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『Memory of bell』 作者:Blaze / 未分類 未分類
全角2259文字
容量4518 bytes
原稿用紙約8.2枚
「あー、もう朝かー、さみー」
月曜の朝はやけに早く感じる。
そしてこの脱力感がなんとも言えない。
今日からまた、一週間が始まる。
学ランを着て一階に降りていく。階段が冷たい。
「スープにする?コーヒーにする?」
おなじみの母さんの質問。
「コーヒー。」
やはりコーヒーがいい。多分頭が冴えるから。

鞄に弁当を入れて家を後にする。
家の前の田んぼには霜が降り、その光景がさらに寒さを感じさせてくれる。
通りに出るといつもの風景。
白い襟のセーラー服。僕と同じ学ラン。
その中に歩いている女の子がいた。
徒歩で通学する生徒は珍しい。
学校では僕ぐらいしかいない。
ほとんどの生徒は近所に住んでいても自転車通学だ。
僕は部活に入っていないから運動のため徒歩で通学している。
前を歩くセーラー服を眺めながら歩いていると、突然その娘が後ろを向いた。
目が合った。
彼女はこちらまで歩いてくると、
「私、転校してきたんだけど、学校まで一緒にいいかな?」
女の子に話しかけられる事なんてあんまりなかったから、驚いた。
「うん。」
小さい声しか出なかった。恥ずかしい。
そして彼女は僕の横に並んで歩き始めた。
自分の心臓の音が聞こえてきた。
こんな状況、あまり経験したことなかったから緊張してしまった。
勿論、話かけることなんてできない。
僕はこんなに小心者だったのか。そんな事を痛感しながら歩いていると、
「あの、約束覚えてる?」
いきなりそんな質問をされて、
「え?」
こんな返事しか出なかった。なんのことだ。
「あ・・・ごめんなさい!」
彼女の頬は赤くなり、突然走りだした。
それと同時に彼女の手提げ鞄についていた鈴が鳴る。
僕はわけがわからないまま、学校に着いた。

教室はいつも通り、後ろの方で男子達がトランプ。
女子はあちこちで談笑。
僕は自分の席に鞄を置くと、男子の集まりの中に入った。
男子達はトランプをしながら、こんな話をしていた。
「今日転校生が来るらしいぞ。」
「女子?男子?」
「女子。」
「マジ?かわいい?」
「さあ。」
今日会ったあの娘に違いない。
でも、気になっていたのが、彼女が言っていた「約束」。
その事を考えながら、トランプを見ていると、担任が教室に入ってきた。
生徒達はそれぞれの席に着く。
「今日、隣のクラスに転校生が来たそうだ。こんな時期に転校なんて大変だな。」
もう大学受験が近かった。そんな時期に転校なんて確かに大変だ。
それとも就職希望だろうか。だが、自分には関係ない。
いつものように教科書を机の上に出し、ノートを開ける。

放課後、帰路に着く。
すると、今朝の女の子が前を歩いていた。
小さい体で一生懸命歩いている姿がなんだか可愛かった。
家の近くまで帰ってくると、前にいた彼女が突然しゃがみこんだ。
どうしたのだろう。落し物だろうか。
しゃがみこんでいる彼女の横を通ると、普通じゃない呼吸の音が聞こえた。
とっさに彼女の方を見ると、滝のように汗を流していて、ただ事じゃない様子だった。
「大丈夫?」
反射的に聞いた。
「あ、健一・・君。」
僕を見上げた彼女は息が絶え絶えの声で僕の名を呼んだ。
その瞬間、彼女はその場に倒れた。
「!」
僕は突然の事でどうしていいかわからなくなったが、冷静になって携帯で救急車を呼んだ。
家の近くだったので大体の住所を伝えると、しばらくして救急車が大きな音を辺りに響かせながらやって来た。
救急車の中から担架を持った人が出てきた。
小さな彼女の体は担架に乗せられ、中に運び込まれた。
僕も一緒に乗った。彼女一人だとなんだか心配だったからだ。

「健一君、はぁ、はぁ、健一く・・ん」
救急車の中で彼女は僕の名を呼び続けていた。
僕は彼女の小さな手を握っていた。
どうして僕の名を知っているのだろう。状態が良くなったら聞いてみるつもりだった。

でも、もう生きている彼女に会うことなんてなかった。

彼女は病院に着くと大急ぎで集中治療室に運び込まれた。
しばらくすると彼女の両親らしき二人がやってきた。
二人は不安な面持ちで治療室の前に立っていた。
10分ほど経ったころだろうか、中から医師が出てきて二人に何かを告げた。
二人は抱き合って泣きだした。
おそらく彼女は手遅れだったのだろう。
その後、僕は治療室から運ばれてきた彼女を見た。
なぜだろう、彼女の顔にはかすかな笑みがあった。
彼女は、可愛かった。

病院からの帰り道、辺りはすっかり暗くなっていた。
その中に光る物を見つけた。
鈴だった。これは、彼女の鞄についていた物だ。
拾い上げると、綺麗な音が鳴った。
その瞬間、僕はすべてを思い出した。

僕は、彼女を知っている。
まだ小さかった頃、幼稚園に通っていた頃だろうか。
彼女は僕の家の隣に住んでいた。
名前は美鈴。
毎日のように遊んでいた。でも、美鈴には持病があった。
病名は知らなかったが、重い病気らしい。
時々、調子が悪くて幼稚園を休む事もあった。

幼稚園を卒園後、美鈴は治療のため東京に引っ越した。
その別れ際、僕は美鈴と約束をした。
「帰ってきたら、恋人になろう。だから頑張って!」
「うん!絶対だよ!健一君。」
美鈴があの時言っていた「約束」とはこのことだろう。
どうして忘れてしまっていたのか。僕は残酷なことをした。

でも美鈴は最後、笑顔だった。
僕に会えたからだろうか。

でも、今の僕は笑顔なんかじゃない。
美鈴のことを忘れていた罪悪感と後悔でいっぱいだった。
涙が止まらない。
思い出す、彼女の赤い頬。

美しい鈴の音。

2004/12/24(Fri)02:01:13 公開 / Blaze
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