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『逆走的恋愛話』 作者:トロサーモン / 恋愛小説 恋愛小説
全角1741文字
容量3482 bytes
原稿用紙約5.25枚
逆走的愛話

 俺が今より若くて、エネルギッシュで、欲望に忠実で、ご飯を一杯食べて、18歳未満のコーナーに入りたくて、とにかくエロくて、お金が無くて、全くモテなくて、そして彼女の事が大好きだったあの時期の話。

 とにかくこの話を始めるには幾つか言わないといけない事がある。
 まず一つ、俺はモテてなかった。二つ、中学生で二年と3年の中間だった。三つ、部活には入ってなかった。四つ、友達がいた。五つ、とてもエロかった事だ。
 一つで言っているように、全くモテなかった。バレンタインは一つ来ればいい方だったし、来たとしても俺は喰わなかった。とにかくモテなかった。でも、女友達はいたけど。でもモテなかった。
 五つで言っているようにとても俺はエロかった。思春期的にエロかった。まさにエロスの塊だった。修学旅行だって、一晩中エロい事言ってた。でも彼女の事を好きになったあの日から、頭からエロい事は消えていた。
 まずは彼女との出会いだ。出会いって言っても、期待すんじゃねえぞ。決して彼女を殴ろうとした酔っぱらいを助けたわけでもねえし、彼女の着替えてるところを見たと勘違いされてそれから付き合っていくラブコメでもねえ。俺と彼女の出会いは普通だ。俺が二年になってそしたらクラスにいただけだ。一緒のクラスだったわけだ。
 そん時は普通の女子の中の一人にしか見えなかった。
 そして俺はそん時は気が付かなかったし、友達と喋ってばっかだった。
 それがある春の日、たまたまある日、塾から帰っている途中に喋りかけられた、「おもろい事言ってたな〜」って。その日俺はたまたまホームルームでちょっとおかしな事を言っただけだったのだが。しかし彼女は笑顔で俺にそう言った。その時、初めてちゃんと彼女を見た。俺より身長が10センチほど高くて(俺は155だった)髪が長くて。制服を着ていた。そして何より、とても気持ちの良い笑顔をしていた。
 漫画的表現で言えばきらきらと星が付くであろう笑顔。
 よくアメリカの学園ものラブコメならばスローモーションになりヒップホップがかかりオタクな学生はメガネの縁を持ち、そして隣にはアメフト部がいる。
そして俺は、そん時ちょっと一目惚れしたのかもしれない。しかしあいにくそん時俺はだっせえ服を着ていた。親からかって貰った服。ぶかぶかの服。だっせえプリントが張ってある服。
 しかも彼女に話しかけられたのに「うん、あっうん」としかか答えられなかった。最悪である。普通なら「ありがとう」とかナルシスト的ならば「まああれくらい軽いもんよ」とかあるけど、俺はそのどれも言えずただ「うん、あっうん」と言っただけであった。またこの時、自分の恋心という物には全く気が付かなかった。
 自分の恋心を理解するのにはもっと先でその時には彼女を振り向かせるチャンスはほとんど失っていた。


 俺はその日から少しずつ変わっていった・・・と言えば電車男のような話を期待するだろうが全くもってそんな話ではない。自分で服を買うようになったり(Tシャツ)、大声で話すようになったりしただけだ。
 次第に俺は彼女の事を意識し始めた。ちょっとでも彼女を振り向かせたくて、アホな事とかしてみた。でも、自分にギャグのセンスはないのは分かっていた。
 でも頑張ったのが功を奏して、女子に話しかけられるようになった。
 もともと、話しやすかったのかもしれないがそれでももっと話されるようになった。
 そして彼女はその女子の後ろで笑っていた。そして俺に喋りかけてきた。
「面白いなぁ」と笑いながら。
 俺は何故か恥ずかしくなって目を合わす事ができなかった。そしてまた「うん」としか言えなかった。他の女子ならしゃべれるのに。喋れなかった。
 その日、俺は塾の帰り道。寂れた大きな公園の横を自転車で激走していた。叫びながら。
買ったばかりのTシャツを汗びっしょりにして。黒色のジーパンまで汗で湿らせて。
 俺は叫んだ。
ちょっと恥ずかしかった。サラリーマンに舌打ちされた。そして何より自暴自棄になっていた。


夏になり、席替えになり。くじによって俺は窓際の席になった。
 夏には窓際が一番だ。涼しいし。
「席隣やなぁ」
俺の隣の席は彼女だった。
 



(続く)
2005/06/20(Mon)17:08:30 公開 / トロサーモン
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■作者からのメッセージ
短編。

リアリティ重視。

塾帰る時に叫んだのは実話。

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