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『神の悩み』 作者:上下 左右 / ショート*2 未分類
全角1412文字
容量2824 bytes
原稿用紙約4.5枚
 

 人間が到底見つけることができないほどの高い場所に神様がいた。
 彼はこの世界をつくり、植物を作り、それを維持するための空気を作った。そして最後に動物と、どの生き物よりの知性の高い人間という生き物を作り出した。
 この神は何不自由なく暮らすことができた。食べ物がほしいと思えば作り出すことができ、家来がほしいと思えば自分で作り出すことができる。
 思ったことをなんでもすることができる。なんでも作り出すことができる。まさに全知全能の神だった。
 そんな神がある日、何もすることがなかったので地上の人間を見てみた。
 そこはそれほど大きくはない広間で、数人の人間の子供が遊んでいる姿がある。そして、子供達はこんな会話をしていた。
「俺の夢は冒険者になることだな」
 一人の少年が言った。するとその隣で少女が。
「だったら私の夢はそんなあなたのお嫁さんになること」
 夢?
 それは神が与えた言葉の中にはなかった言葉だ。ということは、人間が新たに作り出した言葉なのだろう。
 望んだことが何でも叶う神は、すぐさまその言葉の意味を知った。
 今のところ、すでにやることをほとんど終えていた神は、ぜひとも自分も夢を持ってみようとも考えた。
 しかし、考えるのはいいがそれは逆に虚しいことに彼は気がついたのだ。
 そう、彼は何でもできるのだ。試練というものなどは存在していない。難しいと思えることもない。
 次第に、神は人間達に対して怒りを覚え始めた。
 何故自分は夢というものがもてないのか。何故人間達は、何でもできる彼に持てないものを持っているのか。むしろ、どうして何でも手に入る自分にそれが手に入らないのかと。
 神は、ただただ自分の怒りを静めるためだけに地上に大雨を降らした。
 何日も何日も続く大雨。次第にそれは人間の住んでいる町を洗い流し、山を平らにしていった。
 それでも神の怒りは治まることはなかった。さらなる災害を地上に与え、人間達を困らせていた。
 気がつけば、その土地は人間が住めるような土地ではなくなっており、そこで生活をしようとするものは人間だけではなく、動物すらもいなくなってしまった。
 そのような状態になって初めて、彼は自分のしていた愚かしさに気がついた。
神はどうして自分がこんなことをしてしまったのかと後悔し続けていた。
 何日も何日も悩んだ。
 それから何十年も経ったある日、悩み続けている神はふとした拍子に下界を見た。
 するとそこには街ができているではないか。いや、正確には作ろうとしていた。まだ骨組みだけの家が並び、人間が住める状態ではなかったが、それは明らかに街と呼べるものを作っていた。
 彼らの心の中は、またこの土地に住めるかもしれないという希望があった。
 自分達の力で作ったこの街で家族や友達と共に楽しく暮らそうという夢があった。
 地上をそのようにしてしまったお詫びと言わんばかりに神はその街を作る手伝いをしようとも考えた。
 しかし、ここでひとつ引っかかることが生まれた。
 もしも私が手伝ってしまえば彼らの夢というものを壊すのではないのか。自分達で作った街で暮らすという夢を。
 神はまた悩んだ。彼らの持つ夢というものをどうしたら手に入れることができるのか。
 もう、地上の者たちにあたるようなマネはしない。だからこそ一人で悩み続けた。
 夢を持つことが夢になっていることも気がつかぬままに……。
 
 
2005/09/21(Wed)23:52:05 公開 / 上下 左右
■この作品の著作権は上下 左右さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんばんわ〜。近頃がんばって役に立たない感想をつけさせてもらっている上下です。しかし、そのために私の頭の中は自爆寸前で御座います。おっと、そんなことはどうでもいいですね。さてさて、連載中のSS第二弾で御座います。いや〜、どうしてこうもSSばかり浮かんでくるのでしょうか……。早く死神を進めたいところなのですけど。どうも進まないもので。お許しを〜。でも、途中で投げ出すことだけは止めておきたいので何年かかっても書き上げます!!それまでに読者さんがいなくならなければいいですけど。それでは読んでくれた皆様方、また死神の方で会いましょう〜(宣伝?)
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