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『暗黒少女』 作者:プリウス / ショート*2 未分類
全角3613.5文字
容量7227 bytes
原稿用紙約9.75枚
「実験をしよう」
 僕の上司であるところの黒岩ルイ助手はなにやら大きな箱に手を乗せてそう言った。いつの間にこんな大きな箱がこんな狭い部屋に運び込まれたのだろう。箱はどうも鉄で出来ているようだ。鉛なのかアルミなのかまでは分からない。とにかく一般的に鉄と呼ばれる何かで出来ているように見える。物々しい存在感を放っている。どこかの銀行の地下にでもありそうな、金庫を思わせるバルブ式の扉が付いている。この箱を置くためにだろうか、部屋にあった机や椅子は全部綺麗さっぱりどこかに消えていた。
「実験って、その箱が何か関係しているのですか。その箱の中にはいったい何が。と言うか、そんな大きな箱、どうやってこの部屋に入れたんですか。ドアからも窓からも入らなさそうな構造してますけど」
「ふむ。一度に複数の質問を重ねるのは君の悪い癖だね。まあ、順を追って説明してあげよう。まず最初に、このような巨大な鉄の塊をいかにして内部に取り込んだか、だが。それは全く物事の本質には関わり無い。些事だ。要するに屋内でこの箱を組み立てた、というだけのこと。何のトリックも無い」
 詰まらない回答で恐縮だが、とまったく恐縮した様子を見せずに言われた。なるほど、確かに言われてみれば箱は所々ネジなどで固定されている。外から見て溶接などは見当たらない。
「それから次に、この箱が実験に関係あるのかという質問だが、当然イエスだ。この状況で箱をスルーして話を進めると、いったい何のための箱なんだよ、ということになってしまう。朝早くから重いパーツを運んでこんな巨大な箱を組み立てた、私の苦労が全て台無しだ。ところで、これからが本題だ。君は『シュレーディンガーの猫』を知っているかい」
「あ、はい。不確定性原理の説明をする時によく言われるやつですよね。箱の中に猫がいるんだけれど、その猫が生きているか死んでいるかは箱を開けるまで分からないっていう」
 僕はこのあいだ観た某アニメの知識を総動員して説明した。黒岩さんは僕を見た。ちなみに今、この瞬間まで黒岩さんは僕に目もくれようとはしなかった。
「ふむ。はっきり言って不正確だが、その話で合っている。箱を開けるまで分からない、のではない。箱を開けても分からない、というのが正しい。例えば箱を開ける瞬間に猫を殺す仕掛けがあったとしよう。そうした場合、箱を開けたら猫は必ず死んでいる。だがその猫は果たして、箱を開ける前から死んでいたのだろうか。それとも箱を開けてしまったので死んだのだろうか。それは、すでに猫が死んでしまっているので観測者には知りようもない。観測者が観測する行為それ自体、観測対象に何かしらの影響を与えてしまう。これこそがまさに不確定性原理というものだ」
 なるほど、と僕は納得した。僕の説明だと、開ければ何かが解明されるという筋書きだ。けれどそれだと全く不確定性原理の説明になっていない。大事なことは、箱の中を知ることが不可能だということだったのに、僕はアニメのセリフをそのまま引用してしまったのだ。
「段々分かってきましたよ。その『シュレーディンガーの猫』の再現をやろうということですね。そのためにそんな大きな鉄の塊を用意した、と」
「察しが良いね。そのとおりだ呉羽(くれは)君」
 そう言って黒岩さんは唇を引き上げ、邪悪な笑みを浮かべた。悪寒が走る。嫌な予感がする。
 黒岩さんはここ、×××総研では助手の地位にいるけれど、実はれっきとした女子高生なのだ。風紀委員に目を付けられない程度に茶色の髪。ちなみにショートカット。たまに伊達で眼鏡をかけるけれど、実は視力は左右ともに二。身長は160cmジャスト。発育のいい胸をしていて、クラスの男子にも人気が高そうだ。今は白衣を着ているから少し大人びて見えるけれど、高校の制服を着ていればれっきとした少女だろう。そんな少女がどうしてこんなところで研究職をやっているか。それはとりもなおさず彼女の知能がずば抜けているからだ。彼女は中学を卒業する頃には論文をいくつかの学術雑誌に載せるほどだった。専門は情報技術だが、たまに社会学向けの論文も書いているらしい。
 そんな天才の下で補佐役のアルバイトを始めて、かれこれ二ヶ月になる。そしてその二ヶ月の間に学んだこと。それはこの天才少女、黒岩ルイは僕を苛めるのが大好きだということだ。明らかに怯えた表情を見せてしまったのだろう。黒岩さんは僕ににっこり笑って見せた。すごく可愛いのに、すごく怖い。
「さて、君の最後の質問に答えてあげなくてはね。この箱の中に、いったい何が入っているのかという質問だ。さきほど『シュレーディンガーの猫』について話したが、この箱にも猫が入っているということではない。生き物であれば、別に何でもいいのだからな」
「そりゃあそうですけど。じゃあ何を入れたって言うんですか」
「うむ。君の姉君、綾羽(あやは)くんを入れておいた」
 頭が真っ白になった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 僕のお姉さんがこの中にいるってことですか。それでさっき『シュレーディンガーの猫』の話をして、それの再現って、えっと、ちょっと待ってくださいよ! まさか本当に本気で僕の姉を殺すつもりなんですか。そりゃあ姉さんと黒岩さんが犬猿の仲だってことは知ってますよ。お別れの挨拶はいつも、さよならとかお疲れ様じゃなくて、いつか殺すっていうのも聞いてますよ。でも、そんな、いや、ちょっと待ってくださいよ!」
「三回も言わなくても私は待つぞ呉羽君。しかし、君の姉君が待てるだろうかな、この密閉された箱の中で。もうそれなりに時間も経っている。空気中の酸素も足りなくなる頃だ。そうだな、あと残り30分というところではないだろうか。だがまあ安心したまえ。まさか私とて本気で殺人犯になどなりたくはない。あの程度の女のために私の輝かしい未来を台無しにするのは、あまりにも費用対効果が無さ過ぎる。箱の中に仕掛けなどない。早く姉君を出してさしあげろ」
 僕は箱に駆け寄り、バルブに手をかけた。重い。手に力を込めて、勢いをつけて回転させる。僕の喉からうめき声が漏れた。一刻も早く姉さんを外に出してあげないといけない。この瞬間、僕の思考は完全に停止状態だった。バルブが軋むような音を立てる。回転も少しなめらかになってきた。南京錠の鍵が外れたよりもさらに大きな音が部屋に鳴り響いた。箱の鍵が開いたのだ。取っ手を掴んで、重たい扉を開く。姉さんを早く外に出したい一心で叫んだ。
「ねえさ……う、う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

【暗転】

「あんたって、本当に暇な人ね」
 開口一番、失礼なことをほざくこの女は池田綾羽。私の可愛い実験動物である池田呉羽君の戸籍上の姉である。「戸籍上の」と断ったのは、私が彼女をとても呉羽君の生物学上の姉とは信じられないからだ。呉羽君の可愛さは尋常ではない。本人は大学生と言っているが、あれはどう見ても男子中学生だ。しかもスカートがよく似合う。近いうちにメイド服を着せて秋葉原を歩かせたいと考えている。きっと大勢の愚かな男どもが、かがり火に群がる蛾のごとく引き寄せられてくるであろう。それに比べてこの綾羽という女。年の頃は二十台半ばか。胸や尻に無駄な肉が有り余り、女臭さを隠そうともしない。前時代的な表現をあえて使わせてもらえば、ボディコンというやつだ。名古屋でさえ珍しい名古屋嬢的なヘアスタイル。分かり安すぎるフェロモンには吐き気すら覚える。それにひきかえ、呉羽君のなんと清楚で可憐なことか。
「これはれっきとした心理学の実験なのだよ。君のごとき低脳では理解し難いのも無理はないがね」
「はあ、ばっかじゃない。こんなのただの、でっかいびっくり箱でしょ」
 部屋の中には、開かれた鉄の巨大な箱。床でのびている呉羽君。そして箱の中から飛び出した、ゾンビ……のお人形。髪型はきちんと名古屋嬢というこだわりっぷり。そう。綾羽の言ったとおり、これは巨大びっくり箱なのだ。純粋に呉羽君を驚かせるためだけに準備したものだ。彼のうろたえ、怯え、焦り、驚く姿を見るのがとてつもなく快感なのだ。
「今回も楽しかったぞ。呉羽君は本当、毎回期待通りのリアクションをしてくれる。騙し甲斐があるというものだ」
 さてと。ストレス発散もしたことだし、そろそろ仕事に戻るとしよう。呉羽君と遊んでばかりはいられない。今回のクライアントは、またやっかいな構造をしているからな。
2009/11/05(Thu)09:00:29 公開 / プリウス
■この作品の著作権はプリウスさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なにやら「祭」なようなので、新参者ですが参加させていただきました。
タイトルに「少女」を付けて、勝手に掌編を書けばいいという解釈です。
この掌編は自分の中で固まっていないキャラクターを、動かしてみるのに利用しました。
対象であるキャラクターを箱に入れて観測してみる、つまり実験です。
これを書く前まで、呉羽と綾羽は萌え系美少女姉妹という設定だったのですが、見る影もありません。
ちなみに作中で語っている「アニメ」は『うみねこの鳴く頃に』です。
殺人事件が人の手で行われたか、魔法で行われたか、観測していないところでは分からない。
そんな感じに「シュレーディンガーの猫箱」という言葉を使ってたのですが、なんか違うなと感じまして。

ご意見ご感想お待ちしております。
この作品に対する感想 - 昇順
どうも、鋏屋でございます。
あれれ? コレはもう一方のお話の番外編なのですか? それにしてもずいぶん雰囲気が違うじゃないですか。なんかちょっとだまされた感が沸いてきましたよw いや、良い意味でね。
いやしかし、コレが『囚人のジレンマ』のリンクした物語なら、あちらがもう少し進んでから、もしくは終わってから読みたかったという気がします。
私は『ひぐらし』『うみねこ』は見たことがないので『シュレーディンガーの箱猫』ってのも知らないんでそのあたりはスルーします。ゴメンナサイ。
スラスラ読めて面白かったです。次回投稿をお待ちしております。

鋏屋でした。
2009/11/05(Thu)10:19:430点鋏屋
こんにちは! 羽堕です♪
 やっぱり、黒岩ルイは、あちらの登場人物と同じなのかな? だとすると私も「囚人のジレンマ」の完結の後に読みたかったかもです。
 おもちゃにされているような呉羽などは、可哀想にと思いながらも、この二人相手じゃ、しょうがないかなんて納得できるような雰囲気がありました。でもただのビックリ箱で良かったです。
であ次回作を楽しみにしています♪
2009/11/05(Thu)15:12:060点羽堕
>鋏屋
人を騙すのは僕の趣味みたいなものです、お気になさらず。
「シュレーディンガーの猫」で検索してもらえれば、Wikipediaに詳細が載っておりますよ。
量子論に関する思考実験で、決して『うみねこ』のオリジナルではありません。
『囚人のジレンマ』に引き続き、感想ありがとうございます。
今後も一所懸命に裏切ってまいりますので、よろしくお願いします。

>羽堕
物語がリンクしているのか独立しているのか。
そのあたりは曖昧なままにさせていただきとうございます。
オチがびっくり箱というのは、ちょっと微妙だなあという気はしています(^^;
結末はもっと別のを考えていたのですが、全体の整合性が取れなくなったのでやめにしたのです。
考えながら書き上げた掌編なので、ご容赦ください。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
2009/11/05(Thu)16:35:580点プリウス
 はじめまして、プリウス様。上野文と申します。
 御作を読みました。
 面白かったです。
 面白かったですが、シュレディンガーの猫は「50%の確立で死ぬ箱の中に猫を入れたとする。開けて見るまでは、死んでいるか生きているかの確立は半々なので、生きている猫と死んだ猫が重なり合った状態で存在する。けれど我々は、”重なりあった状態を認識することはなく”、箱を開けた瞬間に生きている猫か、死んでいる猫のどちらか一方に収束して認識する(あるいは、猫の死亡を認識した観測者と、生存を認識した観測者のどちらか一方に収束する)」という思考実験です。
 作為的なものかもしれませんが、作中の解釈と実験は、その…趣旨がズレてませんか。いえ、名前だけシュレディンガーの猫にかこつけたネタだ、というなら、うみねこだってそうでしょうし(”悪魔の証明”、”ヘンペルのカラス”、”魔法”etc...いずれも作中独自の世界観の中で、”対戦者の使うカード”であると、作中で示唆されていたはず)
 そんな余談は脇においといて、黒岩助手の無茶なこりぶりと、呉羽くんのリアクションが面白かったです。
2009/11/05(Thu)23:23:460点上野文
>上野文
感想ありがとうございます。
シュレーディンガーについてはいつか突っ込まれるだろうとドキドキしていました。
仰るとおり、ズレています。
デリダの言うように現れてくるまで物事は確定しないというのが正しいと思います。
今回は「中身が何なのかは秘密だよ」的な伏線に使っていて、それはもう一方の『囚人のジレンマ』にも絡めています。
シュレーディンガーを知る上野文さんなら分かると思いますが、「囚人のジレンマ」も少しズレています。
元々はフォン・ノイマンの提唱したもので色んな形がありますが、それとはだいぶ異なる形式で物語を構成しています。
ただ、『うみねこ』で「対戦者の使うカード」云々の示唆があったことは見逃していました。
きちんと調べずにてきとうなことを書いてしまいました(汗)
ご指摘ありがとうございます。
竜騎士(うみねこ原作者)さん失礼しました。
2009/11/06(Fri)09:32:190点プリウス
作品を読ませていただきました。物語そのものにシュレディンガーの猫を出さなくても成立したんじゃないかなぁ。では、次回作品と連載の更新を期待しています。
2009/11/08(Sun)13:30:110点甘木
>甘木
ご意見ありがとうございます。
猫の話は確かにその通りで、要は「中身は秘密だよ」ということを言いたいだけでした。
もったいぶった大仰な言い方を好むということで、こういう感じに仕上げたのです。
連載の方は頭の中で色々と試行錯誤中。
頭の整理を兼ねて掌編を載せたりしますので、またご意見等よろしくお願いします。
2009/11/08(Sun)17:47:590点プリウス
おくればせながら拝読しましたゲフゲフ。水芭蕉猫ともうします。にゃあ。
どうにもこうにも読めなくて、しかし読みましたよシュレディンガー。というわけで、シュレディンガーの猫もうみねこ(アニメ)も好きです。そして美少年も好きなので、この話しは、呉羽くんを皆でいじめて愛でる物語として受け取っておきます。呉羽くんのリアクションが素敵で可愛かったです。
2009/11/18(Wed)22:58:040点水芭蕉猫
>水芭蕉猫さん
感想ありがとうございます。
はい、美少年は虐めてなんぼです。
今後ともよろしくお願いします。
2009/11/22(Sun)06:46:230点プリウス
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