『いつか貴方と一千の星−中−』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:柳沢 風                

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だんだん、空が夕日に満ちてきた。
でも俺は全然、
そのことに気付かなかった。
今俺に見えるのは山のてっぺんに建つ、一軒の洋館の主人の、
『星紅』という少女だけだった。
「勇人さん、・・そろそろ夜です。
中に入りましょう。大丈夫、窓からでも星は見れます」
星紅はそう言って洋館の中に入ろうとする。
だが俺は苛立って、
横を通ろうとする星紅の腕をぐいっと掴んだ。
「は、勇人さん!?」
星紅は驚いて、顔を真っ赤にさせる。
俺はそんな星紅を見て、また苛立って言った。
「俺、『ここの星の言い伝え』っていうの、
まだ教えてもらってないんだけど」
すると星紅は顔を暗くさせた。
俺はぎょっとして星紅の細い腕をはなした。
「な、なんか悪いこと言ったか俺・・」
星紅は首を横に振ると薄っすらと笑って言った。
「ごめんなさい。でも勇人さんはここで初めての星を見るんだから、
今知ってしまったら、星が綺麗じゃなくなります」
それだけ言うと、
星紅は小走りに洋館の中に入っていってしまった。
俺は軽く舌打ちをした。
人を気にならせておいて言わないのかい!
というか、
そんなに重大なことなのか?
ここの星の言い伝えって・・・。
俺がそんなことを思いながら洋館に向かおうとしたとき、
ぱっとあたりの色がかわった。
茜色から薄暗く、そしてみたこともないような不思議な色に・・・。
俺はまさかと思って振り向く。
するとそこには、
夜空に満点の星―・・・。
つい「わあ」っと声を上げてしまった。
顔が熱くなるのを感じる。
「これが・・・星・・」
ここから見たら、豆粒くらいの大きさだ。
「星って、宇宙にある位だからもっと小さいのかと思った」
豆粒くらいから出ているとは思えない、力強い光。
「・・・きれいだな」
数的に、百・・・嫌もっとある。
「一千個位あるんじゃないか?」
周りは星の光でライトアップされた紅葉。
そして上空では夜空に満点の星。
それを見つめながら俺はぼそりと呟いた。
「懐かしい・・・」
この言葉に意味があるのかないのか、自分でも分からなかった。
だが俺は『懐かしい』と思う理由はないし、
何故そう思ったのか分からない。
でも不思議と、そう思った。
それと同時に睡魔が襲ってきた。
『ここで寝たら一発で風邪ひくぞ』
と、自分に言っても無駄だった。
俺はすぐに地面で眠りについた。





親父と星紅は、
地面で寝てしまった俺が丁度見えない位置で星を見ていた。
親父は星空を見ながらそっと口を開いた。
「あのこと、勇人に言うつもりかい?」
星紅は一拍おいてからこくんとうなずく。
それを見て、親父は苦い顔をする。
「だが、言えば勇人は・・」
「わかっています。でも勇人さんはいい人です。
私、勇人さんが言うなら・・・、もういいんだって思います」
星紅は静かにいう。
親父はそれを聞いて、小さなため息をついた。
「君が決めたことだ。私は咎めはしない」
それだけ言うと、親父は自分の部屋に行こうとしたのを止めた。
そして半分だけ振り返り言う。
「君は、勇人を好きになったのか?」
星紅はぼっと赤くなる。
「何故ですか!?」
星紅が大声できくと、親父は少し笑う。
「だって、今の君が他の人を『いい人』というのは初めてじゃないか?」
「そ、そうですけど・・」
星紅の顔がどんどん赤くなっていく。
すると、妙にあがった声で騒ぎ出した。
「は、勇人さんはお友達だからですよ。
だから、えと、幸せになってほしいって思って・・、
だから私は別にどうなってもって・・・・」
そこまで言うと、星紅は暗い顔になった。
そして少し顔を上げるとぼそりと言った。
「それに、私は人を好きになっても叶うことなんてないんです・・・」
そう言うと、親父は少し眉間にしわを寄せ、
なにも言わずに奥へ行ってしまった。
星紅はそれを見送ると、ゆっくりと顔を夜空に向けた。
空には綺麗な一千の星。
それを見ながら星紅は、一粒の涙を流した。
「そう、私は人を好きになっても無駄なんです・・」
星光が星紅の小さな体を照らす。
「もしかしたら、これが私にとって最後の星空なのかもしれませんね・・」
星紅の涙が地面をぬらした。





「ひとりで見る一千の星は・・・寂しいです」
何故か、星紅の頭の中で、
この一千の星を幸せそうに見つめる勇人の顔が浮かんだ。
「勇人さん・・。一千の星はきれいでしたか・・?」
だんだん朝日が昇り、
一千の星が消えていく。
「私は・・、貴方に『あのこと』を言えるでしょうか・・・、
でもそうしたら・・、私は二度と・・・」
一度止まった涙がまた、星紅の瞳から溢れてきた。
「二度と、貴方と一千の星を見ることはできないんですね・・・」
―どうして、こんなに貴方の顔が浮かんでくるんだろう。
次々、涙が溢れてくる。
星紅は下へうつむいて、かすれた声で言った。


「最後に・・、貴方と一千の星を見たかったです・・・。勇人さんっ・・」

星紅の後ろにあった紅葉が、
ゆっくりと散った。


2003/12/06(Sat)21:54:31 公開 / 柳沢 風
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■作者からのメッセージ
なんだか書くの遅くなりました。
すみません。いつもまだらで・・(汗)
それと、この話は前・後編の予定だったのですが、話が長くなって前・中・後編になってしまいましたー!すみませんー。
それと今回の話、
よく分からないかも・・。

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