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『恋しくて惨殺 〜第1,2話〜』 作者:YT / 未分類 未分類
全角2870文字
容量5740 bytes
原稿用紙約9.75枚


〜1.道中懺悔のプロローグ〜


懺悔の歌でも聞かせてもらいましょうか、公麿さん。おらぁ半年ぐらいあんたのせいで夜も眠れぬ日々を過ごして来たんだ。そりゃあもう苦しいなんてもんじゃないよ。夜仕事に疲れて寝床に入ってしばらくするとあんたの殺気に満ちたその憎々しい顔がパッて出てきて、私の顔を吸うんです。頬の辺りを吸うんです。吸引力がどうこうだとかそんなもんはどうだっていいが、痛くて痛くて。そりゃあもう苦しいってなもんじゃないよ。そんな夜が半年ぐれぇ続いてみなさい?ほら見ろ、ごらんの様にげっそり痩せほそっちまいましたよ。最近はぁ女房の飯も喉を通らなんし。これもあれもそれもどれもみんな公麿さん、あんたが悪いんだよ!あんなもの目の前で見せられて、その上そのなんというか、赤い…その生々しい赤い血しぶきを体につけられたら、もう、それは、なんというか、耐えがたいものなんですよ!え!わかります?わかります?わかるのか?あ!?わかったら返事をしろってんだこの穀潰しが!!死ね死ね死ね死ね!!死ね!!!



惨殺。



血しぶき。



栗の花。



わたし公麿夢の騎士、道中懺悔でございます。



惨殺。



けたたましく鳴り響くドラッグストアのBGMがやかましい夏のセンター街。センター害。害、害、害、害、害虫だらけ。見渡す限り害虫だらけ。うごめく害虫私は蝶。こいつら見下して高貴に羽ばたくのよ。「はい、こんにちわー!ちょっとお話いいでちゅかー?楽して儲かるお仕事のお話だよー。大人のお仕事なんだけどさ、最近はさ、君みたいな清純そうな子がすごく人気あってさ、え?俺?大丈夫だよ。安心して。君みたいな高校生ぐらいのフツーの女の子もたくさん入会してるよ。怖がらなくっていいよ!それにしてもかわいいなぁ〜。学校どこ?その制服はぁ〜鴛女?鴛女でしょ?え?もしかしたら違った〜!?」

センター街の中央。タワレコの前。男一人私に声かける。醜い男。ブ男。脱色して痛んだ髪から腐臭がする。殺された鶏みたいな腐臭がする。醜い。ウザい。



惨殺。



血しぶき。



栗の花。



鶏男ふりきり、再び歩く。男苦虫かみ潰す。

しばらく歩いて駅到着。平日なのに人がごった煮。人間の群れ、鍋にして食う。美味もあれば苦虫あり。吐き出す。

切符を買う。

大阪方面への切符を買う。

階段をあがってプラットホームへ。気色の悪いガラのアロハシャツを着た中年のおっさんの後ろで待つ。各駅停車の電車待つ。待つ事5分。電車到着。アロハの親父こちら見る。「お嬢ちゃんかわいいから先行きな。ん?恥ずかしがっちゃってかわいいなぁホントに〜おじちゃんマイっちゃうよ〜君、うぶなんだね?遠慮せんでええよ。さぁ早く乗りなさい。」

無視、無視、無視、無視、虫一匹。害虫一匹。



黙殺。



血しぶき。



キンチョール。



車両乗り換える。アロハ苦虫噛み殺す。

乗り込む瞬間、電車のうだる蒸気がスカートの中へ侵入。生温かい。少し快感。

電車はコットコットドッコドッコやかましく揺れながら走り出す。

本日快晴。天皇は機嫌が悪い。


〜2.恐怖の車両〜


電車に乗る、瞬間、10秒たたずに小洒落た坊主と椅子取り合戦。坊主勝つ。敗者私はドアの前、座り込む。私苦虫噛み殺す。
座席に座った勝組の輩、さも嫌らしそうな目で私見る。最近のガキはマナーがなっとらん、的な目で私見る。かったりい。かったりい。虫虫無視して私現状維持、鞄から携帯取りだしポチポチポチって現実逃避。その時だった。なんか黄色いもん私の目下立ちふざかる。やたらと黄色い気色悪い。なんやこれはとよく見れば、黄色いおばはんいきり立つ。黄ばんだシャツに黄色のパンツ。皺くちゃメガネでブルドッグ。ミクロのセンスも感じとれん。気色悪い。うっとしいと思いながらほへ〜ほへ〜って眺めると、私の虚ろ目奴の怒り目立ち往生。目頭合戦。

惨殺。


といきたいところだが、なんかおばはんモノ言いよる。
「こんなところで座り込んでたら他の人の迷惑でしょう?ここはね、電車の出入り口なの、わかる?あなた高校生?ん?ちょっと待って、あらまぁその制服鴛原女学院の生徒じゃないの?あらまぁ〜ほんとにこれまぁほんとに。私の親戚のおじさんに鴛女の教員がいるんですよ。立花先生。知ってるわよね?立花先生。」

立花といえばあの立花。あの立花じゃなくてあの立花。立花立花立花天国。そいつは私の担任だ。

「立花さんも大変ねぇ〜こんなマナーの悪い生徒を持って。かわいそうだわ。私この事立花先生に報告するからね?親戚として私にも責任がありますからね。あなた名前なんておっしゃるの?ん?なんて?聞こえない。さぁ早くおっしゃりなさい。」
私虚ろ目馬耳東風。女の言い分訳わからん。何が親戚としての責任だこのしょんべんババァ。知った事ない、私虚ろ目馬耳東風。

「あら?おっしゃらないの?言わないの?なんなら強行手段に出るしかないわね。」

するとおばはん鞄から携帯電話を取り出して、ポチポチポチってモバイルカメラを起動した。なんやおばはん気違いか。私仰天後ろたじろく。

「こうやって写メール、っていうの?写真を撮って証拠として立花さんに送るわ。」

カシャッ、モバイルカメラのシャター音、私の両耳一気につんざく。

なんやおばはん気違いか。堪忍袋の緒が切れた。私、懐の日本刀一気に抜いて斬りかかる。

惨殺。



血しぶき。



栗の花。



やった、殺った。やった、殺った。やった、殺った。

死体見たくないからしばらくお目々を閉じていた。

ところが私、目を見開けば、瞬間体が凍りつく。斬ったと思った。斬ったと思った。確かに斬った。ところが倒れた死体見てみれば、そいつは小洒落た坊主じゃねぇか。

「ふふふ、身代わりとしてこの坊屋に死んでもらったわ。それにしてもあんた可愛らしい顔して物騒なモノ持ち歩いてんじゃないの?その剣は昭和の名匠柳八兵衛の虎鉄二号ね。けっこうな刀ね。4段階に折り畳める携帯用日本刀の中でも一級品。そんじゃそこらの女子高生が手に入れる事のできるシロモノじゃないわ。あんた何者?」

あんたの方こそ何者だこの糞ババァが。訳わからん。お前は忍者かしょんべん野郎め。それにしても人が死んでるってのにこの電車の人々は人っ子一人驚かない。眠そうな顔して文庫本読んでるサラリーサラリーサラリーマン。友達同士で談話しとる頭悪そうな女子大生っぽい女達。手摺りにつかまってるじいさんにいたってわ、気持ちよさげに眠っとる。鼻息ぐぅぐぅ鳴らしとる。みんな気違い狂ってる。


「あら、乗客の様子が気になるようね。当たり前じゃない、みんな見慣れてるのよ人っ子一人殺されるぐらい。この世の中では日常茶飯事。それぐらいあなたわかってるでしょ?まぁそんな事はどうでもいいわ。久しぶりに獲物を見付けた。血の気がたぎるわーオッホッホッホ!」

あーもう最悪気分わるい。家に帰ってテレビ見たい。マジありえないくらいめんどくさい。

どうやらほんとに天皇は機嫌が悪い。

(続く)

2005/01/07(Fri)11:43:20 公開 / YT
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■作者からのメッセージ
さぁお待ちかね(誰も待ってねぇか)の第二話です。これまぁほんとにあれまぁほんとに破天荒なストーリーです。なんかおばはんと戦うことになったし笑
次回もお楽しみに(してください)
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