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『パターンW』 作者:摩耶 / ショート*2 ショート*2
全角2568文字
容量5136 bytes
原稿用紙約10.25枚

「つまりアレだな、お前は俺に死ねと」
「…ちょっとちがう」


ちょっとかよ


『パターンW』


何で俺は知らない男と2人で自分たちの教室に居るんだ。
いやそれよりもさっきから訳の分からないことを言ってくる目の前の奴の頭の中は
どうなっているんだ。


それは数分前の事で、俺は今日授業の間中ずっとサボってバッくれていたのが
教師にバレた。そうして逃げ切れずに今さっきまで此処でこうして真面目に良い子に
お勉強の遅れた部分を強制的にやらされていた。くだらないことだが一人残されて
机に向かうということは結構ダサイ。


「だから僕言いたいことは…」
「何言いたいんだかさっぱりわかんねェよ」


それで俺は早く終わらせようと素直に補習をやっていた、自慢じゃないが結構頭は
良い方だ。だって俺、学年順位一ケタだから。

それがもうすぐ終わろうとしてた矢先にこれだ
いきなり教室に入ってきてツカツカと几帳面に真っ直ぐに俺の方に歩いてくる
様子を見て決して良いことではないと思った、でもさすがにコレは勘弁してくれ。


「…僕が言いたいのは、その、真弓に話しかけたり近づいたりするなって」


そう言うわけだ。
つまりこういう事だ、俺は成績優秀で顔も良い。サボってていてもそんな学校に
酷い被害が出てるってわけじゃない、おまけに結構スポーツのことでも知られている
必ずどれをやってもかなり出来る。はっきり言って文武両道、才色兼備
当然モテないわけがない。


毎日毎日、女子は飽きもせずに俺の所にやってくる、多分その真弓って女子も
その中の一人だな。
でも俺ははっきり言って興味がない、だから逃げるためにも時々授業サボってるって
わけだ、と言うかこいつが言ってくるまでその真弓って女子の存在すら知らなかった
から今更「話すな、近づくな」と言われても困る。


だが珍しいことに俺はこういう事が初めてじゃない。今までこんな事は何回かあった
俺は人気がある反面、それが気にくわない奴もたくさん居るからな。


「あのさ勘違いしてるみてェだけど、俺はそんな真弓って女子のことなんか知らな」
「嘘付け、だって真弓はいつも言うんだ『ウチのクラスの高畑くん、カッコイイよね!』
って」


それだけかよ!それだけで俺が悪いのかよ!

「昨日も君の事ばっかりでさ、話しかけたとか、プレゼント渡したとか」

そんなこと言われても、こっちはしょっちゅう女子に囲まれてんだ
相手なんか知るかよ。


俺は明らかにもう付き合っていられないとばかりにため息をついた、
それを見てそいつはいきなり顔を上げて俺を睨み付けてきた。今にも飛びかかりそうな
雰囲気だ。

「だから君がいなくなった方が真弓のためなんだ」

だんだんお約束展開になってきた。昔の漫画か?ありがちドラマか?
この後のパターンは俺が経験してきた中から上げると三つある。


T.そのまま暴力に走る

U.相手が何か良いながら逃げる

V.なんだかんだ言って俺が強いので俺に謝る


ちなみにこのパターンTは、言うまでもないがぼこぼこになる、もちろん相手が
でもそこんとこは上手くやる。いっつも手加減するから。
だって俺が本気でやったら、相手は四十九日の階段のぼるから。二つ目のパターンは
みんな知っての通りのあの台詞

「覚えてろよ〜!!」

いや、多分覚えていない、でも目の前にいる奴は全然そういうタイプじゃないので
これ却下。
最後にV、これは少なかったけどやる奴はいた。心の広い俺はもちろん無傷で
返した。本当の話、俺平和主義者だから。家、キリスト教だから。



そうこうしている内に相手が身構えた。なるほど、今回はパターンTだ、
不思議だ相手はそれほど出来る奴には見えない。これが愛のパワーってやつか
明日学校に来たらその真弓って女子を見てみよう、美人だったら俺喜ぶ。


とか考えてたら、相手が手を突き出して俺を窓に向かって押そうとしてきた。
俺はとっさに身構えた。そして相手の手を受け止める。
ぐぐっ、と相手は力を入れてきた。俺とそいつはしばらくそのまま力比べをしてみたが
俺の相手じゃない。ここはあえて平和的に相手を説得してみよう。


「おいちょっと待て、俺このまま押されたら落ちるんだけど、死ぬんだけど」
「…うるさい」
「今ならまだ間に合う!大人しく下がれ、手を挙げろ、頭下げろ!国のお袋さんが
泣いてるぞ!」
「…」


こうして俺は相手にいつも説得を試みる、大抵は軽く受け流されるが…いや、
何時もだな。だけど相手の手の力が弱まった。頷いて心なしか迷っているようにも見える。

だが不意に頭を上げて俺を睨んできた

「うるさい、お前のせいで真弓は…、お前のことばっかりで…、」
「だからそれは」
「いっつも、いっつも…」
「…おい?」

見てみるとそいつは泣いていた。

その女子のために泣くほどそいつが好きなのか…。
男が泣くのは決して珍しい事ではないけど、周りから見たら結構ダサイ。
だけど俺はそんな気持ちはなかった、「おい…」、声を掛けようとした。




「いっつも、いっつも!耳にたこができるくらい自分の好きな人の話聞かされて!
うるさすぎて僕がノイローゼになるよ!」


…は?


「しかも同じ話のリピート、おまけにプレゼント渡してこいだとか!」


…あぁ


「これが毎日続いてみてよ!真弓今度は何頼んだと思う!?」


…つまり


「代わりに人気のないところに呼べだよ?!僕は無理!!」


つまりそいつは、真弓が俺のことを好きだから嫌っていたわけではなく


「だからもう君にちょっといなくなってもらうしか…」


その真弓から影響される俺関係がめちゃくちゃものすごく嫌だった、と言うわけだ、
そのまま俺はそいつの肩に手を置いた、哀れみと励ましを含んだ笑顔で。




それからそいつは帰った、自分で何とかしてみる、と言って。
今から思い出してみると誰だったか。同じクラスであることは確かなんだが、
明日また学校に言ったら聞いてみるか、ついでに差し入れ持って行こう。


俺は生まれて初めて男に同情した、これからはあまり女子の前にでることは
止めた方が良いのかは迷っている。

今回みたいなパターンは初めてだ。


俺は自分辞書にパターンを追加した。






W.女の尻に敷かれた奴だった




ありがちだが結構珍しいことだった。

2005/07/20(Wed)00:29:01 公開 / 摩耶
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■作者からのメッセージ
初投稿です。
初めてなので色々おかしいところもあると思いますが。
そこはまぁスルーの方向で。
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