『この雨が止むまでは(短編)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:水彩えのぐ
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
「大嫌いよ」
「大嫌い」
「近寄らないで」
目の前の青年は悲しそうにわらった。罪悪感なんかわかなかった
彼を傷つける事なんかにためらいなんかなかった
だって大嫌いなんだもの。憎んでいるといっても過言じゃないわ
「そんなに僕が嫌い?」
人のいい笑みを浮かべて彼は言う
整った顔立ちでそれはとても綺麗だ。私なんかがかなわない位
大嫌いよ。貴方の顔を見るたびに吐き気がするわ
そう言っても彼の笑みは消えない。なんだかむしょうに腹が立ってきた。
「でも僕は君が好きだよ」
だから何?それで何が変わるの?
その願いがかなうとでも思っているの?
だったら貴方は破滅的な大馬鹿野郎ね
トウフの角に頭ぶつけて死んでしまえばいいんだわ
「ねえ?本当に君は僕が嫌いなんだよね?」
何度言わせれば気が済むのかしら。あなたこそ本当に馬鹿なんじゃないの?
「だったら君は何で泣いてるの?」
ああ、頬が冷たいと思ったら雨じゃなかったんだ
知らないわそんな理由。おかしいなんて言わせない
人間なんて矛盾を糧にして生きてるんだから
そう言ったら彼はぽかんとして本当におかしそうに笑った。
「ねえ」
「僕は君が好きだよ」
だからそれを言ってどうするというの?何がしたいの?
私に何を言わせたいの?私に何をさせたいの?
どさくさに紛れて近づかないでよ
一歩下がろうとすればすぐ後ろは白い壁。ああ畜生
ねえ私に逃げる道はもうないの?
「僕は君が好きだよ
だから
泣かないで」
そんなの私の勝手でしょう?
指図なんかしないで。命令なんかしないで
あなたにそんな権利無いんだから。抱きつかないで。気持ち悪い
離して。束縛する権利なんてあなたに無い
そうこうするうちに雨が降ってきた
外で立ち尽くすしかない私の体は冷えてくる
こうなったのもこいつのせいだ。だけど
接している彼の体温がとても暖かくて
不覚にも安心してしまって。むしょうにまた泣きたくなった。
ねえ。本当はわかってるよ。わかってる
この相反するこの気持ちの名前を
だけど、もう少し、この侵食される心を無視させて
あと少しの間だけ、せめてこの雨が止むまでは
あなたが大嫌いな私でいさせてください
2004/12/09(Thu)22:15:18 公開 /
水彩えのぐ
■この作品の著作権は
水彩えのぐさん
にあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
長編がありますが投稿してしまいました。
感想ご指南おまちしております
作品の感想については、
登竜門:通常版(横書き)
をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で
42文字折り返し
の『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。