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『これは・・・わがままなこと?』 作者:姫深 / ショート*2
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――親友とは永遠なものだと思う




「二人ともおはよう。」

元気よく挨拶をする彼女の名前は一条 祐子。
今年新しく高校生として学校に行くことになった一年生。
たくさん勉強してやっとの思いで進学校に入学できた彼女にはふたりの幼馴染がいた。

眼鏡をかけ、いかにも秀才という雰囲気をしている女性、神蔵 愛理。
そして祐子の隣のアパートにおじいちゃんと二人で暮らしている男の子の仲川 亮。

幼稚園・小学校・中学校ずっと三人は一緒だった。
その仲の良さと言えば、兄弟よりもはるかに深いつながりがあった。
周囲の友達ですら、三人の仲の良さにはついていけず、会話に入り込むことなどできないほどの次元がある。

三人は一緒の高校に入学した。
今日はその記念すべき入学式なのである。
間に合うように三人は待ち合わせをし、一緒に登校しようと決めたのだ。

高校の大きめの制服が似合っている、だとか。
クラス一緒だといいね、とか。
胸に秘めたドキドキと絶えない会話はまだ見ぬ高校生活へとまっすぐに向けられている。
3人は弾む会話が一度も切れること無く学校へと着くのだった。

校長先生の言葉というのはどの学校も長いものだ。

高校での3年間がいいものになるように。という簡単な願いを長々とうまい例えで言葉に連ねている。
普段ジャージ姿であろう先生もこの場ではスーツで着飾って3人の入学を祝っている。
そんな光景……。

長かった入学式も終わりを迎える。
いよいよクラス名簿が張り出される。

それにいち早く気付いた愛理が走って見に行った。
クラス発表って言うのは、それだけで高校の生活3年間が決まるといってもいいほどの特別なイベントだ。
祐子と亮がたどり着く前に、戻ってきた愛理は、はにかんだ顔で結果を報告する。

「あはは……残念。」

亮と祐子は運よく一緒のクラスの4組だったものの。
…愛理は特進クラスで1組だった。

亮が愛理にため息をついて言った。

「フゥ…まったく。お前は試験で手を抜いとけよ。俺達、お前より馬鹿なんだからさ。」
「な、なによそれ〜。私のせいなの?」

祐子と亮が意地悪に笑う横で愛理はふくれた表情で言い返すのだった。


――その日。クラス説明の後。

4組の教室を出た祐子と亮は、1組へと愛理を迎えに行った。

「おーい。」

亮が愛理を教室の入り口から呼ぶ。
愛理は楽しそうな笑顔で二人に近寄った。

「迎えに来てくれたんだ♪帰るの?わかった。用意してくるね。」

愛理は、クラスの子に挨拶をし、帰る仕度をして教室を出てきた。

「OK♪祐子、帰ろっか?」
「…うん。」

帰り道、祐子は愛理に問いかけた。

「あの、愛理さ……もう…友達できたの?」

愛理は笑顔でうん!と答えた。

「すごくいい子達なんだよ。」
「そ、そっか。よかったね……。」

裕子は少しさびしそうに良かったねと言う。


――それから一週間が過ぎて…


3人とも高校にちょっと慣れてきて…またいつものように祐子と亮は放課後に愛理を迎えに行く。

「迎えに来たよ〜。」

祐子と亮が口をそろえて言う。
その日からだろうか…何かがおかしくなったのは…。


その日愛理は一緒には帰らなかった。

「ごめんね。クラスの子に誘われてさ。…ほんとごめん。」

今までそういうことは何回もあった。
先生に仕事を頼まれてとかクラス委員だったりとか…

愛理は勉強ができて、少し鈍感だけど優しくて周囲からも人気があったから…。


――しかし、それはけして終わらなかった。


入学式から早くも一ヶ月が経とうとしている今。
ほぼ、愛理が祐子と亮と共に一緒に帰ることはなくなっていた。
気がつくと放課後、愛理は他の友達と帰るようになっていた。

亮はもともと男の子だったし、なかなか以前のように祐子との距離をもつかめずにいた。うわさが気になる年頃なのだ……。


――聞こえる……何かが壊れる音。


ある朝、祐子は愛理に言った。

「……最近バラバラだね。」

燦然たる祐子はその場に居ることができなくなるほど緊張している。
何のことだかわからない愛理だったが、愛理も祐子に話があるようだった。

「どうしたのよ…?あ!そうだそうだ。あのね、私も聞きたいことあったんだ。…祐子さ、友達作んないの?あんた可愛いしすぐ作れるでしょ?……作りづらいなら私のクラスの子紹介してあげても…」

愛理がまだ話を言い終わらないうちに祐子は愛理に激怒した。

「なんで!!!?どうして……どうしてよ!!!!」

びっくりした愛理が戸惑いながらも祐子に言う。

「ど、どうしたのよ…。ゆ、祐子?」


――祐子は耐えられなかった。


気が付く間もなく祐子は、けして言ってはいけない言葉を連ねてしまうだけ…

「いらない!!愛理なんてもう友達じゃない!!もう必要ない!!」

その言葉を聞いた愛理は下を向き……何も言えずに泣いた。

「なんで……?」

愛理に答えることなく祐子は愛理をおいて、走って学校へ行ってしまった。

亮は愛理をなぐさめるもその涙がそこから消えることは無く、そのまま学校に着いて分かれたのだった。
亮が横目で見る祐子は少しぐったりしている様。


――その日の放課後……。


机にふしたまま動こうとしない祐子に亮が話しかける。

「なぁ。祐子……迎えに行こう?…愛理を。一緒に帰ろ。」

今朝のことで頭がいっぱいの祐子は震える口を動かしながら答えた。

「いかない。…愛理には新しい友達いるから。」

そういい残すと祐子は亮を置いて先に帰ろうと教室を後にした。
亮はすぐに後を追った。

そして、早歩きのまま、視聴覚室の前の廊下で祐子を引き止める。
完全に亮は祐子の左腕をつかんで離さない。

「不満あるならちゃんと言えばいいだろ。…なあ。不満あるんだろ?」

祐子は亮のほうを向き直ってうつむいた。
弱くも震えた声で祐子は亮に打ち明けた。

「あるよ…でも、どうしたらいいの?……大好きなの……でも、愛理が友達作るの邪魔できないもん…。」

放課後の誰も通らない廊下に祐子の声は響いた。

「私の居場所…もうないんだもん。愛理の横で…亮の横で…3人一緒だったんだもん。」

亮には痛く祐子の気持ちがわかるのだった。
そしてそれと同じくらい愛理の気持ちも…。

祐子は泣いている。
悔しいのだろう。つらいのだろう。勇気がないのだろう。

「三人でいるのが…すごいすごい好きなんだ…もん…。」

彼女はうつむいて動かない。
少しでも動いたら、その瞳のあふれんばかりの涙が今にも冷たい廊下の上に落ちてしまいそうだったから。
そこに見えるはずの廊下はその本来の形を無くしていた。

亮は黙ったまま祐子の後ろまで歩き、二人は背を向け合う状態になった。
亮はポッケからくしゃくしゃのポケットティッシュを取り出し後ろ手に祐子に差し出す。

「これで俺には今誰が泣いているのかわからねぇ。祐子の姿は俺に見えてねぇよ。だから…泣いていいよ。その涙は俺と愛理のために祐子が流した心だろ。見なくてもちゃんと伝わる…。あいつにもな。だから……迎えに行こう。愛理を。」

窓の外で夕日が落ちていく中で、亮の後ろで廊下に雫の落ちる音が聞こえた気がした。
慌てて祐子が亮からティッシュを受け取って。

「でも、わ、私…私悪い子だもん…。愛理の事、いらないって言っちゃったもん…。自分のわがままで愛理に…いらないって。」

亮はそのまま廊下に座った。
そして少しの沈黙の後、いつも通りの軽い言い方で答える。

「そんな事いったか?俺には聞こえなかったけどな。はは(笑)」

祐子がすかさず答える。

「言ったよ。愛理…泣いてたの見えたもん。」

そして祐子は涙をぬぐい亮のほうを振り向いた。
亮はそれに気付いていながらも振り返ることをせずに言った。

「じゃあよ……それで終わりかよ。傷つけて…自分で傷ついて…自分だけで反省してそれであきらめて終わりなのかよ………」

亮は祐子の吐息に合わせるように声を合わせた。

「・・・なぁ。あいつ待ってるんじゃないか?……あいつはちゃんとわかってるよ。お前のこと一番よく知ってる。あいつはお前の大事な幼馴染だろ?親友だろ?友達作れとは言ったけど、あいつ親友作れとは言ってないんだから。」

その支えは祐子にとっては取り返したくても取り返せない少し悲しい過去。

「…もう遅いよ。私のこと嫌な女って思ってるよ。うざいって…子供だって……」

静かに立った亮は祐子の震えている肩を優しく抑えた。

「俺だってわかってるんだぜ。お前は愛理を嫌いでいらないって言ったわけじゃない…あいつにもわかってる。…大丈夫だよ。俺、ガキの時からお前ら知ってるからさ。3人ずっと仲良しだったから。俺はわかってるよ。」

照れ隠しするように亮は祐子の頭を撫でる。

「……うん。」

黙り込む祐子に亮は優しく言うのだった。

「それにお前ら危なっかしいよ。目の前で泣かれたら俺、お前達を放っておけないじゃん。」

少し笑って祐子は再び涙を拭いた。

「ごめんなさい。」
「いいよ、べつに。」


――それから1組の教室に足を運んだ。


でも、そこには誰もいなくて…愛理もそこにはいない。
祐子はさびしそうにつぶやく。

「ね。いないんだよ。結局、嫌われたんだよ、私。はは…」

赤く夕日の差し込む窓際で亮は落胆する祐子に言った。

「…いるよ。」

亮が指を刺す先は窓の外。
見たのは校門でうずくまっている……愛理だった。

放課後授業が終わってすぐ……いや、それよりも前かもしれない。
ずっとあそこに座って泣いていたのだ。

亮は、祐子の横でめんどくさそうにため息をついて言った。

「なぁ。…待ってんだろ?あれ。……お前の事待ってるんだろ?」

すぐに祐子は校門まで走ったのだった。


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そう。
この3人は友達じゃない。
幼馴染というずーっと一緒だった思い出を互いに持った親友なのだ。

「ごめんね。ずっと仲良しの親友でいようね。」
「うん。」

たったこれだけの言葉と理解が必要だっただけ。

どちらが正しいわけでもなく…どちらの感情もゆるぎない愛なのだから。

私たちはそれを訴える人に答えなければならないのだと思う。

唯一それができる。





それを許された『友』なのだから。


<完>
2005/06/08(Wed)02:41:06 公開 / 姫深
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■作者からのメッセージ
淡い青春です。このストーリー書いててこんな3人の関係あったらいいなぁ〜って思って書きました。
少女漫画のようなあったかさとか夢のようなほんわかさが出ていればいいなって思います。ぜひ感想待ってます。
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