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『さくらんぼ』 作者:暴走デラックス / 未分類 未分類
全角8927.5文字
容量17855 bytes
原稿用紙約25.4枚
ただの食い逃げ犯がFBIと世界一周。ただ今、牢獄生活の真っ最中。
 逃走、爆走、命がけ。

 何も考えず、ただひたすら走った。

 何かに追われているような毎日を……ただひたすらに。

「………ねえ」
「‥しっ。黙って」
「………。いつまでこんなことしてなきゃならないの?」
 鉄の頑丈そうなオリの鍵をカチャカチャと針金で弄る男と薄暗い部屋の片隅で死んだ眼をした幼女が一人。物心がつき始めた様な幼い幼女と、幼女誘拐犯に思われても可笑しくない背格好をした釣り合わない二人組が篭るこの狭い空間のことを世間では牢屋と呼ぶらしい。

■プロローグ【ワールド・イズ・ダイジェスト】

 空腹に魘される毎日、鮮明に蘇る記憶。今もはっきりと覚えているよ。
 追いかけられる数週間前の出来事が、鮮やかな走馬灯の様に。
 逃走初日は日本国内で収まることを願ってひたすら日本国内を逃走し続けたが、既に本国だけでは追いつかなくなった。ある意味サバイバルともいえる大都会の中で、アメリカだか本国だがのFBIと壮大な追いかけっこを繰り返す日々。
 走り回る足が壊れようとも、風を切って走り抜けてギリシャ神話の様に走り続ける。さすがに日本の交通状況が悪い上下線を馬鹿の様に走り抜けるのは難関で、だけどここで諦めたら後が引き返せない。
「ふりるうわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああッッッッ!!!!!」
 幼い助手をおんぶしながら高速道路の僅かな端っこを走る。多分、普通の人は絶対やらない。いや、絶対まねしちゃいけない。危ない。死ぬ。普通は100%で死ぬと思う。だけど今更そんなこといってられない。全力疾走、無我夢中で暴走。途中の休憩所で幼い助手が大泣きをして駄々を捏ね始めたが、別に減るものでもないのでトイレ休憩ぐらいはした。それから先は一息なんてしている暇なく、俺は無我夢中で走った。
 月日が流れるのはとても早い。だからお台場とか、お台場とか、民家とか、民家が走馬灯の様に眼に映る。普通なら空腹とか疲労、筋肉痛とか大波の様に一度に押し寄せてくるところだけど、いちいち気にしてたら長生きできない。出来るだけ長生きするために走った。走る以外何もないから、とりあえず走った。逃走、逆走、大爆走、命がけ!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」
「うわぁ‥」
 そして――行き着いた先は、日本国内の空港。辿りついたはいいけれど、乗り降りするお金が全くといっていいほど無いから飛行機のツバサ部分に根性でしがみついて、空気抵抗とか科学的なことを一切無視して命張って逃亡スタート。どう考えても生身の人間が出来る範囲ではないので、絶対に真似しないでね。本当に危険だから。ただ俺らもちゃんとした人間だけど逃亡者だから、なんだか気合いで出来ました。

 そして赤道を越えても眠れない。ここで寝たら一生帰れない。というより、星の一部になってしまう。今頃着ないに居る乗客の皆様は、ぐっすり睡眠をとられていることでしょう。なんにしても俺が気を抜いたら危ない。ここに居ること事態危険だけど、幼い命をここで手放すような真似はもっと危険。
「肉まん、美味しいね」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
 色んな危険をかねて、やっとの思いでコピー大国で有名なお隣の中国に到着。案の定、そこに居たのは一般の旅行客とマト●ック●の様な人達。一般の観光客達にまじって試食の肉まんを食べ歩きしながら、ゆっくり観光気分を満喫。肉まんが食べれて助手も嬉しそう。そして俺は中国特有のウイルスとかにあたって魘されながらも、懸命に中国内を巡り歩く。そして日本国内を飛び出したような方法で国内を脱出。
「中国の正月は旧暦‥」
「ここは香港だよ?」
 続く香港・韓国・台湾を同じような手口で、ぐるりと一周。
 次の朝には中国の上にある大きな大陸ロシアの各所を逃走と失踪で駆け抜ける。ヨーロッパ全土を駆け巡って、時々パスタを食べてイタリア観光とか、でっかいカタツムリ食すので有名なフランスでエスカルゴとか食べ歩いたりもした。休む暇も無く勢いで海を渡ってカナダ、アメリカ合衆国、あとサッカーの国々などなど逃走しているのにもかかわらず観光気分を満喫。

「どうすんの………これ」
「うん。ごめん」
 結局、色々あって本国に帰国したはいいが、心なしか緊迫感のない話を俺に向ける。俺自身は色々と自覚というか責任感でいっぱいいっぱいなのに、追われているという当初の自覚が薄れてきてしまっている通称・助手は相変わらずのん気にあくびをしていた。
 そしてなんやかんや遭ったり、遇ってみたり……繰り返す日々。奴らFBIの目を潜り抜けるように策を煉りに練って幼い助手を連れまわし、帰国する頃には始め白かった素肌がこんがりといい焼き色をつけて戻って着たり。丁度良いから黒いサングラスと子供用のサングラスを購入するついでに、どこぞの観光客に入り混じって親子を偽ったりもした。半信半疑、意識朦朧としていた俺は帰国してからの数週間に何があったのかまったくわからないが、眼を覚ました瞬間の俺らの格好は悲惨だった。

■第1章【幼児と変態】

「どうでもいいですけど、お腹空きました」
「………あぁ、どうでもいいとかいわないで。俺だってこんな若いのに、こんな」
 某月某日、俺と助手はFBIに捕まった。

「それはどうかと思いますけど、あんたよりはましな若さでこんな牢屋に閉じ込められるの嫌ですよ。それにこの服、ダサいし……テレビで見たことあるようなイメージだけで参考にしたみたいだけど、どうして牢屋に閉じ込められる人達に因んで私達までこんな白黒のシマシマなんですか。シマウマですか」
「そんなの知らないよ……。ていうか、”イメージで”とか言わないの。そういうのって色々と危ないから」
 そして気がついたら俺らはここに居た。
 白と黒のシマシマ模様。まるで防寒設備のない殺風景なオンボロアパートの隠し部屋にありそうな錆ついたベッドの様なもの。あとはトイレらしきものとか、まるで何かを閉じ込めるような鉄の縦棒とか。あと、俺の横に居る幼女は幼女らしかぬ発言をテロップの様に言い流してました。
「そして、お腹空きました」
 懲役何年かで、牢屋行きとなってしまった俺たちは色々と不安定になり、今思えば各国を(殆ど逃走か横断)駆け回っていたあの日々が一番生き生きしていた気がする。
「あのさ……今はそういうこと言ってる場合じゃないと思うんだけど」
「それはどうでもいいです」
「どうでもいいとか言わないで……俺が何とかして、君だけでもここから逃がしてあげるからね」
 一応、年上ということもあり「お兄ちゃん的な何か」を理由でこんな惨めな俺よりももっと、この幼い命だけでも長生きさせてあげたいという気持ちを胸に抱きながら約二週間前から脱出を試みた。
 初歩的な方法から手の込んだ方法まで策を練っては繰り返し、助手が寝ている間も懸命に打ち込んでみたが……その成果は今のところまったく現れていない。
 突然の出来事に動揺を隠せないままビクビクと小刻みに震えて、涙を浮かべていた幼い少女。最初は戸惑い警戒していた相手を、少しずつ意識し始めたようなないような……別に気にしてないと一言だけ漏らして、いつしか他人だった俺を忘れて頼ってくれた時は嬉しかった。
 出合い共に行動し始めた頃は当然の様に他人であり、いつの間にか他人同士が共存し始め、心なしかお互いを意識しあうようになった。
 俺と共に行動を歩んでいくに連れて、徐々に無愛想というか反抗期の様な態度をとるようになってきた助手に、いつの間にか気遣ってる俺。それでも愛想のうちの許してしまい心の中に余裕が時々あわられてる俺自身に気づいてしまった時には思わず苦笑いを浮かべる。
 こうも話すと何か変な気でも起こしたんじゃないか、この男。と想われそうだが、断じて違います。
 ただ一人っ子だった俺に妹が出来たみたいで、ちょっとお兄ちゃん気分が嬉しいなぁとか想ったり、俺以外の誰かが守れるわけじゃないこの状況を俺が何とかして切り出そうとか………すみません。想ってました。少し気の抜けた顔でぼんやりしてたら、不意に飛び込んできたひところにはっとする。
「‥嫌だ」
「‥!」
「そんなの……」
 今までにない助手の見せた弱気な瞳。恥じらいと悔しさで、耐えているつもりだがじわじわと涙が浮かんでくる子供らしい態度で、ぼそっと囁いた言葉。堪えていた筈の涙がポタポタと床に降り始める。
 俯いてた顔を上げてすぐさま俺は、寂しげな小さい身体を長く巻きつくこの腕でそっと包んで俺らは引き篭もるように拠り添う。今になって思うことはたくさんあるけど、強く想うことは唯一つ。――俺の感じる不安より、はるかに重たい不安を抱えているのは助手なんだ。
 俺がしっかりしないで、誰がこいつを守ってやれるんだ。
 服のすそを小さな手の平で強く握り締めて、俺の腕の中で丸くなりながら泣きぎゃくる幼い幼女。ただ、ただ俺は彼女をなだめることしか出来なかった。俺はこいつの母親でも、本当の兄貴でもない。他人だ。他人は他人を心から慰めることはできないのだろうか? 俺は少し不安に思っていた。
「…………」
「嫌だよ!! たかが食い逃げしたくらいで、こんなオッサン臭いヤツと共死になんて絶対嫌だッッ!!!」
「‥っ!?」
 ……実は。うん。……そうなのである。事の始まりは、無職・自由業・フリーターである20過ぎの俺が近くのファミレスでアルバイトして何とか生きるための資金を調達しようと試みていた。
 その最中に偶然(?)迷子になってた幼女(のちの助手)を保護したはいいが、近くに警察署がない上にこの幼女は自分が空腹なんだと少し切れ気味の号泣で訴え始めた。これはヤバイ。最近幼女を狙った悪質な事件が多発している時点で、既にヤバイ気がするが、……どうする。どうする!? どーするよ、20歳過ぎの俺! 脳内で創造される5枚のカード。警察、食い逃げ、男、置き去り、逃走。だなんて某カードCMでもないが、俺に残された5択の選択肢に悩みに悩んだ末、出した結果が事の発端。
 とりあえず、この子に何か食べさせてあげないと可哀想過ぎると思った出来心で俺はこの子にご飯を与えた。そしてダッシュで逃げた。置き去りもなんか可哀想なので、もちろんこの子を連れて。つまり食い逃げ。………こうして俺らの逃亡生活が始まったのであった。
「………うん………ごめんね………。でも俺、無職だから収入無くって………」
「私だってまだ働ける年齢じゃないのに、こんな無職でニート臭いオッサン引き連れて、こんな所で死ぬなんてもっと嫌だよ! 死ぬ気だったらオジサン独りで死んでよ、お墓の仲間で一緒は絶対嫌なんだからねッッ!!」
「……ぁ、うん。でも、そこまで言わなくても良いじゃない? 何か悲しくなってきた」
 そして俺らの終点はこんな狭い牢屋の中なんだと、俺の心は深い悲しみに溺れた。

■第2章【助手(ともだち)】

 牢獄堕ちて早幾年、日々聞こえるは罪人の悲鳴。ここらで一息、白状しろと――成り上がります、下剋上。
 もっと早く気づいてれば、困ることなんて無かった。勝手なクソったれのせいで、本名も知らない幼子(おさなご)の僕の扱いはまるで幼女(ショタ)。ちょっと待て、コルァ。僕は男だ。
 勘違いしては困ります。だけど、華奢な身体じゃ主張も容易く出来ない。本当は成人のはずなのに何故かショタ。多分、本当。男といっても見られない。男だと見られてない。少し細身なのかもしれない。悲しい、悔しい。だけどこのオッサンに従ってしまう。

 このオッサン(仮)がやたら糞真面目で、本能的にこれは犯罪者になる手前か。だとしたら、自分の身を守らなければ。とは言っても、このオッサン。僕のことを非力な存在と馬鹿にしているような顔で時々見てくるから、妙に腹立たしい。だからオッサン(仮)のあだ名は、今日から「変態ジャージ」でいいじゃないかと思う今日この頃。
「…………」
 今日も今日とでカチャカチャと真っ白い洋服に染みこんだステーキのしつこい油のしみの様に、必要以上に鍵穴を弄るオッサン。しかも僕を勝手に幼女だと決め付けている。性別がわからないほど、僕はどんなけ女々しい存在なんですか。このオッサン、もうこのまま犯罪者でいいじゃない。僕は無実ということで、早く親元に帰りたいです。

 ぼんやりとしながら日の当たらない部屋の隅っこで体育座りをしながらじっとしている。何も考えて居ないようで、実はご飯のこととか、オッサンのこととか、寝床のこととか考えている。それが僕。今はこの腹立たしいオッサンの勝手な扱いにより、若干12歳にして助手を(強制的に)務めている。普通の子供には絶対ありえない行動だと僕は思います。しかもこの悲劇の始まりは見知らぬオッサンとファミレスで食い逃げ、その数週間は同行者まで引き連れて世界をぐるっと一周、仕舞いにはこの生ゴミ臭いところが終止点なんて……。

 こんな悲惨な運命ってありますか? 牢屋から脱出を試みて、成功した日には即座に僕だけ脱走しようと企てる毎日。
 だが今の僕の力では不十分だということは眼に見えている。だからこのオッサンを出来る限り利用してやろうと今日もこの体育座りで丸くなりながら心の中で思い浮かべて時々にやける。
 まあ、精精がんばってよと密かに思いながら、心なしか日を重ねるたびに臭さが倍増しているオッサンの背中を眺める。
「……あと、もうちょっと………もうちょっとでいけそうなんだ」
「…………ご愁傷様」
 この牢獄生活もいい加減厭きてきて、生きてることがどうでもいいと感じてしまう。少し死に掛けたような目を傾けると純粋とは言いがたい馬鹿正直に懸命な大人の男の人が僕の視界の中に入る。まったく……のん気なものだ。
 何か話したかと思えば今日もこの一言で、直ぐに終了する。
 今の虚ろな僕の脳内では「行けそう」も「逝けそう」に感じる。遂にこのオッサンは末期なのか、ご愁傷様。などと縁起でもないことを、無意識的にぼそっと呟いてしまう。無論このオッサンは一瞬「?」が思い浮かんだような顔をするが、それでも気にしない。

 日を重ねるたびに心なしか言葉数が少なくなってきている僕とオッサン。
 今思うと長旅をしていたあの頃が無性に懐かしく感じてくる。
 もう少し子供らしい発言をしてくれだとか、子供らしく笑おうよなどと今まで言われ続けてきたが、今の状況で子供らしくしてなんていられない。正直、無理である。……そういえば、このオッサン。名前とかなんていうんだろ。特に訊いてこないし言ってもこないから、ずっと放っていたが。まあ、いっか。いずれ白状するだろうし、その時に名前を後悔してもおかしくないだろうと心の奥底で思った。

■第3章【男女】

「…………」
「…………」
 暗い。臭い。腹立たしい。誰に捕まっているかさえ判らない牢獄の中で、見知らぬオッサンとひとつ屋根の下。
 早朝4時に起床、軽食ではあるが一日三食が気まぐれに与えられ、食事が済んだら刑務所の中に設置された広くも狭くも無い野外の運動場にてゴミ拾いと掃き掃除を隅々まで遣り遂げる。
 その最中にだけ他の牢獄者の顔が拝めるが、どう見ても僕ら二人組だけがやけに浮いていた。具体的には判らないが、なんとなくという感覚で僕は感じた。
「………くせぇ……」
「………………」
 最大の共通点といえば週一で支給されるずんだ色に近い地味なジャージと、首にかけた白地に黒い文字で何百から何十という単位で書かれた数字。まあ、ぶっちゃけ……見渡す限りオッサンという奇妙な滑稽。逆を言えば、僕の様な少年がこんなところに居る自体おかしい。
 一般的に若者が犯罪を起こした後に捕まる場所はこんな滑稽なところじゃない。普通は少年院だろうと信じたい。
 時が流れるのは遅いようで早い。速すぎて、当時12歳だった幼き日はいずこへと消えてしまった。大和撫子と言い訳の効く幼き日は上回り、いつの間にか声変わりの時期を牢獄の中で迎え、日本男児特有の肩幅になろうとしていたのに……何故だ。
 日本男児として夢見た姿とは裏腹に、幼い頃より甲高かった声は更に細くなり、肩幅は広くなるどころかしなやかになり始め、流れるような黒髪はハイ●ング●●ーキ●グのロン毛に近い勢いで伸び続けていた。その姿はまるで、百人一首の清少納言か何かだ。

「…………はあ………」
 今現在22歳くらい。意識が朦朧としてきたのか、現在の自分の年齢ですら不明に近い。そして相変わらず、このオッサンのあらゆるものが不詳だ。まず始めに年齢、次に名前、当時幼かった僕を巻き込んだ理由。ただ一緒に居て、最低限理解出来たこと。無職で臭い、ということくらいだ。
「…………何ですか、急に。――脱出の件は、順調なんでしょう?」
「……………あの、……それがね………」
 そして今まで意気込んでいた筈のオッサンが、今度は妙に落ち込んだ態度で僕の隣に座り込んできた。そして臭い。どうでもいいが臭い。
 心なしか話しかけて欲しそうな感じで引き返してきたのを見て、僕は軽く溜息をついた。脱力しても加齢臭とか混じってそうな強烈な臭いがオッサンの着ているジャージから漂う。少し油断した顔で居ると余計に腹立たしくて、鼻にツーンとくる。無論、臭いは増すばかりだ。とは言っても、なかなか自分の臭いに気づかないのが人間だから、ここはあえて黙っておく。少し眉間にシワを寄せながら、仕方なくオッサンのほうを見上げる。
「なんですか。まさか失敗したんですか?」
「ううん。そうじゃないんだけど、君さ……」
「‥はい」
「……見ないうちに女性らしくなったよね」
「……………。一応いっておきますが、僕は男ですから」
 言いたいことはそれだけか。心の底で思ったが、あえて口には出さないでおいた。……ただなんとなく、こいつは利用価値があると思った。とりあえず、無性に腹立たしいので彼のミゾあたりを思いっきり殴っておいた。

■第4章【蹴りは愛のムチです】

「あのー……生きてますか?」
「………………」
「そうですか。生きてませんか」
 牢獄に突っ込まれてから、どのくらい経つのだろうか。僕は思った。今の時点で、こんなところで一生終えるくらいなら自殺したほうがまだマシだという考えは間違っていないような気がする。
 そもそも何故、僕はこんな臭いオッサンと、こんな長く牢獄に居るのだろうか。事の発端は食い逃げだという性もない理由だというのに、逃げて終われる毎日を繰り返し、果てにはFBIという組織や国家全体が一斉に動き出していた。当初幼かった僕にとっては軽くトラウマになる。そして今もトラウマは続行している。
「……………はあ…………」
 たかが食い逃げしたくらいで世界を逃げ回るなんて、どうかしてる。牢獄生活を頻繁に拒否していた当初が、今となっては当初の想いにボヤが掛かる。毎日思うことは、しんどい、臭い、つまらない、オッサンだらけ、死にたい。それ以外は何も思わなくなった。ただこのオッサンだけは違った。僕を逃がそうとしてくれてる、馬鹿正直に従う、加齢臭。意味はわからないが、はっきりしているのはそんじょそこらのオッサンより臭い。そして加齢臭の押さえが利かない無職だということくらいだ。

 今ある現状が、刑事ものでもなければ冒険ものでもない。なのに何故かオッサンは僕のことを「助手」と呼んでいる。
 お互い好き勝手に呼び合ってるだけで、実際の名前なんて知らない。名前がないだけなのか、隠しているだけなのか、どっかの金持ち坊ちゃんなのか、なんなのか。
「この際、はっきり言わせてもらいます」
「………」
 頭の中では色々と交差するものが絶え間なく広がるが、それを口に出すことはない。というより面倒だ。だが、ここまで来て何週間、何十年間、変に疑問だけを溜め込んでじっとしているのも性に合わない。だからこちらから、思い切って告白を試みる。
「あんたは一体、何者なんですか? 無職で食い逃げした、ただのオッサンですか? ていうか、普通のオッサンがなんで国家全体を総動員させちゃったり、仕舞いにはFBIとか何勝手に始動しちゃってるんですか!? ついでに言うと、飛行機にしがみついて生きてるなんてアニメかハリウッドくらいですよ!」
「…………えーと………。………質問」
「………。なんですか」
「君、俺の助手だよね?」
「‥は?」
 牢獄に長く居すぎたせいで遂には意識までどうにかなっちゃったのか。懸命に理解しようとしても、上手く言葉がまとまらない。もう一度、聞き返してみても多分変わらない。変わる気がしない。しかも話がかみあってないことにオッサンは気づいてない。心なしか寂しげな目で僕を見つめてきてる。気色悪いので、とりあえず腹を蹴っておく。
「………えーと………だから」
 蹴りをまともに食らって床にうつ伏せになる。息の根が止まる寸前の様な青ざめた顔なのにも関わらず、怒りもしないでこちらを見上げる。そして懲りずに再び口を開く。
「君は俺の助手だから、少し強めに威張ってるんだよね?」
「ごめんなさい。全く話が見えません。そもそも僕らは刑事とかいう関係じゃない筈です」
「…………子供らしいこと言おうよ…………てか、そんな無愛想じゃなくて子供らしいこと言って………」
 気がついたら同じことばかり喋ってる。そしていつも同じとこで蹴る。
「‥っ!?」
「なるべく早く答えてください。でないと、今度こそ確実に裏切りますよ?」
「だ………だから…………」
 諦めずに暴行だけは抑えて話をしようとしているのに、直ぐに同じ事を言う。まともな人間だったら、少しはまともに話せただろう。何回聞いても、何回聞いても、どうでもいいこと返してくる。年中、加齢臭いし。子供らしくとか本当ウザイよ。何でこんなヤツが一緒に居るんだ。……この先々が心配だよ。仕方ないから今はそっと腹に蹴りを入れておく。
2009/02/12(Thu)15:06:18 公開 / 暴走デラックス
■この作品の著作権は暴走デラックスさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。暴走デラックスです。文字通り暴走してます。
自分でもわからないほどに勢いとノリだけで暴走してしまいました……(駄目ジャン
正直、牢屋のくだりは全てイメージです。そこらへんの牢屋関係のアニメや漫画の一部(?)に出てくるものを参考にしたのですが……どうなんでしょう?;(苦笑
こんな勢いとノリだけで始めた感バレバレの内容ではありますが、よろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは!読ませて頂きました♪
ごめんなさい。正直あまりよく分からなかったのですが、これは連載だとしたら続きを待ちたいなと思いました。前半は牢屋の中の青年の妄想なのかな?うーん違うのかな。少女のことを未来の助手的に書かれてるので、探偵とか、そういった話になっていくのかなとも思ったり。あとこれは誰に捕まってるんだろう?
では続きも期待しています♪
2009/02/09(Mon)17:22:340点羽堕
[簡易感想]まだわからないので、続きに期待します。
2009/02/11(Wed)09:54:130点羽堕
 こんにちは。
 うーん、ちゃんと書けばおもしろそうなんだけど、というのが率直な感想です。やはりノリだけで書いてはいけないと思うし、「ノリだけで始めました」と宣言して投稿するのは、管理者、読者、他の投稿者のみなさん全てに対して非礼なことだと知っていただきたいです。正直ならばいいというものではないです。
 人に読んでもらいたいと思われるなら、もう少しいろいろなことをお調べになったり、突っ込んでお考えになったりしながら書くべきなのではないでしょうか。おかしな箇所や意味の取れない箇所がかなり多く見られました。
 たとえば、「FBI」の意味がよく分かりません。FBIというのは要するにアメリカの連邦捜査局のことのはずですが、そうなると「アメリカだか本国だがのFBI」というのが変ですね。アメリカ以外にFBIがあるのでしょうか。少なくとも、日本には国家警察は存在しないと思いますし、連邦国家ではないのでFBIが存在するはずもありません。
 それから、香港は現在中国の一部だし、かつての英領時代にも香港の正月はもちろん陰暦だったはずです。
 思いつきで適当なことを書き散らす、というのも、小説の手法としてアリだと、実は僕は思っています。しかしそうであっても、それを他人に読んでもらうためには、それなりの修正や推敲や整理を重ねる必要があります。文章の書き手として、それは当然のことです。でき得れば、ご自分で何度も読み直してご覧になって、改稿版を投稿していただきたいなと思います。
 では、失礼いたしました。
2009/02/14(Sat)17:40:040点中村ケイタロウ
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