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『夕陽が沈む。何かが終わる。』 作者:月國 / ショート*2 未分類
全角1998.5文字
容量3997 bytes
原稿用紙約8.3枚

夕陽が落ちる
  心の地平線に――――














友人の家からの帰り道に、小さな丘がある。

一本の道はその丘のちょうど真ん中をはしっていて、その少し盛り上がったところからは空が良く見えるのだった。

赤く染まった空の西の端に夕陽が今、沈もうとしている。
そこで僕はふと足を止めるのだった。


真っ赤に燃え滾るその夕陽は『生命の終わり』を感じさせるのだ。
ゴッホの絵やベートヴェンの音楽など【芸術】といった類には、全くと言って良いほど興味が無い自分に
その赤く儚げな光は必死にそれを伝えようとしていた。

全てが終わる
そんなはずはないのだけれど、僕の心の中の何かが確かに消えようとしていた。

ふと隣を見ると、昔死んだ祖父に似た一人の老人が夕陽を眺めていた。
僕は何か話しかけようと思ったが、言葉が浮かんでこなかった。
浮かんだとしても声に出すことは出来なかっただろう。


「一日が終わる」

老人は確かにそういった。視線をは夕陽に向かったままだ。

自分でも何故かは分からないが、涙が僕の頬を伝った。




ちょうど四年前。僕に祖父から電話がかかってきた。

「時々は家に遊びに来てくださいね」

頑固な祖父がそう言ったことに僕は驚いたが、別に遊びに行く理由もないし
単に『めんどくさい』というだけのこともあって結局、それらしい返事をして電話を切ったのだった。

そして、その電話から三日後、祖父は息を引き取ったのだった。
朝御飯が出来たと知らせに部屋に行った叔父が布団の中で冷たくなっている祖父を見つけたそうだ。

僕がその知らせを受けたのは友人と公園でサッカーをしていたときのことだった。
涙声で語る母の言葉を受け入れることは出来なかった。

車で行って一時間掛かる祖父のうちに、僕は自転車で向かった。
何故かはわからない。ひたすらペダルを扱いだ。
途中で道が分からないことに気が付いたがそれでも必死にペダルを扱いだ。

そうして祖父の家に着いたのは夜の八時だった。
どうして辿り着いたのかは自分でも分からなかったが、
ふらふらとした足取りで僕は祖父が横たわっている布団の脇へ座り込んだ。

祖父は笑っていた。
良く「仏のような顔だ」
などという人も居るが、僕にはそれ以上に感じられた。

叔父が僕に一枚の写真を渡してくれた。祖父の枕元にあったそうだ。

それは以前、昭和記念公園という所へ祖父と一緒に行った時のものだった。
僕の眼から涙が溢れた。
さっき自転車に乗りながら涙が涸れるほどまで泣いたのに、
それでも涙は止まらなかった。

自分を悔やみ、憎んだ。
どうして祖父の最後の頼みを聞いてやれなかったのか。
祖父の家は決して遠いわけではないのだから、自分の時間を少し削るだけで良かったのだ。
いや、削ると考えること事態がおかしかったのだ。

泣きつかれた僕はそのまま祖父の横で一晩を共に過ごした。
このまま永遠に眠っていられればいいのに…そう思った。



そして今、その祖父がまた僕の隣に居るような気がした。
『一日の終わり』それは人生の終わりを意味しているのではないだろうか?

「ごめん…」

僕は小さな声でつぶやいた。
しかし老人は何も言わない。
もっと話がしたかった、話せると思っていたからこそ、安心して過ごすことが出来たのだ。
しかしその『時』には終わりがあった。

人生は短すぎる。僕はそう思った。
何も無い空間から宇宙を作り出せるのなら、人間の寿命を延ばすことくらい神には容易いことではないか。
そもそも、祖父たった一人を幸せに送ってやれなかった自分に生きる意味があるのか?資格があるのか?

「長さじゃない」

え?と僕は顔を上げた。
しかし老人は真っ直ぐ夕陽を見つめている。

そうか、この時僕は初めて気付かされた。
この老人、いや祖父は四年前の僕のことをほんのこれっぽっちも恨んではいないのだと。

そして今、祖父は四年間自分を悔やみ続けてきた僕に何かを伝えようとしている。
僕が出来る最後の孝行。それは今、祖父から大切な何かを教わることだ。
幸せに生きれば良いなんて言葉は望んではいない。

「生きた長さじゃないんだよ。
 太陽が地を照らすように、人は生きている間に何が出来たかが人の一生であり、人生の価値なんだよ」

今度は僕の眼を真っ直ぐ見つめながら祖父は言った。

生まれた時生きるから意味なんて存在しない。
         生まれたからこそ生きる意味を探せる。作り出せる。
                    少なくとも私は生きてきた、それを信じて―――



ふと気が付くとそこに老人はたっていなかった。
東の空が暗くなってきた。

僕には何か出来るだろうか?
自分の未来にある何かを信じることが出来るだろうか?

生きる意味を探せるだろうか?






夕陽が沈む――









一日が終わる―――










何かが生まれる予感がする――――――







2008/03/08(Sat)22:35:44 公開 / 月國
■この作品の著作権は月國さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
半分は自分の体験談になってしまいました。

数年前、祖父がこの世を去ったのですが、ちょうどその四年後に
自分の夢に出てきたことがこの作品を作るきっかけとなりました。

昔何度も言っていた「人間の存在理由」を夢の中で語るんですよ。

きっと『形』にして欲しかったんでしょうね。


自分は国語力が無いため、文法が滅茶苦茶であったり、
中には漢字ミスなんかもあるかもしれません。
ですが、自分なりに伝えたいことは書けたのではないかと思います。
その中の少しでも感じ取っていただければ嬉しいです。


最後まで読んでくださった方。
どうもありがとうございました。
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