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『「小さな夢 大きな夢」』 作者:小池 公 / ショート*2 未分類
全角5459.5文字
容量10919 bytes
原稿用紙約14.2枚
「まえがき」
病気になり身体が動かなくなり初めて感じる。前人も何人かは同じような事を書き、又述べて居たと記憶する。私は無神論者であるだから今更神に祈る事は無い。ただ今はあまり痛くないように願うだけだ。五十年近くも生きて考える事は何とも浅ましい事とついつい考える。
何の為の50年だったのか。親にたてついて意地を張り虚勢を張りやっと一息ついたらこの始末である。たった7、8年の付き合いの私に笑いながら付いてくる優しい妻の有り難さが身にしみる。判っていながらつい我がままを言う何ともつまらない50歳の私だが、このまま死ぬのを待つのも腹立たしい。もう少し意地を見せたい。何か書き残す事くらいしか出来ないヘタクソな字しか書けないが何が良いか恋愛小説は柄にも無い推理小説は読むのは良いが自分では考えられないこのままこの調子で書いていこう。
何かハッピーエンドの短編でも書いてみたい。妻に手伝ってもらい少し頑張って見よう。
「小さな夢 大きな夢」
別に逃げていたわけでもない後ろめたさない急に強面の人間に「居たぞ」と言われ路地を走り廻った。何処をどう走ったかよく判らないが三十歳過ぎの体にはこたえた。タクシーに何とか乗り近くの駅まで行きそれから電車で帰路についた。家に着き妻に話したら笑われて「タクシー代がもったいない」と言われたその後は何事も無く三ヶ月が過ぎた。相変わらず売れもしない営業の外回りだった。この不景気に車なんか売れるはずはない。今頃になって営業の才能の無さが身にしみる。
妻はスーパーのレジ打ち、娘の「花」は来年は高校である。果たして入れる高校が有るかどうか心配なくらい頭が悪い。テストは特に数学はみごと一桁の点数である。私も妻も特別に良くはなかったがここまで悪くは無かった。いつも点数を見るたびどちらに似たかなすりあっている。私は何時もギャンブル的な発想で宝くじなどを買う。妻はその千円が「もったいない」とすぐに怒る。千円あれば二日分のおかず代になる。そんなどこにでも有る小さなアパート暮らしだった。
ある日娘の「花」がひょんな物を拾ってきた。見た目には小犬であるいやどう見ても小犬である。可愛いには可愛いが顔が変わっていた。口吻が異様に長い。そして足が太い。かなりの大型犬である。蚊の泣く様な声で「クン」と鳴くだけである。それもめったに鳴かない。アパートなのでペットを飼う事が出来ないはずだが此処の住民は飼っている人が多い。大家も余りうるさくない。犬、猫に関しては文句を言わない隆も紗智も動物が嫌いな方ではなく三人の意見が何も言わないうちに一致した。今までも花はいろんな動物を拾ってきたが一度もちゃんと飼った事が無かった。それもそのはず巣から落ちた鳩や燕の雛、死にかかったモグラ。そんな動物しか持ってこなかった。三人で「今度こそはちゃんと育てようね」と話し合った。
名は「ポチ」とした先日見知らぬ人の遠慮がちな訪問を受けたが今度は堂々とチャイムを鳴らして入ってきた。日曜日の午前中だったので家族は皆在宅していた。突然の訪問である。彼は先日の非礼を詫びた。その人物のあまりの変わりように隆はかなり驚いていた。又突然のきりだしだった。「子犬をくれ」と言うのである。勿論ただではなく三十万円と言う値をつけてきた。沙智は勿論即答である。花はやっぱり売りたくないようだ。二人して私の顔を見た。私は迷った三十万円貰いそのうちの七、八万も出せばいい子犬は幾らでも手に入る。あとの二十万円は家計にまわせばだいぶ楽になる。子犬の顔を見るとかなり怯えていた家に来て始めての怯えである。
隆の顔を泣きそうな目で見ていた。「わかったよ此処にいろよ」と言ってしまった。男はかなりしつこく妻と協同戦線を張ってきた隆は首を縦に振らなかった。そして話が終ったとたん男の態度が一変し急にドスのきいた声になりふところから刃物を出しもう片方の手には金を握り「早くしろ」と言った。とたんにあの子犬も一変し、皆がびっくりする様など太い声で「ラ、ラ、ラ」と唸った。それはもう子犬ではなかった。 
体長は七十センチになっていた口吻をめくりあげあっという間に男の刃物を持っていた手に噛み付いた。まるでテレビで見る警察犬の様だった。噛み付いた口を軸に回転し刃物を落とした。「此処には二度と来るな。」と言いたげに男を見上げ再び「ラ、ラ、ラ」と唸った。男はステゼリフを残し足早に出て行った。三人とも暫らくは何が起こったのか理解できなかった。ポチだけは何も無かったように花の膝の上であくびをしていた。三人で相談が始まった。金の事はともかくこのポチをどうするか。あの男からどうやってポチを守るかなかなか決まらなかった。
そして何よりもの謎はポチを拾う前に何故あの男に出会ったのかである。ポチを拾った後であればそれを目的に襲われても不思議ではないが拾う三ケ月前に出会った事である。どう考えても解らない。紗智は思ったより強い女であった。ポチを売ろうとした事を隆に謝り二度と別れない事を誓った。ポチもそれを許したようにペロリと頬をひと舐めした今度は隆が決断する時が来た。幸いこの地区は治安が良くお巡りさんも親切であった。さっそくポチを連れ三人で交番に男が持っていた刃物を渡し、事情を話した。
佐野という定年まじかのその警官は最初こそ怪訝そうな顔をしたが血のついた刃物を見てすぐに話に乗ってきた。よっぽど暇なんだろう、又よっぽど人がいいのだろう。次から次えの筆問の嵐であった。そしてかなりの犬好きであった。佐野巡査の曰く「ポチは狼もしくは狼犬である」と言った。だが先程の謎は解けないままである。とりあえず佐野巡査は本部には不審者の乱入と言う事でパトロールの強化を申し出た。
案の定例の男はアパートの前に居た。本部からの応援と佐野巡査の活躍により男は逮捕された。だが男は何も知らないの一点張りで、謎は解けなかった。再び黒岩家に平和が訪れた。売れないセールスマンと間違いだらけのスーパーのレジ打ち頭の悪い中三の女の子達との暮らしである。あれから花に聞いた所、ポチを拾った時の状況から変な事が判った。場所は公園の隅の薮であったが突然花に向かって走ってきて足に絡んで来たと言うのである。別に呼んだ訳ではない。花を選んで走って来たのである 何か意志があるように。
ある夜隆は変な夢を見た。ポチが話し掛けて来る。いやテレパシーかもしれない。ひとまず礼を言うそして自分が超能力犬である事を告げた。だが翌朝ポチに何度話しかけてもそっぽを向いた。紗智と花にこの話をしても笑うだけだった。偶然が重なっただけとの結論であった。翌日、事態に急展開が有った。花が誘惑されたのである。学校の帰りだった。仲の良い友達と別れて一人になった数分間の出来事であった。二人とも仕事で気が付くのが遅かった。紗智が帰宅した時ポチの異変に気付いた。無理に紐を引っ張り首に怪我をしていた。部屋に入り花が居ないのに気付き直ぐに隆に電話した隆はすぐに帰る旨の返答があり佐野巡査に連絡するように伝えた。佐野巡査に案内されて数名の捜査員が入ってきた。よくテレビで見る事件物と同じであった。逆探知器らしい物を取り付け何やら本部と連絡を取っていた。いろいろ聞かれた、だが我が家に金があるわけが無い誰が見てもわかる逆にこちらの方が欲しいくらいだ。捜査員も変に納得した。
何が目的か。あるとしたら変質者か。それぐらいしか頭に浮かばなかった。花は我が子ながら顔だちだけはよかった。だが気性は激しく万が一誘拐されたとしても大声の一つもだしたはずである。単なる変質者であればなお更である。だとすれば計画的犯行である。油断した。今、捕まっている犯人一人がなにもかもやっているわけではない。それくらい判りそうであった。駒一つ捕まえたぐらいで事件が解決するわけではない。だがこんな強引なやりかたで来るとは思わなかった。だが今度も沙智は強かった。「私の娘です、きっと頑張りとうします。」気丈であった。私もポチを連れて誘拐されたであろう。現場を歩いてみた。案の定車で連れ去られたらしく真新しい急発進のタイヤの跡の近辺で花の臭いが消えていた。
後は犯人からの連絡を待つだけである。そしてそれは二十二時頃であった。紗智の携帯に花からの着メロがあった。すぐに出たら矢張り犯人であった。犯人らしからぬ声で中年の喋り方であった。「娘は預かった命が欲しくば犬を殺すか拾った公園に繋ぐかどちらかにしろ。」短い電話であった。二つしかない選択である。翌日、二人とも会社を休んで十時頃ポチと公園に行って丈夫そうな木の幹にポチを繋いだ。「すまないでもこうするしか無いんだ。許してくれポチ」だがポチは何も言わず今度は隆を信じた眼で見つめた。「僕は大丈夫花ちゃんを早く助けてあげて今迄有難う。」隆にはそう言っているように思えた。距離八百メートルどでかいスコープの付いたライフルである。ビルの屋上からは公園は一望できる。もちろん標的はポチであった。
スコープにポチの額が大きく映った。額の真ん中に十字が入った。トリッカーに指が掛かった。その時ポチが飛んだ昨日暴れた時首輪が緩んだのかも知れない首輪はいっきに外れた。近くで見ていた佐野巡査と隆はびっくりした。犬がこんなに早く走るものかと思った。あっと言う間にビルの下に着いた。失敗を知った一台の車が急発進した。仲間を置いてである。それに気付いたポチは一直線に走った。薄暗い部屋であった。花は大きめのベットに転がされていた。手足と口はガムテープで巻かれていた。
隣の部屋から声が聞えた朝鮮語らしかったがはっきりしない。花は思った今まで変質者など怖くないと思っていた自分がなんの力も無い事を。何か体術を身につけよう。高校受験よりこちらの方が大事である花らしい発想だった。二人の親も許してくれるだろう。何とも受験の苦労より体術の練習の方が良いと考えたのである。何時頃であろう夕方だと思えた。隣の部屋が大騒ぎになった。そしてあの懐かしい唸り声が ラ、ラ、ラ、ラ、UU」ポチが来てくれた。私を助けにポチが。岩田はびっくりした。まさか犬が此処を襲ってくるとは 思ってもいなかった作戦会議の途中である。大体うまく行っていた。
二つの作戦。一つはイルカの魚雷。絶対の正確さである。アメリカでも開発が進んでいるという。イルカに敵基地内に入ってもらいGPSにより位置を確認しあとは思い通りに進ませ一気に爆発である。これは高く売れる。一頭数億円は下らないだろう。イルカにも遺伝子操作によりより忠実な兵士になってもらう。犬も同じである。日本ならばイルカや犬の実験ならば大手を振って出来る。イルカはかなりうまく行きもはや実用段階である。だが犬は上手く行かなかった。オオカミの血を入れなまじ強い犬を作ろうした為なかなか人に忠実にはならなかった。
又たまたまかメスのオオカミに超能力があった。何故か人の気持ちが判った。戦いとは関係のない実験には協力的であったが軍人が入ると まるで言う事を聞かなかった。それは仔オオカミ達も同じであった。ある日オオカミはとうとう逃げた。仔オオカミ五匹も一緒である。だが不知の場所エサに事欠いた。他の動物を襲えば簡単であったが「平和主義?」のオオカミには世間は冷たかった。そんな時ソーセージを三本も食べさせてくれた人間が居た。隆である。売れないセールスマンは暇である。
隆はオオカミである事も子供つれである事も知らないそんな日が二、三日続いたがすぐに追手がせまり「いたぞ!」追いかけられた。オオカミは子供に隆の匂いを覚えさせたそして「この人間について行け」と教えた。皆バラバラになった。岩田とその部下数人はパニックになっていた。あっと言う間に手足数箇所を噛まれた。拳銃は持っていたがそれどころではなかった。大あわてで皆逃げた。一日ぶりの一家三人いや一家三人と一匹が揃った。パーテイであった。佐野巡査も呼んでのパーテイである。佐野の話ではスナイパーも先日の犯人と同じで何も知らないの一点張りであった。
又 しばらくの平和が来た。ポチの体長は一メートル二十センチは超えていた。電話が鳴った隆が出た「三億円用意する」それだけで切れた。隆は今度こそ本気で考えさせられた。三億円あれば家も建てられる車も買えた。誰にも言わなかった。ただポチとだけ話した。一方的におれの事バカにするだろうな。お前にあれだけの恩を受けながらたかが三億円の為にお前を売ろうとしている。組織には犬は一頭も残っていなかった。ポチを除けば皆飼っていた犬も死んでしまった。他の子犬はすべてなたれ死んだ。最後の一匹から再び研究を初めなければならなかった。子供は安い買い物である。ある日一人で散歩に出た。ポチは連れて行かなかった。いつもの公園のベンチに一人で座った。突然大きな犬が目の前に現れた。「お前か!久しぶりだな。」「今日はソーセージはないぞ」そう言っ別れた。
帰宅の途中ポチとあの犬が良く似ている事に気付いた。総て判ったなぜポチが花にまとわり付いたのかも。「ポチはお前の息子だったのか」小さなアパートだった。でも人一倍平和なアパートだった。いやポチの目には大きなアパートだった。ポチと隆の目が合った「三億円か」ポチからウインクをしたように見えた。                          


2005/11/11(Fri)13:42:23 公開 / 小池 公
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