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『死神〜Hunt〜(後編)』 作者:上下 左右 / 未分類 未分類
全角4199文字
容量8398 bytes
原稿用紙約11.8枚
(後編)



 彼女は、直感でヤバイと思った。だから瞬間的に立っている場所から後退した。その迅速な判断が少女を消滅から救う原因となった。
 今まで死神がいた場所には無数の太い触手がとおり過ぎていた。もしも先ほどの感覚を無視してその場にいたなら今頃彼女は使命を果たせなくなっているだろう。
「どうして、どうして……!」
 泣いている女はまるでバネ仕掛けの人形のように一瞬にして立ち上がった。その表情からは何も伝わってこない。ただ、目からは涙が出ているだけだ。その顔はまるで感情を表に出さない死神を思わせる。そして、立ち上がった女の背中には数十本もの半透明の触手がうねっている。
 少女はすぐにその状況を呑み込んで背負っている大きな鎌を軽々と構える。今、初めて手に持った鎌は背負っていた時とは違って確実な重量があった。まさか、これだけ一瞬にして変わるとは思わなかったのだ。
 何の感情の変化も無しに背中からは無数の触手のようなものが伸びていて、自分を連れて行こうとするものを排除しようとしている。
 だが、死神も簡単に消されるわけにはいかない。手に持っていた鎌で勢いよく襲い来るそれを容易に切り取る。その動きは戦い慣れた戦士のような動きにも見えたし、初心者のようにただ振り回しているだけのようにも見えた。
 内心、彼女はかなり焦っていた。やはり、初めての試みには誰だって緊張するものだ。それは死神だって例外ではない。しかも、これほど突然までに変化するとは思っても見なかった。自分でも思っている以上に動揺している。
 女は触手を切られたことなど全く気にすることなく次の攻撃を開始する。彼女にとってはそれらを切り取られても髪の毛を落とされたぐらいにしか感じていないだろう。しかも、半無限にそれは生えてくる。
 その、自分に向かってくる物を避けながら少しずつ間合いを詰めていた少女だったが、一瞬の隙を付いて一気に近づいた。
 相手はこの速さについてこれていない。今なら確実にしとめることができる。
 しかし、振り下げる鎌が悪霊のすぐ近くで停止した。相手が何かをして止めているわけではない。少女の意思でその手を振り切ることができなかったのだ。
(くっ、どうしたというんだ)
 鎌を振り下ろせば悪霊である彼女をこの世から消してしまう。それは、転生するまで絶える事のない苦痛を味わい続けなければならない。何も悪いことはしていないというのに……。ただ、愛する人を待っていた……。 
 それを考えると、少女はこの女を攻撃することができなかった。死神がこのような感情をいだいてはいけない。だからこそ彼女は今まで感情を表には出さなかったのだ。そうすれば非情になれると思っていた。確かにその考えは当たっていた。実際彼女はこれまで障害なく仕事をこなしていたのだ。それが、あの少女に会ってからは……。
 死神のそんな気持ちも知らずに女は動きを止めた彼女へさらに攻撃を続けてくる。
 これだけ接近しておきながら何もしないまま後退するなど不本意だった。だが仕方がない。先ほどとは逆に、相手の隙を付いて一気に後ろに下がった。
 それでも攻撃が止むことはない。何度も何度も向かってきては切り、向かっては切りの繰り返し。防戦一方だが、それのおかげでだんだんと相手の行動パターンが分かってきた。その気になれば簡単に消滅させることができるだろう。しかし、何度切りつけようとしてもさっきと同じ考えが頭をよぎって、結局は切らずに後退するの繰り返し。
 悪いのは悪霊になったこの女ではない。全ては彼女に会いに来なかった相手の男だ。
 そういえば、その男に関して少女はなにか知っているような気がした。彼女は、何かを忘れている。
(あっ……)
 悪霊の攻撃を避けながらそのことを考えていると、一人の人間の顔が浮かび上がった。それは少し前に彼女が回収した魂の中の一人で、精神面にかなりの負担を持っているものだった。
 そうだ。いくら待っても彼女の待っている人が来るはずがない。すでに彼はこの世には存在していない。彼女がすでに男の魂を回収し終えてしまっている。しかも、彼の魂はもう再生の準備に入っているので呼び出すこともできない。
 簡単にいえば、あの女性を助けることはもう出来ないということだ。今の彼女に何を言ってもこちら側に帰ってくることはないだろう。こうなってしまったのは自分の責任だ。ちゃんと後始末はつけなければならない。少女には先ほどからずっと聞こえている。女からにじみ出る苦しいという声が。
 悪霊になるということは体中にある負のエネルギーを放出し続けるということ。人間にはわからないが、これはとても苦しいことなのだ。
 少女の顔は先ほどから変わっていないが、何かを決心したような表情になっているような気がした。
 それを感じ取ったのか、悪霊の攻撃も一層激しさを増す。せっかく攻撃を見切ったと思っていた死神も少し驚いた。だが、どれも当たることなく通り過ぎていく。
鎌で切り落とした瞬間には次の攻撃が来ているので切った瞬間に避けなければならない。
 何度も彼女の肌を凄い切れ味を持つ触手がカスっている。それだけでも切り傷が発生する。もしもあんなものが直撃すれば一撃で重症を負わされてしまう。
 こんなことをしていては少女の方が不利だ。いくら切ってもダメージがないのだから全く意味がない。
 少女は最後の賭けに出る。どうせこのままではやられてしまうのだ。
 自分がダメージを受けるのも気にせずに、悪霊本体へ特攻をかける。途中、何回か攻撃を受けたが致命傷ではない。おそらく人間なら痛みでおかしくなってしまうかもしれないが彼女には痛みというものがない。急所を突かれない限り消滅しない。
 悪霊の目の前まで来た彼女。もう、女に対する先ほどのような感情は出てこない。今の少女はいわば死神モードだ。感情というものに流されたりはしない。
 大きく呼吸を整えるように息をすると、生きているときは心臓。今は邪気の最も集中している場所に思い切り鎌を突き立てた。
 急所をつかれた悪霊は、まるで空気が抜けていくかのようにその場へ倒れこんだ。
「ごめんなさい。自分を見失っていたみたいで……」
 先ほどの表情はすでにない。今はちゃんと人間らしいものに戻っている。弱々しく、今にも消えてしまいそうな声で女は自分を刺した少女に謝った。刺されておきながら謝るというのも珍しい光景だ。
「気にすることはない。これも私の仕事だ」
 人を見下したような視線で死神は言葉を返した。さっきまでの迷いが嘘であるかのようにその声は冷たい。
「ねえ、私はあの人と同じ場所に行くことができるの?」
 どうやって知ったのかは知らないが、女はすでに自分の恋人がこの世にいないことを知ったようだ。もしかすると、死神の少女と同じように霊体である者の心を読むことができたのだろうか。
 そのことに関して、少女は驚くこともなく先ほどと同じように冷たい声で言った。
「それは無理だ。彼は苦しむことなく転生を待つが、お前は悪霊になってしまった身。それに、この鎌で消滅させられたものは楽な道を歩むことはできない」
 女は死神が天国の話をしていて、自分がそこにいくことができないことを理解できなかった。もう、そんな力はその体に残されてはいないのだ。すでに体のあちこちが消滅してしまっている。今、これだけ話していたのもかなりの精神力だ。
「最後に教えてよ、あなたの名前はなんていうの?」
 女はそれだけをいうと、体が光となり一瞬にして飛び散った。そしてその光は全て死神の開いていた穴に吸い込まれていった。その行き先はもちろん地獄。彼女はこれから転生するまで苦しみ続けなければならない。しかし、その先にある新しい人生はきっと楽しいものだろう。次はこのような形で命を散らせてほしくないものだ。
「私の名前……。私の名前はクロミ」
 死神は少し呆然としていたが、昔自分に名前を付けてくれた、自分のことを友達と呼んでくれた少女のことを思い出しながら誇らしげにその名前を名乗った。その場には誰もいなかったのでそれを聞いた者はいない。
 それはそれでよかったのかもしれない。もしもクロミに名前を聞いた女性が聞けば、確実に変な名前と言われていただろう。
 彼女は開いた時と同じように小さな声で呪文を唱える。すると、いつの間にか大きなあの世へのゲートは閉じられた。風は、完全に止んでいる。
 周りは先ほどまでのことがまるで嘘だったかのように静まり返っている。風景も、流れる風にもなんの変化もない。それは当たり前のことだ。彼女がいるのはあの世へ行くための準備をする場所。あの世とこの世の狭間。死神のように特別な力がなくてはどちらの世界にも関ることのできない中途半端な場所なのだ。
 仕事を終えたというのにクロミはその場から動こうとはしなかった。ただ、その場に止まっている。何も考えていないようにもみえるし、何かを深く考えているようにも見える不思議な表情をしながら。
(私がやっていることは、本当に正しいのだろうか……)
 今回のことは自分の不手際が招いた事のように思える。さっきの女の待ち人はその魂を彼女に回収されていた。それを知ることもなく女は待ち続けていた。その結果、何も知らぬ間に悪霊になってしまい、苦しみを味わう形になってしまった。そう考えるのは仕方がない。もしも彼女がこの管轄地域に一人出なかったら仲間が「君のせいじゃない」とでも言って慰めてくれていたかもしれないが、その相手もいない。
 彼女が管理している場所はそれほど広くはないのでたった一人に任されている。それは、信用さえているからなのだろうか、それとも死神の数が足らないからなのだろうか。もしも死者のなかに死神になりたいというものが出てきたらいったいどうするのだろう。別に方法が分からないわけではない。誰かにそれを報告しないといけないわけでもない。
 彼女は真っ暗なトンネルの中で表情に感情を出すことなく考えている。やはり、死神である彼女に人間にあるなにかが足りないのかもしれない。いつの間にか考えが本題からずれているのを彼女は気がついていない。
 背負っている鎌は、ここに来るまでとは違って刃の部分が少し黒くなっていた。

2005/06/27(Mon)23:44:19 公開 / 上下 左右
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■作者からのメッセージ
すみません。パスワードを入れてもどうしてもエラーの出てしまったので新しく投稿させてもらいます。本当にごめんなさい。
え〜、後半です。どうもこのシリーズではじめての戦闘は難しかったです。よって、全然上手くいっていません…(反省)
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