『ヴィランズ』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:龍塵                

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お前は本当にこんな結果を望んでいたのか?

僕は望んでいた。あんな奴等、早く『あれ』になれば良かったんだよ。



何なんだよあいつ等は!死なないぞ!
どんなに撃ってもキリがない!あそこの小屋まで走るんだ!

「どうなってんだよ、あいつ等の体は」
小屋の扉に鍵を掛けながら『ジョン・アールハイド』は言った。
「どうなってるかって?知ってるはずないじゃないか」
もう一人の青年、『マイケル・R・ゴッサム』が独り言のように呟いた。
小屋の隅で『フィレンツェ・ワトソン』は縮こまっている。

村に戻ったら、皆ああなってた。首に変なモンがついてて、襲ってきた。
でも、どれだけ撃っても死なない。他に生き残ってたこの二人と一緒に逃げてきた。この小屋は頑丈そうだが、いつ扉が突き破られるかは分からない。

実際問題として小屋の外で奴等が叫んでいるのが聞こえる。

あいつ等は武器を使ってくる。ただ単に引っ掻いたり、噛み付いてきたりするのではない。一応知能はあるようだ。
知能があるって事は銃だって使える。どのくらいこの小屋は持つのだろう。
生き残り全員、武器を持っているが、奴等に比べれば貧弱だ。
奴等が色々なライフル、ピストル、斧などを持っているのに対して、俺たちは小型の拳銃とナイフ位だ。弾も少ない。

「おいフィレンツェ、泣くな。」
フィレンツェの涙をハンカチで拭ってやった。
でも、俺だって泣きたい。
マイケルも泣いていた。マイケルは自分の家族も奴等になっていたらしい。
俺とフィレンツェは一人暮らしだから家族は住んでいない。

俺は血塗れのジャケットを脱ぎ、裂いて包帯にした。腕の包丁で切られた傷に巻きつけた。
奴等の名前を、仮に『ゾンビ』としておこう。
ゾンビっていうのは、生きる屍の事だ。ゾンビに襲われた奴等もゾンビになる。ゾンビと戦うのはギャンブルだ。戦いに負け、敵を増やすか。勝って、敵が減るか。0か1かのデジタル的な考え方だ。
でも、包丁なら大丈夫(きっと)だろう。ゾンビ自体から攻撃を受けた訳ではないのだから・・。



何時間寝ていたのだろう。もう夜だ。ゾンビ達は諦めて引き上げたようだ。
さて、もう一眠りするか。

でもやめた。何故かって?天井を見てごらん・・。


ゾンビ六匹程の体が入り込んでいるのが見えるだろう。
ぎゃああっ、ぐあわああ、というゾンビの泣き声で他の二人も起きたようだ。

「早く小屋から出るぞっ!」
「あああああっ!」

屋根が壊れてゾンビ達が落ちてきた。俺達の新鮮な肉を求めてゾンビがよたよたを歩いてくる。
小屋の扉の鍵を開け、外に出た。
でも、ゾンビ達はまだいた。知能がある、という事を忘れていた。
叫ぶのをやめたのだろう・・。
「ぎゃあああーぁっあーぁーっー!」
フィレンツェが声にならない声を出す。
ぎゃああああっ!ゾンビ達が一斉に襲ってきた。
腰から銃をとり、とにかく撃った。
「わああああああああ!」
殺すことは出来ないが、怯ませる事なら出来る。
怯んだ隙に走り出した。脱出路を探しに・・。

ゾンビ達が起き上がり、追跡して来た。
でも全速力で走ったため、ゾンビが追いつくことは無いと思う。

三人は森の中に入った。とにかく遠くへ行き、ゾンビ達がいないのを確認して、小さな洞窟に入った。入口は枯れ木や草で隠しておいた。

俺達はやっとゆっくり眠れる場所を見つけたのであった。



続く―


2004/11/23(Tue)14:42:03 公開 / 龍塵
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