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『雪は太陽よりも遠すぎて 2 』 作者:かえる(妹) / 未分類 未分類
全角2118文字
容量4236 bytes
原稿用紙約6.8枚
決心した翌日。

決心したといっても、どうすればいいのか?私はただひたすらと、何も話そうともせず、考えていた。
「ねえ、ベリィ〜、助けてえ〜」
のんびりと、けれど本気で。そんな様な、よく判らないSOSの声がしたので。
「まーた何かやったのー!?もう止しなさいよー!」
と、言ってみる。たまには、姉らしい事もしなくては、と思ったのだが、
「何言ってるの?どーせまた『姉らしい事もしなくちゃ』とか思ってるんでしょー?余計なお世話よっ!双子だし、どっちが姉と言われようが構わないんだからさーっ」
そう言われても仕方ない。私は近所のおばさんに、「妹なのに偉いねえ」と、言われた事があるのだから。それに、もう何回もあったことだ。ベリィにも一理ある。
そう考えていると、何とか助かったのか、ベリィは台所からボサボサの髪の毛で出てきた。
「・・・ひっ酷いんだ、からぁっ・・・残り少ない人生をっ満喫する為・・にっ脅しに近、い方法で医、者に退っ院OKもらって・・・っやっと家に、帰って・・・き、た病弱な妹っ・・・をぉ、助けなぁい、なんってぇ・・・」
やっと言い終わったか、と思った私を、悪夢が襲った。
「やっぱり、無理・・・だっ、たの、か・・・な・・・?」
ベリィは、倒れたのだ。
誰よりもベリィを心配する、姉の前で。
「ご、めんね・・・?ずっ、と、黙って・・・た、の。ほ・・・っら、マリィ、て・・・すぐ大事に、する・・・か、ら・・・」
ぴくぴくと僅かに動きながら、笑っていた妹に対して私は。
「あったりまえでしょ!心配してなかったら一緒に居られる時間がもっと短くなるでしょおっ!いっ、今車で連れてってあげるから!ちょっとまっててよ!?」
あわてふためいた姉の姿を見た、妹、べリィは動いた。
「えっ」
マリィが驚くのも無理は無い。今にも死にそうな妹が、14歳の少女が、自分のズボンに摑まっているのだ。
―まるで、行く事を妨げるかのように。
するとベリィの中のバケツは引っくり返り、水は溢れ出た。
「行かないでっ・・・!どうせ2週間の命だよ、今一瞬マリィが居てくれたならっ、大きな幸せを一つだけ握って天に昇れる!」
「一瞬!?一つだけ!?」
マリィは此の時、我を失った。
「冗談じゃない!大きな幸せを最低100コ持って行きなさいよっ!」
大騒ぎして、警察でも来るのではないかと思われたが、窓は締め切り、今は昼で、此の辺りは一人暮らしが多いので、今は皆働いている頃だ。なので、人が通報する事も無く、真面目でない此の辺りの警察は、お昼寝タイムだった。
「私よりも・・・良いっ、子なのにぃっ、生きる価値がっあるのにっ!」
泣いた。
今まで、妹の前でも親の前でも友達の前でも見せる事のなかった涙。母が死んでも、自分の部屋で五滴ほどしかたらさなかった涙。其れが今、溜めていた分溢れたかのように、沢山出た。
「あのね、マリィ。私今、雪が見えるよ。愛しい人が泣いてくれるのは、雪であって雪じゃない。雪以上のものだから―・・・」
駄目だよ、ベリィ・・・。
それじゃ駄目なんだよ、意味が無いの。良い?私はホンモノが見せたいの。
「ねえマリィ。本当にね・・・マリィの妹で、良かったって思った事、いっぱいあるの。でもね、雪の中でマリィが遊んでた時、本当に悔しかった。‘何で私じゃなくてこいつが遊んでるの?’って」
「うん・・・」
静かに医者を呼んだ私は、ひたすら医者を待っていた。
「何でだろうね?きっかけがあんなに莫迦莫迦しい事なのに、私は死にそうに―…」
「ベリィ」
キツイ顔だったけど、本当に其れは言ってほしくなかった。だって、現実になりそうだから。
「お願い、今だけは現実から目を背けさせて」
「ん、私も・・・目は背けたい。けどマリィ、こっちをむいて?死ぬかも知れない私を見て?」
「死なないよ、ベリィ」
延々とそんなことが続いて―・・・

三時間後。 

予想よりも早く訪れた悲劇。医者はまだ車の中。
そう思っていたけれど、医者はまだ病院にいた。これは、父が仕向けた罠だった。使えない病弱な娘は要らないとでも言いたかったのか、一度家に来たけれど、ベリィをみて、吐きそうになって去っていった。
けれど私は、ベリィの傍にいる。
「ねえベリィ、ごめんね?私、雪を見せてあげられなかった。謝るからさ、もう演技やめてよ」
何も言わないベリィのからだ。
愛しいあの笑顔は、もう戻ってこない。もう、私の笑顔だって、戻ってこない。
あの父に、全て奪われた。
笑顔も、金も、家も、妹さえも。
妹さえ居れば構わなかった私だけれど、妹が居ないのならこの世なんて要らない。
数分後、大家が来たが、「父の策略だ」とだけ言っておいた。大家は気味が悪いのか、去っていった。おまけつきで。
おまけとは何かというと、ドアを外から閉めた。つまり、木やコンクリート等で固めたのだ。
けれど構わない。妹の居ないこの世なんて出てもつまらないから。
ベリィは冷え切って、私はフローリングに座って、声をあげずに泣いていた。
「雪なんて・・・涙なんて・・・」
涙をふき取っても、涙は出る。
「大嫌いっ!!!」
―君は知らないあの日のこと
―君がこわれたあの日のこと

もう彼方
私もいない
2004/09/19(Sun)13:32:02 公開 / かえる(妹)
■この作品の著作権はかえる(妹)さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
暗くなってしまう小説でしたか?そうですよね。
マリィにもう少し頑張ってもらうか?とも思ったのですが、なんとなく。
救われねぇなぁ、とも思ったのですが、何と言うか・・・切ない感じで、涙を1滴でも流してくれたらな、と思います。
次は明るいの書きますね!
私もこんな暗いのもう書きたくありません。でも、二人には思いいれ・・・というか特別なものがありますから、「書かなければ良かった」とかは思ってません。
あ。
横書きだから普通の数字でしたね(汗
次から気をつけます。

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