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『ずっと一緒』 作者:千夏 / ショート*2 未分類
全角1543.5文字
容量3087 bytes
原稿用紙約4.95枚
(カラ、カラ…)
「皆川っていつもアメ食べてんね。それってうまい?」
口の中でカラカラとアメを転がす。着色料使いまくりの蛍光ピンクをした、多分、外国のアメ。皆川ハツからはいつも甘ったるい匂いがする。きっとあのアメの匂いなんだろう。俺はそれがいつも気になっていた。
「アメ…つーか、砂糖みたい。甘いよ」
彼女は窓の外側に足を投げ出して言う。いつもこっちは見ないのだ。外の景色はただフェンスと緑しかないのに。俺を見ろよ、皆川。
「ふーん。体に悪そうだなぁ。早死にすんぞ」
一瞬こちらを向いた。目が合った。俺の方が先に逸らしてしまった。色素の薄い瞳。もう彼女はこちらを見ていない。さっきの表情は何だったんだろう。横顔からじゃ読めない。正面からでもきっと分からないが。
皆川は静かに言った。
「いいよ別に。心残りはないから」
「へぇ」
またこちらを向いた。今度は目を見て話した。彼女はクスリと笑った。
「ないわけないだろ。あるよ」
悪戯っぽく目を細める。睫毛長いなぁ、そんなことを考えながら聞いた。
「何?」
一瞬の間。
「ハツって呼んで」
笑顔、では無かった。俺は机から降り、一歩彼女に近付く。窓に片手を付き、二人目を合わせながら、言った。
「ハツ。好きだ」
彼女は目を瞑った。俺は寸前まで目を開けていて、キスする瞬間に瞑った。彼女は睫毛が長い。目は薄茶で、髪も目と同じ色をしている。肌は白くて人形のようだ。
そのキスは、外国の着色料使いまくりの甘いアメの味がした。


皆川はいつも美術部の部室に居た。ヘッドフォンをして、微かにシャカシャカ音が漏れている。何の曲なのかさっぱり分からなかったけれど、不思議と嫌ではなかった。
音楽を頭から振り払い、美術部なのかと聞くと、部活には入っていないと答えた。ここは美術部の部室だぞと言うと、あんたも美術部じゃないだろと返される。全く、その通りである。この学校に美術部員はいない。
「ここって人来ないんだよ。誰にも迷惑かけないでいられるんだ」
クラスは同じだがほとんど喋らなかった。彼女は学校には来るがいつも授業をサボってここで音楽を聴いているからだ。この時俺は、初めて彼女と言葉を交わした。
「迷惑かけてないじゃん。教室なんかうるさくて音漏れても気にしないよ」
「存在、邪魔だろ。つーか、何しに来たの?」
きついことを言う女だ。俺は少なくとも邪魔じゃないのに。
「皆川と、話してみたくて」
目を逸らされる。恥じらいは微塵も感じられず、馬鹿だな、と思っているように見えた。窓の外を眺める彼女は、とても絵になった。そういえば、彼女の見た目は日本人離れしていたのだ。
「ねぇ、その音楽何聴いてんの?」
聞こえているのかいないのか、少し間があってから彼女はヘッドフォンを外し、俺に渡した。
「曲名も、歌ってる人も知らない。けど、良い歌だよ」
言う彼女の微笑みは、どこか悲しそうだった。彼女はまた窓を向き、ポケットからピンク色をしたアメを口にほお張った。耳には音楽と、彼女の口の中でアメの移動する音が同時に聴こえる。集中しないと音楽は耳に入らなかった。

それから一年くらい、俺は授業をほとんどサボって彼女と他愛ない会話をした。


「また明日も来るよ」
「次はないわ」
「はぁ?意味が分かんねぇ」
「次はないのよ。今あたしすごく幸せなの」
「俺もだけど」
目の前には鋭く尖ったナイフを持ったハツがいた。その手に持った物騒な物とは裏腹に、表情は今まで見たことが無いくらいに優しい笑みを浮かべていた。まるで天使のように。
「おい、ハツっ…」
遠ざかる意識の中、ハツが静かに倒れるのが見えた。何か言ってる。何か、ああ、そういうことか。それには俺も賛成だ。

―――あたしたちはずっと一緒にこのままで居るのよ。

end
2005/10/23(Sun)21:12:47 公開 / 千夏
■この作品の著作権は千夏さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今晩和!ちょこーっとお久しぶりですw
連載中の『Your Good Time』のほうが進まないので…ちょっと息抜きに。
今回の設定はお気に入りです★こんな恋したくないなぁーと思いつつ。
しかも、名前は「皆川ハツ」しか出てないですよ。登場人物二人しかいないのに。うわー;
とりあえず、暇つぶしに読んで頂けたら幸いですw
最後まで読んでくれた方ありがとうございました!
それでは、もうひとつのほうがんばります; 千夏でした。
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