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『短編 ずっと2人で』 作者:疾風 / 未分類 未分類
全角6410.5文字
容量12821 bytes
原稿用紙約19.5枚


 ガタンゴトン。ガタンゴトン。

 単調なリズムで、列車が揺れている。
 傍らに置いてあったリュックサックを膝において、中身を確かめた。
 三日分ほどの食料と水。列車の定期券と、ナイフが四本。小銭が少々入っている財布が、決して大きくは無いリュックにきちんと入っていた。
 時代が時代であるため、荷物をこまめに確認しないといつのまにか盗られていると言う事も少なくはない。そう、世界は荒廃しきっていた。
 
 もう半世紀以上も前の事になる。人間が地球の環境を破壊しつづけて、ついに地球という星は、廃星と化した。海は枯れ、植物は育たず、毒性のある空気が充満した。
 そんな世界を目の当たりにして、一部の人間が地下へと移り住んだ。廃星と化した地球に抵抗する術は無く、人間は地球の中に新しい世界を作り上げた。
 しかし、その時に地下へと移り住むことが出来たのは、社会的地位の高い者のみだけだった。その該当者に世界の人口の三分の一が選ばれ、残りの人々は、荒廃しきった地上で住む事を強いられた。
 そして、それから半世紀以上の月日が経った。
 俺が生を受けたのは、色を失った地上の世界だった。

ガタン――ゴトン。ガタン――ゴトン。

 電車の音が、間の開いたリズムになって来た。そろそろ駅に着く頃だ。席を立ち上がってリュックを背負い、電車が確実に止まってから開く扉を抜け、閑散とした駅のホームへと出た。
(思ったより人は少ないんだな)
 つい、物静かなホームを見てそう思ってしまった。そんな事は当たり前なのだ。地上と地下を結ぶ交通路は、電車よりも新幹線の方が便利が良い。第一、地上や地下へ用事のある人間は皆、裕福であるのだ。そんなのがわざわざ便利の悪い電車を使う事も無い。そんな訳で電車の駅には人が少ないのだ。それでも乗っている奴は、おそらくは昔の俺のような――人から物を盗んで生活をしている――奴なのだろう。そして、その殆どがハームだ。
 ハームとは、米語で「害」と言う意味らしい。そして、ハームは、今も地上で暮らす人間達の事を指す。
 地下と地上で人間の生活領域が二分された為に起きてしまった社会現象。それは人種差別。
 ハームの人々は劣悪な環境化で暮らすようになった為、それを象徴するかのように髪や目は真っ黒に染まり、肌も明度を下げた。一方、地下で住む人々、アルビノは、頭髪、目と共に白く澄んだ色をしていて、肌もそれらと同じように真っ白だ。
 アルビノの人々は、半世紀も経つと、地上に住む人々が自らの居住空間に入ってくることを恐れた。その頃までは移民用に造られた道路も開放状態にあり、ハームもアルビノも地下と地上を自由に行き来する事が出来ていた。しかし、ハームはいつの頃から「ハーム」と呼ばれ始め、地上のばい菌を運んでくるだとか、容姿そのものが醜いと忌み嫌われた。
 それから、ハームの人々はアルビノに支配されるようになった。
 ハームに人権は与えられず。地上から地下へ無理やり連れてこられ、奴隷のように扱われ。ただ、「色」が違うためにハームは迫害されている。
 俺はハームだ。だが、生まれつき髪は真っ白で、肌の色も限りなくアルビノに近かった。ただ、目の色は黒くくすんでいて、人目でハームと分かるのだが、今は身体の色を変える薬品が裏で出回っていて、俺は目だけを白くする事でアルビノに化けることが出来た。
 そして、俺は今、地下の世界に足を踏み入れた。



 私は、飽きてしまっていた。この起伏の無い人生に。
 そもそも、街一つを治める貴族の一人娘としてこの世に生を受けたのが運の尽きだったのかもしれない。
 何の心配をしなくて良い生活。何の刺激も無い毎日。そんな人生に一体どんな生きがいを求めるのだろうか?
 私にそんな待遇をさせている人たちに感謝していない訳じゃない。でも、私ももう十六歳。そろそろ、自立させてくれてもいいと思う。けれど、私は父さんの後を継いで、街を治めなければならない。そう決められていた。
 そんなのは、嫌だ。
 自分の人生なのだから、自分の思うようにさせて欲しい。

 「……などと、胸の内を密かにこのノートに書き記す。まる、と」
 最後に今日の日付を書いてノートを閉じる。そして、このノートが見つからないように、部屋に置いてある本棚の本の隙間に無造作に差し込んだ。
 時計を見てみると、午後三時になり掛けていた。三時からは確かピアノの稽古だったか。ピアノはどうも音が綺麗過ぎるからあまり好きじゃない。けど、レディのたしなみとして、ピアノは習っていた方が良いらしい。
 コンコン、とドアがノックされた。
「アシェリア様。お時間です」
 ドアの向こうからは、この屋敷の執事であり、自分の教育係でもあるモーガンが私を呼ぶ声が聞こえた。
 その応答に、ドアを開けて答える。
 「もう支度は済んでおりましたか」
 「ええ。次はピアノのお稽古でしょう?」
 「さようでございます」
 初老の執事、モーガンは、私が部屋を出ると一歩下がって私に道を譲り、その後でドアを閉めた。そして後ろからついて来て、玄関のところで靴を私の足元に置き、帽子をかぶせる。
 「午後六時からは雨の予報となっておりますが、いかが致しましょう」
 私にかぶせた帽子を整えながらモーガンが聞いた。
 「それまでに帰るようにするわ」
 「分かりました」
 モーガンに扉を開いてもらって外に出る。外に出ると夏の景色が一面に広がっていた。
 「いってらっしゃいませ」
 モーガンに見送られて敷地から出る。そして、決して足取りを乱す事無く、目的地である建物に向かう。
 偽りの空には偽りの太陽が輝いている。
 人類は地下に住むようになって著しく進歩した。
 自然に頼る事無くこの環境を整える技術を、わずか数年の研究で実現させたのだから。
 自然の物は殆ど人間の手で造られるようになった。人工酸素、人工水、人工海、人口太陽。どれも昔は自然にあった物だ。だが、これらが無くなってしまった今、これらを人間の手で造らなければならなくなってしまったのだ。
 ふと、足を止めて空を見上げる。しかしその実態はスクリーンに映し出された空。その中にある太陽は光だけを地下の地上に与えた。
 それらに私は飽きていた。にせものには飽きたのだ。私は本物が見てみたいといつもこの偽りの空と太陽を見て思う。一生に一度は見てみたい。
 しかしそれは叶わぬ夢だと、自分に言い聞かせていた。本物の太陽が発する光は、アルビノにとって毒なのだ。アルビノの人間が防護服も無く地上へ出ようものなら、あっという間に皮膚は焼け、目は潰れる。地上へは何回か出た事があるのだ。しかし防護服越しの空や太陽は白黒で、にせものの方がいくらかマシに思った事がある。
 叶わぬ夢をずっと思いつづけながら、私はこのつまらない人生を生きていた。





 アシェリアはピアノの稽古から帰る途中、珍しいものを見つけて立ち止まった。
 一人の男が警察官数名に何かを聞かれていた。
 好奇心旺盛なアシェリアは、それに聞き耳を立てた。もっとも、聞き耳を立てずとも、警察官の声は大声で、はっきりと聞き取る事が出来た。
 「ハームがこんな所に来て良いと思っているのか!」
 「お前のような奴が最近増えているからな、それに合わせて警備が強化されたことを知らんのか?」
 どうやら不正入国したハームが見つかったようだった。そのハームの十代後半の男は、身体の後ろで手錠が掛けられ、黙りっぱなしでいる。
 そしてその後、警察官が何故大声で、まるで辺りに聞こえるようにして喋っていたのか、アシェリアは分かった。
 警察官の一人が、警棒で彼の後頭部を殴ったのだ。悲痛な悲鳴を上げて彼はその場に倒れこむ。両手が使えないため、受身もままならない。
 そう、これは見せしめなのだ。ハームに人権は与えられていない。だからいくらハームを殴ろうが蹴ろうが、挙句の果てに殺しても罪にはならない。
 膝をついて何とか上半身だけ起き上がらせた彼に、別の警察官がみぞおちの辺りにつま先で蹴りつけた。ごぼ、と、彼は口から何かを吐いて、再び仰向けに倒れる。そしてそれに畳み掛けるように警察官が全員で踏んだり蹴りつけたりする。もはや彼に叫ぶ力は残っていないようだった。
 そこで、アシェリアの気まぐれが働いた。
 「私の使用人に何をするのですか!」
 彼に近付きながら思いっきりそう叫んだ。警察官は勿論、いつのまにか集まっていた野次馬達の目線がアシェリアに集まった。
 「アシェリア様……!」
 「この者は私の屋敷で使用人を勤めさせているのです。それになんと言うことを!」
 警察官達に苦渋の表情が浮かぶ。この少女は仮にも次期統治者なのだ。それに反論の余地も無い。即座に警察官は一礼をして、この場を後にした。それと同時に野次馬達も散っていく。
 アシェリアは倒れている彼を見た。既に手錠は外されているようだが、その身なりは囚人を思わせるほど、質素なものだった。ゆういつ、その髪だけは高貴なものがあったが。
 ぴくり、と指が動いて彼の意識が回復した事を知らせた。そして上半身だけを起こし、目の前に居たアシェリアを見た。
 「……ありがとう。助かった」
 アシェリアは困ってしまった。こんなにも感情を込めて「ありがとう」と言われた事は無かった。普通なら、嫌味っぽく返すのだが、今回はそんな気分にはなれなかった。ただ、きつめ口調で声をぐもらせながら「どういたしまして」と言ってしまった。
 彼は身体を全部起こして立ち上がると、服についた埃やら砂やらをはたき落とした。
 「ところで――君の屋敷で使用人を勤めさせているって言ったよな。本当に勤めさせてもらったら駄目かな? ここには出稼ぎに来たんだ。それに、何より、君に恩返しがしたい」
 「え」
 彼の真っ直ぐな目はアルビノのものではなかった。黒く染まった目は、彼をハームと言う事を裏付けていた。そして、その目にさらにアシェリアは戸惑った。初めて見る目。初めて自分を見つめる黒い目。何より、その目は真っ直ぐに自分を捉えているのがアシェリアには分かった。
 「え、あ、う……と、父様に頼めば良いと思うけど……」
 「そうか! じゃあ悪いけど頼めるかい?」
 アシェリアは、希望に満ち溢れた目を見たら到底断る事は出来なった。

 アシェリアの屋敷には、数人のハームが使用人として働いていた。しかしその扱いはあまりよくないもので、決して裕福な家で働いていると言っても、あまり幸せでは無かった。
 しかし、彼は特別だった。
 アシェリアの意見で、自分付きの使用人にしたのだ。そして、彼には普通以上の生活が約束された。
 「そういえば、名前を聞いて無かったんだけど」
 「俺、いや……自分の名前、ですか?」
 「そうよ。ハームだって名前ぐらいあるのでしょう?」
 一瞬彼は迷ったが、直ぐに口を開いた。
 「ハク、と言います」
 「そう。ハク、これから貴方は私の言う事を聞くのよ。分かってる?」
 アシェリアは、内心では彼――ハクにあまりお嬢様ぶりたくなかった。しかし、彼女のプライドと、その地位がそれを許さず、結局普通と変わらない口調でハクに対応することにした。
 「はい。分かっ……承知しています」
 アシェリアがハクにお嬢様ぶりたくない理由――それは、彼が退屈な日常から開放してくれそうだからと言うことと、ハクに始めての「友達」になって欲しかったからだった。しかし、そんな事は許されず、悲劇が訪れる。


 
 彼は確かに彼女の退屈から開放していた。
 ハクの行動はアシェリアにとってとても可笑しいものばかりで、心から笑う事が多くなった。そして次第にアシェリアはハクに相談するようになり、ハクは出来うることなら実行に移った。
 アシェリアが今日の稽古事がしたくないと言えば、ハクは彼女を街に連れ出して、一日中歩きまわった。
 アシェリアが庶民の食べ物が食べたいと言えば、自分が地上に居たときに好きだった、肉じゃがや、ほうれん草のおひたしをなれない手つきで作って、それを食べさせてやった。(口には合わなかったのだが)
 そんなハクに、次第にアシェリアは心惹かれていた。

 ハームである彼には、自分には無い「勇気」がある。使用人の分際で自分を街に連れ出したり、見つかったら牢屋行きなのに、それでも肉じゃがとほうれん草のおひたしを食べさせようと厨房に忍び込んだり。彼は私の為に危険を冒したのだ。
 その事をハクに話したら、「そんなことはありません。お嬢様はあの時に俺……いや、私を助けてくださったではないですか」と言ってくれた。
 でもアレは、自分に後ろ盾があるから。どこかで、自分だけは大丈夫というものがあったのだ。それを嫌がっていたくせに、自分はやはり今の生活を望んでいたのだ。
 そう、自分は結局、自分では何も変える事の出来ない弱い人間なのだ。
 アルビノ? ハーム? それが何だっていうの? アルビノがハームより優れていると言うの? そんなわけない。アルビノもハームも結局は同じなんだ。でも、住んでいるところが違うから、立場が違うから、こんなに両者は変わってしまったのだ。元は同じ人間なのに。
 ああ、私達アルビノは今までハームの人々にどんなひどい事をしてきたのだろう――?

 そして、二人の生活に終止符が打たれる。
 アシェリアは聞いてしまった。
 「あのハームの所為で、私の娘が汚されている。あのハーム……娘は気にいっているようだから気付かれずに殺してしまえ」
 走った。
 
 「ハク! 逃げるのよ!」
 「どうしたん……どうしたのですか? 急に逃げろなんて……」
 「父様が言ってたの! 貴方は邪魔だから殺すって……! だから早くここから逃げて!」
 遅かった。アシェリアの後ろには、いつのまにか拳銃をハクに向けている初老の男の姿があった。
 「お嬢様が知っているのなら仕方が無い……。気付かれずひっそりと殺そうと思いましたが別によろしいでしょう。ハームめ、お嬢様の為に死になさい」
 「モーガン……やめて! 言う事が聞けないの!?」
 「これはお嬢様、貴方の為なのですよ」
 「そんなの間違ってる……! ハクがただハームって言うだけで、何でそんなに嫌うの?」
 アシェリアはそう言うと、ハクの前に立ち、両手を広げて真っ直ぐにモーガンを見据えた。
 「お嬢様……何のおつもりですかな? たかがハーム一匹に命など捨てるものじゃありませんぞ」
 「いいえ……ハームもアルビノも関係ない……。私は、ハクと言う存在を尊敬し、そして愛しています。もし、ハクを撃つのであれば私を撃ちなさい。貴方に、私を撃つ勇気があれば、ね」
 「お嬢……いや、アシェリア……。……来るんだ!」
 「!?」
 ハクは咄嗟にアシェリアを抱えると、部屋の窓を蹴破って外に出た。部屋は二回に位置していたが、さいわい地面は柔らかい土の敷かれてある花壇であったため、怪我は無かった。
 「アシェリア、俺と一緒に逃げてくれないか? 何処へでも好きなところに連れて行くから。ずっと二人で居たいから」
 「じゃあ、空と太陽が見たい」
 「お安い御用さ」
 ハクはアシェリアを抱えたまま走った。走って、追っての手の届かない場所まで逃げた。アシェリアの言う、「空と太陽」が見える場所まで。

 その後の二人の事は、誰も知らない。噂では、地上に出て二人とも焼け死んでしまったとか、逃避行の末は心中だとか、根拠の無いものばかりだけだった。
 ただ、その事件のすぐ後に、ハームによる独立運動が起き、長い戦争状態が続いたと言う。そして、それを治め、ハームとアルビノの和平を築いたのは、勇気ある男と女だった。
2004/07/21(Wed)11:00:13 公開 / 疾風
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■作者からのメッセージ
初投稿、ではないですが、見かけた人は少ない、疾風です。
短編、にしては長いかもです。それでも読んでくださった方、ありがとう御座いました。指摘、感想、何でも良いので書き残してくれたら、ありがたいです。
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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