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『黒い本(ショート・完)』 作者:新先何 / 未分類 未分類
全角3458.5文字
容量6917 bytes
原稿用紙約11.35枚
 第2章 力作の密室

 都会のうるささが突き刺さる様な部屋の中で私は、原稿用紙とにらめっこをしていた。
 私は将来有望の新人作家だ、既に6作品ほど出していてどれもベストセラーでお金も沢山ある。
 今書いている作品は、去年から始めた「神内神楽探偵シリーズ」の第三部目にして完結編だ。
 第一部は遠隔殺人。第二部は完全犯罪。そして第三部は密室殺人となるはずだが、今まで推理小説で密室など何万回も繰り返されている。
 ヒット作を出すには新しいトリック等、斬新で新鮮な物が必要とされているのだ。
 それゆえ先ほどから悩んでいたのだ。

「トリック・・・・・・今までで誰も思いつかなかったもの・・・・・・」
 少し息苦しくなって来た、部屋を見るとかなり汚い、埃も待っているし人が住んでいるとは思えない位だった。
 ハウスクリーニングでも呼ぶか。
 基本的には掃除等のめんどくさい事は苦手だった。
 机の上から電話を探し出しハウスクリーニングの番号を押し明日来る様に頼んだ。

「ブーーブーー」
 インターホンが鳴っている。
 いつのまにか眠っていたらしい。床に倒れていた重い体を立ち上げ、玄関まで歩いていく。
「どちら様で?」
 ドアを開けると覆面の男がナイフを私に押し付けた。
「お前がいけないんだ・・・・・・」
 男はそう言うなり逃げていった。
 体から流れる血を見て私はふと思う。最高の密室殺人を。
 私は今思いついたストーリーを血文字で床に書きはじめる。

 冒頭
 事件
 探偵登場
 人間関係
 手がかり
 解決
 そして終幕
 最後に警察が見つけたときの為に「この文章を原稿にして出版社に持っていって下さい。」と書き添えた。
 これは多分誰も思いつかなかっただろう。
 この命とひきかえにこの話は永遠に語り継がれるに違いない。

 そして床に倒れ黄泉の世界へ旅立った。
 しかし、この後に来た第一発見者のハウスクリーニング業者がびっくりして、水の入ったバケツをひっくり返してしまい、力作長篇は水にかき消され、犯人もすぐに自首しテレビでも少し取り上げられた程度で終わり一ヶ月もすれば事件の事も名前も忘れられていた。

 第3章 父からの手紙

 何年ぶりだろうか、父の名前を見たのは。
 大学を卒業してすぐ、小説家になる為、親に内緒で東京に上京するつもりだった。卒業式の日の夜、机の上に上京先の住所とお別れの言葉を書き残し駅へ走った。暗い闇の向こうから音をたてながらやってきた電車に乗る。
 車窓から遠ざかる故郷を見つめ涙を流した。

 引っ越しも終わり本格的に東京での生活を初めてすぐに父からの手紙がきた。小さい手紙にびっしりと説教がかかれていた。それから何日も、何日も説教の手紙が送られて来たが、東京に来る事は一度も無かった。

 暫くすると父からの手紙は来なくなった。
 どうかしたのかと思い初めて出した自分の本を送った。
 しかし、やはり返事は来ない。電話をしても誰も出なかった。

 そして小説家としての安定した地位を得た今、久しぶりに父から手紙が来た。
「お久しぶりです。
東京では元気にやっていますか。
手紙や電話に出れなくてすいませんでした。」
 一瞬、父かどうか迷った。今までの手紙では、「おまえ」「馬鹿息子」など書いてあったのに今となって他人行儀な文章で送って来たからだ。しかし筆跡は父の字に似ていた。
「あなたの本読ませていただきました。
よくできていると思います。
自分の息子が書いたとは思えなくて笑ってしまいました。

さて急な話ですが、故郷に戻って来てはくれませんか?」
 初めての言葉だった。
「何故かと言うとこの度、私とお母さんは死去しました。」
 は?私は耳を、いや目を疑った。
「手紙を出せなくなったのもそのせいです。
そこであなたに遺産を引き取ってもらいたいので故郷に戻って来て下さい。

父より。」
 しばらくして父が死んだ事を認知した。
 手紙を持って翌日故郷へ帰った。
 家までの道はしっかりと覚えていた。
 家についた、が家と言える家はなかった。
 焼け残った柱を見て大きく泣きわめいた。黙って家を出た自分を憎んだ。
 家のあった場所の中央に本があった。私の本だ、手にとって表紙をめくる。
「馬鹿息子め!」
 一頁目の余白に書いてあった。もう一頁捲ると。
「面白かったぞ」
 また涙が出て来た。父の文字は涙で濡れていた。

 第4章 百人作家

「暑い・・・・・・」
 陽の光を照り返しギラギラと輝く坂道をのらりくらりと歩いていた。
 僕が今担当している作家は毎回作風を変えると言う事で「百人作家」と呼ばれているのだが住んでいる家が坂の上なので夏場は辛い。
 といっても、この作家を担当するのは今日が初めてだった。
 着いてみるとさすがベストセラー作家、家のでかさが凄い、僕の家の何倍だろうか。
 身長の2倍以上ある扉を押すと中から乾いた臭いがただよっていた。息がつまりそうで、少し咳き込んでから奥の部屋に入る。しかし開かなかった、よく見ると鍵がかかっている。
 外から鍵を掛けたら出れないだろうにと思いながらも鍵をあけ中に入った。
 ぼろい椅子に一人の男が座っていた。
「やあ、待っていたよ」
 僕は男に一礼すると、仕事の話を始めた。
「初めまして、担当の者ですが原稿の方はどうなっているでしょうか?」
「ああ、もうすぐできるからそこに座っていてくれ」
 近くのソファーに座り男が原稿を書き上げるのを待った。
 喉が渇いて来たのでせき払いを一つすると、
「これは済まない、客人にお茶の一つも出さんとな」
「あっ僕がやりましょうか」
「いえいえ、大丈夫です」
 男は立ち上がり近くの冷蔵庫から麦茶を出してくれた。コップに麦茶を注ぎながら男は訪ねてきた。
「君は私が百人作家と呼ばれる理由を知ってるかな?」
「はい?」
「私が百人作家と言われる理由だよ」
 ずいぶんと変な事を聞くな。
「それは先生が毎回いろいろな作風で書かれているからじゃ無いですか」
「本当にそう思うのか?こんな老い耄れにサスペンスからラブストーリーまでかけると思っているのか?」
「違うんですか?」
「もし、今までの作品が私一人ではなく、毎回違う人が書いて来たかもしれない」
「え?」
「しかも毎回書いてる人が、毎回この家に来る担当の人が書いてたとすると、私がこの作品を書き終われば次に書く人は君だとすればどうする?」
「まさか、そんな・・・・・・」
 いつのまにか、体全体に恐怖と不安が支配していきまぶたが重くなってきた。
「人間ならだれでも、一度は力作が書けるよ。次の人が来るまで頑張りな」
 男は書き上がった自分の作品をまとめ、ドアの向こうに消えていった。
 もう鍵を閉められた音すら聞こえなかった。

 第五章 百人作家その後

 僕が作家になった日からずいぶん時間が経った。

 暑い夏の日、初めての仕事として百人作家と呼ばれる大先生の家に原稿をとりにいったはずだった、そして気づけば独特の冷蔵庫の音とインクの臭いが染み付いた部屋に倒れていた。
 最初の頃は戸惑った、大声を出してみても誰も通らない坂の上だ、助けが来るはずも無い。
 携帯で電話してみようと試みたが圏外だった、部屋においてある電話も電話線が切れている。
 部屋と廊下をつなぐ扉は鍵がかかっているが内側には鍵が無かった。
 ながながと書いたが簡単に言えば「脱出不可、連絡不可」
 ただ、ちゃんと生活出来る様な設備は整っている、水は出るし、風呂もある、冷蔵庫には毎晩目をさますと食材が置いてあった。

 最初の二、三日は恐怖に怯えていたが、しばらくすると落ち着きを取り戻し、自分が助かるのは小説を書くしか無いと悟った。
 部屋の隅にある机に座り原稿用紙と鉛筆を探していると机の隅に注意書きが書いてあることに気づいた。

「注意書き
 担当者は三ヶ月ごとに来ます、それまでに作品を書き上げて下さい。
 紙とペンは2番目の引き出しにあります。
 では頑張って下さい」

 だけだった、いままで何人の人がこの机に座ったのだろうか。期間は三ヶ月、それまでに作品を作るか・・・・・・

 それから三ヶ月が過ぎた。
 目の前に座っている担当の人に睡眠薬入りのお茶を飲ませる。
 そして長かった作家生活の終わりを告げるドアを閉め鍵を掛ける。

 普通の担当者生活に戻り僕は目的地に向かう電車に乗り広告を眺め笑った。
「あの百人作家が今度は短編に挑戦!新先何著「黒い本」絶賛発売中」
2004/11/29(Mon)19:18:08 公開 / 新先何
■この作品の著作権は新先何さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
最終話終了!!(どうしても短くなってしまう・・・)
第四話の続きですが、自分的に満足な物に仕上がりました。(自信は無いですけど)
これからもショートショートを書いて来ます。いままで黒い本シリーズを読んでくれてありがとうございます。
引き続き感想をお願いします。
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