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『幻影少女』 作者:水芭蕉猫 / 未分類 未分類
全角1509.5文字
容量3019 bytes
原稿用紙約4.55枚
 いつの間にか、私の頭の中には少女がいた。
 いつの頃からはっきりしたことは解らないが、物心ついたころから私の頭の中には少女が住まっていた。
 それはもしかしたら、幼い私が作り上げた幻想なのかもしれないけれど、その頃から確かに少女は私の頭の中に存在した。
 つややかな黒い髪に、同じく黒の目。マシュマロ菓子のように白い肌と、ほんのりと色づいたような頬に、ぷっくらした唇。
 とてもかわいらしい少女だった。
 私は、その頭の中の少女といつも遊んでいた。無論、手に触れることは出来ないので、喋るにしても独り言となってしまうだろう。それでも、目に見える玩具や食べ物を頭の中の少女に分け与えると、私の幻想を受け取った少女はいつもはにかむように笑ってくれた。
 母は、あの時のそれを、幼い子どもによくあるごっこ遊びの延長線だと思っていたらしいのだが、その少女は消えることなく何時までも私の中に存在し続けた。
 私は、少女と共に居られれば、それで満足であった。
 しかし、世間がそれを許さなかった。
 私が大きくなるにつれ、周りの仲間は現実の世界に彼女を作り、妻を作り、そして家族を築き上げて行ったのだ。
 私は、勇気のない男だった。だから、周りのその変化に焦りを感じていた。
 現実に何かを築き上げなければならない。現実に、何かを残さなければならない。現実に、私が私であるという痕跡を。
 私は少女を頭の中から追い出した。
 頭の中で泣きすがる、幼い私が幻想した少女を檻の中に閉じ込めて、そして記憶の闇の奥へと仕舞い込んでしまったのだ。
 そして私は現実の世界に恋人を作ることに成功した。
 それは、つややかな黒髪と黒目を持ち、あの砂糖菓子のような白い肌と、桜色の唇の、あの頭の中の少女と同じパーツを持った、私と同い年の、美しい、現実の女性だった。触ればしっかりとした肉感を返し、物を与えれば肉体を介して受け取ってくれる。
 そのことに私は歓喜した。
 まるで頭の中の少女を現実へと呼び出すことに成功したのだと思えるほどに。
 しかし、私は彼女とは長くは続かなかった。
 彼女は頭の中のあの少女とは違い、我侭な女だった。私の思った通りの反応を返してはくれなかった。私が良いと思って渡したものを、嫌いだとつき返えし、気分ではないと言っては食事の予定をキャンセルされることもままにある。
 現実のブランド、他人からどう見えるかを重視し、次第に私はただの財産としか見られていないことに気がついた時、私たちは破局した。
 悲しさは無かった。
 ただ、頭の中に住んでいたあの少女の幻影を失ったことが、とても寂しかった。
 それから、何人か、私は少女の幻想を追いかけて、少女とどこかが似た現実の女と付き合ってみたが、どの女も頭の中の少女とは違うのだ。
どれもこれもしっかりとした肉感で、どんなに口では愛を語っても、私をその皮膚と弾力でもって拒絶する。そして私は悟った。
 現実は、決して誰とも混じりあう事が出来ないのだ。と。
そのとき、私の中の少女の檻が破れた。
久方ぶりに出会う頭の中の少女はあの頃のまま、私の元へとおずおずと現れた。私が閉じ込めて、忘れ去ろうとしたのに、まるで自分が悪いことをしているような、そんな表情に、私は申し訳なく思った。
ごめんね。
そう頭の中で語りかけると、少女は私を抱きしめた。
「私は、あなたを裏切らないわ」
 少女が私に囁いた。
 ああ、私も、やはり君しか居ないんだ。
私は、少女を頭の中で抱きしめる。
 はっきりとした感触の無いその幻想の抱擁は、まるで二人の意識が溶け合い混ざり合うようで、それがとても嬉しくて私は酷く泣けそうになった。
2009/10/31(Sat)22:43:17 公開 / 水芭蕉猫
■この作品の著作権は水芭蕉猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
祭りの気配に誘われて、便乗作品ですが、やっぱりショートはとても難しいです。
少年にしようかなとも思ったのですが、やっぱり少女ってことで。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 羽堕です♪
 最初から勘違いしていて、小さな女の子が遊び相手として、頭の中で少女を空想していたのかと思っていたら、男性だったとは! 思いこみが激しいようで意外な程「えっ?!」と吃驚してしまいました。でも続きを読んで、男性のが面白いなって分かりました。
 そして男が少女を檻へと追いやる決心をする所では、それが普通の事なのかも知れないけど悲しかったです。そして自分にとって大切なのは少女だと気づく。少女が男の空想から生まれた幻影なのだとしたら、自分の幻影の虜になってしまった男が何だか羨ましくも感じました。でも少女には、それだけではないような存在感もあったように思います。
であ連載の続きも楽しみにしています♪
2009/11/01(Sun)11:46:400点羽堕
 水芭蕉猫さま、こんにちは。猫と少女を愛することでは決して人後に落ちない中村ケイタロウです。
 おう、そういう結末で来ましたか。
 僕のような内向的なタイプの人間にとっては、それはそれでひとつの理想郷かもしれないなあ。でもなあ、やっぱり、肉体を備えた人間じゃないとなあ……。なんとなく、自分の作品について考えさせられました。なんだかいつも、女性の身体を描写しているような気がする……。……。
 ……。
 …………。

 それにしても、「少女」シリーズ、面白いなあ。どんどん参入者が出てきますね。みんな、「少女」にいろんなイメージを持ってるんだ……。アンソロジーの本でも作りたくなるくらいです。
 それにしても、こんなペースで書かれてしまうと、感想書くのが追いつかないですよ。羽堕さんのすごさが、ちょっと擬似体験できた気がします。
2009/11/01(Sun)16:17:550点中村ケイタロウ
こんにちは水芭蕉猫様!ついえぬ幻影を追い求める頼家です。
なるほど……今回の『少女』は、理想化された主人公の『女性像』だったのかな?しかし主人公が、郷愁や幻想ではなく恋愛感情を抱いてしまわれていたのであれば……いやはや危ない結末に終着してしまったような感がありますね^^;
少女シリーズ、非常に楽しんで読ませていただきました♪では次回作。及び連載の続きもお待ちしておりマます!!
                頼家
2009/11/01(Sun)16:29:190点有馬 頼家
どうも、鋏屋です。
おおっ! 5人目だ。しかも猫殿立つ!!
なんてピュアなんでしょう。ヨゴレな私は胸が痛くなるですw
確かにはたから見たらちょっとアレだけど、誰でも理想の異性って頭の中に住んでいそうな気がするんですよね。だからこの男みたいな事は誰の心の中でも起こりうるんじゃないかって思いました。私はこのラストが好きだなぁ…… 猫殿らしい作品でちょっと嬉しかったです。
みんな凄いなぁ。この『少女シリーズ』? は書き手さん個人の色が感じられて楽しい。意外な一面も覗けますしw
さて、6人目は誰でしょうね。そろそろ狸殿も巣穴から起きてくるのかな? 
2009/11/01(Sun)16:50:120点鋏屋
 ども、湖悠っす!
 来ましたね。俺の友達の衝撃的な、「俺って彼女心にいくからさ」という言葉を思い出しました。そいつもまぁピュアな奴ではあるんですがね……(汗)
 心の中の彼女は裏切りませんね。確かにそうです。でもどこかにまた悲壮感がある。〜少女シリーズは皆切ないですな。どこかに透明感があるというか……。
 いやはや面白かった。これからも少女シリーズは面白い事になりそうです^^
2009/11/01(Sun)19:01:560点湖悠
どもです。
ただいま出店巡りをしています。
さておき、読んでいてタルパというチベット秘奥義を思い出しました。
妄想の究極体みたいなものなのですが、そう考えるとこの主人公実は凄いのでは?
まぁ人間幸せだったらそれで良いかな、という考えなので、これはこれで良しだと思います。

ではでは〜
2009/11/01(Sun)21:04:330点rathi
……若いぜ。
って、感想を使い回してどうする狸。
つまり、男の中で『少女の檻』が破れるには、この男の幼児性が足りなすぎる、あるいは現実上の破局が弱すぎるのではないか――生粋のろり親爺として、そう思ったりしてしまったのです。
でも、シヤワセだから許してしまう、やっぱり生粋のろり親爺。
2009/11/02(Mon)07:41:220点バニラダヌキ
こんばんはー、はじめまして。もげきちと申します。拝読させて頂きましたー
ううう、なんだかグサグサくる。自分の知り合いが、現実に「俺心に決めた二次元の大切な彼女がいる」とかいって事件を起こしていたのを思い出してしまったからだな>< うん。
でも、これはこれで自分はハッピーエンドだと思ったり。
冷静で、現実をみれる目を持っているのに、自分自身の意識を肥大化させ固執しているのは滑稽でそれでいて悲しいですね。ただ、少女が妄想の産物なだけではないとしたら……結構恐ろしいですね!
ではでは、なんだか好き勝手書いてしまいすみませんでした。以上もげきちでしたー
2009/11/02(Mon)18:46:160点もげきち
羽堕様>
お読みいただきありがとうございます!!
えぇ、実は最初の書き出しで、絶対読み手さんが勘違いするだろうなぁということを予測しながら書いてたりします。一人称「私」の殿方は何だか可愛くて、文中なら結構好きだったりします(笑)そうですね。いくら頭の中の存在とはいえ、嫌がるものを打ち消すのは結構可哀想ですよね。けれど、人はそうして周囲に合わせなければ現実世界でまともになれないので、仕方ないのだと思います。けれど幻想で満足してしまったこの男は、確かに幸福なのかも?
感想ありがとうございました。
中村ケイタロウ様>
お読みいただきありがとうございます!
猫も犬も少年少女も大好きです。雑食猫です。にゃあ。内向の極致の末にある楽園って実は妄想世界なのかもしれないと私は思うのですよ。もちろん違うという意見もあるでしょうし、押し付ける気もありませんが、やっぱり頭の中だけは理想世界にしたいじゃない。なんて。しかし現実の女性ももちろん良いと思いますが(おい
少女シリーズ面白いですよね。どこまで行くんだろう。まとめてアンソロまでは行かなくても少女シリーズでまとめたら面白いかもしれませんね(笑)ショートで読みやすいですしね。そして羽堕さんは凄いんですよ。私には真似できませぬ。
感想ありがとうございました!
有馬頼家様>
お読みいただきありがとうございます!
幻影を夢見て寝ぼける水芭蕉猫です。にゃあ。理想の女性、理想の世界、理想というのは常に頭の中に存在しているわけで、皆様その理想を現実世界に引っ張り出そうと四苦八苦するのですが、頭の中の理想に満足してしまえば幸福になれます(おい)危ない結末ですよね。自分の脳内で作って自分で満足してるこんな人が居たら私は出来るだけお近づきになりたくありません(おい。
感想ありがとうございました。
鋏屋様>
お読みいただきありがとうございます!
ピュアです。ピュアな電波です(おい)理想の異性でも、理想の世界でも、理想のなんちゃらでも、理想と名のつくものは全て脳内に有りです。それは、確かに私の中にも理想と名のつく何かがありますが、それでもやっぱり現実世界で生きていかなければならないわけで、だからこそ辛いというか、なんというか……。
実は最後の一文は、どうしてもコレにしたかったので、結構四苦八苦しました(笑)私らしいと言っていただき、とても嬉しく思います。
少女シリーズは、ほんと書き手さんの個性が現れてて面白いです。やっぱりショートだからその人の成分が凝縮されるのでしょう。
感想ありがとうございました。
湖悠様>
お読みいただきありがとうございます!!
おお、心の彼女がいるのですか!! それはまたツワモノですね。でも、その人が幸せならそれはそれでアリだと思います。現実なんて、見たい人が見てればそれはそれで別に良いモノだと思ってますし(おい)
ウフフ。透明感あるモノは好きなので、そんなものが沢山合ってうれしいです(笑
感想ありがとうございました。
rathi様>
お読みいただきありがとうございました!
うふふ。出店がいっぱいあって面白いですよね。わたしもついつい出店してしまいました(笑
えぇ、抱擁できちゃうくらいリアルな妄想が出来るって実は結構苦労するんですよね; チベット秘奥義でもそんなものがあるのですか。私はカバラ系魔術の投影を少し意識して書いてました。
そうです。幸せなら、それでいいのです。
感想ありがとうございました。
バニラダヌキ様>
お読みいただきありがとうございます!
そうです。若さです(何)
もう少し長くしてねっとりじっくり男の性格やら現実世界のなんちゃらやら焼き上げればよかったですね;でもショートという枠組みにすると、それが中々難しかったです。だからショート書ける皆様はホント凄いと思います。
でも、精一杯の幸せ感が出ていれば嬉しいです。
感想ありがとうございました!
もげきち様>
お読みいただきありがとうございました!
はじめまして。水芭蕉猫です。にゃあ。おおう!! 二次元にいる彼女って結構スゴいですね。でも、事件は起こしちゃいけないのです。周囲を不幸にする妄想は、すでに妄想ではないと思います。人畜無害の本人の幸せ、それが妄想の醍醐味です。
グレーハッピーエンドってヤツですか?(おい)冷静で現実が見えるからこそ、理想との齟齬が激しくなって、やがて妄想へ傾倒してしまったり……。なんて。少女はただの妄想ではなく、とある魂の切れ端とか、色々曖昧な設定があったりなかったり(笑
でも、幸せなら良いのです。
感想ありがとうございました。
2009/11/02(Mon)22:10:060点水芭蕉猫
こんにちは。
うは。妄想炸裂……。でも、物書きって妄想炸裂するものだから、ここに集結してる方々はもはや……。
水芭蕉猫様の作品は、いつも不思議な世界観が漂っていて、綺麗ですね。……イメージは氷の世界って感じです。
では、また。
2009/11/03(Tue)01:30:030点ミノタウロス
作品を読ませていただきました。アニマに勝てる現実の女はいないんじゃないかなぁ。それに女兄弟がいなかったり女付き合いが少ない人だと女性に夢を見ちゃうし……だからさ、この作品を読んでいたらある種の悲しみを覚えました。女性にとっては幻想的な作品でも男にとっちゃある種の現実みたいな作品だよ。男は夢見る生き物なのですよ。なんせ30過ぎまで童貞でいると魔法遣いになれるそうですから(笑。では、次回作品を期待しています。
2009/11/03(Tue)17:41:160点甘木
ミノタウロス様>
お読み頂きありがとうございます。
妄想炸裂です(笑)でもきっと、ここにいらっしゃる皆様全員(おそらく)妄想炸裂しておられるお方ばかりなので、問題ないですよ(おい
綺麗って言っていただき、ありがとうございます。氷の世界大好きなので、とても嬉しいです。私はミノタウロスさんも流れる流水のような文体でとても綺麗だと思ってますよ。
甘木様>
お読み頂きありがとうございます。
ウフフフフ。そうですよ。妄想世界の異性に敵う現実なんていないです。特に異性に夢を見ていれば見ているほど、それは現実より妄想が良いに決まってます。まぁ私もそんな仲間の一人なんですけれど;いえいえいえ、きっと女性にとってもある意味で現実です。妄想一番。三十まで童貞で魔法使いになれるなんて羨ましいです。女は処女守ってても何にもなれませんもん。
2009/11/03(Tue)21:51:430点水芭蕉猫
 こんばんは、水芭蕉猫様。上野文です。
 御作を読みました。
 理想だから溺れるのか、非現実だから浸るのか。
 とても叙情的で雰囲気のある物語だと思いました。
 面白かったです!
 次回作を楽しみにしています。
2009/11/05(Thu)22:59:370点上野文
上野文様>
お読み頂きありがとうございます!!
理想の中なら誰も傷つきませんし、非現実ならそれはそれで構わんというすげー思考の末にたどり着いた結末です。
雰囲気でていたならば、とても嬉しいです。
感想ありがとうございました!!
2009/11/07(Sat)21:33:120点水芭蕉猫
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