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『DEATH ABYSS.』 作者:稟 / ホラー 未分類
全角2755.5文字
容量5511 bytes
原稿用紙約9.1枚
真夜中に突然現れる少女と、謎の穴。その名前は、“DEATH ABYSS”…。10年前のある事件から始まった、恐ろしい怨念の呪い。主人公、風間友貴佳は、その不可解な呪いをとくため、少女と戦っていく。
「ねぇ、あの噂、知ってる?」
風間友貴佳は、学校へ向かう電車の中で、女子高生のそんな話を聞いた。
噂や都市伝説、おまじない。友貴佳はそんな話を信じてはいなかった。だが暇だったため、なんとなく、その話を聞くことにした。
「あの、マンホールがなんとかってやつ?」
「そうそう!でもあれ、マンホールじゃないらしいよ。なかったはずの“それ”が、突然現れて、吸い込んじゃうんだってさ!」
「そんなのあるかなぁ〜…」
まったく、意味が分からない。“それ”…?なんのことだろう。
気になる。学校に行ったら、加奈にでも聞いてみようか。
友貴佳はそんなことを考えながら、窓から外を眺めていた。


「友貴佳ぁー!おそいよぉーー!」
そう言って飛びついてきたのは、友貴佳の親友。水木加奈だった。
友貴佳とは真逆の、明るい、元気な性格を持っていた。男子にも女子にも人気があり、友貴佳は、自分が彼女の親友ということが誇りでもあった。
「ねぇ加奈。ちょっと聞きたいんだけどさ」
友貴佳はかばんを机に置きながら、加奈に今朝のことを聞こうとした。
「なになに?」
「なんか…マンホールの噂みたいの…知ってる?」
マンホール。あいにくその言葉しか覚えていない。分かるかな…?
「吸い込まれちゃうってやつ?」
加奈が分かってくれたことに、友貴佳は軽く感動した。
「あ!そう。たぶんそう!!」
「あれねー最近有名だよね。あれって実はマンホールじゃないとか。ネットでもアクセス数半端じゃないらしいよ」
「なんなの?それ」
友貴佳が聞くと、加奈は自慢げに教えてくれた。
それは、こんな話だった。

 
 *

真夜中の、0時。その怪奇現象は、突然起きた。
OLの早苗(仮名)は、会社帰り、ある道を歩いていた。
その場所は10年前、当時7歳の少女が、飲酒運転で突っ込んできたトラックにはねられ、即死した場所でもあった。少女は親とはぐれ、この大きな町で迷子になり、ひとりで町を歩き回っていたという。
だがその親は、両親とも行方不明になっていた。少女を残し、ふたりでこの町を出て行ったきり、だれも連絡が取れず、生きているのかすらもわからなかった。
だが少女が死亡した翌日、少女死亡のニュースが放送されるのとほぼ同時。彼女の両親が発見されたという情報が入った。
そのこともニュースとされ、その内容は、その両親もトラックにはねられ死亡していたとのことだった。少女は顔がハッキリしていたため、足や腕が潰れていてもすぐにそれが彼女だと分かった。
だが彼女の両親は、はねられたときに飛ばされ、二人とも顔が潰れていた。それだけでなく、はねられたのとは明らかに違う切傷が体中についており、母親のほうは両腕がいまだに見つかっていないという。死亡して時間が経って、からだが腐敗し始めていたこともあり、本人と判断するには時間がかかった。
それも、両親の死亡原因は事故ではなく、何年も前から追われていた暴力団の仕業ということも明らかとなった。
その事実を知った少女は、自分を逃げるために捨てた両親への怒りや、自分を轢いたトラックへの怨念を溜め、霊と化した。
だがそれだけでたりる訳が無く、おぞましい少女の霊はその場所に来た者を呪い殺すようになった。初めは、その場所に来た者をかたっぱしから殺していたという。だが次第に、範囲を広め、少女はどこにでも現れるようになった。

早苗が歩いていると、いきなり後ろから、声がした。
「ねぇ…どうして…わたしを置いていったの?」
「!?」
早苗はわけが分からず、その場所に立ち尽くす。
声がしなくなったので、気のせいか、と歩き始めた直後、腕を誰かに掴まれる感触がした。もちろん、そこには早苗ひとり。どこを見渡しても、人なんていない。ただ、掴まれる感触だけはくっきりあった。
「ねぇ…もう…おいていかないよね…?」
「…誰!?」
「わたしだよ…覚えていないの…?おまえのせいで、わたしは死んだ…!おまえのせいで!」
「…知らないっ」
早苗は怖くなり、手を振りほどこうとする。だが、できなかった。
「もう…おいていかないよね…?もう…死なないよね…?ねぇ…。ねぇ…?ねぇ!!!?」
「い…いやぁッ!!」
少女の霊が、早苗にはハッキリ見えた。顔は傷だらけ。血も噴出している。服はボロボロ。手足は異常な方向に折れ曲がっている。まるで、ひかれたときそのままのように。
「答えろ!!!!!」
少女は早苗の首を絞めた。少女とは思えない、異常な力で。
早苗は何も言えない。声が、出なかった。
「こたえないなら…おまえはしぬんだ……」
少女は聞こえないくらいの低い声を出し、早苗の首を絞める手を離した。そのとたん、早苗の真下に地面に、穴が開いた。コンクリートのはずが、マンホールほどの穴が確かに開いている。
「わたしの…テをかえせェ…」
早苗の体は穴に落ち、早苗の悲鳴も聞こえないまま、ゴキッ!バキッ!と、骨が折れ曲がる音が響く。そして…、耳を塞ぎたくなるような音とともに、早苗の両腕が切断された。
少女は不審な笑みをうっすらと浮かべ、穴の中へ手を伸ばした。すると、そこには切断された早苗の両腕が転がっている。
少女はその腕を両方とも拾い、
「みぎは、いらないの」
そう言い、早苗の拾った右腕を捨てた。そして自分の左手を捥ぎ取り、早苗の左腕をくっつけた。
「ちょっと長いかな…」
少女はいっかと笑い、スキップをしながらそこから離れた。
道には早苗の、切断された右腕と、少女の捥ぎ取られた左腕だけが落ちていた。


 *

「その女の子が、いまも出てるって話だよ」
「へぇ…」
リアルで、気持ちの悪い話。友貴佳は身震いした。
「で、その穴が、噂のマンホールってやつなの?」
「“DEATH ABYSS”って言うんだってさ。その穴のこと。日本語で、『死の奈落』。その中に入っちゃったら、体のどっか取られるんだって」
「“DEATH ABYSS”ねぇ…。なぁんか変な名前」
「まぁそこらへんの人が勝手につけた名前だと思うけどね」
加奈はくすっと笑った後、真顔で友貴佳に言った。
「その女の子、このへんも出るんだってさ。だから、もし現れても、ぜったい声出しちゃだめだよ。そのコが何か言っても、止まっちゃだめ。そう書いてあったよ。無視してれば諦めるからって」
「無視ねぇ…」
友貴佳は、ばかにしていた。そんなの、出るわけないじゃない。まぁ確かに最近、切断された両腕が見つかったとか、そんなニュース多いけど。それとは限らないしね。信じない。そんな噂なんて。
友貴佳の態度に、『ほんとなんだってば』と言い、授業の始まるチャイムと同時に、加奈は席に戻っていった。

    …DEATH ABYSS。

 あたしは、そんな噂、信じない。

  絶対巻き込まれないって、思ってたのに…。




2008/01/18(Fri)22:21:57 公開 /
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■作者からのメッセージ
ホラーは初めてで、どうなってるのかわけ分かりませんが、とりあえずがんばって書きました。どうぞ見てください。
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