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『アフターエンド』 作者:富士見ハル / リアル・現代 ファンタジー
全角4466文字
容量8932 bytes
原稿用紙約13.1枚
 絶対に壊れないように作られた少年型のロボット、モスト。その強さは、地球上のどんなものも上回っていた。だから、世界中のすべての命が姿を消しても、彼だけは生き残ってしまった。*グロテスクな描写をいくつか入れてしまったので、苦手な方は注意していただきたいです。
 八月の、茹だるような昼下がり。その日も地球の上には最近七十億を突破した数の人が暮らし、十五万を前後する数の人が死んでいた。その中の一人に、少年がいた。
 その死因は、悲劇的な一家心中でも、探偵や刑事を必要とするような殺人事件でもない。これといったドラマ性のない、不謹慎な記述をすれば「つまらない」、事故死。
 文房具店に急いでいた彼は、曲がり角の向こう側に配慮を配っていなかった。そのため、トラックに撥ね飛ばされた。目撃者によると、その体は数メートル吹き飛び、地面に叩きつけられて即死したという。
 そんな、小さな地方局のくだらないことをぐだぐだと述べ連ねるニュース番組でも伝えられないような、どこにでも転がっているような死。ある男は悲しみ、それを否定しようとした。
 少年の、父親だった。
 彼は科学者だった。少年を悼んだ父親は、彼と同じ背丈、体型、顔のボディを持ったロボットに、彼と同じ仕草、記憶、人格のプログラムをインストールした。
 「それ」は、今度は失うことの無いよう、決して壊れないように作られた。
 彼を殺したトラックに轢かれても、刃物で切り刻もうとしても、エネルギー源が絶たれても、けろりと笑っていられるように。
 「それ」は、当時の技術力、或いはそれより先の未来の技術力の中で「最高」と思われるものを注ぎ込んだため、「モスト」と呼ばれた。
 モストは生き残った。
科学の発達の裏で生み出された大量殺人兵器が、彼以外のありとあらゆる生物を根こそぎ消し去っても。
世界が「終わった」」と言える状態になってしまっても。
 第三次世界大戦。
 暑い日にバケツで水をぶちまけるように強力な兵器を使った最終戦争。それによってあらゆる生物が死に絶えた地球の上で、モストは目を覚ました。
「……はぁ」
 見渡す限り死体だらけの周りを見渡す。そして、モストは地球が終わったことが夢であるか、もしくは自分が他の生物同様死んでいないだろうかという二つの希望が今日も果たされていないことに溜息をつく。
 彼は自分以外の全てが死に絶えたとわかった当初、機械の心は張り裂けた。据え置きの記憶にたたずむ友人たちを失った喪失感に嘆いた。自分を強く作りすぎた父親を作り物の感情で憎んだ。
 けれど、不死身の肉体と同様に強靭に作られた精神力と適応力は、すぐにモストをこの状況に対応できるように作り替え、今に至っている。
「……ここも駄目か」
 モストは荒廃しきった世界を歩き続ける。彼は、自分を満足させることのできるものを探していた。
 悲しみに適応しきった彼の人工知能が現在示すのは、退屈さだけ。故に、モストはその退屈さを紛らわすことのできるものを探す。
 そうして地球をすでに半周。
 当然ながら、全てが死滅した世界には、彼の目に映るものは死体とがれきしかない。進めども進めども景色の変わらない大地は、モストの退屈さを助長させるばかりだった。
 けれど、折り重なる死体の山を見て、モストの万能の人工知能は閃いた。周りに死体とがれきしかないのなら、いっそそれらを使ってしまえばいいと。
 自分の妙案ににやにやと顔をほころばせながら、モストは死体に飛びついた。誰かの腕がぼきりと折れたが、構わずにモストは屍の山を漁る。
 黒こげになったもの。腕や足がちぎれているもの。皮膚や肉がそげて内蔵がでろりと外へ出ているもの。
 それら「不要な死体」を、子供がおもちゃ箱から目当てでないものを外へ投げ出すように放っていく。そうしていくうちに、モストは彼の眼鏡に適うものを見つけた。
 ほとんど外傷のない、状態の良い彼と同年代と思われる少女の死体。ポケットに入っていた学生証には、彼女の写真と「アンナ」という名前が記されている。
「……これでいいか」
 モストは満足げに笑った。嬉々として少し前に目を付けた場所にアンナの死体を担いで向かう。
 がれきの中から掘り出した、ぼろぼろの柱だけが残っている、家だったと思われる空間。
 そこに椅子代わりの大きながれき二つと、同じような机代わりのものを並べ、「椅子」の一つにアンナの死体を座らせる。
「今日からここが僕たちの家だよ。よろしくね、アンナ」
 にっこりとモストは笑いかける。しかし、とうに命の尽きた彼女のうつろな眼に反応は見られない。だが、彼はそれでもアンナに話しかけ続けた。
 死体と空想上の生活をする、狂気じみたおままごと。それが、モストが退屈しのぎに選んだ手段だった。
 死骸をむさぼるバクテリアやうじ虫すらいない今の地球上で、風化することを除けば彼女が朽ちることはない。飽きるまで半永久に続けられるこの遊びは、モストには名案であるかのように思えた。
「おままごと」を始めて数日、今日もモストは散歩から帰ってきて「家」で待っていたアンナに話しかけた。
「ただいま。やっぱり、僕たちの他には誰もいないね」
 アンナは返答しない。たとえモストが、どんなに面白いジョークを言ったとしても。どんなに巧妙な嘘をついても。どんなに下品な罵声をあげても。
 彼が何を言っても、死体である彼女の抜け殻の顔は、変化を見せなかった。
 またある日、モストはアンナと同じように状態のいい犬の死体を持ってきた。
「ほら、ペットを連れてきたよ!」
 モストは一生懸命犬を振って見せたが、彼女は目を輝かせて犬を撫でることも、驚いて犬に怯えることもない。
 つまらなくなった彼は、犬を遠くに放り投げてしまった。
 そして何日かして、モストの怒りが爆発する。
「いい加減にしろよ! なんで何もしゃべらないんだ! 君を元いた場所から引きずり出したのがそんなに不満だったのか!?」
 そう叫んだモストは、アンナを睨みつけてはっとする。
 彼女は死んでいる。
 死体である彼女が、一言でも喋るはずはない。自分は一体何をしていたのだろうと、モストは我に返り、現実と妄想の境がいつの間にか消失していたことに焦る。
 あくまでも死体に話しかけるのは「おままごと」である。そう自分に言い聞かせているうちに、モストはアンナとあまり話さなくなっていた。
 そして。
 彼女の体から、うじが湧いた。
 モストは驚いた。
死に絶えたはずの生物が存在している。地球を滅亡させるような威力の兵器をモストのように耐えきったのか、それとも荒廃した世界に対応した生物が生まれたのか。
 そんなことよりも、アンナの体が食い荒らされているという事実が、モストには衝撃だった。モストは慌てて彼女の体から湧き出てくるうじを払う。けれど、払えども払えども、彼女の体に巣食った彼らは、あがくモストをあざ笑うかのように、自分たちの復活を祝うかのように、彼らはうねうねと気味の悪いダンスパーティーにいそしんでいる。
「くそっ!!」
 ぼろぼろとアンナの肉が顔から零れ落ちるのを見たモストは、悔し紛れに手にこびりついたうじたちを叩き潰してがれきの中に座り込んだ。
 アンナの肉体が消えれば、また自分は一人になる。
 その恐怖にかられた彼は、いるかどうかも分からない神に震えながら祈った。彼女を連れて行かないでくれと。自分を連れて行かないでくれと。自分をまた孤独の地獄にほ織り込まないでくれと。自らの創造主ではないとわかりきっている神に、ひたすらに祈り続けた。
 けれど、モストが祈り続けた「ソレ」は、彼に対して微笑まなかった。
 彼女の体は数日のうちに確実に朽ち、体のいたる個所の肉はどろどろに溶け、骨が見えるようになっていった。
 それを目の当たりにし続けてきたモストの眼も、生気を失っていた。
「もうやめてくれよ……」
 彼は、腐りかけ、いやすでにかなり腐敗の進んでいるアンナに力なく語りかけた。
「もう僕を一人にしないでくれ……」
 ゆっくりとアンナに語りかけるうちに、モストは自分の心の中に引っかかっていたものを見つけた。そして、それが自分の心に突き刺さって抜け無くなる前に何とかしなければならないということも。
「僕、やっぱり君が好きだったみたいだ。君を失いそうになってようやく気付いたよ。たとえ君が死体でも、腐っていても、やっぱり僕は君を愛さずにはいられないみたいなんだよ。アンナ、君はどうだい? 僕のことを愛してくれるかい?」
 モストがそうアンナに問いかけると、彼女の首が縦に動いた。
 そしてそのまま、彼女の頭は地面に落ちた。
「アンナ!!」
 血相を変えたモストが叫ぶが、その声はぐずぐずに腐ったアンナの耳には届かない。熟れすぎたトマトのように潰れた彼女の頭部を見て、モストは泣き叫んだ。その涙が涸れてもなお彼は悲しみに叫び続けた。彼の悲痛な声は、誰もいない荒野に響き渡った。
 そして、彼はやがてその悲しみにすら慣れてしまった頃、「それ」を見つけた。
 折れてしまったアンナの首の断面から、小さな植物の芽が出ているのを、モストは見つけたのだ。
 うじの時には喜ぶことの出来なかった、確かな生命の再生。終わったと思っていた世界は、まだ終わっていなかったのだ。
 そして彼は考えた。もしももっとこの世界が再生して、昔のような豊かな大地や澄んだ空気が戻ってくれば、彼女が生まれ変わった時に嬉しいのではないかと。
「……よし、行ってくるよアンナ。この植物を増やして、世界中に一緒に植えるんだ」
 それからモストは住処を離れ、死体の山にあふれた世界を、かつてのように歩き続けた。ただ、昔と違うのは、再生の兆しが見えてきた世界において、彼の努力が無駄に終わることは殆どなかったということだ。
 モストは植物の芽に水をやり、風に当たって倒れないようについたてをつくってやったりした。そうしていくうちに植物は少しずつ種を実らせ始め、それを彼はまた別の場所に植えて芽生えさせ、育てるのを繰り返した。
 そうした彼の行いは実り始め、世界には緑が戻り始め、死肉にたかるうじやハエ以外の小動物も姿を現すようになった。
 そうしたころに、彼はたどり着いた。
「……わぁ」
 そこにあったのは、地面を踏みしめるような強靭な根に、何があっても倒れずに堪えられそうな太くたくましい幹、そして大空を掴むように伸びた青々とした枝を持った、巨大な樹だった。モストはその周りを見渡してあることに気づき、跪いて涙を流し始めた。
「久しぶりだね、アンナ……」
 彼はひたすら歩き続けるうちに星を一周し、また彼女と別れた場所まで戻ってきていたのだ。そして朽ちた彼女の体は、やがて養分となり、大樹を育てるまでになっていた。
「今、この星は、君の体に生えていた植物でいっぱいだよ。君が生んで、僕が育てた。まるで僕たちの子供みたいだ」
 そういうと、モストは愛おしそうに大樹の幹を撫でた。ごつごつとした肌触りではあるものの、最愛の人を感じながら。
「……おかしいな、僕疲れちゃったみたいだ、少し休むよ」
 そういうと彼は、アンナを確かに感じる大樹の幹をしがみつくように抱きしめながら、静かに目を閉じた。
2012/09/18(Tue)01:05:21 公開 / 富士見ハル
■この作品の著作権は富士見ハルさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 いかがだったでしょうか?
 小説を書いて投稿するのは初めてなので、批評などはできればお手柔らかにお願いしたいです。
 しかし改善できる点がございましたら、感想などで指摘していただければ嬉しいです。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは。おもしろかったです。
しかし、長くて意味のわかりにくい文章もいくつかありました。
また、少年の死、ロボット製作、戦争、ままごと……と話が急展開するため、すこしコメディーチックに感じられました。軽めのお話に仕上がっているなとは思いましたが、もしそういう意図でないのなら、ちょっと考え直してみてもいいのかもしれません。
2012/09/17(Mon)21:32:100点ゆうら 佑
>ゆうら 佑さん
感想ありがとうございます。
とりあえず自分で長いなと思った文章を短く区切ってみました。
また、序盤はあえて展開を早くして少年の死や戦争を唐突な感じにしたかったのですが、わかりにくかったようですね。
少しずつ直していきたいと思います。
2012/09/17(Mon)21:57:020点富士見ハル
ありがとうございます。
自分としては、たとえば「狂的な人類の好奇心によって異常に発達された科学技術の生み出した兵器を使った戦争が、」という主語が長いなあと感じられました。
展開についてはぼくの感想に過ぎないので、あまり気にしないでくださいね。
次の作品も期待しております。
2012/09/17(Mon)22:55:240点ゆうら 佑
気付かずに申し訳ありません! 確かに長すぎましたね。
回りくどい表現ではいらいらする方もいるでしょうし、なおさせていただきました。
2012/09/18(Tue)01:13:170点富士見ハル
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