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『僕たちは何だったのか』 作者:KR / リアル・現代 ショート*2
全角1463.5文字
容量2927 bytes
原稿用紙約4.15枚
思い出せますか。今から二十年前の自分を。
「それは、何だ。例えて言うなら? あれか。プチ家出とかいうやつか」
 右手でくるくるとボールペンを回しながら、私は電話口に聞き返す。受話器の向こうで、あぁ、とも、いいや、とも区別の付かない曖昧な言い方をしているのは、私の高校時代からの友人だった。
「家出だったとしても、ちゃんと学校に行って授業を受けてはいるみたいなんだろう? じゃあ、もうすこし信じてやったらどうだ」
 昔は毎日のようにつるんでいたが、ここ数年は年賀状のやり取り以外、ろくに連絡もとっていなかった。そんな奴が、突然電話をかけてきたかと思えば、子供のことで相談に乗ってくれと言う。
 奴の娘は十六歳の高校生。都内でもそこそこのレベルの公立高校に去年の春から通い始め、演劇部に入部したのだと、奴は言った。
『けど、親の信頼なんか、ウザったいだけなんだろ。最近の高校生ってのは』
 今度は私が、あぁ、とも、いいや、とも区別の付かない返事をする羽目になった。
 私は、やはり都内の、中高一貫の私立校の教師をしている。女子校で、中学生の面倒を見ることもあれば、高校生の面倒を見ることもある。疎遠だったはずの彼が、わざわざ私に相談を持ちかけたのも、そんな理由からだろう。しかし、私に言わせれば、最近の高校生と一口に言っても、それこそ千差万別、こういうものだなどと断言することは出来ない。
『とにかく、娘が家に帰って来ないんだ』
 友人はすっかり追いつめられた声で言った。額にかいているだろう脂汗が目に浮かぶ。私は保護者会や三者面談で顔を合わせる、PTAの母親たちを思い出していた。
『部活が忙しい、大変なんだ、秋ぐらいからそんなことを漏らしていたと女房は言っていた。冬になったら今度は、先輩に演技の相談に乗ってもらうから、今日は帰れない、そんなことばかり言い出して、今月になってからは夜の十二時に帰ってきた試しがない』
「そりゃあ、確かに心配だが」
『そうだろう? なあ、部活ってのは、そんなに毎日あるもんなのか。学校ってのは、人様の若い娘を、そんな夜遅くまで居残りさせておくものなのか』
 心配と怒りとが、7:3で入り交じった声だ。それなら学校に直接問い合わせればいいものを。私立と公立とでは大分勝手も違うし、先輩に相談に乗ってもらっているなら、学校ではなく近場のファミレスやファーストフード店に入り浸っている可能性もある。
「娘さんの担任には相談したのか」
 私が聞くと、いいや、と友人は答えた。
『学校側の印象を悪くするようなことはしたくない』
「ずいぶんと弱気なことを言うんだな」
『だって、そうだろう。あそこは俺の学校じゃない。娘の学校だ。あいつは学校には行ってるんだ。家には帰らないくせに……』
 友人の声が小さくなった。ぼそぼそと何か言っている。
『……十六年育った家より、半年やそこら通った学校の方が、居心地がいいのか。家族より、あいつは友達や先輩を選ぶのか』
「おい。お前、何言ってるんだ?」
『なぁ、聞かせてくれ。学校ってそんなにいいものなのか?』
 私は言葉を失った。
 それから後のことはよく覚えていない。ただ、上っつらだけの言葉で友人を慰め、適当に電話を切った気がする。奴の娘は、今夜は帰ってくるだろうか。帰ってきたら、奴は娘になんと言うだろうか。
 ボールペンを回しながら、俺はふと、奴と一緒に学校へ通った、自分の高校時代を思い出そうとした。けれど、それはあまりに昔のことのようで、楽しかったことも辛かったことも、皆もやがかかったようにしか思い出せなかった。



<終>
2006/01/16(Mon)00:19:11 公開 / KR
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■作者からのメッセージ
主人公も、友人も、その娘も現実にきっと存在します。
あなたは思い出せますか。一年、二年、五年、十年前に、一番楽しかった思い出を。
今年一年で、一番楽しかった思い出を、二十年先まで持っていけますか?
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