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『サンタさんとプーさん、そして私』 作者:夢幻花 彩 / 未分類 未分類
全角2194文字
容量4388 bytes
原稿用紙約8.05枚

「小百合、今年サンタさん来る?」
 言われた瞬間、洋子をつい睨んでしまった。あー、失敗。ばれてしまったではないか、自分。
「悪いんだけど、あたしプーさん外しちゃってさ」
「あ、ごめん」
 これらの会話は隠語を使って話している為、普通に考えて何を言っているのか判らないだろうから補足すると、サンタさんというのはメルヘンな発想の産物ではなく要するにただ彼氏の事を指しているだけであって、何故そこにプーさんが関係するのかというのは私達の間でプーさんをサブバックにつけていいのは彼氏持ちだけという暗黙の了解がある。つまり、
『小百合、今年のクリスマス彼氏との予定は?』
『振られたからそのことに触れるな』
といった具合になる。……説明したら余計哀しくなってきた、馬鹿だ。

そう、私はクリスマス直前に振られた。
私を振った奴は、とんでもない馬鹿だった。
それを好きだった私も含めて。

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 初雪。

 
 確か去年の初雪は、目の前にいるこの人に告られた瞬間降ってきたんだっけ。どこかのべたなドラマみたいに。大体においてこのシュチュエーションは何々ですか。いや間違いなくおかしいでしょう。
 
 なんで同じ男に振られる瞬間に告られた時と同じ状況になるの。

「俺、さ」
 私は、
「小百合にとってなんだった?」
 あなたが、
「俺思うんだよね、別に俺じゃなくても良かったんでしょ」
 大好きで、
「プーさんのそのぬいぐるみもさ、欲しい?ってきいたら彼氏のいる証明に使うって、なんだよそれ?俺がいればそれでいいんじゃないのか?」
 悔しいくらい大好きで、
「小百合のこと俺もう愛せない」
 だからこそ誤魔化していたのに、
「だってそうだろ?彼女って、そんなにその肩書きが欲しかったのか?俺は小百合を自慢の道具に使ったことなんて一度もないけど。小百合は違うんだろ?小百合は俺の彼女じゃなくても、誰の彼女でも良かったんだろ?」
 好きだってちゃんと伝え続ける自信なかったからなのに。
 こんなに好きなのに。

「……小百合?」
 今にも泣き出しそうな私を見て流石に彼が不安げになる。いっそここで泣いてしまおう。しゃくりあげながら彼に「好き」っていって、こんなプーさんなんて外して、素直になろう。そう思いながら私は彼を見上げる。
「そうだよ」
 ちゃんと伝えればいい。ちゃんと……
「私は彼女でいたかった。祐より、どっちかって言うとこのプーさんが欲しかった。プーさんをつけて、『私にはちゃんと彼氏がいます!!』って皆に知らせる、そっちの方が大切だったよ?何がいけないの?ついでにそろそろクリスマスだし、今振られちゃうとちょっと困るんだけど。クリスマスに一人って訳にいかないよね?祐は今私のこと振っちゃって大丈夫なの?あ、もう新しい彼女作ってあるとか?」
 想いとは裏腹の言葉がすらすらと流れ出す。止まらない。
「な……」
 祐、違う、私はね、
「俺は……」
 祐が背を向ける。少しずつ、白く染まりつつある世界。きっとこのまま踏み出して、新しい足跡を一つつける。それだけなのだろう。私はプーさんをサブバックからはずして、サンタさんの話を皆がするときだけ、ちょっと気まずい思いをする。クリスマス当日は彼氏のいない友達とか後輩に集合かけて、女の子だけでちくしょー、とか汚い言葉を使いながら街を歩く。本当に大した事じゃない。
 だけど。



「祐」
       
 彼が振り向く。



「ハッピークリスマス」






 大好きだよ、祐。

「……ハッピークリスマス」
 祐が最後にくれた言葉は、ただ私に言われた言葉を繰り返しただけなのに妙に気持ちを落ち着かせてくれた。さっきまでのもやもやがきれいに溶けていった。
 皆こうやって、少しずつ大人になるのかな。


ハッピークリスマス、祐。


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 本当のことを言ってしまうと、訳がわからない。今自分のおかれている状況とやらが。いやあれだけ綺麗な別れ方をしてこれですか?ちょっとカッコよかったのに。
 

 今私の隣には、彼がいる。……普通に、当たり前に。

 
 というのも彼はあの日熱を出していて、ぼぁ〜っとした意識のまま私を呼び出し、そのまま病気で理性を失ったまま私に言いたいと思っていたことを何も考えもせずに喋ったと。で、真っ赤な病人の顔で話す彼の異変に私は動揺のあまりなにも気付かなかったと。……二人そろって相当の馬鹿だ、本当に。
 という事で、見事なくらい彼氏と円満な私はどうするべきかぼんやり考えたりする。もちろんそれは今朝洋子に言ってしまった「サンタさん」と「プーさん」の事。そしてなにより祐にちゃんと素直に接するべきなのか。

 祐が私のほうを向く。一瞬どきりとしたけど、
「プレゼント何欲しい?」
 かなり平和な用件だった。ほんとに何も覚えていない。
「……い、」
「い?」
「……苺のケーキ食べたい」
「……。いやそれはクリスマスだからフツー過ぎるだろ。その他に」
 ……一緒にいて欲しいだけだけど。
「え〜っと、祐、イヴさ、バイト入ってないよね?」
「え?入ってるわけないじゃん。小百合いるんだから」
 まだぎこちないけど、少しずつ言えるようにしていこう。




  Happy X’mas!!

2004/12/23(Thu)06:57:14 公開 / 夢幻花 彩
■この作品の著作権は夢幻花 彩さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
やっちゃいました(汗
なんていうか……なんていっていいのか。
こんなです。クリスマスだからという安易さで書いてしまった馬鹿です。
そんなこんなですが、レスをクリスマスプレゼント代わりにいただけたら嬉しいと切に願っています(ちょっとまて
 それではっ☆
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