『日本現在話 サンタ編』 ... ジャンル:童話 ショート*2
作者:水山 虎                

     あらすじ・作品紹介
なぜサンタクロースは人に姿を見せないのか。なぜサンタクロースは大人にはプレゼントをあげないのか。日本の現在の話。

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 これはまだサンタクロースがいた時のお話。
なぜサンタクロースは平成の世から消えたのでしょうか。





 


 

 クリスマスの夜。
僕は雪が降るなか、僕が働いているちょっと怪しいお店のチラシ配りのバイトをしていた。
 クリスマスという日は彼女がいない僕にとっても特別な日だ。何故なら、カップルが無駄にいいムードになってくれるのでラブホテルにいつもの四倍はカップルが来てくれるのだ。
 僕はチラシを全て配り終えたので、ホテルの裏道で煙草を吸いながら休んでいた。
「あ、やばい」
 頭上から声がした。僕は空を見てみたが、別になにもない。灰色の空で白い雪が目立つ。
「危ないぞー!」
 また頭上から声がした。僕はまた顔を上に向ける。そこには信じられない光景があった。
 赤い服に身を包ませたひげが白くて小太りなじいさんと、赤い鼻の鹿のような動物と茶色いそりが滅茶苦茶な態勢でこちらに向かって落ちてきていたのだ。
 僕はすばやく前転し、それらを避けた。昔は柔道をやっていたのだ。
「ぐげぼ!」
 小太りじいさんと赤鼻の鹿のような動物とそりが地面に派手に落ちた。
 死んだな、なんのドラマの撮影だかは知らないけど。僕はそう思った。
「いてて……」
 僕は目を丸くした。あの高さから落ちてきて死なない人間がいるとは。
「だ、大丈夫ですか?」
「いや大丈夫じゃない。やっちまったよ。あれ、ワシのこと見えるの?」
「見えますけど、それがどうしたんでしょうか」
「あーあ。落ちた衝撃で防御魔法がとけちゃったか。……ワシ、実はサンタなんだわ」
 空からふってきたじいさんは頭をうったんだな。僕はそう思った。
「じゃあその鹿とそりでまず病院に行ってくださいねサンタさん」
「……お前信じてないな? ワシマジでサンタじゃよ? 飛行機にぶつかって落ちた哀れなサンタじゃよ?」
 どこにそんな間抜けなサンタがいるというのだ。と僕は思った。
「ここなんじゃがね」
 心を読まれたのだろうか、サンタと名乗るじいさんは僕の頭に浮かんだ疑問を答えた。僕は驚きのあまり何も言えなかった。
「まだ信じないか。じゃあその白い袋を持ってみな」
 僕は言われたとおり少し黄ばんだ大きな布製の袋を手に取る。
「まず、なにか欲しい物を頭にイメージするんじゃ。そしたらその袋に手をつっこむ」
 ……缶コーヒーでいいや。出てこないと思うけど。
 僕は袋に手をいれた。熱いものが手にあたった。
「缶コーヒーだ……」
 そんなバカな。じゃあこのじいさんは本当に?
「そうじゃよ。サンタクロースじゃ」
 どうやら本当にサンタクロースのようだ。まさか実在したとは。
「なあサンタさん。俺からお願いしてもいいかな?」
「なんでも言いなさい」
「思考読まれるのって、あんまりいい気分じゃないんだ。ちょっと止めてもらえない?」
「……フム。まあ別によいがの」
 しめた。
「じゃあサンタのおじさん。僕からクリスマスプレゼントだよ」
 僕は袋から拳銃をとりだした。
「な、なにをするのじゃ!」
「こんな素敵なプレゼント、ありがとうサンタさん」
 引き金をひくと、サンタに弾丸が刺さった。銃声は思ったより小さかった。
「メリークリスマス、間抜けなサンタさん」
 僕は袋と拳銃を両手に握ったまま、その場を立ち去った。



            *** 


 

 サンタクロースは生きていました。重傷を負いましたが、トナカイ達が病院にサンタを運び、命は助かったのです。
そしてこれは、その病院の美人看護婦さんがサンタから聞いた話です。
「もうワシ、サンタやめようかと思うのじゃ。何百年とやってきたのじゃがの、人間にこんなひどい仕打ちをうけたのは
初めてじゃよ。日本がこんな国だったなんて思ってなかった……。え? なにをされたのかって? それは言えんのじゃ。
……そうじゃ! 子供達には間接的にプレゼントをあげることにしよう。そうしないと、プレゼントに飢えた人間になって、またこんなことに……。あ、こっちの話じゃよ。でも、もう絶対大人にはクリスマスプレゼントあげないもんね。
子供だけにあげることにしたのじゃ」
 

 

 



 それから、サンタの姿を見た人は誰一人としていません。






日本現在話 〜サンタ編〜

    完

2010/12/23(Thu)12:53:42 公開 / 水山 虎
■この作品の著作権は水山 虎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
クリスマース! メリークリスマース!
水山 虎です。なんでサンタさんって……の質問に答える話デス!
 ようやく童話らしくなってきましたね! さあ、批評でも好評でも
メリークリスマス!

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