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『盗んだ後の感覚ってどうよ?』 作者:修羅場 / 未分類 未分類
全角3327文字
容量6654 bytes
原稿用紙約9枚
高校生男児だって考えてみれば大人の男。男は常に何かと対立して生きていかなければならない。強い男でなければならない。女が弱い立場なんてのは昔の話。攻められるのは女だけじゃない。――本屋の女が男にすることとは……?(※決して、危ない意味ではありません)
●始まり

 俺〜、俺、俺、俺、俺〜、卑怯じゃ〜ん、カッコイ〜じゃん。
 懐かしい曲を替え歌にして口ずさむ帰り道、本屋に立ち寄る俺。暫くして、こっそり鞄を抱えて本屋を出る俺。
 元、陸上部だった俺が駆け出す後を全力疾走で追いかける二十歳の姉ちゃん。にっこりと微笑んでいる分には全然怖くないが、この姉ちゃんは怖い。
 書物を盗んだお礼よ、お返しよ〜。トイレのサンダル、蹴り飛ばしてヒット。みんなが笑ってる〜。お姉さんも笑ってる〜。そんなのありえない〜。長距離100メ〜トル。

 俺がやったこと。いわゆるマンビキ。千回も行ってないのに万引き。
 俺を追いかけた本屋の姉ちゃん。初代レジ担当の小春さんの孫。先祖代々、万引きという悪い行いを取り締まる為に受け継がれてきたという特技。通称、万引きハンター。
 万引きを防ぐのが、この本屋の決まりごとらしい。だけど購入の際はこの本屋ではければ、いけないのだ。
 なぜなら、俺の地元にある唯一の書店がここしかないからだ。わざわざ交通費払って、遠出の本屋に行くのだけは面倒なので地元で済ます。警察沙汰にだけはなりたくない。M男にもなりたくない……いや、これにはなりたい。男なら誰しも、こういうアハ〜ンな大人の絵本に興味を持つだろ。俺だって男だ。

 俺は今日も本屋の姉さんに追いかけられる。
 最近、知った情報によれば、元陸上部の俺に対して現役の陸上部員の姉さんが万引きハンターの代を受け継いだそうだ。
 素足では無くトイレのサンダルで今日は疾走している。時折健康サンダルを履いての疾走が見られるときもある。疾走する時は運動靴のほうがいいのに……。俺は時々相手を気にかける。まあ……追われているほうが今更、敵の心配をしても仕方の無いことだが。
 こういうことは日常茶飯事。本屋の姉ちゃんVS俺ら万引き組みの死闘は今日も続く。
 万引きをするのは俺だけじゃない。探してみれば各地に拡大しつつある。ただやっていることが似ているというだけで、別に仲間ではないのに仲間の様に振舞うときがある。その時はカナリヤバイ、警察沙汰寸前というときの決まり文句。決して、有功的ではない。

●その後の観察

 時に、本屋の現役陸上部以外の女がレジを担当していた日のこと。今日も懲りずに、本屋に立ち寄った俺。
 ふとレジを眺めていて気がついたことがある。最近はレジを担当する娘達はどれも新しい顔ばかりで、何故か日を追うに連れて丸々と体格が太っていくという現象が起こることに気づいた。朝青龍並の体格から、それ以上の体格を誇る巨女ばかりを密かに育成していたと推測できる。
 俺は何の警戒も無く店内に上がり、レジの前を素通りする。それだけでも違う空気というか威圧感というか、ドスの聞いた黒いオーラが漂ってる様に俺の眼中には鮮やかに見える。ちらりと横目で視線をレジのほうに泳がせて見る。普通奈良女子の胸の鎖骨辺りが見えるはずなのに泳がせた眼中には何故か、祭りでよく見る大太鼓の白い幕の様なものが、レジスターの置いてある台の角っこにめり込んでいる感じに見えた。
 これは単なる錯覚なのか、俺の思い込みなのか、または俺が小さいだけなのか。190センチくらいはある俺の背丈でも見上げるくらいに馬鹿でかい巨大なタヌキに引きを見上げてみるが、どうしても顔の部分だけが見えない。見えるのはタヌキの様に出っ張った太鼓の様は腹と、大きな小山が左右に突き出ている女性特有の東京ドームの様な丸みの胸。
 彼女達は推定で全長2メートル強ある超ジャイアントなデブ娘だろう。レジに立つ巨女達は一人ではなく二人くらいがギュウギュウに押し込まれているのだ。彼女らにしてみれば、かなり狭い空間の中に押し競饅頭の様な状態で身動きも満足に取れないくらいに出っ張った巨大な腹と大木の様な太い二の腕が擦り合い微動も出来ない状態だった。朝青龍の詰め合わせと呼べるくらいジャイアント娘が二人詰まったレジを正面から直視していた俺の存在に気づいていないのか、またはわざと気づいていないフリをしているのか、彼女達はレジの反対側の遥か奥の壁際にある本棚に視線を向けていた。

 俺はそっとレジの前を離れて彼女達の正面にある本棚をひとまず避けながら右側奥にある本棚に移動する。
 暫く人間観察。では無いが、俺と同じ様な事を仕出しそうな人物をターゲットに、俺は遠目から彼の行動を眺めていた。同様にレジのジャイアント娘達も彼を見ていた。
 ただ一つ違うとしたらレジにいたジャイアント娘達は何故かニヤニヤしながら彼を眺めていて、俺は彼の今後の動きに注目した。万引きがバレた瞬間に全力疾走で店を飛び出すか、書店の前に止めていたチャリンコに跨りフルに左右のペダルをこぎ回して、どちらかの体力が尽きるまでの賭けに出るのか。俺は雑誌を見るふりをしながら彼に期待しつつ来るときを待った。
 時は回る。ゆっくりと回る。そして時は来た。ジャイアント娘達の動きが変わった。多分、彼女達の目に万引き犯が映ったに違いない。
 決して俺じゃない。いつもなら俺が万引きして逃走というのはセオリーだが、今回だけはレジ担当がいつもの姉ちゃんじゃなかったために諦めた。いや、俺は今後の保険のことも考えているから……それで。
 いつもの姉ちゃん相手なら全力疾走で逃げ切れるはずだが、あの巨体を揺らして疾走した上に圧し掛かられでもしたら俺の存在は完全否定されるだろう。
 彼女達の身長が2メートルあるのかは定かではないが、絶対プロレスとか町の一つや二つを軽く踏み潰していそうなジャイアント娘に、ねずみの様な俺ら万引き組みが追いかけられて病院送りになるくらいなら、いつもの現役陸上部に追いかけられたほうがまだマシだ。
 妙なことに巨女達は俺ら万引き犯を見るたびに新しい玩具が手に入って大はしゃぎする無邪気な子供の様に巨女達はその身を揺らしながらのっそりとレジから離れると二つの肉の壁が彼の目の前に立ちはだかる。
 ジャイアント娘は巨体を生かして二人一組で自分らの小股あたりに顔がある小さな万引き犯を取り囲み、やっぱり彼女らのわずかな隙間を狙って駆け出そうとする万引き犯の彼をジャイアント娘の一人が大木の様に太い腕を伸ばして、そのまま彼の細身な身体を両手でしっかり束縛する。
 もう片方のジャイアント娘が束縛された小さな犯人と視線を合わせるように腰を下ろし、捕まえた万引き犯のズボンを徐に勢いよく下ろす。何故か彼女は着ていたティシャツを脱ぎ始めて、下着姿に成ると命の次に大切な男の証を女性特有の左右対称の小山の間の谷間に挟みながら少し硬い桃を包み込むような大きい手のひらで撫で回しだした。
 ……見たことがある。知っている。一部の野郎にはうけるというAVの内容と同じだ。彼女達がやっているのは俗に言う肉体フェラだ。だが、これ以上は俺にも予測は出来ない。というか、本屋でこんなことしていいのか。というより彼が羨ましいよ……。心の底から思いつつ、彼が苦しんでいるのを見てみぬフリをしながら、俺はただ仲間ではない仲間の姿を羨ましく思いつつ、少年誌を立ち読みをしていた。
 俺は巻き込まれたくないがために、自分の健康のために、俺はあいつを裏切った。
 いや、裏切るも何も他人だから関係ないが、口出しする気もなかった。多分、この場で口出しをしていたら俺の健康に被害が及ぶ。どうしても避けたい。俺は桃色の大人の絵本を見て、常に妄想だけしてればいいと思う。健康に被害は無い。
 ただ、ちょっぴりあいつを応援してやりたい気もした。だから、俺は心の底で思った。――ガンバレ。

 束縛された彼はジャイアント娘達に裏手の中へと引き吊り込まれる寸前に俺のほうに視線を向けていた。どうやら彼は俺の存在に気づいたらしい。彼の目がSOSを求めている。それでも俺は――ガンバレ。親指を立てて、グッドラックを彼に送る。
 どこぞの誰かは知りませんが頑張って青春を経験して大人に成ってください。俺は心の中で強くエールを送ったつもりで、彼が裏手に引き吊り込まれるころには何も無かったように俺は健全な少年誌を立ち読みしていた。
2008/05/07(Wed)19:42:52 公開 / 修羅場
■この作品の著作権は修羅場さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えー……少し危ない単語も含まれていますが、
今後は多分、無いと思われます(汗
大半は文章ばっかりで、台詞がまったく無いですねぇ(苦笑)
いや、主人公視点だからいいんですよ。なんて言ったら、駄目なんでしょうね(^^;)たまぁに、台詞がチョコチョコ入る予定。
こんなんですが、今後ともよろしくお願いします。
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