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『幻想境界 Fantasy boundary』 作者:摩天楼。 / リアル・現代 ファンタジー
全角7989文字
容量15978 bytes
原稿用紙約27.35枚
萩原神弥。名前にコンプレックスを覚える高校二年生。名前を尋ねられた回数は神がかり。何と言うか不幸な少年である。これは彼の現実と幻想の境界を描いた異色ファンタジー、しばしご堪能あれ。
 
 第一章 †少年の現実†

 Do you believe the ghost or the gramary?(君は魔術とか幽霊を信じているかい?)
 こんばんは。通りすがりの男Aだよ。
 ところで君は魔術とか幽霊を信じるかい?
 ぇ? あんたは誰だって? ……質問に質問で返すのはあまり良くないと思うんだよ。
 あぁ、信じるのね。投げやりに言ってる様に聞こえるのは気のせいかな。
 いや……別にいいんだけど。
 魔術に興味があるのなら僕の所へ来ないかい?
 幽霊に興味があるっていうのも良いけど僕は少し知識を齧った位だからポルターガイストの原理と発生条件しか知らないんだけどね。
 いゃ、ちょっと逃げないで真面目に聞いてほしいな。うん。
 
 じゃあちょっとこの契約書にでもサインしてほしいかなぁ。
 あ、別にこの下に借金の契約書とかある訳じゃないから。
 うん。サインは書いてくれたね。
 ぇ?俺の名前をいい加減に教えろって?
 いや、それはまた後で教えるから今はこれだけ言っておくよ。

 Your soul. Was it delicious?(君の魂、美味しかったよ?)

 †

(雨……止んだな)
 雨が上がった事に気づいて俺は黒色の傘をたたみ鉛色の空を見上げる。
 彼の名前は萩原神弥(はぎわらかみや)。名前にコンプレックスを覚える高校二年生。
 子供の時から今日まで名前を尋ねられた回数は神がかりの数字を叩き出している高校二年生でもあり、青色の瞳はカラーコンタクトなのでは? といった疑いをかけられた回数も神がかりだ。
 その割りに髪は普通の茶髪、顔も整っていて寧ろ好青年だった。
 そんな好青年の萩原は町外れのとある廃工房に来ていた。
 四年前に会社が倒産した事によって潰れてしまったらしい、何を作ろうとしたのかは不明なのだが。
 萩原はキョロキョロと辺りを見回し誰も居ないのを確認すると廃工場の中へ静かに入っていった。
 中は薄暗かった。
 元々薄暗いくせに曇りなので日の光も入らない為余計に暗い。
 ハァ、と萩原は溜息をつくと。
「やっぱお前居たんだな……」
 暗闇に向かって呟く。暗闇の向こうでトン、と人が着地した時のような音が鳴る。
 そしてコツコツとコンクリートの地面を歩く音が鳴り響く。
 暗闇の向こうには一人の少女が立っていた。白銀の様に白い肌、紅の瞳、黒髪。少女の容姿は一言で言えば可憐だった。和服でも着せれば綺麗なのだろうが現実は違った。
 少女が着ていたのは俗に言うゴシックロリータ。
 略してゴスロリ。フリフリのレースやらリボンが付いてある黒色の現実離れしたように見える洋服だ。
 ちなみに萩原は健全な高校生であるためゴスロリ趣味なんて無い。
 少女はニコリと微笑むと。
「生憎、家に帰るつもりも無いの」
 その言葉を聞き萩原は頭に手を当て再び溜息をつく。
「……お前なぁ、流石に一ヶ月も此処にいると大変だぞ? 食料とか風呂とか」
 少女はその言葉に対しつまらなさそうな顔で。
「別に食料や風呂は大丈夫よ、友人から貰ってるから」
「じゃあその友人の家に泊まればいいじゃねぇか。此処で寝泊りするより大分安全が保障されるだろ」
 苦虫を潰した様な顔を一瞬少女はした。
「私が寝てるとアイツが夜這いに来てレズられる」
「どこのエロゲだよ」
 最後に萩原は重い溜息をつき。寂れた天井を見上げる。

 こいつと俺が出会ったのは約一ヶ月前の事だ。
 俺が雨宿りに廃倉庫に行くとこいつが居た。
 最初は驚いた。何でこんなとこに居るんだ、とか。ゴスロリとかどんな趣味だよ、とか。
 で、こいつは俺に「話し相手になって欲しい」とか言ってきたから毎日此処へ来た。
 どうせ部活にも入ってないし放課後は暇だった。
 小遣いも無いからゲームセンターにも行けないし行く宛ても無かった。
 暇潰し。そんな理由だけで俺はこいつと色々話していた。
 話して分かったことは。
 こいつの名前はアリスだと言う事。
 アリスは学校には通っていない、と言う事。
 一ヶ月話して解った事はたったのこれだけだ。アリスが家出少女と言うのはあくまで俺の予想で本当かどうかは分からない。
 ただこいつが現実離れした馬鹿野郎だって事は確かだった。
 勿論そんな事を言ったら俺の薔薇色(そうでもないが)人生は終了しそうな気がするからやめておこう。
「萩原ー……」
 アリスがコンテナに上り足をバタつかせながら言った。
 あぁ? と素っ気無く返事をした。
「あんた……魔術って信じる?」
「はぁ?」
 萩原は驚愕の顔でアリスを見た後、直ぐに呆れた様な顔をした。
「魔術って、お前……ゲームのやり過ぎだろ」
 萩原が咄嗟に頭に浮かんだのはゲームで魔術師が魔法を使い傷を癒したり相手に攻撃するといったものだ。
「魔術は存在自体は非公式にされているだけで本当は東京でも常識の一つよ?」
 少女の言葉に萩原は一瞬息が詰まるかと思った。
 ありえない。こいつは本当に魔術とかそんな意味の分からないものを本当に信じているらしい。
 萩原は確かに魔術には憧れていた。
 魔術といっても空間とかをワープする魔術と超能力の境界線の様な力に憧れていただけだ、勿論遅刻回避の為に。
 萩原は苦笑すると馬鹿にしたような態度で。
「お前、よくそんな夢物語みたいな言葉がスラスラと出てくるな。魔術なんてただの空想とか妄想とか願いなんだよ。誰かが『こんな魔法があったりしたらな』とか思ってるから魔術なんて空想的なもんが生まれんだよ」
 そう言って萩原は鞄の中から今日食堂で買った焼きそばパンをアリスに向かって軽く投げる。
 アリスが両手でパンを受け取ったのを確認し萩原は、じゃあな、と言って廃工場の出入り口へと歩いていった。
「萩原ー……」
「あぁ?」
 立ち止まり少し振り返る。
 アリスは悪戯っぽく微笑み。
「溜息を付く度に神様が幸せを奪っていくんだってさ」
 最後の忠告だよ。と言いたげな彼女の瞳をチラリと見たが萩原は廃工場の出入り口へと歩を進めた。
 


 廃工場から出ると雨がまた降っていた。
 うわ、と間の抜けた声を出しまた溜息をつきかけたが途中で止める。ジンクス何てあまり信じないが不幸にはなりたくない。
「…………馬鹿だな……俺」
 思わず自重してしまい右手に持っていた傘をさす。
 萩原の家はそこまで遠くない。駅前にある普通のマンションでこの廃工場から五分程の距離だ。親も今は出張で留守にしているので急いで帰る必要も無い。
 傘をさして雨の中を歩きつつ鉛色の空を見上げる。
 晴れる気配の無い空を見つめるだけでも憂鬱になりそうだった。
(腹、減ったな)
 制服のズボンからサイフを取り出し中を開ける。ゲームショップなどの割引券や会員カード、その他レシートなどが財布の中に挟まっている。
 現在の所持金、百二十七円。
「って……肉まん位しか買えねーじゃねぇかっ!?」
 思わず絶叫したが天から金が降ってくるわけでもなく仕方無くコンビニへ向かった。

 †

 男は路地裏に立っていた。
 黒の布地でできたローブを着た男の顔は見えず雪の様に白い髪が少しだけ見える。
「さて……次は……」
 携帯を操作しメモ帳を開く。文字は全て英字表記だった。
 液晶画面が下へ下へとスクロールしていく、その勢いは止まらず最後の文章まで下がろうとしたいた。
(いい加減帰りたいものだな)
 愚痴る様に心の中で叫び最後の文章にスクロールを合わせる。
 と、同時に携帯電話の着信音が鳴り響いた。
 液晶画面の画面が切り替わり、電話が震えるアイコンに変わる、その下に表示された名前を見て男は忌々しげに舌打をし通信を繋げる。
「やぁ、そっちの調子はどうだい?」
 軽快な声が耳に響き男はいっその事電話を壊そうかと思った。だが此処で通話を切れば指令は無くなる。
「普通だ」
 なるべく早めに通話を終わらせる為にそっけなく返す。
「普通ねぇー……この先そんなんじゃ間違い無く死ぬよ? キミ。取り合えず順調って事で良いんだね? あぁー……本当に君に任せてよかっ……」
「電話切っていいか?」
 暫くの沈黙。
「何とか言え。こっちも面倒臭いんだよ」
 向こうで溜息をつく音が聞こえた。溜息をつきたいのはこっちだというのに。
「次のターゲットが最後だ。くれぐれもしくじるなよ?」
「うるさい……それよりそいつの情報を教えてくれ」
 男は向こうの声を真剣に聞いていた。そして獰猛に犬歯を剥き出しにして笑う。

「成る程……楽しくなりそうだな」
「だろう? まぁ所詮生贄の材料だけどさ……」
 計画は約二分後から始まろうとしていた。

 †

 萩原は暫く歩いてコンビニの前に居た。
 全国チェーン店でよくCMでも見かけるが行った事はあまり無い。親が毎日適当に材料を送ってくれるのであまり買う必要がないからだ。
 今回来たのはとりあえず腹が減った、誰でも思う衝動に突き動かされただけだ。
 自動ドアが文字通り自動で開いて萩原はコンビニの中に入る。エアコンの涼しい風が肌に触れ店員さんが、いらっしゃいませ。と営業スマイルで迎えた。
 とりあえず暇潰しに雑誌を読む事にしたかったが萩原より年上位の大学生が大勢で好き勝手本を読んでいた。誰か注意しろよ。
 そのまま目的の肉まんを買うためにレジに向かう。
 しかしレジの保温機的な機械の中に肉まんは入っていない。
「あ、すいません。肉まんは……」
 レジに居た大学生位の店員に尋ねると店員は苦笑し。
「肉まんはさっき売り切れました、申し訳ありません」
「あぁ……今から作れたりします?」
 大学生のお兄さんはさらに苦笑する。
「すいません。次の在庫が届くまでもう少し時間がかかりますので……」
 我ながら不幸だ。
 仕方が無かったので一個百五円(税込み)のコロッケを買って萩原はコンビニから出て行く。
 とりあえず家に帰ってベッドにダイブしよう。どうせ明日から夏休みなのだから。
(つっても、前日から雨って言うのもちょっと萎えるな……夜になりゃ止むらしいけど)
 コンビニを出ると雨は降っていなかった。
 手を伸ばしたが肌に水滴が触れる事は無い。
「何だ。あんまり当てになんねーな……天気予報も」
 若干苦笑して傘を杖にする様に駅前のマンションまで歩いていく。萩原が無意識に視線を道路に移した、雨だからなのかあまり人は居ない。駅前から近いのだが此方は駅の裏で人通りはそこまで多くは無い。
 だから夜も危険らしく最近では学校が警察との協力で定期的にパトロールを行っているらしい。
(ま、関係は無いけどさ)
 あぁそうそう、と萩原が薄っぺらい学生カバンからMDプレイヤーを取り出す。
 確か昨日ダウンロードした曲を聴くのを忘れていた気がする。
 イヤホンを耳に付け再生ボタンを押す。
 いや、押そうとした。
 
 萩原は顔面から前に倒れた。

(は……?)
 萩原は自分が倒れた事を理解するのに数秒の時間がかかった。
 いや、どちらかと言うと蹴り飛ばされた様な感じがした。倒れる寸前に後ろから体重をかけた一撃が当たった気がしたのを微かに覚えている。
 片膝を付いて背後を見る。
 果たして、そこに居た。
 黒色のローブを着た青年、そこからは顔は見えなかったが血の様に赤い真紅の瞳が此方を見下ろしていた。
(!?)
 萩原はその時心臓が止まるかと思った。
 決して転んだからではない。青年の前に居るだけで心臓を握り潰される様な感覚に襲われていたからだ。
 黙って此方を見下ろす青年は何も言わない。
 ただ此方を見下ろしているだけ。
 絶対に不良ではない。こんな不良が居たならこの世界に不良なんてものは存在しなくなる。
(誰だよ……コイツ!?)
 土で薄汚れた顔を腕で拭って立ち上がり青年から距離を取る。
 その様子を見て青年は獰猛に笑う、萩原の方がビクリと震える。
 そして青年は言った。
「黙って……」
 一瞬の沈黙。
 そして、
 
「死んどけ」
 
 直後、ビリッと電気が放電するような音と共に青年の背後に紋様が生まれる。
 萩原は以前どこかでその紋様に近い物を見た事がある、まるでゲームにでも出てくる魔法陣の様な。
「I B T A U S A TT! (雷撃よ儚く守られし剣を解き放て!)」
 聞き覚えの無い呪文の様な声を萩原は聞いた。それこそ本当に魔術師が魔法を発動するための詠唱の様な。
 刹那。雷撃の剣が魔法陣から萩原に向かって放たれた。
(な……ちょっと待てよっ!?)
 ほぼ反射神経で路地裏に飛び込み雷撃の剣をかわす。
 剣は一直線に突っ込み街路樹に突き刺さり街路樹が一瞬にして燃え上がる。
 青年の舌打ちの声が遠くで聞こえたが萩原は構っている暇は無かった。ただ路地裏を走る。
「訳わかんねぇぇぇっ!!」
 絶叫している余裕があった、と聞こえれば聞こえは良いだろう。だが今の萩原は叫ぶ事しかできなかった。
 ただその中でも萩原は疑問に思う事があった。

 何で自分はあの雷をかわす事ができた?
 音速で魔法陣から放たれる一撃を何故自分は回避する事ができた。
 何故あの状況で雷撃が放たれる事に気づけた?
(俺は……あれを知っている?)
 暫く路地裏を走り表通りに出てきた。
 路地裏から息を切らし走ってきた萩原に表通りを歩いていた人は一瞬萩原を見てまた走り出す。
 警察でも呼ぼうかな。と萩原は思ったが警察が魔法とかオカルト分野を解決してくれるほどこの国はビックリ大国じゃない。
 と無意味に携帯電話を確認した時、不意に携帯電話の着信音が鳴り響いた。
 非通知。この状況で誰かが電話をかけてきた。
「誰だよっ……」
 焦るあまり手が震えて思う様にボタンを押す事ができずに携帯電話を地面に落とす。
 携帯電話が一度バウンドした直後。
 萩原が落とした携帯電話を拾おうとした直後。
 
 バチンッ、とスタンガンの様な音が辺りに鳴り響く。

「は……?」
 萩原は一瞬自分がさっきの青年の雷撃の剣に当たった物だと思っていた。
 しかし萩原の体に異常は無い。後ろを振り返っても青年は居なかった。
 が、変化は確実に起きていた。
 表通りを歩いていた萩原以外の人が全員倒れている。
「あぁ……?」
 力無く間抜けな声を出して道路を見た。
 さっきまで自分を見た人達が全て倒れていた。それを地獄絵図と呼ばずに何と言うだろう。
 萩原はその場でしゃがみ込む。
 この光景を信じたくない、認めたくない、これが夢であって欲しい。
 強く願うが目の前の景色は一向に変わらない。
 とりあえず錯乱する頭の中で携帯電話の着信音だけが静寂の中で不気味に響いていた。
 萩原は携帯電話を取って通話を繋げる。
「もし……もし……?」
 震える声で電話をかけてきた相手に話しかける。
 助けを求める。プライドも糞も無い、子犬がただ助けを求めて吼えるかの如く。
 そして電話の声は彼が聞き覚えのある者の声だった。

 †

 青年は路地裏に居た。
 雷撃の剣をかわし路地裏に逃げた少年は既にそこにはおらず青年は舌打ちをつく。
「失敗した……一撃で済ます筈だったのだが……」
 青年は認めたくなかった。
 少年を逃がした事もそうだが自分の雷撃の剣がかわされた事だ。
 自分で編み出し最短の詠唱で雷撃の剣《ザボルグ》を回避するのは自分で言うのもなんだが至難の技だ。
 音速で走る雷撃の剣を人間の眼で追う事は現実的に不可能に近い、それを回避するのは夢のまた夢だ。
 ましてや、一般人にかわされる事なんて。
(一般人……いや、もしあの餓鬼が魔術師だったら……)
 青年の思考は最後まで続かなかった、携帯電話の着信音が鳴ったからだ。
 再び舌打ちをして通話を繋げる。
「あー……ごきげんよう、もう生贄の魂は奪ったか?」
 さっき電話をかけてきた男だ、一番聞かれたくない事を聞かれる。
 青年は苦虫を数十匹は潰した顔をして、
「残念ながら失敗した」
「失敗したぁっ!? 何やってんのよグズ!」
 次に飛んで来たのは若い女性の声だ。鼓膜が裂けそうな程叫ばれ青年は思わず携帯電話から耳を遠ざける。
 電話の向こうでは男が女性から携帯電話を取り返したのかドタバタと騒ぐ騒音が聞こえた。
「君が失敗するとは珍しいね」
 男の声がしたので青年は再び携帯電話を耳に当てる。
「残念ながらな、ザボルグを避けられてそのまま逃げられた」
「避けられた……?」
 信じられない事を言われた様な声で男は復唱する。
 暫く沈黙が続いた。
「相手は魔術師か?」
「いや、多分違うな。魔術師なら俺の詠唱を見た瞬間《瞬間防御(リフ・ガード)》や《透明変化(インヴィジブル)》で回避するだろうがそいつは何もせずにただ路地裏に飛び込んだ」
 また沈黙。
「面倒な相手を選んでしまったな」
 電話の向こうの男が溜息をつく。
 その声を聞いて、まったくだ。と青年は言った。
「状況を把握次第連絡する」
 頼むよ、と男の声を聞いて青年は通話を切った。
 戦いはまだ終わらない。

 †


 見知った声が混乱した頭の中で響き渡る。
 そうだ、この声は。
「お前……アリスか?」
 透き通る様なその声は間違い無くさっきまで廃工場で一緒だった少女の声だった。
 つかあいつ携帯電話持ってたのかヨ。と萩原はツッコミそうになったが今はそんな状況じゃない。
「こんな時に何だよ!? 今何か雷ぶっ放して来る糞野郎に追い掛け回されてんだよ!!」
 ほぼ錯乱気味で叫んだがアリスの方は落ち着いていた。
 電話の向こうで溜息をつくと静かに言った。
「貴方を追っているのは魔術師ね。しかも雷って言う事はアイツか……萩原……貴方面倒臭いのに目をつけられたのね、そら見なさい溜息は不幸を呼び寄せるものなのよ?」
 前半訳のわからない話を聞かされて頭がパンクしそうになったが後半から説教に変わったので少しイラッときた。
「いやいやいやいや!! そーゆーのいいから今この状況を何とかできたりしないのか!?」
 アリスは電話の向こうで暫く黙り込み
「あるにはあるけど……」
「あるんならさっさとやってくれよ!」
 じゃあ、とアリスは続ける。
「貴方の隣のビルのガラスがあるでしょ? そこに突っ込みなさい」
「んなもんやったら血塗れになって死ぬわ畜生っ!!」
 若干涙目になりながら叫び返したが変わりに、
「じゃあ死ねば?」
 あれ、ちょっと絶望しそうだよ? とネガティブになっている内に携帯電話の向こうからバチィ、と雷鳴が走る。
「ほら……感電死するか死ぬ気でガラスに突っ込むか早く選びなさい」
「死ぬ気ってマジで死ぬぞ?」
 電話の向こうでアリスの溜息が聞こえる。自分で不幸になるとか言ってたくせに結構溜息してるが突っ込まない。
「私を信じなさい」
 それは今までのアリスからは考えられない様な氷の様に冷たい声だった。
 が、同時に安心と言う名の暖かさがあった。
「ちっ……わかったよ……本当に突っ込んでいいんだな?」
 えぇ、と彼女が言ったと同時に通話が切れる。
 萩原は車の走らない道路の真ん中まで出ると目の前の七階建てのビルを見る。
 本当に何か起こって助かるならそれでも良いが助かる保証は無いし逆にガラスの破片に刺さって死ぬ。
 ただ彼女の言葉に偽りが無い。
 確証ではないがそんな気がした。
 右足に力を込めビルのガラスに向かって走る。
 道路から歩道に入る瞬間、一気に体が重く感じたが気にしている余裕も無くガラスに向かって跳んだ。
 ガラスと萩原が接触する瞬間。

「T B T W O N W M L!(境界よ我が命にて冥府の世を繋げ!)」
 
 少女の声が聞こえたような気がした。
 が、確認する間もなく萩原はガラスに接触する。
 萩原と言う名の少年の現実は此処で終わり、幻想は此処から始まった。
 
2009/05/23(Sat)21:48:33 公開 / 摩天楼。
■この作品の著作権は摩天楼。さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はい、こんにちはこんばんはごきげんようっ!
初めましてハイテンションからこんにちは摩天楼。と言います。
今回が小説を書くのは初めてなのですがいかがだったでしょうか?
アドバイス&感想宜しくお願いします(汗)
皆さんの意見を参考に私の原動力なので温かく見守ってやってください(爆

ではUVERWORLD様のSHAMROCKを聴きつつ今日は終わりたいと思います。
それでは。

(5/23 21;47)
この作品に対する感想 - 昇順
すみません、オギワラでいいんでしたっけ……え? 違う? ああ失礼、木沢井という者です。
 冒頭部分はちょっと見たことがない感じで、興味深かったです。萩原神弥という人物がどのようなものかも概ね伝わってよかったです。
 これが初めてですかぁ。何だか泣けてきますねぇ……いえ、もう昔の話ですが。
 魔術なんて非現実の代表みたいなものに遭遇してしまった萩原君がこれからどうなるのか楽しみです。
 以上、人の名前が中々覚えられず勝手にあだ名を定着させる木沢井でした。
2009/05/24(Sun)00:25:110点木沢井
こんにちは! 読ませて頂きました♪
 神弥とアリスは、それぞれに人の注目を集めそうなだなと思いました。
 魔術師は目が紅色になるのかな? アリスと神弥を狙った組織(?)は敵対してたりするのなと思ったり、だから神弥にアリスは近づいたのかな? あと神弥自信も、初めてみる魔術に反応してたし、これからの話で序々に分かって行けばいいなと思いました。 
 白髪の男と、その電話相手など気になりました。なんだか良からぬ雰囲気はありましたが、電話相手の声は「 」を変えたりした方が、私の個人的な意見としては読みやすいかなと思いました。
では続きも期待しています♪
2009/05/24(Sun)01:06:220点羽堕
すいません返信遅れました、摩天楼。です
木沢井様>
多分オギワラで良いかと(爆死ィィ)
冒頭部分……読み返したら何か恥ずかしいですね、色々(ぁ
何であんな冒頭になったのか極限に謎ですw
魔術によって始まる萩原君の不幸な(?)物語は結構続きますので応援宜しくお願いします
あだ名?全然OKです!

羽堕様>
感想ありがとうございます。
神弥は何でしょうね、凄い弄られ役の様な(コラコラ)アリスは何かとツン……いぇ、何でもないです
目を赤色にしたのは何となくです。カッコよくないですか?瞳赤くなるって。
カッコよくない?あらそう(爆死
電話の部分はちょっと見難いかと思ったのですがやっぱりそうですよねー。
次からはちょっと「」の使い方に注意して書こうと思います(笑
アドバイスありがとうございます!

2009/05/30(Sat)13:57:310点摩天楼。
合計0点
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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