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『ウィッチメタル MAGIC1〜3』 作者:柊 レン / ファンタジー
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今から数百年前、あらゆる魔術を使う魔女が存在していた時代。普通の人間が魔術を使えるようにするために、魔女たちが特殊な金属を作り出した。その名はウィッチメタル。この金属により多くの人が様々な魔術を使えるようになった。だがその結果、人々は彼女たちが与えてくれた力で争いを始め、いくつもの国が消えていった。そしてその力は魔女たちにも及んだのだった……

☆MAGIC1☆

エスル暦1024年・セレーヌタウン

「すいませーん」

店の奥から大柄の男がやる気のなさそうな顔でカウンターに現れた。
「いらっしゃい。買い取りかい?」

ここは路地裏のジャンク屋である。

「これなんですけど?」

男は手に取ると、文字の入った金属の塊を眺め始めた。少しすると男はカウンターにそれを置き、困った顔で喋りだした。
「姉ちゃんよ、こいつどこで拾ってきたガラクタだ?いくら家がジャンク屋だからって、こんな訳の分からねぇ金属は買い取れねぇな。」

彼女はカウンターを強く叩いた。
「ひどいよおじさん。何年も前から家にある家宝なんだから!売ったら百万リザくらいするって、おじいちゃん言ってたもん。」

男は呆れた口調で言う。
「ボケたじいさんの話なんか聞きたくねぇんだよ。さあ、それ持って帰ってくれ。」

すると店の奥から一人の少年が、疲れた顔で歩いて出てきた。
「探し物は見つかったのか?」
「ダメ。ぜんぜんダメ。」

彼女が店を出ようとすると少年が彼女を呼び止めた。
「君、ちょっと待って……それ…どこで?」

「何?あなたも私をバカにしたいわけ?」
少年は彼女に近寄ると、手に持っている金属をじーっと見つめ始めた。

「あ、ごめんつい夢中になっちゃって。俺、シャナ・レオ−ル。君は?」

彼女は、嫌そうな目をして名前を言った。
「私は、ユアナ・レヴトーナ。それがどうしたの?」

それを聞いたシャナは、何故か嬉しそうな目をしてもう一度名前を聞いた。
「それ本当の名前じゃないよね?っていうか、何て言うの?」

「何で君がそんなこと知ってるの?まあいいけど。それを言って私が何か得するわけ?」
シャナは持っていた革のカバンから、一万リザの束を取り出した。

「君が良ければ、それ譲ってくれない?そんなに多くは出せないけど百万位ならだせるからさ。」
それを聞いたユアナは、嬉しさを隠しきれないでいた。

「そ、それなら教えてあげてもいいわよ。本当の名前は、ユアナ・リーブル・トラウ・ウィッチ・アタク・レヴトーナ。これでいい?」
「まさか…ウィッチの名を継ぐ者に出会えるなんて!早くガーディアンズのみんなに知らせないと…あ、ごめん独り言っちゃって。」

シャナはユアナの手を握ると店の外へ出た。

「あ、ちょっとどこ行くの?」
「僕の仲間のところへ来てほしいんだ。ちょっと遠いんだけど…」

ユアナはシャナの手を強引に振り解いた。

「突然何なのよ!何仲間って?これ買い取ってくれるんじゃないの?私は今お金が必要なの!買ってくれないならもういいわよ!」
ユアナはシャナに背を向けるとメインストリートの方へ歩き出した。

「待ってよ!」
シャナはユアナの後ろをぴったりとついて行く。
「君をある人に会わせたいんだ。今は詳しく説明できないけど、一緒に来てくれない?お金が必要なら僕が何とかするからさ。」

ユアナはシャナの方を振り返ると強い口調で言った。
「じゃあ今すぐ一千万リザ用意できる?出来るわけないよね君に!一千万無いとおじいちゃんの家が無くなっちゃうの!分かったらどこか行って!」

ユアナは再び歩き出した。

もう少しでメインストリートに出るというところで、ユアナの前に黒装束の二人組みが立ちはだかった。二人ともユアナよりも背が高く、一人はがっちりともう一人は細いラインの体をしている。頭も黒い布で覆われて目の部分しか見えないが男と女のようだ。

「そこどいてくれない?」
ユアナの言葉に二人組みは何一つ反応しない。無反応な態度にイライラしながらも二人組みの間を通り抜けようとした瞬間、女のほうに突き飛ばされた。

「痛ったーい。何するのよ!」
無言の二人は黒装束の中から鋭いナイフを取り出し、男の方が倒れているユアナに近寄り首にナイフを突きつけた。
「出せ。」

ユアナは何のことか分からず聞き返した。
「出せって…何を…?」

分からずにいるユアナから持っていたバックを取り上げるとそれを女の方へ渡した。女はバックの中を探り金属の塊を取り出した。
「本物のようね。」

女は金属の塊を見つめて言った。そして女は金属を黒装束の中へ入れようと手のひらから一瞬を目を離したとき、急に金属の重みが消えたのを感じた。すぐに視線を戻すとあったはずの金属が無くなっていた。女は男の方を見るが男はユアナの方を向いたままだった。

「あんたどこ見てんの?」

後ろから聞こえる声に女は振り返った。するとそこには金属を持ったシャナが立っていた。

「どうやったか分からないけど、それ返してくれる?」
女は冷静に言い返した。女とシャナの動きに気づいた男は、ユアナを腕に抱えナイフを突きつけたまま女の横に立った。
「渡せ。…殺るぞ。」
男はユアナの首にナイフを押し付けた。

「わ、渡してよ。そんなもの。私まだ、死にたくない。」
ユアナの目に涙が滲んでいた。

「大丈夫。君は死なせないし、これも渡さない。」
シャナは目を閉じると何かを唱え始めた。

「風よ、我に一時の力を与えたまえ。『ウインド』」
シャナが目を開くと狭い路地に突風が吹き込んだ。女は吹き飛び、男は座り込み何とか堪えていた。

風が止むと、ユアナは何故かシャナに抱えられていた。それにここは町外れのようだ。
「ごめんね、危ない目に会わせて。ガーディアン失格だなー。」

「どうしてここに?」
ユアナは戸惑っていた。

「いろいろ説明しなきゃいけないね。僕らのことやあの二人組みのこと。それにウィッチメタルのこと。」
「ウィッチメタル?」
ユアナはさらに戸惑いの顔を見せた。

「とりあえず、今は僕を信じてくれる?」
今起こったことにまだ実感を持てないユアナだったが小さく頷いた。
「ありがとう。」

世界は動き始めた。




☆MAGIC2☆

黒装束の二人を振り切った僕らはユアナのおじいさんのいる町外れの家へ行った。
町外れと言ってもセレーヌタウンからロドリア橋を越えて、川沿いを北へ一マイルほど行ったところだった。

「ただいま。」
ユアナが扉を開けると一人の老人がイスに座り何かの本を読んでいた。

「おかえりユアナ。おや?珍しいな。ユアナが人を連れてくるなんて。友達かい?」
ユアナは慌ててシャナを紹介した。

「あのね、さっき町で変な人達から助けてもらったの。シャナって言うの。」
「あっ、僕はシャナ・レオールと言います。初めまして。」

シャナが挨拶をすると老人はイスから立ち上がった。
「ありがとう、孫を助けてもらって。私はミゼル・ローゼンハイム。よろしく。」
そう言うとミゼルは、またイスに座り本を読み始めた。

(ローゼンハイム?あれ?どこかで・・・)
シャナはその名前がとても気になったが思い出せないでいた。
「どうしたの?えっと、シャナ?」

「ああ、何でもないよ。」
シャナは首を横に振った。

「ごめんね。おじいちゃん本を読んでるときは夢中になっちゃうから。奥の部屋に行こう。」
僕はユアナの後を付いて奥の部屋に入った。テーブルにイスが二つ、他にも所々に物はあるがサッパリとした部屋だった。

「狭いでしょ?」
「そんなことないよ。これくらいが丁度いいと思うよ。広いと疲れるだけだからさ。特に、ベルゼランドルとかは……」

「ベルゼランドル?」
ユアナは不思議そうな顔をした。

「ごめん、気にしないで。」
(つい余計なことまで言うところだった。)
「座って話そう。」
ユアナと僕はイスに座ると、一つずつ話を始めた。

「とりあえず僕が何者か説明した方がいいね。」

ユアナは「うん。」と返事をした。

「僕は、いや、僕らはと言ったほうがいいのかな。」
「僕ら?」
「そう、僕らはセフィート王国の極秘機関ウィッチガーディアンズ。現存する魔女の保護とウィッチメタルの回収が僕らの仕事なんだ。」

ユアナが話しに割り込む。
「セフィート王国ってこの国の首都でしょ?その国が何で魔女の保護やウィッチメタルとかを探してるの?」

シャナの顔が強張る。
「さっき黒装束の奴らにあったよね?奴らはメフィストという組織で、魔女の抹殺と僕らと同じようにウィッチメタルの回収をしているんだ。簡単に言えば、僕らとは正反対の組織だと思ってもらえればいい。」

ユアナは口を押さえてた。
「信じられない!そんなことする人達がいるなんて。」

シャナは話を続けた。
「僕らはあることのために魔女の力を必要とし、奴らはウィッチメタルを確立するために魔女を殺しているんだ。」

ユアナは疑問を持った。
「どういうこと?ウィッチメタルの確立って。」

シャナは順を追って説明した。
「もともと魔術を使えるのは魔女だけなんだ。だけど今から数百年前、魔女は特殊な金属を作り出した。それがウィッチメタル。この金属を使えば魔女じゃなくても魔術を使えるようになるんだ。だけどその結果、国は滅び、魔女達にも被害を与えた。」

ユアナは頷いた。

「今の話の中に、実はある組織が関わっていたんだ。」
「もしかしてそれがメフィスト?」
ユアナは勘がいいようだ。

「正解。メフィストは魔女がいた時代からすでに存在していたんだ。僕も詳しくは知らないんだけど、メフィストという組織は裏で世界を支配していたらしい。そして奴らは組織の力を絶対的なものにするために、ウィッチメタルに目をつけた。」

「それでどうなったの?」

「力を手に入れたメフィストは、世界の三分の一を自分たちのものにした。それを知った魔女たちは責任を感じ、ウィッチメタルの回収を始めたんだ。」

「それが争いの原因で、魔女がいなくなった理由なの?」

「そうだよ。ユアナは本当勘がいいね。」
ユアナは悲しそうな顔で下を俯いてしまった。シャナはイスから立ちあがり窓際へ行った。
見上げる空は青く、太陽の光がやさしく降り注ぐ。

「もう分かったよね。確立がどういう意味か。」

ゆっくりとユアナが口を開いた。
「魔女の存在が邪魔になったんでしょ?彼女たちがいなければウィッチメタルの力で自分たちが一番になれるから。」

「!!」

突然シャナが窓際から離れユアナに駆け寄った。
「ユアナ!ミゼルさんと一緒に早くどこかに隠れて!奴らに感づかれた。どうしてこんなに早く?」

シャナは顔色を変え入り口のドアへ向かおうと部屋を出ると、そこにはミゼルが立っていた。
「話は聞いていたよ。その左腕の腕輪はたしか…ファナエルの腕輪だね?」
「どうしてこれを?」

ミゼルは読んでいた本をペラペラとめくると、一枚の紙を取り出した。
「その言葉を唱えなさい。君の力でもセフィートまで飛べるようにしておいた。孫を頼んだよ。」

後ろにいたユアナがミゼルの前に立った。
「おじいちゃん、これどういうこと?ちゃんと説明してよ!」

「すまないなユアナ。お前にはたくさん隠し事をしてしまったね。それは全部、セフィートに行けば分かる。彼と共に行きなさい。私の役目は今日で終わりだ。」

「どうして?どうして?」
ユアナはミゼルの手を掴むと強く握り揺すった。

「コン、コン」ドアを叩く音が聞こえる。

「奴らは私が食い止める。早く裏口へ。」
シャナは留まろうとするミゼル避け入り口のドアへ向かおうとしたが、ミゼルはユアナを払うとシャナの手を掴んだ。その手は老人とは思えないほどの強い力に、シャナはミゼルのほうに向き直った。

「あなたは知っているんですよね。この腕輪のことを。なら僕に任せてください。」
ミゼルの目は強い力で満ちている。

「君はまだ、私が誰か分からないのかね。私は……」
ミゼルは意外な言葉を発した。

「…グジエル・ローゼンハイム。分かったら行きなさい。」
シャナは驚きと同時に、科せられた使命の重さを改めて感じさせられた。

「……ユアナ…行こう…」
シャナはユアナの手を引き裏口へ向かった。抵抗するユアナを強く抑え裏口のドアを開けた。

「おじいちゃん!!、おじいちゃん!!!」
「ごめんねユアナ。これが僕の使命なんだ。」
シャナの言葉はユアナに届いていないようだった。

「風よ。我に一時の……」
飛び立とうとするユアナにミゼルはやさしく微笑みかけた。
(幸運を祈ります。天炎のグジエル様。)
「『ウインドスピリット・オーバースカイ』」

空に消える光は切なく
歯車は回り始める
全ては宿命の名のもとに…




☆MAGIC3☆

魔術には四つの属性魔術と三つの天聖魔術がある。属性魔術とは炎、風、水、地を基本とし初等、中等、高等の三つの等級に分かれる。天聖魔術とは属性魔術とは違い等級は存在せず、体、命、光の三つに分かれ、特定の魔女にしか扱うことが出来ないのである。

(グジエル様の力を借りているとはいえ、体力の消耗が激しすぎる。高等魔術は僕が扱うにはまだ早かったのか……)

「シャナ、シャナ?」
ユアナの声で目が覚めると赤く染まった空が見えた。

シャナは仰向けの体を起こしユアナのほうを向いた。泣いたせいなのかユアナの目が赤くなっている。辺りを見渡すと整備されていない道と目の前に深い森が広がっていた。

「大丈夫?ずっと起きないから心配してたんだよ」
「ごめんね心配かけて。強い魔術を使うと体力の消耗も激しいから。でもミゼルさん、いや、グジエル様の力がなかったらここまで来れなかったよ」

ここはセフィート王国領の一番端にあるディレブの森の入り口だった。セフィート王国から南に位置するビクトリアのセレーヌタウンから三十マイルもの距離を一気に飛び越えたのである。

「シャナ」
ユアナはシャナの左腕の腕輪を見つめた。銀色に光る腕輪にはグリーンの丸い宝石のような物と何かの文字が刻まれている。

「どうしてシャナは魔術が使えるの?その腕輪のせい?」

シャナも腕輪を見つめた。
「そう、この腕輪。ウィッチメタルから作られた物なんだ。でもこれがあるからって誰でも魔術が使えるわけじゃないんだよ」

「誰でもじゃないの?」
「僕はこの腕輪の適合者なんだ」

シャナは腕輪を外すとそれをユアナに渡した。すると何故か宝石のような物からグリーンの色が消え灰色へと変わり、銀色だった腕輪自体も黒く変色した。

「く、黒くなっちゃった!?」
「適合者じゃない人が触ると、色が変わるんだ」

ユアナは全体を眺めるとシャナへ腕輪を返した。
「不思議だね」
ユアナからシャナへ腕輪が渡るとゆっくりと色を取り戻した。

「あのね、もう一つ聞きたいことがあるの」
ユアナはシャナに聞きにくそうに喋りだした。

「シャナは…その…おじいちゃんを知っていたの?」
「初めに名前を聞いたとき、ローゼンハイムって名前が気にはなっていたんだ。」

ユアナのおじいさんと名乗るその人は、かつてウィッチガーディアンズ創設者の一人だった。

「ユアナのおじいさんは僕のいるウィッチガーディアンズを創った人なんだ」
「どうしておじいちゃんが?」

続けて起こる出来事にユアナを納得させるほどの言葉が見つからなかった。ここで知っていることを全て話しても、逆にユアナを混乱させることになると思ったからだ。

「おじいさんのことはセフィートに着いてからにしよう。今ここで話してもユアナにうまく教えてあげれないから」

分かってはいたがユアナは納得しきらない顔をしていた。
「うん…分かった」

セフィートまではまだ十マイル近くの距離がある。使い慣れない高等魔術を使ったため当分魔術は使えない。それに日が暮れる中、森に入るのも危険だった。

「ここから少し行ったところに村があるんだ。今日はそこで休もう。今から森に入るのは危険だから」
ユアナとシャナは立ち上がると、側を通っている土と砂利の道を森とは逆の方向に歩き始めた。

数分歩くとノマの村が見えてきた。村とはいっても住人は多く、木造の家が立ち並ぶ。村の入り口に近づくと、金属製の槍を持った二人の長身の男が道の両脇に立っている。男たちは槍をクロスさせ誰一人通さないという顔で僕たちを睨みつけてくる。

「悪いが村へは入れてやれない。帰ってくれ」
「何かあったんですか?」

無言のまま男たちが詰め寄ってくる。シャナの身長が五フィート九インチなのに対し、彼らの六フィートを超えるだろう高さから見下ろされるのには威圧感がある。僕より小さいユアナが子供のように見えた。

「お前らに説明することは何もない!帰れ!」
日が落ちて辺りが薄暗くなり奥に見えるそれぞれの家に明かりが灯っていく。

ユアナが不安そうに僕の目を見つめる。
「シャナ、どうするの?」

シャナはユアナに微笑みかけると、革のカバンから装飾の施された筒を取り出した。薄暗い中でも赤や青の色の美しさが際立っている。筒を開けると質の良い紙を取り出し、男たちに差し出した。

「何だ?これは?」
一人の男がそれを広げると信じられない文字が書かれていた。

「セフィート国王のサイン!?お前何者だ?」
「私はセフィート王国の使いの者です。王国に帰る途中だったのですが今から森に入るわけにもいかず、どうか村に入れてはもらえないでしょうか?」

二人の男は顔を見合わせ道を開けた。
「国王の使いなら仕方がない。さあ、入れ!」

男から紙を受け取るとシャナとユアナは村の中心にある『F&S』という看板の建物へ入った。『F&S』とはセフィート王国領内の町や村ならばどこにでもある食事と宿泊のできる施設である。

木製のドアを引くとドアに付いたベルが綺麗な音を立てた。丸いテーブルが五つに置いてあり、正面には長いカウンターがある。客はまばらで村の人や旅人らしき人、それにシャナの身長ぐらいある剣を持った男がそれぞれテーブルについている。シャナは剣を持った男と一瞬目が合った。男はユアナと同じ金髪で、長さはユアナよりも少し短いくらいだが肩ぐらいまではある。黒いコートで左目を黒い眼帯が覆っている。村の前で会った男たちと同じぐらいの長身のようだ。嫌な胸騒ぎがしたがすぐさまカウンターへ向かい空き部屋の確認をした。

「すいません、部屋を二つ借りたいのですが空はありますか?」
店主は顔をしかめた。

「悪いねぇ、一部屋しか空が無いんだよ。それでもいいなら用意出来るけど」
シャナはすぐに返事をした。

「お願いします。それと二人分の食事を」
「それじゃあ二階のスターチスの部屋へ。料金は先払いだけどいいかい?」

シャナは料金を支払うとユアナと二階にある部屋へ行った。軋む階段を上り八ヤードほどある廊下の中ほどにスターチスと書かれた部屋があった。中に入るとベットが一つとテーブルセットが一つ、そして四角い窓の側に一輪の花が飾ってある。

「僕はドアの前で眠るから、ユアナはここ使って」
「でもシャナのほうが……」
遠慮するユアナをベットに座らせ、シャナはイスを持ってきてユアナの前に座った。

「ユアナの髪綺麗だね。見てよこれ、真っ黒でしょ?」
シャナは前髪を引っ張り自分の髪を見た。「ドルーア生まれなの?」

ユアナは俯いたまま何も喋らない。一時の沈黙をはさんでユアナが口を開いた。
「教えてほしいことがあるの」

「今僕が話せることなら」
「私は…私は一体何なの?変な奴らに狙われるし、それにおじいちゃんのことだって」

シャナは服の中からユアナの持っていた金属の塊を取り出しユアナに渡した。金属は全ての辺が二インチの正方体で、六つの面のそれぞれに何行かの文字が刻まれている。

「君はウィッチの名を継ぐ魔女。しかもレヴトーナ家の血筋といえば魔女の中でも最も力を持つことで知られている。そしてその金属…」
ユアナは金属の塊に目を落とした。

シャナは続ける。
「それは手を加えられる前のウィッチメタル。ウィッチメタルの生成及び成形は、魔女でなければできないんだ。その形で持っているなんて正統な魔女でなければ在りえないんだよ」

「私が…魔女?そんなわけないよ。だって魔術なんか使えないし、これは元々おじいちゃんの物だし」

シャナは首を横に振った。
「違うよ。それはユアナの物だよ。その文字、何て刻まれているか分かる?」
「分からないよ。見たことない文字だから」

シャナはユアナの手からウィッチメタルを取ると一つの面を指差した。
「これは魔女文字というんだ」

シャナは自分の腕輪を指差した。
「この腕輪に刻んである物もそれなんだ。文字というよりか暗号に近いんだけどね。ここに『愛する我が娘 ユアナへ』と書いてあるんだ。これでも信じられない?」

ユアナは驚き戸惑った。
「うそ…でしょ?お父さんとお母さんが私に?」

「たぶんね。その隣に『レイス・ローゼンハイム』、『リーネ・レヴトーナ』って書いてあるんだ」

ユアナの表情が急に暗くなった。
「私、お父さんとお母さんを知らないの。気づいたときにはおじいちゃんと二人きりだったから」

シャナはウィッチメタルをユアナの手へ返した。
「ごめん、何も知らないで」
「いいの、気にしてないから。私…本当に魔女なんだね…じゃあ、またあいつらが?」

「これは僕の勝手な想像なんだけど…」
シャナはあることを想像していた。

「たしかに狙われていることには間違いないけど、それは『ウィッチメタル』がと言った方がいいのかもしれない。ユアナが魔女だということには気づいてないと思うんだ」
「どうしてそう思うの?」

「これもだぶんなんだけど…」
シャナはさらに想像をめぐらせた。
「ユアナのおじいさんが、何でウィッチメタルを売ろうとしていたのか考えていたんだ」

「だってそれは、家が無くなっちゃうから…」
シャナが割り込む。
「家が無くなるっていうのは嘘だったと思うんだ。ウィッチメタルを手放すための理由に使っただけなんじゃないかって。そうすればユアナを危険から遠ざけ、それに魔女だと悟られにくくなる」

ユアナは落胆した。シャナの想像が本当ならば自分を守るために嘘をついてくれたのだと。

「?」
外がなにやら騒がしいようだ。

シャナは外の様子を見ようとイスから立ち上がると、それと同時にドアがノックされた。
とても気になったが先にドアの前へ行きノブに手をかけようとしたときだった。

「光?」
光の筋がドアの左上から右下へ、右から左へと様々な方向から無数に流れた。危険を感じたシャナは後ろへ引き、ユアナを守るように前へ立った。次の瞬間ドアが粉々になり崩れ落ち、そこに姿を現したのは切っ先をこちらへ向けた金髪の男だった。

「女とウィッチメタルを渡せ」
男は左目の眼帯を外した。

「まさか……」
シャナが見た男の左目は銀色の眼球に瞳は金色に光っている。

「ウィッチ…メタル?」
逃げ場がないシャナとユアナに男が迫ってくる。男の持つ剣がシャナの首に突き立てられた。

「俺たちから逃れられると思っていたか?」
「全部…知っていたのか?」

「聞いたんだ。老いぼれにな」
男はコートから何かを取り出し床に投げ捨てた。それはグジエルが持っていた本だった。
それをみたユアナは床へ崩れ落ちた。

シャナは拳を握り締め歯を食いしばった。
「お前らは絶対に許さない!!」

シャナの腕輪が強い光を放ち始めた。


強さを持つ光は、
新たな力を呼び覚ます。
今、覚醒の時
2005/05/13(Fri)00:40:47 公開 / 柊 レン
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