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『そんなこんなで忘れ物』 作者:チェリー / ショート*2 ショート*2
全角2058.5文字
容量4117 bytes
原稿用紙約6.35枚
『そんなこんなで忘れ物』


 待ち合わせはいつも八時。
 学校へ行くにはちょうどいい時間だ。ただ早送りのように忙しいサラリーマンたちにはゆっくりできる時間ではないだろう。
 学生である琴宮梓、こんなことを思う朝は少し幸せに思う。ゆっくりと朝を過ごすことのできるのは今だけなのだろう、そんなことが過ぎり、かすかに感じた幸せを抱く。
 それにもうひとつ。大好きな人と待ち合わせをするということ。これも今だからできることだ。
 梓は手に持っていた携帯電話を開く。メールの受信箱には新山祐の名前が一覧に並んでいた。その中には今の時刻と同じ、時刻七時五十八分着の未読メールが入っている。
『遅れそう! 時間過ぎたら先に行ってて!』
 十八文字だけのメールは彼が今日もあわてて待ち合わせの場所に向かっていることを十分に感じさせる。思わず緩んでしまったままのネクタイや寝癖がついたままの祐を梓は想像した。
 実に面白いのは想像通りに彼が来ることだ。
 いつもこの本屋で待っている梓だが、店内から外を見ていると想像通りの祐が走りながら通るのはまるで劇場でひとりの客としてお笑いコントを見ているようなものだった。きっと今日も同じようなことが起こるであろうと思うと思わず笑みをこぼしてしまう。
『待ってるよぉ』
 一言メールを送った。
 また連絡が来るかもしれないため梓はいつものように本棚のでっぱりのところへ携帯電話を置いた。こうすると雑誌を開いているときに携帯電話の着信時の振動に驚かされることもない。
 雑誌を読みつつ、外の様子を見る。そういう集中した中で突如として携帯電話が振動するとこれ以上とないほど心臓が驚く。寿命が縮んだのではないか、と携帯電話に敵対心を持つためにいつも携帯電話は出した状態だ。
 かといってバイブレーション機能、それを無効にするといつ連絡がきたのかもわからず、ならば着信メロディを設定しろといえば授業中に携帯電話がなることを恐れてしまう。
 葛藤の末にできた結果がこういうわけだが不憫にもかかわらず梓はこの方法を気に入っている。
 するとまた携帯電話が震えだす。
 梓はそれを手にとって先ほどのように受信箱を見るとまた新山祐の名前でメールが届いていた。
 今度はどうしたかな、と早速メールを見る。
『やばい! 遅刻する! 近くまで来てるけど、先に行ってつもいいから!』
 状況が悪化したのか、焦る様子が手に取るようにわかった。途中の文字は『て』と打ちたかったのだろうが『つ』になっているのは焦りの象徴といえるだろう。
『絶〜対待ってるぅ』
 返信をして携帯電話をまた置いた。
 雑誌の最後のページをみて二分か三分、それくらい経過したときようやく祐がまるでリレーをするように本屋の前を通るのを梓は見る。祐は本屋をのぞき梓を探しているようであり、ちょうど目が合う。
 腕時計に目をやり、時間がないよ、と腕時計を指差す祐。誰のせいで時間がないのだろうか、と考えながら梓は雑誌を置いて急いで外に出る。
「早く行こう! 門が閉まっちまう!」
 予想通りのゆるんだネクタイと寝癖。梓は見ていられず祐のネクタイを代わりにきちんと結んだ。
「ネクタイだらだらだし、誰のせいで遅刻なのよぉ〜」
 ため息をついて梓は祐を引っ張る。行き先はもちろん学校。
 時刻はもう八時二十分。だが門限は八時三十分。残り時間十分で学校まで間に合うのか、わからないがふたりで一緒に学校へ行けるこの時があれば梓にはなにも考えることなどない。梓の問題は学校まで間に合うのか、ではなくふたりで登校できるのかが問題だったのだから。
 今日も大好きな祐と一緒に登校できた。
 それは平凡かもしれないけど梓にとって今日を幸せに過ごすための大切なもの。朝のニュース番組で行われる占いコーナーを見て今日は最高の日だ、と思うことと祐と一緒に登校できるということは同じなのだ。
「だから、先行ってていいって、言ったろー!」
 途中途中息を切らしてからか区切りをつけて祐は言った。
「ひとりで行くのも嫌なのよ! 馬鹿!」
 ずっと走ったままだったため祐の体力はすでに限界に近かった。
 そんな祐を梓は引っ張りながら言う。
 せっかくゆっくりと登校できるはずの朝もサラリーマンたちと同じように時間を気にしながら慌てて登校することになるも、ふたりで登校するのはそんな焦りも掻き消えてしまう。
 学校の近くまで走り続けると聞こえるのは門限を知らせるチャイムの音。まわりにはふたりと同様に遅刻を恐れる生徒が走りながら門へ向かっている。
 教師が門の前に立ち、形相で生徒らをにらみつづける中、ふたりはなんとか遅刻を免れる。
「ふ〜。間に合ったねぇ」
「あぁ、……疲れたけどな」
「誰のせいよ……」
「……ご、ごめん」
 こうして梓の学校生活は今日も幸せな気持ちで始まる。
 だが、ひとつだけやってしまったこと。
 それは……。

「あ〜! また携帯本屋に忘れた〜!」

 祐が遅刻する日には携帯電話は今日も本屋で“忘れ物”。
2006/08/01(Tue)21:32:59 公開 / チェリー
■この作品の著作権はチェリーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 え〜と、とりあえずまたショートです。もう短編集としてひとつにまとめたほうがよろしいのかなぁ、と考えているチェリーです。最近短編しかかけない自分に気がつきまして、どうも時間がないこともひとつであり、どうやって書こうかなぁ、と悩むのもありまして、とりあえず私の力不足ということですね。なんだか昔とぜんぜん上達していないのではないか、と考えるようにもなりいろいろと小説を読み漁るようにしている日々です。しかし明日から三日間東京へれっつゴーするのが一番時間がないことを後押ししているように思える私。行きたいけど、行きたくない、っていう意味不明な自分がいたりです。
 ではでは、路線が外れたチェリーはこれ以上外れぬように退却します〜。・♪・ノシ チェリーでした〜。
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