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『気が付いてすぐに失った だから巻き戻し』 作者:弥生 卯月 / リアル・現代 恋愛小説
全角4734文字
容量9468 bytes
原稿用紙約14.65枚
                     1

「優クン、あーそーぼー」
「あ、美砂ちゃんだ。いってきまーす」
 幼馴染の少女の訪問に、食べかけの昼ご飯もそっちのけで、少年、優一は、席を立つ。母親はそんな様子を見て、ただ、
「いってらしゃい、気をつけてね」
 というだけだった。優一が玄関扉を勢いよく開けると、幼馴染の、いつもと同じように髪をツインテールにしている、美砂の姿があった。
「今日は何して遊ぶの?」
「今日はね〜、おままごと」
 どんな事をするのか、幼稚園の友達のこと、そんなとびとびの内容の話を手をつなぎながらしているうち、目的地の公園についた。優一の家から歩いて五分程、ブランコ、シーソー、鉄棒や滑り台等、およそ公園の遊具として思いつくものは殆ど揃っていて中々の広さのこの公園が、二人のお決まりの遊び場だった。その公園の隅にある結構なスペースに持参のおままごとセットを美砂が広げ、その上に座った。そこで美砂が何やらプレゼント用の包装が施された箱を取り出した。
「あ、その前にこれ。優クン今日誕生日だから……」

                     2


 冬であるのに30度を越すその日、窓からもれてくる日差しに顔を照らされ、優一は目を覚ました。正面にある机に置かれている時計をベッドの中から見る。デジタル時計は七時三十分を表していた。
「七時三十分……? うわヤベ、遅刻だ!」
 通っている高校へはどんなに急いでも一時間半はかかる。ダメ元でランク上のところを受けたら通ったので、仕方ないが遠さを我慢して通っている。そこを選んだ理由は他にもあったが。
 優一は急いで制服に着替えると、昨日時間割ちゃんと確かめて教科書を入れ替えてある学校指定のバッグを手に取り、急いで玄関へと向かう。だがその途中で、母からとめられた。
「何ねぼけてるの? 今日は土曜日、学生は週五日制で休みでしょうが」
「週五日制……土曜日? なるほど。じゃあ、朝飯」
 優一は制服を脱ぎ捨ててパンツ一枚になると、テーブルの椅子に腰掛けてテレビのリモコンを取った。
「おっさん学生め」
 母親は愚痴をこぼしつつも、目玉焼きを焼き始めている。しばらく何も会話がなかった。だが突然母が思い出したように、
「あんた、美砂ちゃんと最近全然遊んでないじゃない? 昔はあんなに仲良かったのに」
 と言った。優一はテレビに注いでいる視線をそらさず、めんどくさそうにいった。
「遊ぶって、俺たち高校生なんだぞ? 彼氏彼女ってわけでもないんだしさ」
「……はあ。美砂ちゃん、いい子だと思うけどねえ」
 言いながら、優一の前に目玉焼きとトーストを出した。
 優一は今年で高校二年生だが、中学校卒業以来美砂とは殆ど会っていなかった。優一自身美砂を可愛いとは思うのだが、好きにはならなかった。友人達と遊んだりしているうち、美砂の存在は優一の中でじょじょに薄れていった。だが、久しぶりに会ってみたいという気持ちも正直なところ、強かった。
「……じゃ今日久しぶりに、会ってみることにするよ。ご馳走様」
 部屋に戻ると、まずすぐに私服に着替えた。電気はつけずに、半開きのカーテンを開ける。机の上に置かれている携帯電話を取ると、美砂の番号を探した。六回の呼び出し音の後、美砂が出た。
「はい、もしもし」
 何か用事をしていて忙しいのか、優一がかけてきたとはわかっていないようだ。
「俺だよ。わかる?」
「あ、優クン」
「いきなりで悪いけど、今から一緒に映画でもいかないか?」
「え、本当? うん、いこ」
 久しぶりの連絡に怒らず、むしろ喜んでいる様子で、美砂は急な映画の話にも乗ってきた。
 優一は待ち合わせ場所と時間を告げて、電話を切った。待ち合わせの場所には今から行けば一時間程早く着くが、特にすることもないので、すぐにいくことにした。だが、ふと優一の目に、見覚えのないオルゴールがうつった。
「ん……? こんなのあったかな」
 映画館に行くのは後回しにして、このオルゴールを聞いてみることにした。オルゴールを開けると、聞き覚えのある音楽がながれてきた。
「これは……あの時、あいつがくれた」
 そのオルゴールを、何回も繰り返し聞いていた。

                      3

 約束の映画館前で10分程たっていると、手を振りながら、こちらに近づいてくる、ツインテールの女性が見えた。
大きく手を振り返すと、その女性は手を振るのをやめて、全力で走ってきた。目の前までくると、やはり疲れたのだろう、ひざに手をついて荒い息をしている。
「何も走らなくてもいいだろ」
そういう優一に、美砂は顔を下げたまま、答えた。
「だって、久しぶりの優クンとのデートだから」
「デート……そうだな。デートだ」
 部屋であのオルゴールを聞いてから、優一は思い出した。幼稚園時代、美砂のことが好きだった自分、そして、オルゴールの事。
「どうしたの?」
 気づかぬ前に美砂のことを見つめていたようで、ようやく息を整えた美砂が、不思議そうに優一を見つめ返した。
「いや、なんでも。さ、見よう、映画」
「う、うん」
 映画を見ている間、一時間40分ほどの間も、優一は美砂を見ていた。不思議なものだなと思ったからだ。オルゴールを、あのオルゴールを聞いただけで、全部思い出したから。全部わかったから。自分が美砂を避けていたのは、本当は好きだったからだということに、気づいたから。
 映画を見終わったので、二人は喫茶店に入って少しはなすことにした。
「はあ〜、面白かったね、あの映画。ちょっとヤラしい所もあったけどさ」
 そう言って、優一を軽くにらむ。わかりやすいことで、そういうところを見せたかったのかと、言っているのだ。
「たまたまだって。それよりも美砂、あのな……おまえ、今、好きな奴とかいるのか?」
元々話し上手でない優一は、直球勝負で聞いてみた。美砂はふいをつかれたようで、
「へ? なんで?」
 と、見事に空振りのようだ。
「知りたいんだ」
「……いるよ」
「……誰?」
 美砂は口で言わず、右手の人差し指で、優一をさすことで、答えた。思いもよらぬ答えにしばらく、優一はぽかんと口を大きく開けていた。
「優クンだよ。ずっと前から、私の好きな人は」
 結局そのまま、二人は何も言うことができず、ただただ、ケーキを食べ、紅茶を飲むだけだった。

                     4

 二人が喫茶店を出ると、外はすっかり黒が空を支配していた。二人はまだどこか気まずそうに、ただ、お互いの家に向かう道が分かれるまでという暗黙の了解の下、一緒に歩いていた。お互いに何もいえないまま、ついに分かれ道についた。意を決して、優一が話し掛けた。
「送っていくよ。こんな暗いしさ」
「だ、大丈夫だよ。私もほら、子供じゃないしさ」
「送りたいんだ。おまえが心配なんだ。その、ほら……おまえのこと、好きだからさ」
 優一が思いを告げると、美砂は一言
「ありがとう……でも、大丈夫だから」
 と、泣き声で言い残して走っていった。その後姿を、時々街灯が照らしていた。
「ただいま……」
 何故美砂が去っていったのか、優一には理解しがたかった。本当は俺の事、好きじゃなかったのではないか? そんなマイナス思考ばかりが、良く働いた。何もする気にはなれなかったので、さっさと部屋に戻って寝ることにした。

                     5

「優一、優一!」
 母が叫びながら階段を駆け上がってくる音で、目を覚ました。朝と同じくベッドの中から机の上のデジタル時計を見る。二十二時二五分。まだ夜だ。なのに母は、いったい何を慌てているんだ? すると、母が勢いよろしくドアを開け、目尻に涙を溜めながら、叫んだ。
「美砂ちゃんが、美砂ちゃんが……」
 どうやら美砂のみに何かあったらしい。跳ね起きて母の背中をさすりながら、続きを促した。
「落ち着いて、母さん。美砂が、どうしたって?」
 母はようやっと落ち着いた様子で、しかし涙は流しながら涙声で、言った。
「美砂ちゃんが、交通事故で亡くなったって……」
 ……しばらく、1分ぐらいだろうか。優一は、その意味を解せず、ただぼうっと立っていた。
「青信号なのに車が突っ込んできて、そこに美砂ちゃんがいて……飲酒運転だって……」
 やっと母の言っている意味がリア記できると、優一は、自分が許せないという思いに刈られた。なぜ、俺は無理にでも美砂を送らなかった? そうすれば、きっと事故は防げた……優一は、次の瞬間、走っていた。目的地は、病院。この近くで起こった事故なのだから、運ばれるところはあそこだと決まっていた。迷うことなく、ものの数分で、その病院に着いた。
「はあ、はあ……あの、ついさっき交通事故で女性が運ばれたと思うんですが……」
「ちょっとまってください。えーと……亡くなってますね。まだ404の病室に……」
 404号室にいるらしい美砂のに会いに行くために、病院の中であるのにもかかわらず、全力で走る。目的の404号室につくと、先ほどの母みたいに、勢いよろしくドアを開けた。
「美砂!」
「優一君……美砂はもう……」
父と母に両手を握られて、顔だけ出された状態で、美砂は”寝ていた”。
「美砂……ごめんな。俺がちゃんと送ってやれば……」
 母は当然、耐え切れないようで、両手で顔を覆いながら声をあげて泣いている。父は涙を我慢し、仕事かばんからなにやら取り出して、言った。
「……優一君。美砂は、いつか君といっしょに聞くつもりで、自分の思いをカセットテープに残していた。美砂はもう聞くことはできないけれど、君は、聞いてやってやってくれないか」
 父が差し出したそれを、受け取ると、母はいっそう大きい声で泣いた。父もさすがに耐え切れないようで、あふれだした涙を手でぬぐっている。
 まだ暖かい美砂の手を話すことはできず、夜が明け、一変して冷たくなるまで、優一はそうしていた。

                     6

 美砂の父から預かったカセットテープをセットして再生を押すと、美砂の声が、流れてきた。
「優クン、これをいっしょに聞いているなら、私と優クンは恋人になれたんだと思う。もし、優クン一人で聞いてるなら、失恋して、私が優クンにこのテープを送ったっていうこと。ね、私、いままでで一人も彼氏いないんだ。告白とかはされたけど、全部断ってきたんだ。私、好きな人いるからごめんなさいって。気づいてた? おままごととかしてた頃から、私は優クン一筋だったの。いつもいじめられてた私をかばってくれたり、怖い犬から守ってくれたり、そんな優クンが好き。これからもずっと。だから、これを二人で聞いていても、一人で聞いていても、心のほんの片隅に、私とのことを残しておいてほしいです。あぁ、恥ずかしいなぁ」
「美砂……ごめんな。俺が、恥ずかしがらないで、お前の事に正面から向き合ってれば……」
 必然的に、目からは涙が流れ、声は裏返る。そのとき、軽く家が揺れた。地震かなにかなのか、それはすぐに収まったが、棚に置いておいたオルゴールが床に落ち、その衝撃でふたが開いて、音楽が流れ出す。
「これ……お前が誕生日プレゼントにって、自分の誕生日プレゼントをくれたんだよな……そんなことも俺は今日まで忘れてた。なのにおまえは、ずっと俺を……」
 優一は流れる涙を拭おうとせず、オルゴールの音楽にがとまったころに”巻き戻し”のボタンを押した。
 今となっては美砂が残してくれたこのテープが、美砂を感じていられる唯一のものだから。


 

2005/09/24(Sat)17:15:34 公開 / 弥生 卯月
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■作者からのメッセージ
まず、はじめまして。初投稿の弥生 卯月です。三月と四月が好きなので、こういうHMにしました。

本作ですが、ありがちな設定かもしれないうえに筆力不足で申し訳ないです。終わり方も中途半端ですし。精進します。
 どんどん、批評してください。
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