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『口笛』 作者:月海 / 未分類 未分類
全角1275文字
容量2550 bytes
原稿用紙約4.75枚
僕は中三になった今でも口笛が吹けないし、風船ガムも膨らませられない。
別にそれが出来ないからといって、不都合は無いと思っていた。
けれど、よく言われる。
「お前、そんなことも出来ないのか?」
その言葉を聞くたびに、無用な劣等感を感じた。
勉強も運動も、人並みに出来る。
けれど、口笛が吹けない。ガムが膨らませられない。
きっとそれが出来ないのは、自分が生きることに不器用だからなんだろう、と大人ぶってみたりした。

 校内合唱コンクールのクラス曲目で、皆が口笛でリズムを取るパートがあった。
当然僕はそのパートですることが無く、その事が影響して歌もロクに歌わなかった。
口笛が吹けないという失態を、歌で補うつもりは毛頭なかった。

 コンクールの当日、隣の男子が休み、代わりに女子が隣になった。
あまりクラスメイトとは喋らない方なので、女子の名前など記憶していない。
僕のクラスの番になった。
前奏が終わり、歌声が響く中、口パクをしながら周りの様子を伺っていた。
やる気のある者がほとんどのようだった。
例のパートがきた。
僕は黙る。
口笛の音が聞こえる。
僕とその隣の空間以外から。
隣を見る。
初めてその女子の顔を見た。
視線が重なり、彼女は笑った。
「私も吹けないの」
彼女が僕に向けたはじめの言葉。

 僕と同様あまり目立たない娘だった。
だからなのだろう。
二人で屋上へ行っても、ひやかす者は誰もいなかった。
だからなのだろう。
付き合ってるという感覚もあまりしなかった。

 屋上で弁当を食べながら、彼女に聞いた事がある。
「風船ガム、膨らませられる?」
彼女は笑った。
少し淋しい感じがした。

 彼女と行くのは、大抵が昼休みの屋上だった。
付き合い始めてから一ヶ月程経って、初めて二人で放課後の屋上に行った。

 夕焼けの色が景色を染めていた。
赤い空。
赤い街。
赤い川。
赤い山。
その景色は僕にある場面を想像させた。
小説に出てくる様なワンシーン。
夕焼けの屋上。
とても口笛が似合う場面。
とても自然なタイミングで、
口笛の音は僕の隣から聞こえてきた。
へたくそだけど、ちゃんと吹けていた。
僕は黙って聞いていた。
やがて、別れの歌は止んだ。
「私ね昨日ようやく吹けるようになったの」
彼女が僕に向けたおわりの言葉に、
「僕もね、昨日ようやくガムを膨らませられたよ。大きくなりすぎて割れたけどね」
僕はこう返した。
彼女はわらった。

 彼女がどこの高校に行ったのかは知らない。
僕はごくごく平凡なところへ進学した。

 中三のあの日。
彼女がいなくなった後屋上で、僕は口笛を吹くことができた。
彼女はああ言ったけど、きっとあの日初めて吹いたに違いない。
あの小説の一ページの様な雰囲気の時間の中でなら、きっと何だってできた。
吹けない口笛を吹くことも、
勇気を出して本心を伝えることも。

僕は高校生になった今でも口笛が吹けないし、風船ガムも膨らませられない。
口笛はあの時にしか吹けなかったし、ガムの話はその場の出まかせだ。

だから、
彼女は今でも口笛が吹けずにいる、
今ではそう想っている。




2004/11/24(Wed)03:57:02 公開 / 月海
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■作者からのメッセージ
私も主人公と同じく、両方出来ません(泣
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