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『粉雪のシンキロウ』 作者:うさぎ あゆみ / 未分類 未分類
全角1576.5文字
容量3153 bytes
原稿用紙約7.35枚






『ねえ、勇くん。知ってた? 雪ってね、ときどき幻を見せるのよ。』




『まぼろしってなぁに? お母さん』




『う〜ん・・・それはね―――――――。』







―――――――それは、何?ねえ、続きを教えてよ。母さん!!!



ハッ

「夢・・・か」

オレは、頭をボリボリ掻きながら、起き上がった。

ったく、18歳にもなったのに、まだ母さんが死んだ夢を見て泣くのかよ・・。

オレは、側にあったティッシュで頬の涙を乱暴に拭き取った。

18歳の誕生日をむかえた朝、オレの気分を最悪だった。

母さんが死んだのは、オレが6歳のときだ。当たり前の話だが、あまり記臆に残っていない。

なのに、時々・・・思い出したかのように、母さんの夢を見る。

いつも、いつも、同じ内容の夢だ。繰り返し・・・繰り返し・・・。


『勇くん・・・寒くない?お母さんのマフラー、貸してあげるよ?』


幼いオレ。その横にいるのは・・・

チッ・・・!

オレは、すべてを忘れるように、頭を思いっきり振った。ついでに、昨日から置きっぱなしのコーラをイッキ飲みする。

最近、父さんも忙しいし、寂しいのかな?・・・オレ。



母さんのことは、もう過去のことなんだ。
忘れなきゃ。


コーラのおかげで、だいぶ気分が良くなってきた。

「そういえば、今日はバイトの日だったな」

オレは、そう言うと、気合いを入れてベットから飛び出した。



そうだよ・・・。今まで、母さんがいなくたって、父さんと二人でがんばってきたじゃないか!

別に、今さら母さんに会いたいとか思わない!!

そうだ、寂しいなんて思うわけ・・・・・ないんだ。



無理やり自分に言い聞かせ、オレは少し安心した。

しかし、そのまま、何気なく窓を見ると―――、

「雪!?」

なんと、外は一面、銀世界だったのだ。

「・・・ここは都会なのに。」

    
  その時、

 

 〃勇くん・・・〃




気のせいだったかもしれない。いや、気のせいだったに違いない。

でも、確かにオレの耳に、懐かしい母さんの声が聞えたような気がしたんだ。

「か、母さん・・・??」







その瞬間。今まで、ずっと思い出せなかった記憶が頭をかすめた。


『まぼろしってなぁに? お母さん』

・・・これは、今朝の夢の続き?

『う〜ん、それはね・・。自分がずっと思っていたことが、目の前に現れることよ』

『ウーン。ぼく、よくわかんないなぁ』

『じゃあ、勇くんがもっと大人になったときにね、お母さんが見せてあげるわ。だから、その時まで・・・お母さんを忘れないでね?』

母さんはそう言いながら、オレを抱きしめた。

『うん。あたりまえだよ。お母さん・・・なんで泣くの?』

その時には、母さんは自分の命があとわずかだと、知っていたに違いない。

なのに・・・幼かったオレには、それが分からなかった。



   


〃勇くん、お母さんのこと・・・覚えていてくれたんだね〃



その声で、オレは現実に引き戻された。




オレの心の中だけに響く、母さんの声。

「当たり前だろ・・・母さん」

オレは、そっと呟いた。

「忘れるかよ!この先もずっと・・・ずっと・・・」

そのまま、オレは長い時間、泣き続けた。







気がついて窓を見ると、いつの間にか、雪はみぞれに変わっている。

自分も、いつも日常の中にいた。

まるで、さっきまでの出来事がウソだったかのように・・・。





もしかすると――――、





今までの出来事は、粉雪が見せてくれた、束の間の幻だったのかもしれない。



でも、もう・・・強がったりはしないよ。母さん・・・・





                                     ありがとう


                                                 《完》
2003/08/28(Thu)00:57:18 公開 / うさぎ あゆみ
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■作者からのメッセージ
どうも!初投稿の「うさぎ あゆみ」です。
こんな駄文を読んでくださり、感謝します。
できれば、コメントをくださるとありがたいです。
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