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『meet you <四話>』 作者:沼 / 異世界 ファンタジー
全角3845文字
容量7690 bytes
原稿用紙約12.9枚
空からの少女と出会った少年のお話。
<1>

 ミソラはただ空を見ていた。ただ呆然と、空を見ていた。
 ミソラの周りには何もなかった。足元には草一本すら生えておらず、土が剥き出しになっている。勿論誰かが抜いていったわけではない。そこには最初から、何も生えてくるはずがないのだ。
 遠くにあるらしい森の緑と、その上に広がる空の青――鳥が飛んだ。
「…………」
 ここはどこだろう、とミソラは考えていた。そこは自分のいた場所とは少し違うような気がしたのだ。
 しばらく考えてみた。けれど、結果は出てこなかった。
 ミソラはただ、立ち尽くしていた。

 シドは少女を待っていた。何度も何度も夢に現れた少女を、今か今かと待っていた。
 夢の少女はいつも、ただ空を眺めていた。それだけだった。そしてシドはただ、夢の中でその少女を見ているのだ。
 夢はいつもそこで途切れ、そして目覚める。しかし何故か今日は違ったのだ。
「ミソラ… 私はミソラ。あなたは?」
 夢の――ミソラと名乗った少女は、シドに喋りかけてきた。
「……シド…」
 思わぬ夢の続きに、シドは夢の中であるにも関わらず心臓が止まる思いだった。
「シド… 待っていて。私、もうすぐ行くから」
 次の瞬間、シドの目は自分の部屋の天井を見ていた。
 夢の中のミソラは、『待っていて』と言っていた。
 シドは待っている。
 ミソラと出会うために。

<2>

 雲が流れていく。ミソラはまだ空を見ていた。もうどれくらいそうしているのかわからなくなるくらい長い間、ミソラは雲の流れを見ていた。
 時折風が吹き、ミソラの頬をかすめる。そして時折、鳥の羽の音が耳を通る。
 とても静かな時間だった。とても長い間、こんな時間を過ごしていなかったような気がした。
「…………」
 しかし、風の運ぶ香りや流れる空気――やはり何かが違うのだ。妙に違和感を覚え、やはり自分は“ここにはいないはずの人間”なのだと確信した。
 そのときだった。
「………?」
 雲と雲との間に、何か光るものが見えた。それは動いているようで、ゆっくりだが確実にこちらに近づいてきている。
「………」
 どんどん大きくなっていく、光の点――それは間違いなく、ミソラのほうへと向かっているのだ。
 ゆっくりだが、速い。もう二、三分もすれば、光はミソラの拳ひとつ分くらいの大きさにまでなるだろう。
「………」
 ミソラは先程雲を見ていたのと同じように、その光を見つめ出した。見たこともないくらい綺麗な光だった。
 空から向かう光の大きさが、丁度ミソラの拳よりも一回り大きくなったとき。突然光は移動を止め、光の成長は止まった。
「…?」
 あれ、とミソラが首を傾げた瞬間、
「!」
 光はミソラ目掛け――先程とは比べ物にもならない速さで――ミソラを飲み込んだ。

 シドはまだミソラを待っていた。今か今かとハラハラしながら、けれど少しウキウキしながら、ミソラが来るのを待っていた。
「………」
 しかし、何か飲みたいという理由でココアを選択したのは間違いだった。昨夜夢を見た後、まだ夜中だったのに寝直すことが出来ず、そして今に至っているシドにとって“眠気”は最強の敵なのだ。寝てしまえば、最悪、ミソラと出会うチャンスを逃してしまうかもしれない。
 だが、敵は既に脳に『寝てしまえ』と信号を送っている。身体はその信号に従い、ずしりと重くなっていく。
 こんなことになるなら、例え母さんの入れた世界一のココアでも飲まなければ良かった、と意識の奥で後悔しながら、シドは眠りの世界へととんだ。
*
 夢の中。そこにはまた、空を眺める少女がいた。
 しかし、今回の夢もまたいつもと違う。少女の視線の先に、空のパーツとしては当てはまらないものが飛んでいるのだ。それは光の玉のようで、真っ直ぐに彼女のほうへと向かっている。
 シドは恐くなった。何故だかわからないが、光が彼女と接触することによって何か良くないことが起こるような気がしたのだ。
 もしあの光が彼女に触れたら、彼女はどうなるのだろう。シャボン玉のように、はじけてしまうのではないだろうか。消えてしまうのではないだろうか。
 嫌な予感がかりが渦巻き、シドの意識を支配していく。
 ――と、突然光が彼女を目指し動くのを止めた。
「……?」
 止まった、とシドは思った。一瞬、嫌な予感は全て吹き飛んだ。
 しかし次の瞬間、光は少女目掛け――
*
「!」
 目が、見慣れたテーブルと飲み干されたココアのカップを映した。
 ――起きたのだ。
 一体何が起こったのかわからなかった。あの光は、ミソラは――一体どうなったのだろう。
「――!」
 そうだ、あの光。ミソラはどうなったんだ。
 ――最悪な結果しか浮かんでこない。
 どうするどうするどうするどうするどうする、シドは混乱していた。しかし、こうしていても何にもならないということはわかっている。行かなければ。
「母さん、少し出掛けてくる!」
 シドは、何度も過ぎる“最悪な結果”を頭から払い、実際ミソラがどこにいるのか全くわからないままそれだけ言うと、家を飛び出した。

<3>
 
 シドは自分でもどこへ向かっているのかわからないまま、足の向く方向へと只管走っていた。見たこともない道に出ては、曲がる――道に出ては、曲がる――何度もそれを繰り返した。
 ここ数年、外へは全くと言って良いほど出ていなかったので、少し走っただけですぐ息が上がった。しかしそれでも、シドの足は止まらなかった。
 胸を締め付けるようなあの痛みも、不思議となかった。
(ミソラ、ミソラ――)
 シドは走りながら、ミソラが無事であることを祈っていた。だが、いくらミソラのことを考えてもミソラの顔が思い出せない。夢の中で確かに見たはずの顔なのに、何故だか頭に描くことが出来ないのだ。
 顔も思い出せない少女のところに辿り着くことが出来るのか、と誰かが問い掛けた。だが、シドはその声を無視し走り続けた。
 シドは気付かなかったが、このとき何かの落ちた音が遠くで、鈍く響いた。

 ――着いた先――そこは、近くの森から少し離れただだっ広い広場だった。驚くことに、そこら一帯雑草が全く生えていない。そこだけが切り取られたように何もないのだ。
 そしてその中心部には、少女が横たわっている。
「――ミソラ!」
 シドは少女の側に駆け寄った。
 顔こそ思い出せないが、ショートカットの黒髪に白のワンピース――夢の中の少女と素晴らしく一致している。恐らくこの少女が『ミソラ』だ。
「ミソラ、ミソラ!」
 抱き抱え、軽くゆする。息は、ある。生きている。
「う… …んぅ」
 少し唸ったあと、ミソラだと思われる少女は光を確かめるようにゆっくりと目を開けた。
 その顔が、ぼやけていた少女の顔とぴったり一致した。
「……あんた… 誰なの…」
 目を細めながら、ミソラは呟く。
「おはよう、ミソラ。初めまして、僕はシドだよ」
 このときのシドの笑顔は、生まれてから今まで見せた笑顔の、そのどれよりも輝いていた。

<4>

 朝が来た。カーテンの間から差し込む光が、ぽかぽか。私を起こしてくる。
 お母さんが窓を開けていったみたいだ。ぽかぽかなのに、少し肌寒い。
 お日さまの光が、ベッドのシーツをほのかに橙色に変えている。お母さんの選んでくれたシーツのピンク色も好きだけど、私はこの橙色も好き。
 私のお部屋は、私にはちょっと大きめ。ベッドだって、私があと四人は入れるくらいの広さがある。
 この前お父さんに、「なんで私のベッドはこんなに大きいの?」って聞いたら、「ミソラはすぐに大きくなって、気付いたらベッドが丁度良い大きさになっているんだよ」だって。私もいつかお父さんやお母さんみたいに、大きなオトナになれるのかなぁ。
「んっしょ」
 朝はいつも、この大きなベッドとの戦い。今日こそひとりでベッドから出て、お母さんをあっと言わせてやるんだから。
「んっしょ、うんしょ」
 手でシーツを掴みながら、体を横に、横に――だけど毛布が邪魔して上手く進めない。
「ミソラー、起きたかなー?」
「!」
 お母さんの声だ。階段を上ってくる。
 ちょっと焦って、もぞもぞしてみる。だけど全然、ベッドの出口が見えてこない。
「あーっ、あーっ」
 もぞもぞ。もぞもぞ。
 ――ガチャ
「あ――……」
 お母さんはあっという間に私の部屋に着いてしまった。
 ベッドの中の私の顔と、いつも笑顔のお母さんの顔。目がぶつかる。
「……おはよう、お母さん」
 小さい声で挨拶した。
「おはよう、ミソラちゃん」
 お母さんも私と同じくらい小さな声で挨拶した。
 それからお母さんは、私をベッドの中から助け出してくれて――
*
 ――声がする。
「ミソラ!」
 ――誰?
「ミソラ、ミソラ!」
 ――そんなに大声出さないでよ、脳に響くじゃない。
「う… んぅ」
 ゆっくりと目を開く。ミソラの目に容赦なく入ってくる、とびきりカラーの世界。それは今のミソラには眩し過ぎた。
 目を細める。
 目の前に、見たこともない顔があった。とても綺麗な金色の髪をした、驚くほど色素の薄い――少年、だろうか。少女だと言っても通りそうなくらい、中性的な顔をしている。
「……あんた… 誰なの…」
 寝ていたせいか、上手く声が出なかった。
 金色の髪が眩しい少年は、見ているこっちが恥ずかしくなるくらいの笑顔で
「おはよう、ミソラ。はじめまして、僕はシドだよ」
2006/01/04(Wed)13:52:09 公開 /
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■作者からのメッセージ
書いてて楽しかったです(笑)
これからも頑張りますッ
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