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『孤独旅館』 作者:おんもうじ / ショート*2 ショート*2
全角1431.5文字
容量2863 bytes
原稿用紙約4.55枚
 今日は皆で旅行の日だ。車を軒先に止めて、山奥の旅館へと向かった。そこはとても薄気味悪く、幽霊でも出そうな雰囲気だった。僕と、僕の彼女、そして友達と友達の彼女の四人で、今日はとても良い想い出になる、はずだった……。
 僕が旅館を訪ねると、最初に80歳ぐらいのおばあさんがでてきた。そして、ニヤリと笑うと
「お泊りですか?失くすものは、ございませんか?」
 とゆっくりとした口調で訪ねてきた。僕は二言目の意味がわからないまま、何かその笑顔に不気味なものを感じながらも、手続きをすませ、部屋へと向かった。何かの決め台詞なのかな、とそのときはあまり気に留めずにいた。
 中は外観とは対照的にとても整っていて、きれいな空間を作り上げていたし、外から見るよりも広く感じられた。和風な空気にどこか洋風を感じさせるところもあり、妙な調和がとれていた。
「ふー。今日は楽しかったなー。明日は山でバイキングだ、今日はゆっくり休もうかなー」
 友達がそういってさっさと布団をだしたが、急に思い出したような素振りを見せて
「っと……その前に風呂入ってこよー」
 友達とその彼女はとても仲良さそうに温泉へと向かった。
 二人が出ていった部屋に残された僕と彼女。
「さて、俺らはどうする……?ここにくる前に飯もすましたし、風呂、入るかー」
「うーん、もうちょっと外にでて空眺めたいな。それからがいいな、お風呂は」
 彼女がそう言うと僕もそれに賛成して、羽織を羽織って外へ出た。空を眺めて見ると、星は思ったよりも綺麗で驚いた。
「わあ、綺麗」
 と彼女が小躍り気味にそう言って、近くにあった座るには丁度よいくらいの大きさの岩に座った。
「君のために用意したんだ……。なんてね」
 僕がそんな冗談を言うと、彼女は笑って見せた。
 アハハと彼女は何度もそんな楽しそうな笑い声をあげながら、ただ星を眺め、お喋りをしていたそのとき
「綺麗だね、アハハ……グゥ……」
 ん?と僕が彼女の方を向く。変なうめき声を出したかと思ったら……

「ギャアャアアアアアアアアアーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

 僕は目を剥いた。彼女が叫んでいる!すごい奇声を発しながら!僕は彼女の元へかけより、ぐったり倒れてしまった彼女を起こした。そしてそれをじっと見た。
 ――吐き気がした。……いや、それですんだならまだ良いだろう。心がバラバラに砕けてしまうかと思った。
 彼女の顔は、まるでミキサーにかけられたかのようにぐちゃぐちゃになっていた。赤黒く、どろどろとした肉質の塊が跡形もない彼女の顔を構成していた。
 言葉も出なかった。涙も出なかった。気が遠のいていく……。頭の中が真っ白になったあと、どこぞやの恐怖映画のように上から血がたれてくるように、真っ赤に染まっていった……。



 目を覚ましたのは、次の日の朝だった。そうか、やはりあれは夢だったのか。安堵のため息を漏らす。
 周りを見渡す。ちゃんと三人とも布団の中ですやすや眠っているように見えた。みんなうつぶせに寝ていた。僕はおかしいとおもい、隣で寝ている彼女を起こそうと声をかける。起きないのでひっくりかえして仰向けにした。それと同時に他の二人もひっくりかえって、こっちを向いた。
 三人とも顔がぐちゃぐちゃになっていた。



 僕の、恐怖やら絶望やらで真っ青に染まった顔を見て、何か頭の中に言葉が聞こえたような気がした。



――失うものは、何もないんじゃなかったのですか?



Fin
2005/08/12(Fri)20:43:41 公開 / おんもうじ
■この作品の著作権はおんもうじさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 はい、遥か過去にプリントやらの裏に書いてあった小説を見つけてしまいました。あまりの意味わからなさに少しつぼをつかれ、そのままのせてしまいました。何分適当さが否めませんが、(てか稚拙すぎる)どうかご愛敬でやり過ごせたらな、と思います!^^;
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