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『走る男 【読み切り】』 作者:rathi / 未分類 未分類
全角2028文字
容量4056 bytes
原稿用紙約6.6枚

 俺は今、走っている。

 走る。走る。ただひたすらに、がむしゃらに、しゃかりきに走る。
 息も絶え絶えで、膝はがくがくで、腕はもう肩より上には上がらなくても走る。
 背広で、革靴で、最悪な条件を満たして、時速四キロというまあまあのペースを保ちながら走り続ける。
 なんで俺が走らなくてはならないだろう。という自問自答は、三桁を越した辺りで数えるのを止めた。というより、数えられなくなった。
 部長の馬鹿。部長のアホ。部長なんか死んでしまえ。部長なんか豆腐の角にぶつけて死ね。
 罵詈雑言を心の中で唱え続ける。空しい抵抗だと知りながらも。

――じゃ、そういうことで頑張ってくれ。

 部長の糞ムカツク笑顔と、嫌味にしか聞こえない労いの言葉を思い出した。
 身体の奥底が熱くなり、時速五キロまでペースが上がる。
 だがそれも長くは続かず、逆にオーバーペースのせいで時速三キロまで落ち込んだ。
 こんな企画を考えた奴はアホだ。屑だ。死んでしまえ。馬に蹴られて死んでしまえ。
 重大な話があるからって、意気揚々と会議室に言ったら糞ムカツク部長が一人だけが居て、

――じゃ、君。師走だから走ってきてよ。今度の会議で決まったんだ。

だとさ。
 何の脈絡も無しに、こっちの気分などお構いなしに、準備させる時間すらくれず、企画はスタートした。
 スタート地点は会議室から。実に、馬鹿げている。こんな馬鹿げている企画、止められるならばさっさと止めてしまいたい。
 だが、足を止めた時点で俺は『クビ』だ。リスとトラだ。負け犬人生まっしぐらだ。

――じゃ、ゴールしたら賞金をあげるよ。二百万円だよ。二百万円。

 付け加えるように、ゴールしたら平社員から課長にランク上げしてあげる、とも言っていた。
 つまり、いわばこれは頭なんぞ一切使わない昇級試験。文化系の俺に全く相応しくない企画というワケだ。
 ふざけている。馬鹿げている。糞ムカツクからゴールして、二百万をもぎ取ってやる。

 だから俺は走る。走る。ただひたすらに、野を越え山を越え、三日三晩ぶっ通しで。
 
 ギネスに載るんじゃないだろうか。なんて思ったりもしたが、昔テレビで見たときはもっと走っていた気がする。
 嗚呼、水が欲しい。時折降る雨では足りなさすぎる。
 人間の身体の六十%〜七十%は水で出来ているんだ。今の俺は四十%あるかどうかすら疑わしい。
 水。水。水。誰でも良いから水をくれ。このままでは水分が全て蒸発してミイラになる。
 公園に差し掛かったとき、俺は天使を見た。いや、お迎えが来たとかそういうのじゃない。噴水があったんだ。
 迷うことなく、噴水に突撃していく。
 水を飲もうとするが、ホースを口の中に突っ込まれ、最大出力で噴出されているような気分になる。
 それでもなんとか飲む。飲まなければ死んでしまうのだから。
 嗚呼、潤った。人間は水なしでは生きていけないのだな、と実感した。

 満たされた俺は走る。走る。しゃかりきに、野犬に追いかけられながら、合計六日間ぶっ通しで。

 ランナーズハイ、という言葉がある。これは、走っていると脳内ドルフィンが分泌され、疲れが一切なくなる、という現象だ。
 いつになったら来るのだろうな。このランナーズハイ、ってのは。俺の脳内ドルフィンは渇いているのか。ちっとも分泌される様子すら見せないでいやがる。
 あ、そうか。昔、俺はマラソンの時に楽しいことを考えながら走り、疲れを紛らわしていた。それを今応用すれば。
 なにかないだろうか。楽しいこと。面白いこと。
 駄目だ。なんにも思いつかん。脳に酸素が足りない。タリナーイ。酸素欠乏症デースヨー。
 駄目だ。いろんな意味で楽しいが、駄目だ。あっちの世界へゴールは勘弁願いたい。
 嗚呼、なんで俺は走っているんだろうな。賞金の為なのか。あの会社に居たいからなのか。あの部長が糞ムカツクからなのか。
 二百万円は欲しいが、命を賭けてまで欲しいとは思わない。
 嫌味臭いヤツらばかりの会社に、こうまでして居たいとは思わない。
 部長が糞ムカツクなら、とっととこんな企画止めてしまえば良い。
 もう、分からん。
 分からなくなったから、止まろう。

 俺は止まった。徐々にスピードを落とし、完全に歩みを止めた。

 辺りは薄暗く、空を見上げると、もう既に一番星が出ていた。
 これで俺は会社をクビになった。リスとトラだ。負け犬組だ。
 でも、気分は晴れやかだった。
 これで良い。これで。
 晴れやかな気分に浸っていると、トラックが俺の前に止まり、運転手が声を掛けてきた。

――あんちゃん、背広がズタボロだけど、どうした。

 走っていたらこうなりました、と素直に答えると、運転手は手を叩きながら爆笑した。
 ついでに、目的地まで乗せていって下さい、とお願いすると、親指を立てて気持ち良く了承してくれた。 

――ところで、目的地ってどこなんだ。







 「……あれ?」


2005/01/15(Sat)14:10:24 公開 / rathi
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■作者からのメッセージ
はい、何の考えも無しにつらつらと書いてみました。
ストーリーもへったくれもありません。
単なるお馬鹿小説です。
ではでは
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