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『猫の好き嫌い』 作者:色即是空 / 恋愛小説 リアル・現代
全角1714.5文字
容量3429 bytes
原稿用紙約6.85枚



〜猫の好き嫌い〜





「こら、我が儘言うんじゃありません。」

そっぽを向く姫希をたしなめるも従う様子は全く無い。
周りもいつものことだと割り切って苦笑いを浮かべる。

「別にい〜もん。私は一人だって行くんだからっ。」
「どうしてそんなに拘るのさ。明日また行けばいいじゃない。」
「今日がい〜のっ!」

この猫気質猫容姿のお嬢様の扱いには毎度毎度ホントに困る。
たまにはみんなで食事にでも行こうかと学園の帰り道に提案が出た。
別に承諾しない理由もないし、二つ返事で返した。
そこまでは良かったのだけれど、我がお嬢様が納得しない。
食事に行くことが、ではなく、何を食べるか、である。

「ラーメンも美味しいのに。」
「お寿司が食べたいっ。回るお寿司が食べたいのっ。」

回るだけまだマシかなとは思うけれど。
ラーメンに決まった経緯を語れば単純で、このあたりに新装開店した店があるからだった。
確かに見極めを兼ねての食事ならおもしろそうでもある。
それなのに、

「多数決の原則にお従いなさい。」
「そうやって少数派を消していくのねっ。」
「時代は大衆なのです。」
「個性を主張しなきゃ生きていけないのっ。」
「没個性もその一つに入るかと。」
「沈んでるじゃないのっ!」

ダメだな。
これは張り合ってもムダだ。
かと言って一人で行かせるワケにもいかない。
仮にも付き人である以上は主に従わなければならないし。

「ごめん、回るお寿司じゃダメ?」

猫を除く四人に同意を求める。
苦笑混じりに頷く者、ジトッとした視線を投げかけるもの。
反応はそれぞれだけれども、人の良い彼らは承諾してくれた。

「姫希っ。あんたって子は協調性がほんと無いのっ?」
「いいもんっ。自分に素直になって生きてるだけだもんっ。」
「まぁまぁ姉さん、お寿司だって美味しいですから。」
「アンタもすぐに譲歩に走るんじゃありませんっ。」
「いいじゃねぇかたまにはよ。もめないに越したことはないし。」
「行くなら早く行きましょう。時間の浪費です。」

個性を露わにしたセリフでしばし騒然となったが、最後には落ち着いたようだ。

「というわけでレッツゴ〜!」
「仕切ってんじゃないわよこの我が儘猫っ。」










後ろから抱きしられるのを子猫は好んだ。
今日一日の職務を終えて自室に下がっている時にソロリと入ってくる。
そのまま適当にジャレついた後にこの体勢に落ち着くのだ。
風呂上がりなのか、長い美しく金髪からは仄かに甘い香りが漂う。
髪を梳いてやると目を細めて心地よさを物語るあたりは猫そのもの。
腕は軽く抱きしめる程度が好ましい。
力を入れすぎると痛がるので注意が必要。
子猫はその体勢でテレビを見ることが多い。
僕は子猫をあやしながら大抵本を読む。
時折質問を投げかける子猫にもしっかりと答える。

そしてごく希に、

「入るわよ〜。」

一方的なかけ声と一緒に女王猫が現れる。

「何よ姉さんっ。出て行ってっ。」
「連れないわねぇ。たまにの訪問なのに。」
「何度来たって無駄。志郎は私の付き人なんだから。」
「決めつけはよくないわね。もうすぐ更新でしょうに。」

スルリとしなやかに僕らの間に入り、僕の背中に腕を回す。

「志郎も素直になればいいのに。」

ジャレる相手を取られることほど苦痛はないらしい。
かなわないと理解しながらも女王に挑む姿は哀愁を誘う。



付き人(つきびと)。
ボディーガードと同一視される傾向が強いけれど、実際は全く異なる。
事実、姫希にだってボディーガードはちゃんといる。
一概に付き人とは何かと聞かれても言葉に詰まる。
僕が思うに、付き人とは主の心を守るものだと思っている。
体はボディーガードがいれば心配はない。
しかし付き人を雇う家柄の子は決まって孤独なのだ。
彼らが求めるものを簡単に定義なんかできないけれど、
何人もの彼らを見てきた僕から言えばそれはきっと、心だ。
大切なものは心なのだった。

「志郎っ。」
「なに?」
「志郎は死ぬまであたしの付き人なんだからっ!」

僕は苦笑をもらしながら答えるのだ。

「姫希が見捨てない限りはね。」





〜猫の好き嫌い〜


2008/04/15(Tue)09:03:33 公開 / 色即是空
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