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『むだい』 作者:えり / 未分類 未分類
全角1662文字
容量3324 bytes
原稿用紙約7枚
ヤマ(本屋のかわいいひと、歳はしらない)
私(ヤマがすき きゅっとせつなくなり、
  しゅわっと溶けるサイダーのような恋)



学校の帰り、小奇麗でおしゃれかつしんぷるな本屋に寄る
地元でも有名で、中で本まで読めてお茶もつく
そこにいる店員はひとりだけ店員であって、店長である
忙しくかけまわり、忙しくオーダをきいて奥へ消えたりあらわれたり
その様子をじーっとみてるわたし。
さっき頼んだチェリーソーダと手に持つ読みかけの江國香織のウエハースの椅子


いちどだけ、どしゃぶった雨の日、(雨でも人は多い)
がらんと店内 しゃらんとジャズが静かになって
ふわふわのウェーブの女の人が奥から出てきて微笑んだ
いらっしゃいませ。ってね。
一応カフェでも本屋でもあるから、いらっしゃいませ。


「ほとんどの日にきてくれているね」
にこりと微笑む かわいい。顔があつくなる
そう、まいにち来てた
まいにち、チェリーソーダを頼み、ウエハースの椅子を苦労し読んでた


「おねえさん、ヤマってゆうんだ」
名札に「ヤマ」とだけ書いてある の横にハートのシール
ええ、そうよ。ヤマ、よ。また微笑んだ。
ヤマにだけ、わたしのなまえを耳元でおしえてあげた。
ヤマはありがとう。といった。そしてチェリーソーダをただでくれた


ヤマとわたしは、それからなかよくなった
漫画のようなすすみっぷり
展開がはやいけれど、きにしない。
女がおんなを好き。ただの憧れと勘違いしているかもしれない



「ヤマ。」にちようび、忙しい昼。
ヤマに奥へ入らせてもらう事を許可された。と、く、べ、つ?
うれしくなって、にんまり。
ヤマはコーヒーをいれたり、パンを焼いたり大忙し。
わたしがメニューサミシイなんて言わなければと思ったけど
ヤマは感謝してると笑った。
そういえば、ヤマは、わたしに、笑った顔しかみせてくれなかった
あたり、まえなんだろうか。


どしゃぶりの日、また店内はガランとしてた
ひとりの男がチェリーソーダを飲んでいて
わたしの口元がひきつった。

その日の、ヤマはうれしそうだった。



「たのしそうだね」


「ええ。とっても」


「あの人が気になるの?かれしなの?もしや旦那?」


奥で音楽を変えるわたし、ヤマは横にすわり
ふあふあのウェーブをさわりながら照れくさそうに
「恋人。」とだけこたえた
いままで みたことのない、表情。
わたしは ただの客であって、ただの客で、あ、っ、て。



「じゃあ、わたし、邪魔だよね」


「そんなことないわよ」


当たり前の反応だろう、けど、まだ居たかった
邪魔してやりたかった
この気持ちが 恋だと気付いた 憧れなんかじゃない


「やま」
食器洗いに取り組む、ヤマ
わたしのもってきたマイナーなバンドの音楽が
店内をみたしてゆく
やまは、少し振り向いて ん?というと
また食器の方を向いた


「わたし、やまがすきだよ」
すべてしらなくったって


「あはは。ありがとう。
わたしも、そうねえ。あなたの不思議なとこが好きだわ
そしてかわいいところ。妹のようで、一緒に居て楽しい」
笑ってから水をキュと止めて
わたしの横にまた座って ヤマはわたしの方を向き驚いた


「どうしたの!?」
ボロボロボロボロボロボロ
おちていく
ヤマの声がなんだか、いたい


「こまらすつもりじゃない、でも
わたしは、ヤマがすきだよ。」
ヤマは困った顔をした。
それから、わたしをだきしめた。
ほそいなーて言うと笑った。
そして
終わった。なぜか晴れ晴れしている
でも向こうに曇りが少しみえている


ヤマと、それっきり、話をしてない
ウエハースの椅子は
ヤマと話すのに夢中で読みきれていないし
そして まだわたしは本屋に通っている
いつも頼むのはチェリーソーダ
今は店員が2人いてヤマをいれると3人
チェリーソーダはヤマが持ってくることは、なかった。
「恋人。」といった人もたまに見た
ヤマはうれしそうだった。
この気持ちは、ただの憧れだと言い聞かす事で
わたしは落ち着いた
ウエハースの椅子が全て読み終わったら、


もうここにはこない。
2005/02/25(Fri)09:57:09 公開 / えり
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