
嫉妬の番いを『人類がいなくなったら食べられなくなる』と説得して大罪連合だけで月をテラフォーミングするパンデモニウム=ノアに突撃を懸ける。
移動の途中、憤怒に横恋慕して来たファイヤーツンデレーの嫉妬が傷心の憤怒に近づくが、その顔には出さない悲しみに気付き、声をかけれなかった…

ノアで迎い撃つ十臣下とそれを指揮する怠惰から産まれた双子の新王女
彼女たちは普段仲が良いが創造主が絡むと互いに出し抜こうとするほど功名心を剥き出しにする。
裏切りを演出して一人、双子に引き連れられ御膳の前まで連れて来られた嫉妬…しかし、最初から演技だとバレていて始末される寸前、双子の片割れが手柄欲しさに自分の片割れに手をかける。
それを醜いと判断した創造主は玉座を降り、「褒めて!」とせがむ新王女のラブコメイターを失敗作として真っ二つにする。
「…パパ、なんで…」
かろうじて意識があった嫉妬はブチ切れ命を燃やして決死の戦いを創造主相手に互角以上にぶちまけた、が、創造主の無敵の能力の前に半径50mエメラルドスプラッシュを発動させられず命を落とす。
そこに間に合う、ただ一人全ての障害を乗り越え、やって来た憤怒ーー嫉妬の遺言、能力のヒントを得て、始まる最終決戦。
「何故、貴様らは人類を滅ぼそうとせず! 人類を愛す!?」
白き龍に変身しながら、愛を叫ぶ!

戦いの中、互いに蘇るベビーの記憶
スイートメモリー
創造主が一研究者であった頃、懐に抱かれていたラブコメイター原初の記憶ーーそこには白衣を握り返して『暖かい』と感じる純真で無垢な、愛に満ちた空間に憤怒と創造主はいた。
そこには、誰かへの憎しみなどどこにもなかった。
(ただ、愛にだけ生きれば良かったんだ…)
それをドグマコードとして汚したことに後悔した創造主のコピーは全てのドグマコードを解除し、無限のドキドキで崩壊しつつあった憤怒を救った。
崩壊するパンデモニウム=ノアを脱出する
生き残った憤怒。
憤怒に上半身にだけにされた創造主コピーは死を待つだけだった。

「…パパ…パパ、どこ…?」
それは自分が引き裂いた新王女ーーもう失血で目が見えないようだ。

最後の力で唯一残った片腕だけで新王女ーー妹に這い寄っていく…
薄れゆく意識の新王女の手に、何かが触れる。
「ここだよ…」
上半身だけの創造主コピーが手を握り、ゆっくりと抱き絞めてくれる。
「…失敗作でごめんなさい」と泣き謝り強張る体が「…愛している」と言う度に溶けていく。
「間違っていたのは、私なんだ。ごめんよ…」
二人の笑顔
「…パパ?…パパ、パパ大好きだよ…」
それが創造主のコピーとして造られたラブコメイターのドグマコードに縛られない最初で最後の声だった。


他の化け物の姿に戻ったラブコメイターの女王とともに瀕死の体で地球に戻る。

《ボク、ワタシたちは生き物に成りたかったんだ…》
願わくば、憤怒やら傲慢なんて物騒な名前でなく、誰かに寄り添えるような優しい名前…

本来の巨大な体に戻っても、大気圏突破する体力はなかった。

だけど、人類軍が壊滅し、絶望で荒れ果てた地球の人々は焼け死んだ大罪を冠する獣たちを罵り、嘲笑し、飢えた彼彼女らは、その肉を喰らった。

「ポチ…」
その人類を何度も裏切ったラブコメ細胞生命体が喰われるところを泣きながら止めようとするのを、仲間に抱き止められていた人類最強のコスプレイヤーの里見要子…

魔王生誕ーー静嘆


タイトル禁断合体ソウウツガー
記事No: 1111 [関連記事]
投稿日: 2021/04/24(Sat) 19:01
投稿者みたらし

デート中に二人同時に呼び出し音、無視しようか思ったが彼女に説得され出動に応じる…
彼女にも用事があるのは、何となく分かっていた…
自分は海軍の宣伝秘密部隊《ソウカイジャー》の一員
男の方ソウカイグリーンの戦隊ロボ『ウッド・ウルフ』のパイロットである。
戦意高揚の宣伝部隊なのに秘密なのは矛盾しているが、隊員は戦闘時パワードスーツを着用しその正体はヘルメットとバイザーに隠され、その正体は海軍の将校クラスにしか知られてはいけない超極秘事項である。
それと敵対するのは魔法少女!
デート中呼び出しに遭い別れた彼女は海軍が最優先で敵対する魔法少女だった!!!
互いに正体を知らず戦い合うロミオとジュリエットだった―!
だけど、本来ソウカイグリーンとして戦うはずの蒼月シゲルはビビりで人のいない、見つからない倉庫でヘルメットを外したソウカイグリーンの姿で膝を抱え、大きな躰を小さくして踞っていた…!
『ウッド・ウルフ』に代わりに乗って貰っていた妹が戦闘で負傷して苛立っていたところを発見した壁蹴りして罵る!

―「はーはっはは!!! いつでも掛かってこい!! その時はまた倒してやるがな!!!」
『ウッド・ウルフ』から、さも今降りたかのように勝利宣言するソウカイグリーンだった。

今日の仕事は、これだけだった…

翌日、戦隊専門のカウンセラー(もしくは、蒼月家のお手伝い)に悩みを相談するシゲル…
悩みの大元には、幼少期に母親を魔法少女として告発した過去があった!
妹はそのことでシゲルを憎んでいる。

代々海軍一家の蒼月家、厳しい父と優しい兄、姉はソウカイブルーとして男女パートナーの《ソウカイジャー》女の方の片割れである。
昔、遊んでいた幼馴染みが女らしくなり帰って来たが
微妙な恋心を無視して、兄の隣りに並び話し掛けている…その横姿形は、明らかに恋をしていた。

シゲルの幼馴染み日村ウサギは魔法少女である。
彼女は海軍の秘密兵器《ソウカイジャー》の正体を探る為、昔仲が良かった蒼月家に近付いたスパイだった!!

日村家は蒼月家の遠縁…
中学に上がる頃、男だとか女を意識して疎遠になって、引っ越しをして、それっきりだった…そのせいか一緒に遊んだ男っぽい頃の印象が残っている。
昨日のデートは、こちらに引っ越しして来た昔馴染みにこの地区を案内している途中だった。
その案内ですら忙しい海軍将校にして《ソウカイジャー》の指令の兄の代わりだった…
後日、街の案内の続きをするが、前の時に粗方の場所は案内し終わっていたから、暇になってしまった…グダグダである。
一人になって夕日を眺めていたら、シゲルには分からないが魔法少女にとって重要なアイテムを忘れものかと思い拾う。
再度、魔法少女が海上フロート都市に攻め込んで来るが今度は無視して、彼女と一緒にいることにした。

しかし、妹が魔法少女にやられ重体の負傷をしてしまう!
何かに悩んでいることに気付いたウサギは背中を押す言葉を投げ掛け、ビビりと『ウッド・ウルフ』とのトラウマを抱えながら、前へ進もうとするシゲル…!!
その勇気がトリガーとなり、『ウッド・ウルフ』と『ブルードルフィン』は合体し『ソウカイガー』となった!!
必殺技で魔法少女の操る魔獣を圧倒した。
シゲルが『ソウカイジャー』と気付いたウサギは、ある覚悟を決める…

お礼を言おうとウサギを探すシゲル、しかし、彼女は引っ越ししたばかりなのに彼女の家には誰も居なかった…

お手伝いのお姉さんが魔法少女側に入りこんだ海軍…ではなく蒼月家のスパイ
そもそも蒼月家は日村家を守る役目の魔法少女側の中枢であったのだ。
それをシゲルもウサギも知らない。
お手伝いさんが蒼月家当主の父と海軍将校の兄が会する夜の座間で灯籠が一つ、
彼女がウサギを矢表に立たせ総力戦を仕掛ける計画が話される。
魔法少女側で孤立するウサギをどう救うか話していると、障子に映る影――陸軍防衛総司令官ウォールだ!
続々と土足で入り込む陸軍兵士たち!!!!
更迭される蒼月家の父と兄、命令され一人逃亡するお手伝いさん!!

更迭された兄と父を助ける為に前線に配置される『ソウカイジャー』の姉弟
『ソウカイガー』と魔法少女と化したウサギと対決する時、わざと『ソウカイガー』負けるつもりだった。
それに気付かないシゲルは容赦なくウサギだと分からないウサギを追い込む!
突然光り出すウサギの忘れ物…無意識に目の前の、後一撃で倒せるはずの魔法少女はウサギだと気付く!
「ウサギなのか…っ!?」
動揺で止まるソウカイガー
それを裏切りだと判断したウォール将校は兄と父を人質にトドメを促す!
ようやく歩けるようななった妹や共に『ソウカイガー』に乗る姉がウサギにトドメを指すよう叫び続けるが、泣いて『ソウカイガー』の拳を下げ落としてしまう…!
お手伝いさんの主導で脱走した兄
父が命を賭して託した兄の乗る秘密兵器『サン・レオン』が分離した『ソウカイガー』の姉が操る『ブルードルフィン』を止める!!
しかし、裏切りを許さないウォール総指揮官の巨大な海上フロート都市の高い城壁が変形し人型ロボットと化した《ザ・ウォール》の胸部装甲が開き、二つの球形ブラックホールが姉を助ける為に分離した『ウッド・ウルフ』とウサギを飲み込む!!!

ブラックホールの先の異次元空間で光るウサギの魔法少女アイテムが持ち主を示す。
『ザ・ウォール』に破壊された『ウッド・ウルフ』のコクピットで二人っきり…
何故、自ら負けるような真似をしたか問うシゲルに
「弱い所いっぱい知っちゃった…だから、もう戦えなよ…」
争いの無意味さを知るシゲル。

『サン・レオン』と合体する『 ブルードルフィン』は
『サンカイガー』となる!!
『ザ・ウォール』と戦う!!!
蒼月家は和平派、魔法少女が契約する精霊マスコットを研究し科学と合わさり、アニマルロボットらは誕生した。
これがあれば、故郷を追い遣られ、魔法少女側のテリトリーを占領し海上フロートを構えた元凶の巨大生物を倒せるはずだと…!
ウォール将校を説得していると魔法少女側から攻撃される。
「…段取りが違うではないか?」
魔法少女側の和平派でカリスマのウサギを倒し、泥沼の総力戦が始まる。
―それが、ウォール総指揮官と敵の魔法少女側の好戦派の裏取引きで企みだったのだ!!
(サン・レオンとルナ・ラビットが揃えば、あるいは…!)
瀕死の『サンカイガー』は、『ザ・ウォール』の胸部を破壊しブラックホールに飛び込む『サン・レオン』
「サン・レオンをまかせたぞ! シゲル!!!」

時間すらネジ狂うブラックホール内部の異空間で二人は五年前の母を告発した過去に飛ばされる。
未来を知った母は、蒼月家の役目日村家を守る為、自らを犠牲になることを決意する!
そのすれ違いで、その場にいた幼いシゲル…周囲から魔法少女である母に石を投げるように強要される!!
未来を変えることに釘を刺され、元の時空に帰れなくなる危険を犯して、幼い自分を止めるシゲル…!!!
「愛する者に石を投げるよう強制されるなら、俺を呼べ! 次元を駆けつけてやるっ!!」
『サン・レオン』が降り立ち吠える!

本来、すれ違うだけの原子と原子がぶつかり遭う――!!!

どこかの時空で、新卒の大柄の男が桜に導かれ振り向くと、同じく白い幅広帽子の清楚そうなウサギ似の女性が同じタイミングで振り向き、目が合う―ー。

「貴方は…ーー」

起動するソウル2エンジン―ー!!!

ウサギの忘れ物が孵化してマスコット『ルナ・ラビット』が誕生し、魔法少女ウサギと合体しウサギは巨大化する!
パーツに分かれた《サン・レオン》は巨大化したウサギの鎧となって一体化した!

禁断合体!! ソウウツガーの誕生である!!!!!

母の特殊能力でなく、《ソウウツガー》の力で次元を切り裂き、《ザ・ウォール》の胸部から現れる!

必殺技は両陣営の誰も殺さず、無力化した―ー!