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『粉雪のシンキロウ』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:うさぎ あゆみ
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『ねえ、勇くん。知ってた? 雪ってね、ときどき幻を見せるのよ。』
『まぼろしってなぁに? お母さん』
『う〜ん・・・それはね―――――――。』
―――――――それは、何?ねえ、続きを教えてよ。母さん!!!
ハッ
「夢・・・か」
オレは、頭をボリボリ掻きながら、起き上がった。
ったく、18歳にもなったのに、まだ母さんが死んだ夢を見て泣くのかよ・・。
オレは、側にあったティッシュで頬の涙を乱暴に拭き取った。
18歳の誕生日をむかえた朝、オレの気分を最悪だった。
母さんが死んだのは、オレが6歳のときだ。当たり前の話だが、あまり記臆に残っていない。
なのに、時々・・・思い出したかのように、母さんの夢を見る。
いつも、いつも、同じ内容の夢だ。繰り返し・・・繰り返し・・・。
『勇くん・・・寒くない?お母さんのマフラー、貸してあげるよ?』
幼いオレ。その横にいるのは・・・
チッ・・・!
オレは、すべてを忘れるように、頭を思いっきり振った。ついでに、昨日から置きっぱなしのコーラをイッキ飲みする。
最近、父さんも忙しいし、寂しいのかな?・・・オレ。
母さんのことは、もう過去のことなんだ。
忘れなきゃ。
コーラのおかげで、だいぶ気分が良くなってきた。
「そういえば、今日はバイトの日だったな」
オレは、そう言うと、気合いを入れてベットから飛び出した。
そうだよ・・・。今まで、母さんがいなくたって、父さんと二人でがんばってきたじゃないか!
別に、今さら母さんに会いたいとか思わない!!
そうだ、寂しいなんて思うわけ・・・・・ないんだ。
無理やり自分に言い聞かせ、オレは少し安心した。
しかし、そのまま、何気なく窓を見ると―――、
「雪!?」
なんと、外は一面、銀世界だったのだ。
「・・・ここは都会なのに。」
その時、
〃勇くん・・・〃
気のせいだったかもしれない。いや、気のせいだったに違いない。
でも、確かにオレの耳に、懐かしい母さんの声が聞えたような気がしたんだ。
「か、母さん・・・??」
その瞬間。今まで、ずっと思い出せなかった記憶が頭をかすめた。
『まぼろしってなぁに? お母さん』
・・・これは、今朝の夢の続き?
『う〜ん、それはね・・。自分がずっと思っていたことが、目の前に現れることよ』
『ウーン。ぼく、よくわかんないなぁ』
『じゃあ、勇くんがもっと大人になったときにね、お母さんが見せてあげるわ。だから、その時まで・・・お母さんを忘れないでね?』
母さんはそう言いながら、オレを抱きしめた。
『うん。あたりまえだよ。お母さん・・・なんで泣くの?』
その時には、母さんは自分の命があとわずかだと、知っていたに違いない。
なのに・・・幼かったオレには、それが分からなかった。
〃勇くん、お母さんのこと・・・覚えていてくれたんだね〃
その声で、オレは現実に引き戻された。
オレの心の中だけに響く、母さんの声。
「当たり前だろ・・・母さん」
オレは、そっと呟いた。
「忘れるかよ!この先もずっと・・・ずっと・・・」
そのまま、オレは長い時間、泣き続けた。
気がついて窓を見ると、いつの間にか、雪はみぞれに変わっている。
自分も、いつも日常の中にいた。
まるで、さっきまでの出来事がウソだったかのように・・・。
もしかすると――――、
今までの出来事は、粉雪が見せてくれた、束の間の幻だったのかもしれない。
でも、もう・・・強がったりはしないよ。母さん・・・・
ありがとう
《完》
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2003/08/28(Thu)00:57:18 公開 / うさぎ あゆみ
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■作者からのメッセージ
どうも!初投稿の「うさぎ あゆみ」です。
こんな駄文を読んでくださり、感謝します。
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