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『読む必要の無い小説 -完結〜』 作者:姫深 / ファンタジー
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<Prologue@>

偶然見つけた隠し扉。
男が永遠と続くと思える階段を降ると、無限と広がる書庫がある。
周りにたくさんあると思えた立ち並ぶ本はすべて土に彫られた彫刻でしかない。
今、男の前には3冊の本が存在する。
億千と存在する嘘の本の中のたった3冊の本。
色は無い、題も無く、列も無い。
おそらく白いであろう無地の表紙のついた本だ。

所詮は本。されど本。
題も無く色も無いのなら、それは“左右真ん中の本”という抽象的なものでしか呼べない。
そこにその本しかないのであれば読みたくなるのが人間だ。
3冊の本の前には木盤に刃物で削られたような書き置きがあった。

 ―ここに存在し有る読む必要の無い物語
 ―どれか一冊のみお持ちください。

心を見透かされているような気になる文章。
3冊そこにあるのであれば誰でもすべて読みたくなるのは当然だ。
男は右の物語と手に取った。
すぐに読もうとするが光の無い場所では読むことはできない。
1冊を手にすると再びそこに戻すまで残りの2冊はそこに張り付いて手に取ることができないようだ。

……男は右の物語だけをそのまま家に持ち帰る。



<PrologueA>

不自然に開かれた隠し扉。
女が永遠と続くと思える階段を降ると、無限と広がる書庫がある。
周りにたくさんあると思えた立ち並ぶ本はすべて土に彫られた彫刻でしかない。
今、女の前には2冊の本が存在する。
億千と存在する嘘の本の中のたった2冊の本。
色は無い、題も無く、列も無い。
おそらく白いであろう無地の表紙のついた本だ。

所詮は本。されど本。
題も無く色も無いのなら、それは“左右の本”という抽象的なものでしか呼べない。
そこにその本しかないのであれば手に取り読みたくなるのが人間だ。
女が軽く本を見つめる。
2冊の本の前には木盤に刃物で削られたような書き置きがあった。

 ―ここに存在し有る読む必要の無い物語
 ―どれか一冊のみお持ちください

思わず心を見透かされているような気になる文章。
2冊そこにあるのであれば誰でも両方読みたくなるのは当然だ。

女は、恐る恐る右の物語と手に取った。
すぐに読もうとするが光の無い場所では細かい文章は読みづらい。
1冊を手にすると再びそこに戻すまで残りの1冊はそこに張り付いて手に取ることができないようだ。

……女は右の物語だけをそのまま家に持ち帰る。



<PrologueB>

不自然に開かれている扉。
少年が永遠と続くと思える階段を降ると、そこには無限と広がる書庫が広がる。
風のようなものが抜ける音がする。
好奇心旺盛な少年はゆっくりと足元を確かめるように階段を下って行った。
周りにたくさんあると思えた立ち並ぶ本はすべて土の壁に彫られた彫刻でしかない。
今、少年の前にはたった1冊の本しか存在しない。

億千と存在する嘘の本の中の1冊の本。
色は無い、題も無く、列も無い。
おそらく白いであろう無地の表紙のついた本だ。
所詮は本。されど本。
題も無く色も無いのなら、それは“無地の本”という抽象的なものでしか呼べない。
そこにその本しかないのであれば読みたくなるのが人間であり子供だ。
本の前には書き置きがあった。

 ―ここに存在し有る読む必要の無い物語
 ―どれか一冊のみお持ちください

少年にはその意味はわからなかったが、刃物で削られた文章に興味を持った。
手に取れる場に本があるのであれば誰でもそれを読みたくなるのが当然だ。
少年はその物語と手に取った。
すぐに読もうとするが光の無い場所で読んだところで落ち着かない。
少年が1冊を手にするとそこには何も存在しなくなった。
一気に静けさを取り戻した朝礼の後の体育館のような状態。

……少年は宝物を見つけ出したかのようにその物語をそのまま家に持ち帰る。



<第一章 〜享楽〜>

男は暗い部屋の闇に隠れるようにその物語にのめりこんだ。

小説には読む人間をひきつける魅力があったのだ。
−月はメロンのようなものだ−で始まる活字のファンタジー小説。
寝る間も惜しんで男は小説を読み続けた。
小説は、読み終わるのに2日もかかる大作だった。
今、男は小説の続きが気になって仕方がない。
呪われるというのはこういう事を言うのだろうか…。
小説は、じつに区切りの悪い場面で終わっていたのだ。
男はすぐに残りの小説が続きの本だということを思い出すかのように考え付く。
……男は急いで本を手に持ち、残りの本があるはずの書庫へと急ぐ。

女はその物語に激怒した。

10ページも読み終わらないうちに表紙を閉じる。
急に出てくる物語の人物達のことは理解できなく全くわからずじまいだ。
全く展開も理解できず面白くない。女は舌打ちをし本を無造作に置いた。
しかし、どこか魅力のある文章に女は推理した。
言い表せば綺麗な絵を見たときのような印象だ。
すぐに頭のいい女は理解する。
中途半端に始まり、中途半端に終わる小説。
これはいわば小説の『上中下』の巻の一つでしかないということ。
すぐに私が選んだものは、中巻の部分であり、あの場所には3冊の本があったのではないか?と考える。どちらにしてもあまりに盛り上がらない小説に女は落胆し、後悔する。
次に女はあの場になぜ2冊しかなかったのかということに疑問を持った。
つまり、この考えが正しければ1冊は誰かに所有されていることになるのだ。
急に女は残りの1冊に興味を抱いた。完ぺき主義な女にとってその疑問は解決しない数学の問題のように厄介だった。
……女はすぐに本を片手に持ち、書庫へと走った。

少年は物語を少しも読まなかった。

周りの家族、友達にその本のことを話しても誰も興味を示さなかったからだ。
あまりに暗く深い階段に少年の友達は誰一人として近づかなかったから。
少年は物語よりもあの秘密基地のような書庫に興味を持っていた。
少年は本を持たずに書庫へと遊びに出かける。



<第二章 〜凶猛〜>

 ―不思議な本を開くとその瞳をけして離さない魔性の本
 ―それは、今から始まる3人の争いの種となる。


男は書庫へたどり着いた。
この日、階段はやたらと長く感じた。
すぐに残り2つの本を取りに行く。
「あれ?無くなってる……。」
男は2冊の本が無いことに気が付く。
まるで本屋で求めている本が売切れているような切ない気持ちだ。
「なんで…無いんだ?」
男は辺りを入念に探す。
男にどうしようもない焦りが生まれてきた。
思わず本を片手に立ち尽くしてしまう男だった。
ふと横目にした前に見た書き置きが違うこと。
文字は最初からこう書かれて居たかのように冷たい箇条書きに変化を遂げているのだ。
刃物で削られていた文章がそうそう変化を遂げるはずは無い。
それだけでこの場に何かがあるということを示していた。

 ―すべて貸し出し中
 ―3つの本がここに戻る時、物語は姿を消す
 ―3つの本をすべて知るとき、物語は姿を消す

その不思議な状況をいちいち気にしている余裕など男には無い。
ただ、小説の続きが気になるのだ。
小説には魔力がある。
男の持った本は読んだ本を取り込む魔力がある。
一目読んだだけで目の前に浮かぶ物語。
全てが新鮮で時間を忘れる物語だ。
すでに男は物語の主人公だった。

読みたい…読ませろ…3冊とも最初に俺が見つけたんだぞ…全部、俺の……俺の本だった。
そんな独占欲の感情が彼を支配していたからだ。

「ふざけるなよ…俺が居ない間に誰か来たんだな…。」

この本に貸し出しの期限は無い。
それは今すぐにでも読みたい男の感情の劫火に油をさしている。
どんなことをしてでも今読みたい。
中の巻を持っている奴を見つけて取り返す。
そんな負の感情と意識が男を捕らえている。
読みたいという欲望しかないのだ。

男はすぐに“残りの2冊が今人間の手にあるとしたら…”ということを考えた。
そして推理をする。

“間違いなく3冊の本は続きを書かれたものだ…それは間違いない事実だろう。”

男はただ何の根拠もなく創造した。
待てば戻ってくる可能性があるということは微塵も期待していなかった
しかし、男はすぐにあることに気が付いた。

「そうか・・・そういう意味か。」

男はさっきの書き置きを再び眼にする。
手をあごに携えまるでシャーロックホームズのようだ。

 ―3つの本がここに戻る時、物語は姿を消す

“そうだ。これはきっと素直に考えれば本がここに3冊戻れば本は消滅することになるのだ。そして俺が最初来た時3冊あったんだ。つまり俺が一番最初にこの場所に来たって事になる。”

男は続けてもう一つの文を目にする。

 ―3つの本をすべて知るとき、物語は姿を消す

“そしてこれは……先に3冊読まれたら物語は消えるということか……?だとしたら運がいい。誰しも途中から始まった物語をすべて読もうとはしないだろう。俺が上の巻を持っているのであれば、俺がもっとも最初に読み終える可能性があるということだ。俺が上の巻を持っている限り他のやつらは読む気すら起きてないはずなんだ。”

男は急に今この場に本を持っていることが怖くなった。
“こいつを奪われちゃ駄目だ。俺が奪う立場にならなければいけない…。”

「ふふ、ふははははは!!狩りだ。ハメテヤルヨ……」

この男は壊れている。
この本を持っている奴を探すということが奇しくも男を物語の悪役のように変化にさせた。
一見本が消えるなどという事は信じはしない。
男はそれが本当であれ嘘であれ、物語が読めることに支障は無いのだと用心し書き置きを素直に受け入れた。
男は不意に大声を上げこのただ広い書庫にその声は響き渡るのだった。

「面白いじゃないか…どんなことをしてでも俺が最初に読んでやるよ…そして本は俺の手によって複製される。これほど魅力のある小説だ。ベストセラーなんてのも悪くは無いな。ふははは。これは俺の物語なんだよ。待ってろよ。」

……男は何かを悟るように不敵な笑みを浮かべながら家路に着いた。

女は息を切らして書庫へたどり着いた。
すぐに残り1つの本を取りに行く。
「嘘でしょ……。」
すぐに女は1冊の本が無いことに踊ろいた。
何よりこんな場所にくる人間が居るということにである。
「ちょっと……ふざけないでよ…苦労して来たのに…。」
女はあきらめずに辺りを探す。
女にどうしようもない焦りが生まれてきた。
あきらめて帰ろうとする女は、前に見たはずの書き置きが違うことにも気が付いた。

 ―すべて貸し出し中
 ―3つの本がここに戻る時、物語は姿を消す
 ―3つの本をすべて知るとき、物語は姿を消す
 ―“中”の本が他に奪われるとき、元の所有者は死ぬ

文字は最初からこう書かれて居たかのように冷たい箇条書きに変化を遂げていた。
その不思議な状況を気にしている余裕など女には無い。
ただ、その刃物で削られている文字が変わっている事だけが少し怖く感じた。
自分が推理していたこと。そして書いてある内容が簡単に理解できたからだ。

「ふざけないでよ……。何よ、この書き置きは…。」

女はどんなことをしてでも今、持っている物語を守らなくてはいけなくなった。
女はすぐに冷静を取り戻し自分のおかれている状況を素直に見つめたのだ。

“最後の書き置きの文章は、間違いなく私は不利な状況に居ることをものがったっている内容……。本当に私は死ぬの?悪戯よね…。”

普通は嫌な冗談だと思うのかもしれない。しかし、不自然に書き換えられている書き置きがただの嘘ではないと女に訴えかける。
残りの2冊が今人間の手にあるとしたら…という可能性が脳を巡る。
「まずいことになった…。」と女は思わずつぶやいた。

間違いなく3冊の本は続きを書かれたものだと女は憶測する。
……それは間違いない事実だと自ら認証する。
もし、女より先に本を読んだやつが居たとして、今、順当に下の巻までたどり着いたていたとしたら今日明日にはすべて読み終える状態に居るということになるからだ。
待てば本は自然に戻ってくる可能性があるということは女は考えすらしなかった。
すぐにあることに気が付いた。
もう一つの不安。
女にとってはそちらのほうが問題なのだ。

“問題は上の巻を持った人間ね。間違いなく私の本が気になっているはずよ…”

女はさっきの書き置きを再び眼にした。

―3つの本がここに戻る時、物語は姿を消す

“この文章は…そうよ。逆考えればいいのよ。私が全部集められれば本当に死ぬ状態でも私は助かる道があるのよ。”

女は続けてもう一つの文を目にする。

―3つの本をすべて知るとき、物語は姿を消す

“これは…先に3冊読まれたら物語は消えるということ?私が助かる道は二つ。この本を燃やしてしまうこと。そしてもう一つはこの本を守って残り2冊の本をここに戻す。そうすればこの物語は姿を消すんだ。つまり、下の巻を持った人間が近日中に読み終えれば私は助かるって事よね…問題は、上の巻を持った人間に私が狙われているとしたら…”

そう考えたとき女は急に今本を持っていることが恐ろしく思った。
鳥肌が立つというのは恐怖を感じたときでも変わりは無い。

“こいつを奪われちゃ駄目よ。それは絶対条件。もうここには本を持って来れないわね。私が奪う立場にならなければいけないもの…。”

「ふふ……。いいわ…」
女は不意に笑う。
「面白いじゃないの…こんなスリリングで怖いと思ったことは無いわ。どんなことをしてでもこれは守るわ。それを望んでるんでしょ?このゲーム、私は生き抜くわ。冗談でも死んでたまるか!」
ゲームと称したこの女。女は退屈な毎日に心のそこから飽きていた。
……女は本を服の中に隠しその“存在”に怯えることも無くに家路に着く。

少年はそこに遊びにきた。
友達に誘われても少年はその誘いを断った。
書庫で一人遊びをする少年は書き置きが変わっていることにも気づかない。

 ―すべて貸し出し中
 ―3つの本がここに戻る時、物語は姿を消す
 ―3つの本をすべて知るとき、物語は姿を消す
 ―“下”の本はすべての物語の居場所を語る

少年は、ここで毎日遊ぶ。
「あ〜。楽しかった♪お腹空いたな…。帰ろっと。」
……この日も少年は時間を忘れて遊んだあと家路に着いた。



<第三章 〜吟音〜>

男は一人暗い部屋で本を見つめて考えた。

“さて、どうやって残りの小説を手に入れるかだが…”

例えば残りの2冊を持った人間が男と同じく本を探す気があるなら探すのは簡単だった。
あの場所を張っていればいいだけ。
そうすれば自然と姿を現すことはわかっているのだ。
だが、もし相手が手持ち無沙汰の状態で興味すらないのであれば…相当困難だといえる…

「いや、今は怖がって動かないのは得策じゃない…。とりあえずあの場所を張ってみるとするか。」

男は本を机のうえに置いたまま家を出ようとする。
納戸から、懐中電灯、箒、そして大工用具箱を手に持った。
すでに日は落ちている。飼い猫ですらいつもに比べればうるさく感じる夜だ。
男は出かけようとした所を母に止められる。
「駄目よ。そんな道具もってこんな夜中にどこいくのよ!!」
「うるせぇよ。俺に指図すんな、婆!!」
男の母はびっくりし、すぐに父に助けを求めたが男はそれを待つことは無く、手に持った道具を抱えてあの場所へ向かった。

女は部屋の中で震えが止まらなかった。
部屋の光すら『これ』を奪うような気がして気が休まらなかった。

“私これを奪われたら死ぬ…多分本当なのだとしたら家族でも駄目なんだよね…。”

女は燃やす気など無かった。本当に奪われて死ぬような代物ならば燃やしてに何も無いはずは無いと考えたからだ。
正直その状況を内心楽しんで興奮している感情もある。
女はとにかく本を隠す必要があると言う最前低のことを考慮した。
「よし!隠そう!」
女は決断した。

“でもどこに隠せばいいんだろう…”

見つかったら駄目なのだ。母にだって見つけられたら女は死ぬ。女は今、できることをするしかなかった。

女はまず、無地の表紙に前に読んだ小説の表紙カバーをかける。さらに、手につかないであろう本棚の後ろの列に並べます。
「大丈夫よね…?」
正直、くだらない隠し方に過ぎない。
とりあえずは、これで、他の2人にはこれがあの物語の一冊だとは思わないはずという自信はあった。表紙に色を付けるなどという考えもあったのだが、今の女にできることはとりあえずこのくらいしかない。

女は次に、確かめてみる必要の事項がある。
それは、私は本当に狙われているのかという事。
もし、小説を集める気がある人間が居るのならば、あの場に張り込むかもしれない…可能性があるからである。
女は途端に悪寒が走った。

“駄目よ!私に死ぬなんていう負担がかかっているのよ…間違い無く他の2人にも何かあるわよ。考えられるのは、私と同じく誰かに取られたら死ぬということ…でもそれではつまらないはずよ。絶対に何かあるわ。…そうよ。例えば、何日以内に全部本を集めなければ死ぬといわれたら私は、死ぬ気で本を探すわ…。”

女はもうあの場所にいけないと言うことを認識した。
そして、隠し場所を練らなければいけないということも。
女は一人、部屋の中で考え続けている。
女は何か思いついたかのようにその“話せる物”を手に取った。

少年は付けっ放しのテレビの前で寝ていた。
無造作に机に置かれた小説が軽くほこりをかぶっている。
少年の母が呼ぶ声がした。



<第四章 〜浅はか〜>

男はあの場所に罠を仕掛けることにした。
男はひどく心臓が鼓動していた。

「ふふ。た、楽しいぞ。」

こうしている間にも男は見られている可能性がある。
…つまりこれは、言わば知恵比べ。
今男が見られていたら、単純に男の負けだ。
しかし、俺はそんなことはもう考え済みだった。

「捕まえてやるぞ…俺だとばれずに手に入れてやるんだ。俺にならできるさ…。今まで俺の周りはバカなやつらばかりだった。俺に勝てるやつなんていないんだ。」

女は隠し場所を考え付いた。
そこはけして見つかることないと練りに練った場所。
冷静にその場所を見つめ女は笑みを浮かべる。

“でも、これは絶対とはいえないわ…早めに手を打つしかない。私よりも賢い人間が居ては困るのよ…だから、私が奪うのよ…。”

女は自分が狙われているかを調べる作戦を考えた。
まずはあの場に罠があるのかを調べる必要があるのだ。
中国戦略史術、孫子の兵法とは…先人は頭がいい。
相手を知り、己を知って百戦を得る。女はまさにその考えである。
女は携帯電話を手にしどこかへと電話をかける。

少年は母に怒られていた。
いつも行っていたあの場所は危険だから行くなといわれたのだ。
少年はしぶしぶ母の言うことを聞くのであった。

男が罠を張った次の日のことだ。
ある女性が隠し扉の前にいた。
男は近くの木の上から双眼鏡を持って監視している。

“かかった!!相当バカだぜあいつ…。さて、見物だ…。”

立っている女性は壁を探るように隠し扉を開いた。
女性は手に本を持っている。
女性は本を持ち、戸惑っている様子も見える。
「なにこれ、すごい暗い・・・。」
女性は不機嫌そうに隠し扉を開けて言った。
男にその声は届かない。
男がいるのは双眼鏡をもってしても少し顔が見えるくらいの場にいるからだ。
ドアの前には懐中電灯があった。
女性は懐中電灯を手に取り、扉の前の落ち葉を払いのけ恐る恐る中へと入って階段を下りていった。
男はその光景を黙ってみている。

“………。”

30分くらいたってだろうか、女性が戻ってくる。
手には本は無い。置いてきたと見ていいだろう……。
懐中電灯を下に置く。そしてその隠し扉を丁寧に閉めるのだった。



<第五章 〜咎崩〜>

「くそ!!やられた!!」
家に帰った男はすぐに部屋の布団に包まり、頭を抱えている。

“何で考えなかった!!俺はバカか!くそ!!”

女は電話をしていた。
「どうだった?返してくれた?」
どうやら話し相手は女性だ。
やけに音量の高い携帯電話から話し声がもれている。
「もう勘弁してよ。暗いし怖いし、誰もいないし、懐中電灯が無かったら入れなかったわよ。ちゃんと頼みどうり、置いてきたからね。借りてた本。」
女は疑問を感じた。

“懐中電灯?ってなによ……”

女は即座にそのなぞを聞いてみることにした。
「懐中電灯があったの?他に何か無かった!?誰か見てたとか。」
「何言ってるのよ…そんなもの何も無いわよ。入り口の前に置いてあっただけ。」
女が、あの場を訪れたときそんなものはなかった。
入り口の前なのであれば見逃すはず無いのだ。
「気持ち悪い事言わないでよ!もういい?」
「え…うん。ありがとう。」
一方的に女は電話を切った。
女の意図は確信した。

“間違いないわ。私を探している人間がいる。おそらく見えない場所から双眼鏡とかで見ていたわね…。でもこれで逆にあの場所へ近づきやすくなったわ。”

見ていたのなら、あの子が持っていった本がきっと何なのか気になってしょうがないはずなのだ。女は相手が目立たない罠を仕掛けていることから頭のいい人間であるに違い無いと考えた。
「ダミーだってことは気が付いていてもおかしくは無い!そして、隠れるということは…向こうも奪われたくない状況にいるということじゃない!馬鹿ね…ふふふ。」
何かを思いついたようにすぐに女は家中の仕える道具を集め箱のような物を作り始める。

「畜生!!なんだこの劣等感は!!!!」
男にとって誤算が生じた。
いくら好きな紅茶を飲み落ち着こうとしても怒りは前面に位置している。

“あの女はおそらく本人ではない。つまりダミーの人間だと考えるのが妥当なんだ…。懐中電灯を持ったことで始めて来たという可能性が高まる…。だがそれでは始めて来たとはいえないさ。あの場所は確かに暗いからだ。だが、懐中電灯があることで、辺りを見渡したり、変なそぶりが見えなかった。65%以上はダミーであると考えられる。そして扉だ。彼女は扉を探してた…俺がわざと閉め、わからなくした隠し扉を必死で探していた。一度来たのなら然程時間をかけ、探す事は無い。そして、落ち葉だ。周りを疑うことはなく通り過ぎた…よって96%以上ダミーの人間であるのだ。だが、あの本……あながち嘘の本とは考える可能性が低い。大体、そこまでして本を守る必要ないだろう?あの本が本物ならばいいが、嘘なら…狙われているのはむしろ俺のほうだ……”

男は狩る立場だったのが狩られる立場になったことに気が付いた。
「何とかしてそれを確かめる必要があるな…あの本が本物か嘘か。」
男はさらに深く考えたが、プライドの高い男は深い所からこみ上げてくる怒りを抑える事がなかった。
予想を上まった相手の存在が気に食わなかったからだ。
「本が嘘としたなら、よく考えた手だ。嘘でも本物でも気になる。俺と同じ…いや、それ以上に頭がいいやつだぜ…くそ!!」
男はそのイライラから机のスタンドにやつ当たりをするのだった。

…少年は今日、母の言いつけをまもり、出かけることは無く。
今流行のテレビゲームを楽しんでいる。



<第6章 〜巧拙〜>

女は使い慣れた机での作業をやめ、少しだれていた。
なぜこんなことをしているのか、ふと面倒になったのだ。
そもそもここまでする必要があるのか…と女は突然冷静を取り戻す。
「ばかばかしい!!やめやめ。こんな遊びに付き合うなんて馬鹿みたいだったわ。」
作っていた箱のようなものをベットの上へと投げ捨てる。
「そもそもこんな本が奪われたくらいで死ぬわけ無いじゃん。」
女は椅子の背もたれに必要以上に寄りかかり、背を伸ばした。
「いいや、こんな本燃やしてしまおう。もういいや。」
女は慣れない工作にストレスを感じていた。
ライターを片手に洗面器の上で本に火をつける。
本にあっという間に火炎がともり、洗面器の上に崩れ落ちる。
女にとってこの本は思い出したくない彼氏との写真のように必要の無いものに感じていた。燃えるそれをじっと見つめる女はほっとき過ぎて冷たくなったコーヒーを手に取り、飲もうかどうかを考える。すでに本に興味は無いに等しかった。
冷たくただ苦いコーヒーはつやもなく必要以上の波をうっている。
そのときだ。女は思わずコーヒーを持っていた右手から力がなくなりコーヒーは床へと『ゴッ』という鈍い音を出し落ちる。
女は急に息苦しくなる。
見えない手にクビを絞められているような感覚…。
「な、なん…な…のこれ…。」

思わず片目を思い切り瞑ってこらえるような激しい苦しさだ。
女は、自然と左手に持っていた消火用の水を本にかける。
女は目を疑った。
「やばい…」
燃えていたはずの本は少しの焦げ付きもなく女の目の前に存在している。
燃やしても燃えず。水をかけても濡れない。その女の見つめる本は、ただの本ではない。
目に映る全てが真実であると女は信じるしかなかった。
女の苦しみは火が消えると同じく何事もなかったかのように消滅していた。
女がすぐに作業を開始したのは言うまでも無い。

女をすでに死が見つめている。女は深く推理した。

“やはり、誰かがこの本を狙っているという方向で考えることにしよう。さすがに私が中巻を持っているとまでは推理できていないはずよ…。そして…あの書庫の書き置きが、私が見たものと他の人が見たものが同じだったら私の置かれている状況が理解できるはずでしょ?…中巻を持った人を襲うなんて考えないはずでしょ?……でも、実際私を影ながら監視しているなら、他の人が見た書き置きは私の本のことは書かれていなかったことになる。でなければ、相手を殺してまで読む必要は無いハズだもの。”

女は3つ目の木箱の製作に取り掛かる。作業をしながらも女は、自分の置かれている状況から相手の存在を想像していくのだった。

一番わかりやすいのは、向こうにもリスクがあると言うことだった。
またはそこまでして読みたくなる内容が上巻にあってどんな事をしてでも2冊の本を集めたがっているという場合があれば見張るということが理由付けされるのだ。
そうだとしたら女を探しているであろう人間は、上巻を持った人間である可能性のほうが極めて高いことになることに気が付く。
女が内容に興味を持たなかったように“下”を持った人間は興味を持たないはずだからだ。
…でもまだわからないことは多い。

“私も危険を承知で、それを確信できるくらいの罠を張らなくちゃ。でもどっちにしても他の2人に何らかの課せられたリスクがあるのなら、間違い無くあの場所は私達を結びつける重要な場所って事だ。でも、問題が一つあるわね…私の考えは今、2人のうちどっちか1人を対象としたものでしかないわ…狩る者いつでも狩られることを考えなければいけない。私にならできるわ。”

「やはり、ちょっと危険だけどやってみる価値はあるわね。」
女は、出来上がった3つの箱を見つめながら決心した。
部屋にはいつもに比べて少し寒い隙間風が小さく吹き込んでいる。

男はなぜ代わりに人を寄こす必要があるのかという事に疑念を持った。

“……来れなくなったから?……それも十分にありえる。だが裏がある気がする。”

これほどの小説だ。途中から読んでも面白かったのかもしれない。
とりあえず、俺の目的は中巻である。
中巻さえ手に入れてしまえば、最悪その後に『上中』の2冊を奪われたとしても下の巻を手に入れさえすれば、先にすべての内容を読むのは俺のほうが早い計算になる為だ。
そのためにも男は無駄な時間の争いはできなかった。
「…全く持って厄介だよ、これは!!相手が何の本を持っているかを調べる必要があるのに、何せ無地だ…。向こうも動かなきゃ集めようが無い!!せめて…所有者だけでもわかれば…。とりあえず今は、この本を何とかしなきゃな……。」
男は何かを思いつき、机に向かい何かを書き始めた。

少年は、物語を手に取った。
「そういえば忘れてた。」
少年は、裏表紙の裏を目にする。
「なんだ…結構借りてるんじゃん。」
見たのは貸し出しカードに近いものだった。

“なんだこれ、前に借りた2人の住所とか、名前、電話番号まで載ってる…。やばいな返したほうがいいのかな?”

…少年は本を机の上に置きなおした。



<第7章 〜絶罠〜>

女は不器用ながらも3つの木箱を作った。
箱に本を入れ、蓋を閉めた。
入れたのは無地のカバーを巻いただけの本だ。

女は3つの木箱の上にそれぞれ“上中下”と書いた。

“よしできた。あとはこれを置いておくだけでいいわ。”

考えはこうだ。
この箱を3つ、あの場所の入り口の前に置く。
そして一日待つ。
何も無ければ、間違い無く見張っていた相手は“下巻”を持っている人間といっていい。
“上巻”をもっているならけして“中巻”の箱をもって帰るはずだと考えたのだ。
いくら用心深くてもけして確かめずにはいられないはずという真理を付いた罠である。
しかしこれだけではただの推測からは抜け出すことはできない。
女はそれ以上に二重三重の罠を考え付いていた。
少々重たげに3つの箱を持ち計画を遂行する。


男は見ている。
全ての本を集める鍵はあの場所しかないことに変わりはないからである。
しかし、すでに前に来た女性が書庫に置いてきたであろう本は偽者であるという推理をした男にとってはただ、情報を集めることが唯一の手段であった。
男は、ふと緊張した。
ある女が隠し扉の前にいるのを見つけたのだ。
女は静かにいくつかの箱をその場に置いた。

“前と違う女だ。…何をしてる…何を置いた?……いや、動くことは怖くない。俺が本を持っていないのならそれはあの場所ではただの通行人としか映らないに決まってる……。”

女がその場をいなくなって約3時間が過ぎようとしている。
女はそこに来ておそらく3つの箱のようなものを置いただけだ。
男は通行人のふりをして近寄る事に決めた。

「ん?なんだ?これ?」

男はわざとらしく大きな声でその箱に気が付いた。
男は、箱を見に来たのだ。一見これは男にとっては賭けだった。
もしかすると今見られている可能性があるのだ。
刻が長く感じ、男の心拍数が上げる。
この箱を手に取ったことで男は少し不利になる。
男は理解している。
しかし、どちらにしろこれを調べない限りは男にとって何の解決にもならないのだ。

“なんだよ、これは…”

男は3つの箱の上に“上”“中”“下”って書いてあることに気が付く。
男は試されているかのような魔の視線を感じてやまない。

“これは…罠だ。……いや…。”

男はあえて下の箱から鍵をあける。
箱の中には何一つ無い。

“何も入ってないじゃないか…。”

男は次に、中の箱を開ける。
中には無地の本が入っているのみだ。
本は買ったばかりの漫画の本のようにビニールの袋に包まれている。

“本…これは本物か?今ここで開けるか…いや。それでは俺がすぐに確かめたく見えてしまう。…つまりここは、上の箱を開けるのが正解なんだ。”

男は中の箱に入っていた本をそのままにし、上の箱を開けた。
箱の中には本は入っていない。

「決定だ。」

男は理解した。

“中に入っている本は偽者だ。本物なら、“中”の本を持ったやつの考えは、『返したいが、階段を下りるのがめんどくさくなった』という理由であるといえる。普通ならばそう考えるはずだ。だが俺は違う…。ただ返したいだけならば他の箱を用意する必要は無い。きっとこれは偽物であり、罠だという推測が正しい。このくらい考えられないと思ってるのか…。本を開放すれば、俺が上巻を持っているということがばれる…。だが、そうだとしたらこれを仕組んだのが誰だかすぐわかりやす過ぎる…。ダミーを使って罠をかけるようなやつだぞ?考えすぎなのか…?くそ!!何を考えてるのかわからない!だがこれは俺にとってかなりのチャンスだ。昨日作ったあれが役に立つぜ。”

男はすぐに何かを思い出したかのように家に戻った。
すぐに戻ってきた男は手に1冊の本を持っていた。
そしてすぐに持ってきた本を、上の箱の中に入れる。

男が昨日作っていた物はそっくりに作った無地の本だった。
内容は略されてはいるがほぼ上の巻と同じと言える内容だった。
不思議と丸写しはできず、その魅力もダミーには無かった。

“少し予定は違うが、この本を入れたことでこの場にはおそらくダミーである中巻と上巻が存在するんだ…。こいつを仕組んだやつが下巻の本を持ったやつならば増えた本が本物だと少しでも推測し疑わないはずだ。そうしたら、読むだろう…。そして、中の巻を持ったやつが仕組んだことならば、そいつは、なおさらその本がなんなのか知りたくなるわけさ。そして両者どちらにしても上巻は気になるわけだから本を開き、内容からこれが上巻だと気が付くだろう。そして俺が入れたのは上の巻のダミーなんだ。それにこいつが、下巻を持った人間だったのなら、下の箱に何かしらのことをして置くはずなんだ。墓穴を掘ったな。俺は別に、下の本を持った人間には今は興味が無い。これで、こいつがどっちの本を持っていようが、本来の持ち主は、明日には再び自分から姿をさらし始めるんだ。さぁ。姿を表わせ。”


男はすぐにそこを立ち去った。
そこに置かれた箱の中の2冊の本。入っているのは中のダミーと上のダミー。
そして“下”と書かれた一つの空箱。
女は、少し疲れた目蓋を閉じて部屋で横になっている。
男は本物の本を見つめながら恋する女性のように焦がれていた。
その場に人がくることはなく3つの箱はずっとその場で女が戻ってくることを来るのを待ち続けている。

女の考えたこの箱の罠がもたらす本来の役目は、女にしかわからない。



<第8章 〜警告〜>

次の日、やたらと眩しい日差しに女は飛び起きた。
「もう9時だ!!」
女は、そのまま寝てしまったようだ。
女は箱の状態が何より気になっている。
隠し扉の前はやけに寒々としていて目の前の箱は何事も無いかのようにその場に置かれている。
女は当然のように箱をあけ、様子を見る。
「…。やはり中の本は触らなかったみたいね…。」
すぐに上の箱の中の本に気がついた女は、上巻が入っている事に少々戸惑ったが、即座に全ての箱を持ち帰ることに決めその場を立ち去る。

男は、今それを見つめている。そして自然を装いながらも遠くから女の後をつけるのだった。

“決定だな。罠だった。箱を全て持って帰る必要は無い。ただ上巻が気になるだけなら本だけ持ち帰ればいいだけのはずなんだ……バレバレだぜ。そして昨日、俺の姿が見られていたとしてもあいつにはただ上巻を返しに来たという男として映るわけだ……”

そして男は、すぐに女が中の巻を所有していると推測した。
理由は簡単だ。その大きな理由は2項。
1つは、再び同じ女が姿を現し、箱ごと持ち帰ったこと。
2つ目に下巻をもっている人間が単純に中巻のダミーを作る無意味さからである。

女は箱の中身が気になった…。
自宅とは逆の方向へと足を進めながらも女は今上巻を手にしていることに違和感を感じている。

“上巻が入ってた……なぜ?…これは本物?1個は私が作ったダミー。変わって無いわ。本物は私が持っているんだもの。つまり、興味があって上の巻を持った人間な中巻のダミーの本をもって帰るはずよ。ふふふ………よし。これは計画通り、相手はこれをダミーだと思ったって事よ。ということはこれもダミーね。”

女が上の巻をダミーと考えたのは訳がある。
例えば、上巻を持った人間にリスクがあって守っているのなら、なおの事上巻を置いて中巻を持って帰らないのは違和感があることなのだ。
ただ単に本がつまらなかったのであれば、リスクも無いわけで、いちいち返しにくる必要も無いのだ。
本を入れたってことは、いわば諸刃。相手に自分の存在を証明し陽動するやり方。
反応が見たくて置いたのだ。
それを推測することは女にとって木材で箱を作り出すことよりはるかに容易く考えられたのである。

“結果、今私を追っているであろうお前は、十中八九“上”を持った人間なのよ。そして私が中の巻の持ち主であるところまでは簡単に考え付いているハズよ。そこを逆に利用してやる……。”

男は女を追いながら考えてみる。
女の中身を気にしつつも、結構な距離を歩いている。
男は確信している。

“間違いない。お前だ。……だが、これでは明らかに簡単すぎる…か?それともこれも罠で、正体をばらす必要があったのか?いや。そんなはずは無い。…箱なんか作ってガキみたいに反応を見ようとして、ほんと幼稚だぜ……。お前は嘘ばかりだ。簡単にお前って事はわかってるんだよバ〜カ!!ククク・・・”

そのころ少年は書庫にいた。
単純に本を返しに来たのだ。
少年は本を棚に置いた。
「なんだこれ。」
少年は床においてあった白い表紙の本を見かけた。
「なんだ。もう一冊あるじゃん。戻しておこっと。」
少年は2冊の本を“元”の場所に戻した。
少年がそこを立ち去ろうとしたとき、書き置きが瞬時に変更される……。
ゆらりと消え去るような文字。そして浮かび上がる文字。

 ―上の本が、本書とは違い偽書が置かれいる。
 ―即座に本書に戻されない場合、警告を与える。

書き置きが変更され急な寒気が男を襲う。
悪寒とも違ういうなれば血が滴るようなグロイ感覚だ。
「な…なんだ…これは?」
立ちくらみしたかのように男はぐらっと体制を崩す。
女はそれに気が付いた様子は見えない。
男は一気に吐き気に襲われる。
「くそ…なんだこれは!!」
何かを振り払うかのように男はぶんぶんと頭を回した。

『上巻の所有者であるあなたに警告です。ただいま、上巻が返却されました。』

脳にちょくに話されているような声が聞こえる。
耳をふさぎ聞こえる、自分の声のような感覚であるといえる。

“なんだ…?返却??ふざけるな!!俺はここにいる。本は今家にある。…まさか“下”を持ったやつに先を越されたのか?”

この頭に訴えかけてくる声は間違い無く、管理者であるものだろう。
そこは信じざるをえなかった。やはり本はただの本ではない…。
そんなことはすでにわかっている。初めから男は疑ってなどいなかった。
それよりも襲い掛かる現実がある。

“まずいな・・・取られたか。”

そうやって、男が少しだらしなくため息をついたときだ。
管理者である声から重要なことを聞かされるのだった。

『警告。本が違います。直ちに本書を持ち、取り替えてください。警告です。返却が無い場合は所有者に死を与えます。』

男は辺りを見渡している。
やはりこの声は俺にしか聞こえていないようだ。

“…くそ!!今重要な時だって言うのに、誰だ!本を間違っておいたやつは…。おいおい。…まてよ?…間違って置くということはどういうことだ?くそ!!パターンがありすぎて絞れない!!”

半ば、現実離れした状況と考えられない状況、そして、死という宣告が男に冷静さを欠けさせた。

“と、とりあえずこの女を追うのはあきらめよう。本を返すことが先決だ!!ほんとに殺されてはしゃれにならない。”

男はその場を放棄しすぐに本を取りに家に戻るのであった。



<第9章 〜無駄〜>

女は木箱を公園に入るとベンチの上に手に持つ箱をおいてその場を後にした。

“さぁ。見ているんでしょ?見ているのであればきっと不思議よね?”

女は公園を出る。女は今、男が後を付けているのもだと思っているのだ。

女の罠は、これに有る。
完結に行ってしまえば、女が、箱を作り、わざわざ姿をさらしたこと、それら全ては、相手の存在を知るためでは無い。
箱を作り、目に付く場におく。すると、人間は、その違和感のある箱に興味がずれる。
その箱が持ち出されれば、持ち出される理由と、存在を調べずには居られない。
つまり、この場に、相手を貼り付け、女は、書庫に足を運ぶこと。
それが目的だった。戦で言う、陽動・扇動がこれにあたる。
男をあの場所から引き離すこと。それこそが女の考えた真の隠された罠であった。
良く考えた罠だ。
ここに置いた箱は気になる。
そして、女が箱をベンチに置き去ったことで男は女を、ダミーと推測する。
ただ代わりに取りに行ったという代理の人間になり、正体がばれることは無い。
そう判断しなければいけなくなるのだ。
そして女は目を逃れ、今なら書庫にたやすく足を運ぶことができる。
すでに女にとってあの木箱は必要の無いものなのだ。
女は箱の中のすべての本がダミーなのはわかってる。
しかし、女は男がすでにその場を放棄したことなど微塵も予測できていない。
果たしてそれが、どういった波乱を生むのか…。

女はすぐに公園から隠し扉、そして書庫へと走った。
女にとって書庫を調べることが、今の自分の現状を確かめる手段でもあったのだ。


男はすぐに家に戻った。
いつもに比べ勢い良くきしむ階段の音。
だらしなく片付けられていない部屋にため息を付く暇もなく本を探す。
しかし、いくら、部屋の机の上を探しても本が見つかることは無い。

「なんだよこれ、何でだよ!」

1時間近く費やし男はその本を探すが見つかることは無い。

“取られたのかよ…マジかぁ…。”

男は落胆した。
もう駄目なのだとへこたれた。
だがすぐに異変に気が付いた。

“ごみがない。…くそ!!あのばばぁ!…。”

すぐに男は台所へ足を運んだ。

「おい、婆!俺の本どこやったんだよ!」

母はびっくりした様子で男を見た。

「な、なによ!…さっき、純君が来て本返してって言われたから返しといたのよ。」

純とは男の友達だ。
同じクラスで結構勝手に男の家にやってきてはくつろぐ無粋な男。

“勘弁しろよ…”

男はすぐに純に連絡をした。
すぐに純君が出て、本が違うことに理解してくれたようだった。
やがて、男は本を取り戻し書庫へと全力で走った。


少年はすでに死んでいた…。


女が中巻と一冊のダミーの本を持って書庫へとたどり着いた時。
女の呼吸音が書庫へと響き渡っている。

“まずは、本は…どこ?”

女には、書庫に来なければいけない理由として2つの目的があった。
1つは前にここに置かれたダミーの本は女にとってお気に入りのものだったから。
その本を持って帰るため。
そしてもう1つは、書き置きのことだ。
女はすべての本を手にすると決心するために、一度試さなければいけないことがあったからだ。

“私の本、全くどこにも無いじゃない。千恵のやつどこ置いたのよ…”

女はすぐに棚に向かう。棚は簡単に言ってしまえば本を立てかけるものではなく、演台のような台のくぼみに置くだけのシンプルなつくりだ。

「え…なにこれ…。」

女はその棚を見た瞬間思わず息を止め、焦る。
それもそのはずだ。
女が見たその場にはすでに小説がそろっているのだ。
間を開けバランスよく置かれている2冊の無地の本。
それは一見間違い無く本物の本のように思えた。

“嘘……なんで?本が戻ってる。どうして?!…私のを狙った人は?”

女は突然わからなくなった。
そりゃそうだ。これが本物の本なら、女はただ一人ではしゃいで居るだけのただの阿呆でしかない。

“そんなはずは…信じられない。…まって!冷静に考えるのよ。そもそもなんであるの?”

女が理解するまでそこまで時間はかからなかった。

“そうか!私の本だ!千恵のやつここに入れたんだ。…いや、ちょっとまって。それは違うわ。何で(2冊)あるのか説明がつかない。上の巻を持ったやつはこの書庫に来るわけが無いじゃない。入ったところでも私達に見られたらやばいと考えるはずでしょ?そうか!下巻を持ったやつが来たんだ!ということは、下巻を持った人間は本を返しにきたってこと?じゃぁ、これは、ダミーが置かれている可能性が存分に考えられるわ。”

女が試したいことはそこにあった。
ダミーを入れてみるということだ。成功すれば本は消える。
危険とわかっていても女にはやらなければならなかった。
成功すれば良し。
失敗しても、女はそれによって、上巻のやつの上に立つことができるという作戦をもっていたからだ。

“まぁ。いいわ。どっちかが偽者でも、両方本物でも、両方偽者でも、今私にとっては危険を冒さなくていい訳だからすごくラッキーなことだもの。”

女は、素直に手に持つ、“中”巻の本を棚に戻そうとした。
そのときである。

階段を駆け下りてくる足音がする。

“何!?ちょっと、嘘!誰?“下”の持ち主?帰ってきた??”

女はすぐに、棚の普通に見ただけではわからないところに隠れた。


「はぁ。はぁ。」
息を切らして書庫に入ってきた男がいる。
女は狭い場所に隠れたため顔の自由は利かずその声しか聞こえなかった。

“男?よね?何しに来たのよ!私バレたってこと?”

女はその呼吸の低音に男と考えた。
女の持つ2冊の本は緊張の汗で手から滑り落ちそうな状態であった。
男はすぐに棚に行き本を変えた。

書庫内に音声が響く。
男と女は急な声音にすくんだ。

『偽書が、本書に置き換えられました』
『警告を解除します』
『告より偽書を置いた者には死が与えられました』

ドン!という物音とともに声は消えた。
「ふぅ。」
男は思わず緊張を解くのだった。


少年は今家族と病院にいる。
少年の母には医者である人間からこう告げられた。
「申し訳ない…できる限りのことはしましたが…急死です。」
本当は死因の理解できていない医者の精一杯の宣告だった。



<第10話 〜隠し物〜>

“何?今の。”

女は動揺を隠しきれない。
鼓動を抑え、胸の鼓動が響かないように胸を押さえ息を潜める。


男は今の状況を考えた。
「今のは…。」

“俺は死んでいない。解除したといっていた。セーフだったんだ。…ははは。”

男は自然にだらしなく肩の力を抜かし疲れきっている。

“全くなんだってこんなことに…。”

女は何か思いついたが、声を押し殺し、気配を経つ。

「わかったぞ!!管理人は今、告より偽書を置いた者には死が与えられましたと言った!!これは、誰かに死が与えられたと言うことだ!…ざまあ見ろ!!つまりこれは…。」



<第11話 〜海魔〜>

男と女は同時に同じことを考え、脳裏に推理をめぐらせる。


“そうだ!(そうよ!)…誰かが死んだとするのなら死んだのは“下”の巻を持っていたやつになる!つまり、どう転んでもここ(そこ)にあるのは本物の“下”の巻!!そして、俺も(私も)違う本を置けば死ぬ!間違いない(わ)。”

二人の思考が一致した瞬間だった。

しかし、それは男にとって都合の悪い状況だった。

“確かにこれで、下の巻は読める。だがそれは俺の望んでいないことだ。中巻が無い今、下巻を読む気にはなれない。それに、下巻を読む間、上巻はここから持っていけない。これは非常にまずい事なのだ。誰か第3者に…下巻を取るように頼むしかないな。まあ、少しの間置いても、中巻を持ったやつはここには来ない。この場所は俺が見張っていると思っているだろうし、あいつは今木箱に熱中しているはずだ。”

男は、手に持っていた女のダミー小説を投げ捨てた。
カバーが外れ、内側からベストセラーになった本が姿を現す。

「ふん。やっぱり、前に、変な女がもってきたのはダミーだったか…。」

男は一度書庫を出ようとするが、考えた。

“待て。これは得策じゃない。”

男はすぐに棚に戻り、何かした後、すぐに逃げるように書庫を後にした。

女はすぐに本棚へ近寄った。
そして状況が違うことに気が付く。

「あれ?…なんで下巻が無いの?普通、上巻が残ってるはずじゃ…。」

“おかしい。これじゃあ、さっきのやつは、下巻を持った人間だったってことになるわ。じゃあ死んだのは、上の本の人間??……違う。違うわ。これはきっとあえて上の巻を置いていったんだ。”

考え、うまく考えがまとまらない女はふと書き置きを目にした。
「あれ、また書き置きが変わってる…。」
今まで見ていた書き置きと明らかに違っていたこと。


−“中”の本が他に奪われるとき、元の所有者は死ぬ−
と言う文章が、違う表記になっていたのだ。
−“下”の本はすべての物語の居場所を語る−


一瞬で女は青ざめた。

“まずい。彼はこれを見たの?だったのなら私の本を奪うのはカップ麺にお湯を注ぐくらい簡単なことじゃない!…これでは圧倒的に私の劣勢…。”

やがて、私がいることで、書き置き何かを悟ったかのように書き置きの記述を
−“中”の本が他に奪われるとき、元の所有者は死ぬ−
に戻すのだった。

“…でもこれでわかったことはある。さっきのやつにリスクは無い。ただ読むことに執念があるやつだと言っていい。目標はすべての本を最初に知る…いや、知りたい。と言う目的で動いてる。じゃないと“上”を置いていく理由になら無い。そして、かならずこの本を第3者に頼んで取り戻しに来ようとするとも考えられる。きっとそれから考えても“上”の巻にはそれだけの魅力があったってことになる。すごい厄介だわ。”

「ここに居るのは危険ね。次来たらさっき見ていなかったとしても今度は間違い無くさっきの書き置きに気がつく。隠さなきゃ…。最悪奪う奴を殺してでも守らなければ…私はまだ死にたくない。」

“私は、場所を知られても見つけさせないようにする必要があるってことよ…。そうよ。あれがあった!!もう私はこうするしか無いのよ…”



<第12話 〜黎明〜>

そう。あの時、男は書庫を出るとき考えを改め、考え直したのだ。

“いや。待て。いっそうのこと上巻を置いていくべきだ。そうすれば、今この状況を見ていない限り、さっきの女が考えているであろう、俺が上巻を持っているという推理は根本的に的からハズレる。それは同時に相手に予想できない不意打ちとなって、ボロを出させる罠になる。今の段階で考えの間違いがあるのはやつもやり辛いだろう。そう。あいつも俺を見つけ、探す可能性があるのなら、今は俺は下巻を持っているべきなんだ。中巻を持ったやつが上巻を持ったとしても、なんら関係は無いのだ。よし、勝てるぞ。ふふ。この本は俺のだ!!”

こうして男は自分の持つ“上”の本と“下”の本を持ち替えた。
男はまだ、今その手に持つ本がすべてのことを知っているのに気づいてはいない。



<第13話 〜しおり〜>

家に着いた。
男は、下の巻をパラパラとめくる。
「あー駄目だ。クソッ!気になる!前文を読んでも“中巻”の部分が無いと大事な変化の部分がわからない。」

“あの女だ。あの女が“中巻”を持ってる。くそ!この巻を持ってたやつが変なことさえしなければ…あのまま追いかけて正体がわかったのに…。”

男は今、女を探す方法を考えている。


女は家に着いた。
本をじっと見つめている。

“そうよ。あいつには上の本を取り戻す必要は無いわ。でも、私には見張る必要がある。何も知らない第三者があれを手にしてしまったら私は2人に狙われる立場になるんだもの。何とかおびき出せれば…”

女は考えた。自分が不利な立場にいる理由を。
多きな問題点は3項あった。

1.相手には私の居場所・本の場所を知る方法がある。
2.相手にはリスクが無い。
3.私は、あの木箱の罠に相手が引っかかっていない場合顔を知られている。

この理由により男は女より、精神的にも、行動範囲の状況も上の立場にあると言えた。

男には知らないこと3項があった。
そこが大きな問題だった。

1.男はあの場に女がいたことを知らない。
2. 女が奪われたら死ぬことを知らない。
3.“下”の本の力を知らない。

そして、とうとうこの物語を巡る戦いがクライマックスを迎えようとしていた。



<第14話 〜ケース〜>

月は何かを告げるように曇り一つ無い輝きを海に写した
それから何事も無く2週間が過ぎようとしていた。
男は極度の緊張と、思考で睡眠不足で倒れそうだった。
女もまた、目立つ昼には動けず、いつ死ぬかわからない状況に休めるはずも無く気がおかしくなっていた。
女はその精神状態から相当やつれていた。

「限界だわ。このままじゃ、普通に死にかねない。やっぱり、おもい切って動くしかないわ。大丈夫よ。わ、私なら…。」

女は決心し、外に出かけた。
男はふと、本を手に取った。一枚のしおりが挟まっている。

“しおり??いや、これは、貸し出しカードだ。”

男は偶然にも少年が、無造作に本に挟んだ貸し出しカードを発見してしまうのだった。
貸し出しカードにはこう書かれていた。

序・・返却されています。
開・・鶴ヶ丘 士駕町 420−10 2階南西の室 02・・・
終・・鶴ヶ丘 美原町 134−23 2階東南の室 02・・・

まずは住所と思われるもの。次にあらかたの場所。電話番号に名前だ。

“これは…ひょっとして…”

「ふははははっははははっははははははは。」
男は笑いが止まらなかった。

“これは本の居る場所だ。こんなに簡単なことだったのか…くくく。頭わりぃよ、俺。あははは。”

女は本を家に隠していた。女はいま、隠し扉を見張っている。
男は走った。
“これで俺の勝ちだ!ざまぁねぇぜ。”



<最終話 〜からすみとり〜>

男が本を片手にクリーム色の壁の平凡な家の前に立っている。

「…ここだな。」

男は家に着くとインターホンを押す。
すると母親であろう人間が出てきた。
「なにか?」
男は身だしなみを整え、浮ついた声で言った。
「あ、あの俺…、じゃなかった、僕。元クラスメイトの飯田一樹というものですが、久美さんお帰りですか?」

男はカードに書いてあった持ち主の名前を言ったのだ。

「あら。こんにちは。あのこは今出かけてるけどどうかした?」

“よし、間違いない。”

「まずったな。今必要なのに…。」
男は気まずそうに言った。

「探させてもらっていいですか?貸した教科書がどうしても必要で…。」

母である人間は男の言葉を承諾した。

男は南西の部屋を方位磁石で調べ、向かった。ここは…物置?

“あったぞ。運がいい。だが…ケースに入って鍵がかかってやがる。ここまでする必要が有るのか…”

ケースには紙が挟んであった。
紙にはこう書かれている。

『この本を必要としている人へ。この本は“上”の本を持っている人でなければ触れた時点で死にます。』

“なんだと…”

一人死人が出ている以上、男はあながちこれを嘘とは思えなかった。

「くそ!!」

男はケースを抱えたまま、書庫へと向かった。
隠し扉を開け、意外と重く感じるケースと、下巻。
やがて書庫へたどり着いた男。

次の瞬間男は、気を失って倒れる。

倒れた理由は言う必要などあるのだろうか…。
あまりに急な展開であるとしかいえない。

男は、何者かに背後から殴られたのだ。
背後に主立つ影は女だった。

「はあはあ。か、かかったわね。」

“私の考えは間違ってなかった…。”

これはいわゆる私にとっても賭けだった。
ケースごと奪われて、女は死ぬ可能性があったから。
しかしどうやらケースごと奪われたとしても直に本に触れない限りはまだ取られたという認識にはならないようである。

「…私の勝ちよ。あなたの一番の敗因は本を手から離そうとしなかった点にある。」
「やったわ。私の勝ちなのよ!」

女は本を取り返し、ここにすべての本がそろう。
これで本を戻せば私は…。
女が本を戻したそのときだ。
背後から女は男にブロックで殴られるのだった。

「俺のだ…これは、俺の本だ。」

男はそのまま倒れて…二度と立ち上がることは無かった。
そして女もおびただしい血が流れ、階段は助けを呼ぶには長すぎるものだった…。

本は静かに姿を消し、そこには他に何も残ることは無かった。





これは読む必要の無い小説を巡る人間の物語
本当の意味を理解しない愚かな人に本がもたらす物は欲のみ

物語にはここに開かれて居ない解決方法が有る。
それは“中”の巻を持った人間が手に持ち、本を読ませてあげるということだ。そうすれば誰も死ぬことは無い。だがそれは所詮戯言。

奪うことばかりで、失うもののない3人は『本』に命を奪われた。

今現在、隠し扉は硬く閉じられている。
いつかあなたが扉を開き、永遠と続くと思える階段を降りたら

−ここに存在し有る読む必要の無い物語−
  −どれか一冊のみお持ちください−

あなたは、意味の無いと称された『読む必要の無い小説』を手にとってしまわれますか?

存在するこの本はまだ誰も最後まで読んではいない…

−完−
2005/06/01(Wed)02:50:58 公開 / 姫深
■この作品の著作権は姫深さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なかなか時間をとれずで更新できずすみませんでした。と、とりあえず、お、終わりましたです。…やはり私にとっては、どうも似合わず向いていないストーリーです。いつかちゃんとした物語を書けるように頑張りたいと思います。ちょっと自信をなくして凹んだ時期もあり・・・でも、手に余る奥深いストーリーを作ってしまった私がアホなので何もいえません。このストーリーは、実は設定上では、2幕があります。本の謎自体は解けていないことは読んでいただければわかると思います。そこで、第2幕では、本の神レンデの作り出した、読む必要の無い物語をミステリー研究会が解明していくこの物語から3年後の物語構成です。もう少し実力を磨いてから作ってみようと思います。ごめんなさい。やはり難しいですね。者を書くということは。読んでくれてありがとうございます!!頑張ります!!
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