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『二つの剣-後編-【6〜8】』 作者:雄矢 / ファンタジー 未分類
全角21116.5文字
容量42233 bytes
原稿用紙約66.25枚
既に伝説という名前で風化した、魔王対戦時代。青年は、興味本位から魔王を倒したという勇者ラスフェルトを探しに出る。たどり着いた異空間。そこで見つけた勇者ラスフェルトの姿は、意外にも何処にでも居るような幼い少女であった。異空間で生活する青年と少女。そして、その少女が伝説になった全8部構成の長い長い物語。※『2つの剣-前編-【1〜5】 』の続編です。ご注意下さい。
【6】
 伝説の勇者は、それが何者か分からないからこその伝説なのだと思う。
「つまり……」
 穏やかに佇む聖官長を前に、ヴォングは固唾を飲み込んだ。
「アイツは食べ物を調達する為だけに魔物を倒し続けてただけなのか?」
 聖官長であるメイ・ルティア・グレイスは何も言わずに項垂れている。肩から下がる最高位を示す紫の総だけが、頼りなげに揺れていた。
 2人が佇む豪華な客室の窓から、シャトラス帝国民の魔王討伐を告げる華やかな歓声だけが流れ込んでる。ラスフェルト様ラスフェルト様と勇者の名を繰り返す声が、いやに不自然に煩く聞こえた。
 ラスフェルト…それは、人間を主食とする魔物を統率する魔王を倒すべくシャトラス帝国より派遣された『勇者』の名前であり、傲慢という意の二つ名である。同時に、それは長きに渡りヴォングと戦い続けた友、シャトラス帝国第3皇女のエルトリート・ウル・キグダム・シャトラスを指すものでもあるのである。
 ヴォングは歯を食いしばりながら、エルトリートの美しくも幼い姿を思い出していた。幾たびもの闘いをくぐり抜け、共に魔物を倒し続けた仲だというのに、エルトリートの特殊な能力すら気づかずにいたのである。やるせない思いだけがヴォングの胸を襲った。
 眉を顰め続けるヴォングの姿をどう受け取ったのか、メイはゆっくり顔を上げると、勇者ラスフェルトの凱旋を祝う民衆の声を窓越しに眺めた。
「ラスフェルトですかー…また皮肉な名前をつけるものですわー……」
 のんびりとした声だけが相変わらず唇から漏れていた。メイはふと窓枠からヴォングに目線を移すと、怪訝そうに呟いた。
「あの、ヴォング様…?私、1つだけ、ヴォング様にお聞きしたい事がありましたの」
「ん?何だ?」
 メイの声色が本当に怪訝そうな音を奏でていたせいか、ヴォングは不思議な気持ちでメイを振り返った。
「その……、ヴォング様は何故エルトリート様に付き添われていたのですか?」
「…………は?」
 メイは小首をかしげたまま、一瞬耳を疑うような言葉を繋げた。
「だって、ここシャトラス帝国に帰還すれば、ヴォング様とて無事では居られないってご存知だったでしょうに……」
 メイの発言に、ヴォングは視野が大きく揺らぐような感覚に囚われた。
(無事では居られない……?)
「お、おい。どういう事だ?だってエルは……」
 過去がどうであれ今は魔王を倒した勇者である筈だ、と続けるより先に客間の扉からベルの音が聴こえた。
 その僅かな音に敏感に反応したのはメイの方である。
「あっあっ!お時間ですのね!!はいはいです!……ではヴォング様、私はそろそろ行かねばなりませんのー」
 扉に向かって叫びながら、メイは慌てて乱れた聖官衣を再び調えた。裾を引き摺るほどの体格に不釣合いな豪奢な衣装の裾を抱えながら、扉にホトホトと頼りなげに歩き始める。驚きを満足に実感する暇もない展開に、思わずヴォングはメイを呼び止めた。
「お、おい!お前は確か俺を『連行』しに呼びに来たんじゃなかったのか?」
 間違いない。彼女は確かにヴォングの前に姿を現した時に、ヴォングを『連行する』と言ったのだ。
 メイは扉の前までたどり着くと、僅かにだけ首を曲げた。
「ヴォング様」
「お、おぅ……?」
 メイは扉にか細い指をかけながら、今度は腰からヴォングを見上げるように振り返った。その動作は酷く何かを確かめるかのように慎重な姿に見えた。
「ヴォング様は勇者ラスフェルトの名前をご存知ですの?」
「は?」
 先刻といい、今といい、メイの逐一述べる言葉はことごとくヴォングを混乱させる。
「な、何言いてぇのか分かんねぇが。勇者ラスフェルトっつったら、エルの別名に決まってるじゃねぇか……」
 ヴォングの返事にメイは一瞬眉を顰めた。
 しかしそれは本当に一瞬の出来事だったのか、次に見たときにはメイは元の笑顔に戻っていた。それは明らかに嬉しそうな笑顔だったと思う。
「でしたら、ヴォング様は大切なお方ですもの、連行なんてできませんわ。私の発言など気にせず、そのままオヤスミ下さいませませ」
「お、おいおい!!ちょっと待てって」
 ヴォングが言い終えるより先にメイは扉を開けて隙間に潜り込むと、素早く客間を去って行った。
「な、なんなんだよ……」
 客間にはヴォングと、メイの残した謎だけが取り残されてしまった。
「…………」
 ヴォングは暫く大雑把にまとめられた髪をボサボサと掻き毟ると、大きく息をついて近くのソファーに身を投げ出した。ヴォングほどの巨体でも、軽々受け止めてしまうソファーの刺繍一つ一つがシャトラス帝の権力を物語っていた。
「……ったく、なんなんだよ」
 流石にこれだけ広大な宮廷の中で、身勝手に動くわけにもいかず、ヴォングはおとなしくメイの残した謎の言葉の数々をまとめてみる事にした。
 エルが魔物を食する体質故に、皇女でありながら忌み嫌われていた。
 エルが所持していた魔剣は、そもそもは魔王と同等の力を持つ処刑用の剣であった。
 エルの魔物吸収能力は、魔王同等の力すらも吸収できるほど巨大であった。
 魔剣を抑え込んだエルは、処刑しようとした国に帰る事もできずに旅立つことにした。
 この事実を知るのは聖官長のメイだけである。
「エルの過去は、これだけだよなぁ」
 ヴォングは髪を掻き毟ると納得がいかないようにため息をついた。どこか、繋がらないのである。何かパーツが抜けているように思えた。
「大体、エルと出会った時はどんなんだったっけ?」
『ヴォング様は勇者ラスフェルトの名前をご存知ですの?』
 メイの言葉は、まるでヴォングがラスフェルトの名前を知らないとでも言いたそうな感じであった。
「俺がエルを勇者だと知らないとでも……って、え?」
 ヴォングは思わず勢い良く上体を起こした。
「まさか…?」
 通り過ぎていった衝撃的な思考方法に、思わずヴォングは頭を揺らした。
(俺は、エルから一言でも勇者である発言を聞いた事あったか?!)
 ヴォングの背筋に寒いものがよぎっていった。確かにヴォングは街中で勇者の噂を耳にした。噂ではラスフェルトの正体はシャトラス帝国の皇女だと言われていた。しかし、そもそも勇者の噂が入る頃にはエルは王宮を追われてシャトラス帝国には不在だったのである。だとしたら、シャトラス帝国はエルの不在を誤魔化す為に……
「いや、待て。それだけじゃ勇者の噂を作る理由にはならない」
 それだけでは凱旋を騒ぐ民衆まで騙す事はできない。何か繋がりそうで繋がらないのである。
「くそっ!少しは勉強してりゃー良かったぜ」
 暫く頭を抱えていたが、ヴォングは諦めたように再度上体をソファーに投げ出した。大きく首を後ろに曲げて伸びをする。
「アイツが勇者じゃなかったら、今この国では何が起きてんだよー…」
 ふと、大きく曲げたヴォングの顔に影がさした。
「……」
 ヴォングは瞳を閉じたまま、全身の気配を強くした。
 それは間違いなく、何者かがソファーの後ろからヴォングの顔を覗き込んでいる気配なのである。
(何時の間に…?不覚だな…誰だ?)
 ヴォングは伸びをした体勢のまま、目を開けずに静止している。気配の方は特にヴォングに害を与えるわけでもなく、ヴォングと同様に静止を続けている。
 そのまま、どのくらいの時間が流れたのか、突如現れた気配の方が先に動いた。
「そんな不自然な態度とってたら、ウチの気配がバレてる言うてるモンやで?ヴォングはん」
「…………」
 頭上から降り注ぐ、特徴的な訛りのきつい声に、ヴォングは上体を起こして振り返った。
 予測どおり、ヴォングの座るソファーの後ろには、癖の強そうな女性が佇んでいた。見ようによっては美人に見えなくもないが、既に表情自体に不快感を忍ばせた笑顔しか浮かんでいない。
「グリフォード、か?」
「あははー、国民にもあがらんような一般以下の愚民に呼び捨てされるんやったらウチも貴族失格やわー。行動改めなあかんなー」
「…………」
 ヴォングは挑発的な口調に特に反応を示すわけでもなく、突如現れた剣の神官グリフォードを睨みつけた。身分で蔑む貴族というだけで卑下するほど、ヴォングは心狭い人間ではない。事実、幾たびもの死戦を潜り抜けたヴォングの背中をあっさり捕らえられたのである。それだけでも充分、彼女が伊達に剣の神官を務めているわけではに事を証明していた。
「神官ほどの者が、わざわざ愚民の所に何用で?アンタの嫌いなグレイス卿なら先刻俺を置いて出て行っちまったぜ?」
「あー…グレイス卿なー?随分お高くとまった傲慢な嬢ちゃんやろー?グレイス卿ならウチも先刻廊下で裾踏んで転んでるん見たでー?」
 ケラケラという表現が似合いそうなほど高らかに笑うと、グリフォードは愉快そうに笑顔をたたえた。確かにメイが苦手にする理由がよく分かる人格ではある。ヴォングは煮えきれない不愉快さに耐えられずに言葉を続けた。
「俺が連行される理由も、あのふざけた聖官長が連行しなかった理由も知ってそうだな。話してくれるなら聞かせてくれないか?生憎俺は出生が良くなくてね、礼儀作法を求められても困るんだが…」
「へぇー、野蛮な属性な割には随分と低姿勢なんやなー。物事をよくわきまえとるやんけ」
「お前のような人間との渡り合いには慣れてるんでね」
 ほーっとグリフォードは面白そうにヴォングを見下した。
「面白い奴やな、気に入ったわ。ウチは無償提供は嫌いやけど、時間ないんやろ?気が向いたら答えてやるで?ホラ、何が知りたいんや?」
 ヴォングはゆっくり、俯いた。登場も何もかも唐突な割りに、交渉次第ではメイより信頼がおけるかもしれないと思えたのである。
「お前が教えてやりたい内容なら、全て聞きたい」
「あーあーあーね。いい質問やわー」
 グリフォードは再度高らかに笑うと、法官衣を身軽に扱いながら、軽い足取りで客間の中央まで歩いて行った。本当に楽しそうに、何を教えるべきか考えているような仕草をとると、舞っているような足取りでヴォングを見つめだした。
「せやなー。やっぱグレイス卿には日頃の恨みあるからなー。グレイス卿ネタから行こうかなー」
「…………」
 ヴォングは敢えて逸る思いを抑え付けて冷静な態度を押し通した。今だけは、そうまでしてでも確実に知らねばならない事実があるように思えたのである。
「せや、ヴォングはんは、勇者ラスフェルトの名前て知ってるん?」
「え?」
「せやからー」
 グリフォードは面白そうに指をヴォングにつきつけた。
「今、凱旋に騒がれてる勇者ラスフェルトの本名が『メイ・ルティア・グレイス』やて知ってるんか?って聞いてるんや」
「――――――…………なんだって?」
 それは、今までの全てを覆す衝撃の事実であった。

「よく戻ってくれたな、エルトリート」
 その時、エルトリートは王室の更に奥に座る人物の前に跪いていた。目の前に座っている椅子を、人は『玉座』とも言い、そこに座る人物を、この国では『皇帝』とも呼ぶ。
 エルトリートは、ドレスではなく比較的質素に抑えた法衣を見に纏い、シャトラス第58代皇帝であり、父親である人物を見上げた。エルトリートの側には、相変わらず2本の剣が所持されている。
「私は生涯を皇帝陛下と共に。陛下の命であればいつでも戻りましょう」
「ははは、そう堅苦しく言うでない。実の親子であろう?」
 シャトラス皇帝は実に穏やかに笑うと、優しく目線をエルトリートに向けた。その視線は、剣を所持してる者に対してはあまりにも不自然なほど穏やかであった。
「折角、我が帝国が派遣した『勇者ラスフェルト』も役目を終えるのだ。そなたも少しぐらい気を緩めても良いだろう?」
「…………陛下」
 怪訝そうに皇帝を見つめるエルトリートを眺めながら、皇帝はふと、穏やかな視線をエルトリートより更に後ろ側に向けた。エルトリートより背後に、誰か控えているのである。
「そう、思わぬか?『ラスフェルト』よ」
「全くですわ、陛下」
 大理石で模られた広大な玉間に、エルトリートには昔馴染んだ明るい声色が響きわたった。
「……!」
 突如、背後より注がれた声色に、エルトリートは驚きを隠しきれなかった。
 皇帝から勇者の二つ名を呼ばれた者が、今まさにエルトリートの背後で言葉を続けていた。
「折角の親子水入らずな時間ですもの。遠慮なさらずに家族愛を大切にかみしめると良いですわ」
「グレイ……」
「ね、エルトリート様」
 耐えられずに振り返ったエルトリートの視線の先に、記憶よりやや大人びても雰囲気をそのまま保ち続けた友人の姿が確認できた。ラスフェルトと呼ばれた、メイの姿であった。
「エルトリートよ、そなたもグレイスを褒めてやってくれぬか?」
 状況に適応しきれずに全身を固くするエルトリートに、無情とも言える穏やかな声を皇帝は降り注いだ。
「そなたが我がシャトラス軍を惨殺して逃亡してから後、其処のグレイス卿がそなたの後を次いでシャトラス軍事部総裁と聖官長の座を同時に統制してくれたのだぞ?そなたと魔物の処罰を議論している間も進んで魔王討伐を名乗りだしてくれた、まさにシャトラス帝の誇り高き人物だ」
「そ、んな……」
 エルトリートは久方に出会った友人を前に、声すら上手く発する事ができなかった。
「グレイス卿の功績により、現時点で世界中の魔物の生命確認は皆無となったのだよ」
 穏やかな声色を保ちながら、皇帝はゆっくり玉座から腰をあげると、上品に敷かれた絨毯の上を滑らかに歩み、エルトリートの横まで歩み寄った。
 何一つ非の打ち所のない動きのまま、皇帝はエルトリートの耳元に唇を寄せると、僅かにその両端をあげながら、優しくエルトリートに囁いた。
「エルトリート。そなたが最後の『魔物』となるのだよ。古き仲に滅ぼされた方がそなたも幸せであろう?」
「…………」
 俯いたエルトリートの表情を、完全に確認することなく、皇帝は笑みをたたえると、エルトリートの立ち位置を素通りして玉座の入口にまで歩み去って行った。
「我が愛しい娘よ。父としての最大の想いを受け取ってくれたまえ。そなたが死してもなお、勇者ラスフェルトは、そなただと皆に伝えておこう」
 それだけ言うと、皇帝はゆっくりと玉間の扉の向こうへ消えて行った。
 玉間の奥とは、皇帝を始め皇族や高位の者しか入る事ができない。
 今やそこに残るのは、エルトリートとメイのみとなった。
「エルトリート様、お久しぶりで御座います」
 無駄に広い玉座に取り残され、呆然とするエルトリートに、メイは穏やかに頭を下げた。
「エルトリート様は、只今をもって、私、勇者ラスフェルトによって処刑されます。シャトラス軍殺害容疑、及び魔王として世を恐怖に陥れた罪、ご確認下さいませ」
 メイは特に音程を変えることもなく、淡々とエルトリート殺害の予告をした。
「グレイス卿…いや、ラスフェルトか……」
 エルトリートはゆっくり項垂れた顔を持ち上げた。
 いつものようにに無表情にメイを見つめると、エルトリートは恐ろしくゆっくりとした動作で2本の剣に手をかけた。
 メイは聖官衣の上着を脱ぎ捨てると、怯む事無く穏やかに微笑んだ。
「ラスフェルトは、お互い様でしょう?」
 ラスフェルト。
 それは『傲慢』を意味する古代用語であった。

【7】
 その昔、人間と人間を主食とする「魔物」という生物が共存んしていた時代、人は魔物を恐れ魔物を統べる魔王を倒すべく闘い続けた時代があった。
 後に魔王大戦時代と呼ばれる時代の話である。
 魔王大戦時代の中期、当時の最高王朝シャトラス帝国は、魔王討伐の為だけにある人間を世界へ派遣した。ただ1人の「勇者」であり、人々からは「ラスフェルト(傲慢)」と呼ばれる人物である。
 世界と、歴史と、人の希望の上に立つ、傲慢な人間。
 この物語は、傲慢な人間の話である。

「頭、痛くなってきましたよ……」
 シャトラス帝国第3皇女であり、元軍事部総裁でもあったエルトリート・ウル・キグダム・シャトラスの肌に、僅かに冷えた汗が流れ落ちた。絹糸のように滑らかな髪が、白金色をなびかせたまま肩をすり抜けても、エルトリートはかき上げる様子もなく、ただ脇に抱えた細身の『魔剣』に手を忍ばせていた。
「グレイス卿…いや、勇者ラスフェルトと言った方が良いのですか?メイ」
 じり、と間合いを計るエルトリートの気配に微塵も動揺を見せないまま、エルトリートの向かいに立つ勇者ラスフェルト、シャトラス帝聖官長のメイ・ルティア・グレイスは穏やかに沈黙の微笑をたたえていた。
 息が詰まる。
 全身に不自然な汗を流しながら、エルトリートの右腕から、魔王であり魔剣でもあるグレイスの思念が流れ込んで来る。
(ボクと同じ名前の勇者かぁ……)
 のんびりとした口調、含みのある言葉だけが脳に直接流れ込んでくる。
(エル、でもコイツ人間だよ。食べれない事はないけど、好きじゃないから、イドスを使ってよ)
 魔剣グレイスの言う「食べる」とは、魔物特有の生命吸収能力の事であり、イドスとはエルトリートの所持するもう1つの剣の名前であり、メイから送られた剣でもある。
「イドスは…使いません」
 エルトリートの儚げな紅色の唇から、細々しく明瞭に音が零れ落ちた。
 その言葉に反応してかしていないのか、メイの表情は微笑のまま、変化する事はない。
「英雄の剣であるイドスは使用しません。私は…勇者ではありませんから」
 僅かに、エルトリートはメイを見据える眼光を強めた。
 メイはエルトリートの発言や、魔剣に添えられた右腕を確認しても動じる気配はない。暫くして、メイは僅かにだけ俯いて、再度柔らかな頬を上げた。
「エルトリート様……」
 シャトラス帝国の王宮の玉座の間の奥の奥。
 王の間に残された2人の間に、メイの、静かな静かな声だけが響き渡っていた。

「おい!グリフォード!」
 同時刻の同じく王宮の長い廊下では、ヴォングの破壊的に乱雑な声だけが忙しげに響いている。王の間に向かい駆け抜けるヴォングの巨体の前を走りながら、剣の神官グリフォードは面倒臭そうにため息をついた。
「貴族を軽々しく呼び捨てにせんでくれんかなぁ…無礼モンが」
「んなつまんねぇ事はどうでもいい!テメェ、勇者がエルじゃなくてメイっつーのはどういう事だよ!説明しろ説明!」
 重そうに揺れる巨体を、面白そうに眺めていたグリフォードは、鬱陶しげに目を細めた。
「煩い奴やなぁ…言葉通りやん。あのバケモン皇女が失踪してから、空席になった軍事部をのっとったんも、勇者を名乗って皇女殺害を実行しよったんも、全部グレイス卿やって話。頭悪いなー」
「そういう事じゃねぇよ!だからなんでグレイス卿が…っ!アイツが一番のエルの理解者じゃなかったのかよ」
「……」
 ヴォングの罵声を背中で聞きながら、グリフォードは軽く舌打ちすると、瞬時に腰を屈め、自らの足をヴォングの足首に叩き付けた。軍事関係者独特の俊敏な動きである。
 情けなくも、グリフォードの不意打ちに、ヴォングは思いっきり顔面から絨毯に突っ込む結果となった。重々しい音が廊下に響き渡った。
「ったー。何すんだテメェ!」
「テメェはそっちやヴォングはん」
 情けない姿勢で絨毯に倒れこんだヴォングを、グリフォードは冷ややかに見つめた。
「ええか、ウチはアホは一番好かんのや。あんさんも長年人間の間に暮らしとったんなら分かるやろう?他人の失態につけこんで権力を貪る、当然の摂理やろう?グレイス卿も同じや」
「……っ」
 床から睨みあげてくるヴォングにグリフォードは更に冷ややかな視線を落とした。
「グレイス卿が聖職者やから有り得ん言いたいんか?よう考えな、あんさんなら分かる筈やで?少し頭冷やし」
「うるせぇ!」
 絨毯に立てた爪がギリッと鈍い音を鳴らした。グリフォードの言葉は、長年人間の貪欲と貪欲を生き抜いてきたヴォングには痛いほど理解できる言葉であった。しかし、今、ヴォングの脳裏には、あの強くも儚く、幼くも美しい皇女エルトリートの姿が切なげによぎるだけだった。
 グリフォードはヴォングの様子にため息をつくと、座り込むヴォングの横に腰を下ろした。
「あのバケモン皇女の事か?」
「……エルは、バケモノじゃねぇ」
「いや、バケモンやろ」
「きさま…っ」
 正式にヴォング言葉を発するより早く、グリフォードの指は素早くヴォングの額を弾き飛ばしていた。
「ってー……」
「……バケモンや。エルトリート皇女もグレイス卿も。あんさんもウチもな」
「…………え?」
 ふいに発せられた言葉を、ヴォングが確認するより速く、グリフォードはさらりと腰をあげると、廊下の奥を見つめた。その更に奥にあるであろう玉座を見据えながら眼を顰めると、忌々しげにグリフォードは真っ直ぐな声をはき捨てた。
「何度も言わせんなや。ウチはアホが一番好かん。簡単な事や言うてるやろ?少しは学習し」
 それだけ言って、ヴォングを睨みつけると、グリフォードは更に絨毯を蹴って、奥へと駆け出した。
「お、おいグリフォード!置いて行くな!」
「置いて行かれる方がマヌケなんや!ちゃんとついてきーやー」
 アハハハハと相変わらずな高笑いが廊下に響くのを、煮え切らない思いで受け流しながら、ヴォングは再度腰を上げて駆け出した。
 案の定、というべきであろうか。数刻も経たぬ内に、廊下の先にシャトラス兵を確認できた。
 いちいち問いただす必要もない。シャトラス兵は全員剣を抜き、2人の道を塞ぐ様に廊下に立ち並んでいる。
 グリフォードは、その人数をさりげなく顎で数えると、唇の端を軽く吊り上げた。躊躇の無い駆け足の隙間に、素早く腰に控えた剣に手を伸ばす。その動作は、後に続くヴォングも同じであった。
「ホンマ、アホばっかで困るわ……」
 軽い舌打ちの音が、剣と剣の爆ぜる音にかき消されていった。

 どのくらいの年月だろうか。
 メイは記憶よりも想像よりも美しく成長したエルトリートを見つめながら、ゆっくりと聖官衣の懐から書物を取り出した。その手帳は、エルトリートがシャトラス帝国を旅立って以来続けた研究の記録が記されており、今では原型すら怪しいほどに使い込まれている。
「エルトリート様?」
「何です?」
 エルトリートのメイを見据える眼光は緩むことはない。メイの行動一つ一つを厳重に見つめている。
 そんなエルトリートを見つめながら、メイは相変わらず穏やかに微笑んでいた。
「言葉遣い…綺麗になりましたのね」
「……何年、国外に居たと思うのですか?」
 幾分和らいだ声色を確認して、メイは再度瞳を細めた。
 エルトリートの両脇に下げられた、2つの剣。どちらも柄が変色しており、エルトリートの国外での壮絶な日々を物語っていた。その内の片方の剣は、現在エルトリートに握られており、時折エルトリートに反応するように光を帯びていた。
「魔剣……ですか。意志を持つほどに魔物を吸収するなんて恐ろしいですわね」
「どうやら私の相方は名前負けしてないみたいなんですよ」
「名前……」
 メイは暫く魔剣グレイスを見つめると、クスクスと笑い出した。鈴を転がしたように穏やかな微笑み。笑い終えると、メイはゆっくり手元の手帳に目線を落とした。
「メイちゃんはですね、エルトリート様が居なくなってから、凄く凄く勉強しましたのよ?それはもう、勇者に抜擢される程の学習量でしたわ」
 メイの謎めいた言葉の出だしに、エルトリートは怪訝な表情を見せた。
「軍事部総裁に抜擢されたのは、学習の功績だと言うべきでしょうか……結果は皮肉なものですけどね」
 メイの指がゆっくり書物の文字をなぞっていく。メイの穏やかな言葉一つ一つに反応するように、指先が徐々に光を帯びていった。
 詠唱。
 聖官長としてのメイの得意とする分野の1つである。聖文詠唱と呼ばれる、神聖古代文字の組み合わせで、次元を歪める呪術であった。
 特に表情を変えるわけでもなく、指先だけで詠唱を開始したメイに、エルトリートは眉を顰めた。詠唱は聖職者にしか行えない手法であり、聖職者は他者を傷つける呪術は使用できない。軍事部総裁と言えどメイは聖職者である限り、エルトリートを攻撃できるような詠唱は使用できない筈なのである。
 そんなエルトリートの感情を読み取っているのかいないのか、メイは視線を手帳から上げる事なく、先を続けた。
「これでも、苦労したのですよ?こんな私に、魔物を討伐できる程の能力を与えるのは、本当に、本当に大変でしたの――」
「……メイ?」
 何を…と続けるより先に、メイの指先の光は強さを増し、王の間の空間が歪み始めた。
「メ……」
 メイの指は既に直視できぬほどに光を放っており、その指を書物から持ち上げながら、メイは漸く悲痛な表情をエルトリートに見せた。
「どうして…剣を抜かれないのですか?」
「……」
 王の間は、大きく空間を歪めており、誰の眼にも、形を視野に留める事は不可能な領域に陥っている。
 あからさまに明瞭な、次元操作。
「少々、お優しすぎるのですよ。エルトリート様は」
 微笑を崩す事無く、光を帯びた指先を唇に近づけると、メイは直接詠唱を指先に吹き込んだ。
「そろそろ、お教えしますね」
 メイは更にエルトリートに微笑むと、その穏やかさが嘘のような俊敏さで腰をかがめ、地を蹴ってエルトリートの脇を走り抜けていた。あまりにも咄嗟な行動であった。ふいをつかれたエルトリートは、次に確認したメイの腕に抱えられた物体を確認して、眼を見開いた。
「メイ…っ」
 エルトリートがメイの持ち去った剣、イドスの存在に声を発するのと、メイの指先がエルトリートに向けられ、詠唱発動を起こすのはほぼ同時であった。
 メイは表情を崩すことはない。
「私の習得した能力は、次元操作能力の応用。人工次元を創り上げる事ですわ。行ったら戻って来れるかどうかは、未定なのですけどね」
 形無きまでに歪んだ視野に、追い討ちをかけるように光が放たれた。
「この異次元の存在は、私以外、どの者も熟知できておりませんの。もう、これで…エルトリート様を傷つける者はおりませんわ」
「メイ……」
 両者の視野は既に光に征服されており、最早お互いの声色しか確認できなかった。
「どうして、ですの……?」
 メイの表情が確認できなくなってから、メイは初めて声色を奮わせた。
「どうして私を殺さないのです!その剣は私と同じ名でしょうに……魔王と同じ名なのに……っっ!!」
「メイ……」
 エルトリートの聴覚に、不自然な歪みが生じた。それが自分からなのか、これから開かれる異次元の音なのか、確認する術は無い。
(異次元……)
 それが、メイがエルトリートを救う、最後の手段だと思ったのだろうか。
(怖くない、と言えば嘘になりますけど……)
 エルトリートは、既に確認できない光の先を見つめた。
「メイ。私は側に居てくれる者として、剣に貴方の名前をつけました。本当に、貴方の名前は剣の名に相応しいですね」
「……エルトリート様?」
「貴方が私を移動させた後に、その剣で何をするのか……。本当に、貴方だけですよ?これだけ私に傷をつけられる人間は……」
「エル……っ」
 エルトリートの穏やかな口調に、メイは一瞬指の力を緩めかけた。
 メイは暫く、光の先を見つめていた。
「エルトリート様……エルトリート様……」
 最早視野では確認できない、光の先を、メイは敢えて見つめないよう努めながら、最後の詠唱を続けた。
「申し訳ありません……」
 メイの詠唱の最後に聞いたエルトリートの言葉は、既に聞き取ることは不可能であった。

「グレイス卿?」
 ヴォングとグリフォードが王の間に辿り着いたとき、既に次元の歪みは止んでおり、王の間にはメイだけが1人、1つの剣と共に残されていた。
「お、おい。お前……」
 いまいち状況がつかめないのか、ヴォングだけが不穏そうにメイに近寄ろうとした。
 メイの次の行動に気づいたのは、グリフォードが一番早かったのだろう。
 グリフォードは、一瞬眼を見開くと、持っていた剣の鞘を、メイの後頭部に投げつけた。
「やめんかーーーーっっ!!」
 ガシャンッと大きな金属音が王の間に響き渡った。
 グリフォードの投げた鞘は、メイの後頭部を通り抜け、メイが自分の首を切り落とす為に持ち上げた剣、イドスにぶつかり、叩き落したのである。
 剣と鞘が床に落ちたのを確認すると、グリフォードは呆然とするヴォングをすり抜けてメイの頬を平手打ちした。
 今度は歯切れの良い音が響いた。
「あんな!ウチはホンマあんたみたいな偽善者が大嫌いなんや!何でも何でも自分犠牲しよってから!!綺麗に悪役やるのも大概にしーや!!!!」
 息を荒らすグリフォードの声に鈍く反応しながら、メイは呆然とヴォングとグリフォードを見上げると、その視線を床に落として嗚咽を漏らし始めた。その姿に、グリフォードは瞳を歪めると、面倒臭そうに、メイの居ない方角に目線を逸らした。
「お、おい。お前……」
 ヴォングは一連の行動を確認した後に、改めてメイに駆け寄ろうとして、メイの足元に転がる書物に目を留めた。
「次元…操作…?」
 その表紙に書かれた文字を確認して、ヴォングは改めてメイに食らいついた。
「おい!お前まさか…っっ!!」
 ヴォングの罵声と同時に、その声色をかき消さん勢いで、王の間の入口からシャトラス軍の突撃を知らせる音が流れ込んできた。
「あーあかんわ。ちょっと騒ぎすぎやなー…」
 視野に移りだしたシャトラス軍の量に、グリフォードは柔らかな髪をいじりながら、やや焦り気味の声を発した。
「なんなんだよ一体!」
「まぁ簡単に言えば、皇帝はグレイス卿も極刑にする気満々や言う事やなー」
「んなアッサリ言うなよ!」
 既に入口を塞ぐシャトラス軍の数に、ヴォングは大きく舌打ちをすると、メイの聖官衣の襟首と足元にあった書物を掴むと、足早に王の間の横側に走り寄った。
「おーい、何するつもりなんー?」
「うっせーな!こうするんだよ!!」
 遠くから声をかけるグリフォードに応えるように、ヴォングは書物を持った手を壁にかざすと、聞きなれない発音を叫びあげた。
 王宮に、激しい爆音が鳴り響き、ヴォングの前に立ちふさがっていた王の間の壁が派手に砕け散っていた。明らかに法力系の破壊呪文であった。
「畜生、どいつもこいつも出番とりやがって……」
 ヴォングは嫌々吐き捨てると、メイを抱えたまま、壁の穴に飛び込んだ。
 勿論、王の間は地上高くに設計されている。
 グリフォードが慌てて壁の穴に駆け寄る頃には、移動呪文でも使用したのか、2人の姿は確認できなかった。
「ひゃー…、油断したな。あのオッサン法力者やったんかぁ…」
「グリフォード神官!」
 唖然とするグリフォードの元に、シャトラス軍らしき人物が近寄った。
「副総裁か…」
「先刻の爆音は一体?!皇帝への連絡は如何いたしましょう?!」
「あー…、あんさん見てへんかったんか?」
「は?」
 シャトラス軍事部副総裁の反応を暫く眺めると、グリフォードは面白そうに大きく表情を歪めて笑った。
「見ての通りやわ。ウチが破壊してみただけやねん。趣味や趣味」
「あ、あの…」
「皇帝に連絡しといてや」
 開かれた穴から吹き上げる風を気持ちよさそうに受けながら、グリフォードは嬉しそうに副総裁に指をつきつけた。
「作戦は成功や。全ての物事は皇帝陛下の望みのままに、ってな」
「は、はい!」
 グリフォードの言葉に走り去るシャトラス兵を確認しながら、風穴の先に見えるシャトラス帝国に視線を投じた。
「あーあ、結局ウチが貧乏クジかぁ…。どうしてくれるかなぁ…」
 様々な意味で大騒動となっているシャトラス帝国に、のんびりとした声色が自然に溶け込んでいた。
 それが魔王大戦時代の、終幕の鐘であった。

「ん……――」
 エルトリートが次に目を覚ましたとき、正直、何が起きたのか認識するのに時間がかかった。
「ここは……――」
 僅かに痛む身体を起こしながら、身に起きた出来事を半数する内、エルトリートは慌てて手元の魔剣グレイスの存在を確かめた。
「グレイス……――」
(エル)
 手元から、確かな思念を確認して、エルトリートは改めて息をついた。
「ここは……――」
 再度気を確かに持って、上体を起こすと、その視界には意外な光景が流れ込んできた。
 そこは、大きな聖堂だったのである。
(綺麗な聖堂だね、ボク異次元っていうかだどんなトコかと思ったよ)
「そう、ですね…――」
 そこは、人工異次元という言葉とは、あまりにも不釣合いなほど、穏やかな空気と爽快なまでの凛と佇む聖堂と、上品に装飾された窓枠からは、淡い空色も確認する事ができた。
「これが…メイの創った異次元ですか……――」
 浄土。
 そんな言葉があったような記憶が頭をよぎっていく。
 エルトリートは魔剣を抱えたまま踏みしめるように、異次元の大聖堂を彷徨った。
 そこは1つの大聖堂であり、1つの世界であった。
 生きて行くには何一つ問題のない、世界。
(エル……)
 リン、と魔剣グレイスから涼しげな音が響いた。
「どうしました――?」
(ボクはずっと側に居るからね)
 魔剣グレイスから注がれる思念に、暫く驚いたようにエルトリートは魔剣を見つめていたが、何か考えたかのように、ゆっくり微笑むと、足軽に聖堂の方角へ駆け出していた。
「絶対、ですよ?今度こそ――」

 魔王大戦時代終結後。
 魔王を倒すことができた伝説の勇者は、その偉大すぎたな力により、魔剣を封じるべく異次元に存在する幻の大聖堂に移り住む事になったという。
 その世界は、時が流れる事を知らず、勇者ラスフェルトは未だに飢えることも老いることもなく、幻の大聖堂で行き続けている。
「なんか、案外幽霊みたいなのなー…」
 王立図書館の奥で、ラスフェルト・イドスは、歴史書を読み終えると面倒臭そうにのびをした。
「ま、報酬次第で決めるけどさー」
 ラスは、持ってきた本を王宮の奥に片付けると、大臣の控える宮廷へと歩き去って行った。
 魔王大戦終結から、数千年の後の話である――。

【8】
 一体どれほどの年月が過ぎたのであろうか。
 幾千、幾万……。
 人々が伝説として語る魔王大戦時代が存在するのならば。
 今、この時代を何と呼ぶべきか。
 それは、誰もが。
 誰もが、語ることできて。
 誰にも、語ることができない――。

 ラスフェルト・イドスが、伝説の勇者の剣探索に出たのは2年前。
 更に、勇者の住まう異次元、幻の大聖堂に辿り着いて半年が過ぎた。
「ラス?ラス……――」
 湿気の強い生暖かい風に紛れて、鈴を転がすような少女の声が、ラスの耳に流れ込んだ。
「あ?ああ、エルか……」
「どうしんですか?ぼーっとして――」
 怪訝そうに覗き込んできた少女の顔は幼く、そして浮世とは無関係なほどに美しい。小さなテーブルの向かいに腰かけ、食後に何故かバナナジースをすすっている姿とか裏腹に、彼女は本質に伝説に謳われる勇者という意外な部分を秘めている。
 ラスが実際に、この勇者(通称をラスフェルトと言い、本名をエルトリートと言う)と出会い、もう何度目の茶会であろうか。ラスはエルと何度も日を共にし、幾度となく会話を繰り返した。
 まるでエルトリートが失った時間を埋めるように。
「いや、ちょっと湿気が強くてな」
 ラスはそれだけを言うと、手元の色鮮やかなハムサンドを口に運んだ。
 異次元であっても、季節は流れているらしく。ラスが訪れに感じた春の陽気な気候は、既に冬の準備を迎える湿気に満ちていた。
「そうそう。お前、それ美味いか?」
 顎の動きに合わせて、歯切れ良い音を鳴らすレタスを飲み込みながら、ラスはエルの飲むバナナジュースを指差した。
「あ、はい。美味しいです。ラスはいつも美味しいものを作りますね。これは何の植物なんですか――?」
「バナナってやつ。南の方の国で採れる果物だよ。ソイツは凍らせても火を通しても美味い」
「へぇ…――」
 エルは、自分の持つグラスに注がれた、やや固形っぽいミルク色の飲料に、子どものように瞳を輝かせた。いや、実際子どもらしい好奇心なのだろう。エルは勇者という肩書きを微塵にも感じさせない、外見通りの内面を見せていた。
「それよりお前ってさ」
「はい――?」
「甘党だよな」
 ぎくり、と言わんばかりにエルはグラスを掴む指を強張らせた。
「意外に、甘くないものって食べないのな。毎回さり気なく残してるだろ?」
「そ、そんな事ないですよ。あれはラスが好きかな?って思ってですね――」
「俺は単に何でも食べるんだよ」
 パシッとラスの手がエルの頭を叩いた。
「いたいー…――」
「魔王を倒せるぐらい強い子が、食べ物残すなよ。勿体ないだろ」
「ふぇ…――」
「だから泣くなって……」
 その姿は、とても自分の十倍以上生きているとは考えられない。明瞭に幼さを見せるエルにため息をつくと、ラスは重そうに椅子から腰をあげた。
「ラス?――」
「なるべく、お前が好む味付けにしてやるから、今夜ぐらいは何か食べろよ?今晩は何がいい?」
 首をかしげるエルを横目に、ラスは素早く食べ終えたサンドの器を片付けながら、テーブルの上を拭った。
「……オムライス――」
「了解。じゃあ準備に入るから、お前も余裕あるならそのサンドも食べてみろよ?毎回俺が作ってるんだからな」
「はい――」
 歩み去るラスの背中を見届けながら、エルは手元に置かれたエッグサンドに目を落とした。
(それは卵。肉じゃないよ)
 暫く考えているうちに、エルの思考にエルのものではない思念が流れ込んだ。エルが腰に下げている剣から伝わってくる。永きに渡り魔物退治に用いた魔剣グレイスである。
「別にお肉かどうかで悩んだわけではないですよ――」
(ラスが気になるの?)
 魔剣グレイスは、吸収した魔物の生気を我が物として能力を増す事ができる。音を発するより早く脳に流れ込む思念に、エルは首をかしげた。
「最近、夢を見るんです――」
(夢?)
「ええ、恐らく。ラスの過去の記憶だと思われるのですが――」
 エルの整った眉間に、綺麗に皺が入った。その夢はあまり良い夢ではないのだろう。
(そんなの初めてだね。この次元のせいかな?)
「さぁ…。まぁこの次元に誰かが訪れるのも初めてですから――」
 さらり、とかしげた首から白金色の髪が肩へ流れおちた。絹糸を思わせるような動きに合わせ、エルはゆっくり左手を腰に下げられた剣にかけると、僅かに淡い唇を緩ませた。
「ずっと、私達だけでしたからね――」
 そうだね、という思念が届くより先に、エルは視線を剣からテーブルに戻していた。
「……卵って、本当にお肉には含まれないんですか?――」

 その日の夜食を終わらせ、エルが就寝の為に消えてから、ラスが掃除片付けと明日の準備を終わらせて就寝する頃には随分夜も更けていた。
 その夜、珍しくラスは深く眠れなかったのだろうか。不穏な気配で目を覚ます事となった。
「……」
 ラスは何も言わずに、ゆっくりと自分の剣を手元に寄せて『それ』を凝視した。
 深夜、ラスの寝室に訪問者が現れたのである。
「寝込みに現れるとは随分無礼な奴だな。夜這いでも歓迎しないぞ?」
 『それ』は、エルトリートより幾分幼く見える子どもであった。端整な顔立ちはしているが、年齢のせいか、衣服や顔立ちからでは性別が判別できない。幽霊か否かも断定できないが、とりあえず幼い者であった。
『ラスフェルト・イドス?』
「どうだろうな?名前ってのは聞く前に名乗るもんだ。最近、夢見が悪くて機嫌が悪いんだ」
 不機嫌そうなラスの声に、子どもは悪戯っぽく笑った。
『そか。ボクの名前はグレイスって言うんだ』
「グレイス……?」
 不審な訪問者の意外な発言に、ラスは一瞬握り締めた剣に更に力を込めた。
「エルの……魔剣か……?」
『うん、そう。あまり驚いてないね。良かった。ある程度はボクの事知ってるんだね』
「……人間に擬態できるほど能力を持っているとは知らなかったけどな」
 ラスの笑みをどう解釈したのか、グレイスも子どもっぽく笑顔を見せた。冬が近づいているせいだろうか、夜風が冷たく感じる。幽霊よりは説得力のある言葉ではあったが、ある意味、それは幽霊よりもタチが悪い者のように思えた。
『ボクなりに頑張ってるんだけど、最近じゃこの姿が限界なんだ』
「そのグレイスがどうしたんだよ?お前は常時エルの側に居る筈だろ?」
『最近「何か聞きたいけど聞けない」って顔してる』
 単調に繰り出されるグレイスの声色に、ラスは更に表情を強張らせる。
『さっきも「夢見が悪い」って言ってた。エルも似たような事言うから』
「エルも……?」
『うん、そういうの初めてだから』
 グレイスはそこまで言うと、俯いて瞳を伏せた。その表情を単純に表すなら『心配』が最も適切であろう。グレイスは心配そうにトボトボと歩くと、ラスの寝所の布団にポスッと軽い音を立てて腰を下ろした。どうやらエルには無断で現れたらしい。
『エルは夢を「ラスの記憶だ」って言ってた。ラスはどうなの?』
「俺の記憶を……?」
 グレイスの身体は、その通り思念によって構成されているのか、目を凝らすと向かいの布団の皺まで確認できそうだった。ラスはまじまじとグレイスを眺めると、考えるように硬い顎に長い指を滑らせた。
『ラスは何の夢を……』
「エルの記憶だ」
『え?』
 顎から更に柔らかな髪に指をからめながら、ラスは難しそうに再度自分の言葉を繰り返した。
「俺はエルの記憶を見ている」
 今度はグレイスがラスをまじまじと眺めることになった。暫くラスを見つめていたグレイスは、視線を床にむけると、細い小さな足を大雑把に揺らし始めた。
『そか…。不思議だね。ボクもこの次元の事はよく分からないけど、なら、ラスはエルの過去は結構知ってるんだ』
「お前が魔王みたいなもう1人の勇者と同じ名前である事とか?」
『メイは魔王じゃないし勇者でもないよ』
 冗談っぽく話しかけたラスに、噴出しながらグレイスは答えた。
『ホントよく知ってる。でもメイは悪い奴じゃない。ボクはそう思うよ。彼女は魔王っていうより、「より人間らしかった」んだ。そう思う』
 笑いながら、グレイスはラスを見た。
『人間らしい汚さなら、ラスの方が知ってるんじゃないの?』
「人間らしい、か。まぁそうだな」
 人間らしいか…と、ラスは再度呟くと、ゆっくり所持していた剣をグレイスに向けた。その動きの刹那に、僅かに身体がグレイスに触れかけ、ラスは少し身体を震わせた。
『大丈夫だよ。ボクが吸収する気がなければ、触れても吸収せずに済むぐらいにはなってる』
「便利になったな」
 グレイスは笑ったまま、ラスの差し出した剣の柄に視線を落とした。丁寧に全身をラスに向けているのに、寝所からは全く重さを感じさせる音がしない。その柄は、使用した者の歴史の長さを物語るほどに変色しており、僅かにだけ文字が彫られているのが確認できた。
『これ、は?』
「ああ、やっぱり分かるのか。じゃあ想像通りだ」
 グレイスの反応にラスは微かに苦笑いを見せた。
「神聖古代文字で『イドス』と彫られてる。この剣は俺の家に代々伝わってた剣であり、……多分、エルが昔、お前と一緒に所持してた剣と同じものだ」
『勇者の剣イドス…。混乱に紛れて消えたんだと思ってた……』
 グレイスは子ども特有の大きな瞳を更に大きくさせて、剣からラスに視線を動かした。
『ラス……。キミ、何者なの?』
「魔王と同等の脅威を持つ癖に、変に人間っぽいこと聞くんだな」
 ラスは困ったように笑うと、グレイスから剣を受け取った。いつからだろう、寝室の寒気が消えているように思えた。
「俺は確かに貧民街生まれだったけど、俺の先祖は騎士だったらしんだ。苗字を持つのはそのせいだし。その騎士はシャトラス帝国騎士団団長まで努めた時代、魔王大戦時代に魔物に喰われて死んだんだ。俺の苗字はその先祖の名前を受け継いでる。それがイドスだ」
『えと…それじゃ……』
「まだ早いぞ。魔物に喰われて死んだ先祖は子どもが居なかったから、俺はそいつの直系じゃない。正式に言うなら、俺の先祖はそいつの兄にあたる……法力者だ」
『ほうりきしゃ?騎士の兄が魔法使いなの?』
「先天性の法力者だったらしいぞ?だからあんまし恵まれなかったし、まぁ魔王大戦時代にそれで生き残れるんだから相当強かったんだろうけどさ」
 グレイスは暫く考えて、何かに辿り着いたのか、何とも表現しがたい表情を見せた。
『まさか、キミって』
「そのまさかじゃないかな。俺の先祖の名前はヴォング・イドス。その妻の名前はメイ・ルティア・グレイスとか聞いてる」
『…………』
 グレイスの表情を確認して、ラスは更に困ったような笑顔を続けた。
「あんまし、聞いて面白い話しじゃないよ。ヴォングは異端者だったしメイは反逆者だ。ロクな人生じゃなかったし、俺の代まで貧民街じゃないと生きていけなかったのが良い証明だ」
『反逆…って、でも…じゃあ、エルは…エルは、ラスの記憶見てるって言ってたけど……』
「知ってるのかもしれないな」
 ゆっくり、確認するように、ラスはここ数年の記憶をなぞってみた。
 家に残された古い書物。そこに記された難解な次元計算法、神聖古代文字解読書、シャトラス帝国文字…それは、今思えば本当に出来すぎているくらい、永い永い方程式の結果のようにも思えた。
「仕組まれたみたいだ。俺は謀反を起こした先祖を…メイを恨んで恨んで日々を必死に生きたつもりが、そのメイの尻拭いのように最大の罪に遭遇するなんてな」
『罪とか……』
「俺さ、此処に死にに来たんだぜ?」
『え?』
 ラスは、持っていた剣を終うと、ゆっくりと哀しげに微笑んだ。
「毎日人殺しして嫌になったんだ。必死に生きてるの疲れたから、最期ぐらい馬鹿やって死のうと思ってさ。そしたらこの異次元の話を知ったんだ。伝説の勇者が居るとは聞いたが、生き残ってる可能性とかゼロに近いと思ったからさ。だから……」
 やはり確認するように、ラスは言葉を紡ぐ。
「吃驚、したんだ」
『ラス……』
「本当に、強いんだな。お前らは……」
 グレイスは先刻より笑顔と心配の表情ばかり繰り返す。それと同じようにエルトリートも笑顔と泣き顔を繰り返した。
(強い、わけじゃないのか……)
「エルを見ていて辛い。アイツは単純な事には泣ける癖に、これだけ大きな悲しみには涙も流せてないんだな」
『……ラス。……エルにこの話を』
「グレイス。1つ教えてくれないか?」
 グレイスの話を遮って、ラスは俯いたまま顔をグレイスに向けた。
『なに?』
「お前らが最初ここに来た時、この異次元はどうなってた?エルは、なんで飯を食わないんだ?お前がまだ生きているのと、この2つは関係してるのか?教えてくれないかな……」
 エルに話す前に、聞いておきたかったのであろう。
 グレイスは少し躊躇したようだったが、幾刻か後に、考えたように口をあけた。
『ボクらが最初、この異次元に来た時、此処はメイの送り飛ばした魔物でいっぱいだったよ。ボクが生き残ってるのは、まずその魔物を食い尽くすので精一杯だったのと、……エルが食べないのは、そのボクを食べる事で生き延びきれているからだよ』
 グレイスは最初、人間の姿で現れた時、「最近ではこの姿が限界だ」と言った。
 それは、ラスの先祖が犯した。最大の過ちであったように思う。
 夜風が、再び寒気を増した。

「おいエル。お前ちゃんと最近は食えるようになったんだな?」
 ラスが辿り着いて1年を向かえようとしている大聖堂に嬉しそうな声が響き渡った。
「むぅ…――」
 その声の大きさが恥ずかしかったのか、エルは頬を膨らませると俯きながらサラダをパリパリと口に含ませていた。
「ほら、もうちょっと食え食え」
「……苦いです――」
「ピーマンは身体に良いんだぞー?」
「……甘いのと苦いのが一緒になってます――」
「ニンジン食べないと大きくなれないぞー?」
 エルは色々と不満そうな表情をしたが、結局最後には大人しく朝食を食べ終えていた。食後には出されたミルクプリンを口に運んでいた。その様子をラスだけが満足そうにはやしたてていた。
「いやぁエルがそんなに食べてくれるなんて、お兄さんは嬉しい」
「私、兄は居ません――」
「じゃあ、お兄さんが欲しいだろ?俺がお前のお兄さんになってやろう」
「余計な親切で――」
「いや、本気で」
 急に変わった声色に、エルはスプーンを咥えたまま、暫くキョトンと瞳を大きくさせた。そんなエルの顔に近づいているラスの顔は冗談を言ってるように見えなかった。
「エル、俺と一緒に此処を出ないか?」
「ラス…?何を言って…――」
 エルは暫く考えるように俯いた。先日聞かされた話では、ラスはメイが記した異次元計算法の書物を持っており、逆算すれば不可能ではない話ではあるのだ。
「ここは…此処は、メイが私の為に必死に考えて計算してくれた世界です。出て行ったら、きっともう、誰もここを訪れない――」
「時効じゃないか?それ」
「でも、そうしたら。私は老衰してるのが摂理ですし――」
「ウダウダ言うな。俺の妹として人生をやり直すほうが勇者としての摂理っぽい」
「それ、なんか屁理屈っぽい…――」
 不満そうに見上げるエルを、ラスは笑顔で受け止めた。
 エルは暫くミルクプリンを頬張りながら、考えるように俯いていた。
「じゃあ、1つ今まで聞けなかった事、聞いても良いですか?――」
「ん?何だ?」
 ミルクプリンを食べ終え、丁寧に手を合わせた後、エルは顔をあげた。
「貴方の名前…『ラスフェルト・イドス』の意味を教えて下さい――」
「……は?」
 何を期待していたのか、エルの唐突な質問に、ラスは拍子抜かれたような顔をした。
「ラスの名前は、メイが昔に詠唱していた古代祝詞の一説です。メイの子孫なら知ってるんじゃないんですか?――」
「無茶言うなぁ…」
 やはり無茶だったか、と言った感じにエルは再び顔を伏せた。
「……英雄」
「え?――」
「神聖古代用語でイドスは『英雄・勇者』、ラスフェルトは『関係ない』を意味する否定的逆接詞だ。『ラスフェルト・イドス』と並べたら、それは『英雄でも関係ないから〜』って意味になる」
「関係ない……――」
「俺の名前は、俺が勇者になろうがなるまいが大切な1人の人間である事を表すためにつけられた。親の愛情溢れる名前だろ?」
 自分が自分を見捨てる事がありませんように――。
 それは、メイが昔お守りだと述べた祝詞の一説であった。
「そうでしたか――」
「そうだったんだ。それで?質問に答えたけど。お前はどうするんだ?」
 エルは暫く考えるように、俯いていた。その豪奢な法衣に包まれた細い腕は、いつかにラスが造った木製のテーブルの上におかれている。
 冬が明け、最初の晴れた日に、ラスはエルと屋外で食事をする話というをしており、春を香らせる暖かい陽気につつまれた風は、何事もなくエルの周囲を漂いながら、新しい季節の訪れを告げていた。
 気がつけば、春が訪れるように。気がつけば、エルは考えずに食事をし、ラスと約束を交わしているのである。
「新しく、約束してくれませんか――?」
 法衣の下に居るグレイスの意識を感じながら、エルは声を発した。
「なんだ?」
「ずっと、側に、居て下さい――」
 それは昔、グレイスと交わした約束。
 ラスはエルの発言に暫く目を大きくさせたが、やがて大きく笑いながら、エルに応えた。
 春の気配は、もう既に訪れていた。

 魔王大戦時代が終焉してから。
 どれほどの年月が過ぎたのか、もう覚えていない。
 しかし、あれから過ぎた年月を計算するより
 今、この時代を何と呼ぶべきか。
 それが本当に重要な事なのかもしれない。
<終わり>
2008/11/05(Wed)11:51:53 公開 / 雄矢
■この作品の著作権は雄矢さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ここまで読んで下さった方にまず言いたい言葉は「本当に長くて申し訳ありませんでした。」そして「有難う御座います。」
読んでいただけただけでも感無量なのですが、もし宜しければ、感想なり苦情なりをお願いいたします。
因みに、どちらかというと褒められて伸びるタイプです。
蛇足でした。すみません。
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