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『Silver Love 完結』 作者:流浪人 / 未分類 未分類
全角30240文字
容量60480 bytes
原稿用紙約93.65枚

プロローグ

時はそう遠くない未来、感情を持たない人間型ロボットが多数生産されていた。
ロボット達は人間に代わる労働力として人間以上の働きをした。
彼らは市場で売られ、主に村や町が彼らを購入していた。
そんな中、ある科学者によってついに感情を持つロボットが開発された。
世界ロボット機構はロボットによる世界征服を恐れ、感情を持つロボットの生産を全面禁止。
破った者には死刑という厳しい制度を設けた。
しかし既に誕生してしまった1体の感情を持つロボット。
生みの親である男はそのロボットをヴェンと名づけ、1年間共に暮らし、決して感情を出してはいけないと教え込み、苦悩の末、他のロボット達と同じように市場に送り込んだ。



「えー諸君、今日集まってもらったのは他でもない」
村長は、白髪が混じっているどころではなく、白髪で埋め尽くされている髪をかき上げながら言った。
「我が村でもついにロボットを購入しようと思うのだ」
一瞬、その場にいる全員が静まり返ったが、すぐにあちこちから声が飛び出した。
村長は賛否両論分かれる声に全く反応せず、
「もう決定したのだ。今決めるのは、ロボットを街まで買いに行く人間だ」
いつもは優柔不断なことで知られる村長が、今日はやけに信念を貫いていた。
村人たちはしばらくざわめいたが、少しして女の声が大きく響いた。
「はいっ!! 私行きたい!! ねっ? いいでしょ?」
村人たちの視線が一斉にその女に向けられ、一人の男がため息をつきながら近寄っていった。
「この馬鹿たれが! いいかディア、お前はまだ17歳なんだ。こんなとこで油売ってないで、料理の一つでも覚えたらどうなんだ」
ディアは、毎度のことだけど面白味の無い父親だわ、と小さくつぶやき、ギッと父親をにらんだ。
村長は二人のやり取りを見かねるように、
「よしわかったわかった。ディア、お前に頼むよ、しっかり選んできておくれ」
と言い、ディアにロボット代を手渡した。
ディアの父親は、全く村長はいつも甘いんだから、としばらくブツブツと愚痴っていたがディアはそれを見かねるようにすぐに街へ向かった。

街のロボット市場は、活気に包まれていた。
あちこちで値切りの声が飛び、ディアは一瞬その雰囲気に押されそうになったが、冷静さを取り戻し、市場の中を歩き始めた。
予算に合いそうなロボットを探しているうちに、ふと一台のロボットに目がとまった。
「綺麗な髪・・・・・・」
ロボットと人間を区別するために、ロボットは銀色の髪を頭に備えているのだが、それらはやはり人工的でしか無い。
しかしディアが目を奪われたそのロボットの髪は、人工的である事は事実なのだが、まるで本当の生命が備わっているかのような光沢を放っていた。
ディアはすぐに値札に視線を移した。わずかにお金が足りなかった。我を忘れ、ポケットを必死にあさる。
やはり、お金は無かった。ディアはがっくりとうなだれた。
そんなディアに、店主が見かねて声をかけた。
「こいつ、良いだろ? 俺も気に入ってんだよ、なんつーか、生きてるみたいなんだよな。あんたこいつ欲しいのか?」
ディアは悲しそうな声で、「でも、お金が・・・・・・」と言うと、
「いいよ、足りない分は値切ってやるよ。その代わり、大事にしてやってくれよ!」
店主は、わっはっはと笑いながら、快くロボットを売ってくれた。
「本当!? やったー!! ありがとう、おじさん!!」
ディアの顔に、ようやく笑顔が戻った。ディアはロボットを連れ、駆け足で村へ戻った。



世界ロボット機構の本部は、近未来を想像させるようなメタリックの塗装がなされ、研究施設も兼ねているので、広大な面積を必要とし、街から少し離れた場所に建てられている。
今、その中では、各国のロボット研究者たちが集まり、緊急会議が開かれていた。
「えー、テイル。早速だが現在の状況を、私を含め全員に説明してくれ」
議長を務めているのは、世界ロボット機構の会長である、ウォンバーであった。
ウォンバーは冷静さを装ってはいたが、心の中は危機感で包まれていた。
会議の決定を受け、実際に行動に移すのは、テイル率いるロボットたちで、通称『インターズ』と呼ばれている。
「はい、議長。我々インターズは前回の会議の決定を受け、感情を持ったロボット『タブーロボット』を開発した科学者を突き止め、事情聴取を行いました。科学者の名前は、フィン。彼はすぐに容疑を認めたので、私はタブーロボットの居場所を尋問しました。しかし彼は言いませんでした。なので、彼の身柄を拘束し、現在この建物の地下の牢に閉じ込めています、これが現在の状況であります」
会議に出席している者たちは、重苦しい表情でテイルの話を聞いていたが、科学者を拘束したという事実を聞いて、少し安心したようだった。
しかしウォンバーは厳しい表情を浮かべながら、
「ふむ。ロボットの居場所は分からなかったか・・・・・・ああ困った、これは非常に困ったことだ。いつロボットが悪の道に目覚めるか分からんのだぞ、目覚めてからでは遅いのだ!!」
少し興奮した様子で言ったが、隣に座っている男が、
「まぁまぁ、会長。少し落ち着きなさい。今あなたが怒ったって、何一つ状況は変わりはしないのだよ、今私たちがすべきことは、一刻も早く科学者にロボットの居場所を吐かせることだ、できるよな、テイル」
ウォンバーが会長とは名ばかりで、常に冷静さを保ち、実権を握っているのは、副会長を務めているスネルであった。
テイルは、スネルの威圧感にひるみながらも、
「もちろんであります、副会長。さぁっ、いくぞ、インターズ」
そう言ってロボットたちを引き連れ、フィンのいる牢へ向かった。

ディアが村に着くと、村の子供たちがディアの腕を引っ張り、先ほどの集会所に連れていった。
集会所はさっきより人が増えており、皆ロボットのお披露目を今か今かと待ち望んでいた。
村長は、皆の気持ちを代弁するかのように、
「ディア、わざわざすまなかったね。で、ロボットはどれじゃ?」
ディアは皆に見えるように、全員を外に連れ出し、
「はーい、注目!! この子が私たちの新しい仲間です!!」
と叫び、ロボットを持ち上げた。
村人たちの反応は様々で、ほぉ最近のロボットはずいぶん人間っぽいじゃねぇか、と言う人もいれば、あらかわいいロボットね、うちに欲しいくらいだわ、と言う人もいた。
ディアはそんな村人たちの反応を楽しんでいたが、ハッと何かを思い出し、
「ねぇねぇ、名前、何ていうの?」
と小さな声でロボットにささやいた。
ロボットは照れながら、「ヴェンです」とつぶやいた。
ディアは一瞬、本物の人間と見間違える錯覚を起こしたが、すぐに気を取り直し、
「名前はヴェン! 今日はパーっと歓迎会をしましょう!!」
人々は自分たちの労働時間が減ることを喜び、ヴェンを歓迎した。
しかし、ディアは逆に不安を抱いていた。この人たちは、ヴェンを労働力としか見なしていないのではないのだろうか―――
まさかそんなはずはない、とディアは自分に言い聞かせたが、不安は完全には消えなかった。
しかし、その日のパーティーは、ディアの中の不安をどこかに消し去ってしまったのだった。



キシッキシッという音が、地下室に響く。
地下室の奥には頑丈な牢が一つだけあり、そこから音が聞こえていた。
テイルは、無表情のままその牢に歩み寄り、
「無駄だぞ、科学者フィン。どんなに頑張ったって、この牢から出られるはずは無い!」
テイルの声が地下室に響くと、フィンの手がピタリと止まった。テイルは軽く咳払いをし、
「タブーロボットの居場所を吐かない限り、この牢からは出られない。さっさと言ってしまった方が身のためだぞ」
テイルの話し方は、先ほどの会議のようにへりくだってはなく、堂々としていた。
まだ牢に入れられてから1日ほどしか経過していないのに、フィンの頬はやせこけていた。
テイルにも、その変化ははっきりと見て取れた。どれほどこの牢を揺らし続けたのだろうか。
フィンは、生気を失っている顔の中でギラりと瞳をのぞかせ、
「どうせ言ったって、俺は死刑だろ、どっちみち死ぬのなら、アイツだけでも生かすに決まってる。それぐらいあんたでもわかるだろ・・・・・・」
疲れたようにそう言い、ふぅ、とため息をついた。
テイルは、フィンの自分をナメているような口調に苛立ちながらも、
「フィン、強がるのはいい加減にしろ。言ったら助かるかもしれないんだぞ。・・・・・・それとも、自分の命を犠牲にしてまであのロボットを助ける、とでも?」
フィンは迷わず、
「俺には息子がいなくてよ、アイツは俺にとって息子みたいなモンだ。親父が自分の息子を守って何がおかしい? 俺は人として、父親として当たり前のことをしようとしているだけだ。それをお前らが悪と呼び、俺を殺すと言うのなら、喜んで死んでやるよ。何度でも言ってやるよ、俺の命がたとえ尽きても、アイツの居場所は言わない。それが俺の答えだ」
テイルは少しうつむき、悲しげな表情を浮かべ、
「・・・・・・そうか」
そうつぶやき、会議室の方へ戻って行った。
テイルはフィンの信念を持った言葉を聞き、どちらが悪なのかわからなくなってきていた。

翌日の朝、村のはずれの丘で、村の少年キールはひざを抱え考え事をしていた。
キールは村で一番カッコ良いという評判で、髪は綺麗なブロンド色、顔はしわ一つ無いほどの美しさであった。
そんなキールにも、悩みがあった。キールは今、昨日のパーティーを思い出していた。
「はぁー、ディア嬉しそうだったな。あんな笑顔、俺には見せたことないのになぁ・・・・・・」
キールはディアに恋心を抱いていたのだった。キールにしてみれば、自分を好きにならないはずは無いのだが、積極的にディアに話しかけているにも関わらず、ディアの反応はどれもイマイチだった。
「くっそ、ロボットなんかに嫉妬しちゃダメだ・・・・・・ロボットには感情が無いし、恋のライバルにはなりやしないんだから!」
キールはそう自分に言い聞かせるように言い、村へ戻って行った。



ヴェンは、村に来た翌日なのにも関わらず、もう仕事の内容の説明を受けていた。
よほど労働力不足なのだろう、と思うと同時に、自分が頑張ってこの村を豊かにしよう、とも思った。
「よし、ヴェン。じゃあ早速仕事頼むな」
説明が終わると、村の労働者の代表であり、ディアの父親でもあるゲンドは、昼食を食べに家に戻って行った。
ヴェンは、緊張しながらも、説明どおり要領良く仕事を進めていった。
仕事に緊張しているというよりも、本当のことを知られてはいけない、という緊張感がヴェンを襲っていた。
もし、知られてしまったら―――そう考えるだけで、気が気では無かった。

世界ロボット機構の本部で、科学者フィン処刑の是非が話し合われていた。
「昨日会議しましたが、賛否両論分かれるばかりで結論が出ませんでした。本日はもう一度、会議を行いたいと思います。ではまず、改めて昨日のフィン尋問の状況を説明したいと思います。フィンは、私テイルの度重なる忠告に対しても全く耳を貸さず、こちらに協力しようという姿勢は全く見られませんでした。しかし、処刑するのはどうでしょうか。いくら法令で決まっているからといって、国民の反発は避けられないでしょう。なので、私の意見としましては、処刑はせずに懲役刑が妥当だと思われます」
テイルの説明が終わるとすぐに、前日の続きを始めるかのように、賛否両論の意見が飛び交った。
しかし、間もなく一つの鋭い声が会議室に響き渡った。
「静かにしろっ!! お前らがギャーギャー騒いだら、決まるモンも決まらねえだろうが」
スネルはそう言うと、ギラりと会議室中を見回し、全員に威圧を与えた後、
「おいテイル、言ってることが矛盾してねえか。法令で決まっているんなら、その通り実行したって何の問題も無いはずだ。それに、国民にはまだこの事件は知られていない。なぁ、お前何を企んでる?」
テイルは顔に焦りの色を浮かべ、はぁはぁと息を荒げた。
スネルはそれを見てうすら笑いを浮かべ、
「お前まさか、フィンと何かあったんじゃねえだろうなぁ・・・・・・」
会議室中の視線が、一斉にテイルへと向けられる。
「そんなはずは!! ・・・・・・私を信じてくれないのですか!?」
テイルは必死に弁明したが、逆にそれが怪しい行動として見て取れた。
スネルは部屋の入り口にいる警備員を呼び、テイルを牢にぶち込んどいてくれ、と頼み、テイルをギッとにらみつけ、「頭を冷やしてくるんだな」と言って、再び席に着いた。
テイルは恐怖にゆがんだ表情をしながら、牢に連れて行かれた。
スネルは何事も無かったかのように、「さぁ会議を再開しよう」と言った。
この騒ぎを黙って静観していたウォンバー会長も、「そうだな」とうなずいた。
その様子から、会議に出席していた者たちは、近い内に会長が変わる、という確信を抱いた。
スネルは、来月に控えた会長選に向け静かに闘志を燃やし、今日のテイルへの行動が、自分の権力を強め、必ずや自分を会長に引き上げてくれるだろう、と確信していた。



コツコツという足音が、再び地下牢に響いた。
テイルは警備員に連れられながら、こんな形でここに戻って来るとはな、と思っていた。
そして、フィンのキシッキシッという抵抗の音が聞こえないことに気づき、戸惑いを隠せなかった。
警備員はテイルを牢に入れると、すぐに去っていった。
テイルは警備員が地下室から出て行ったのを確認した後、
「フィン、聞こえるかい。俺だ、昨日アンタに尋問したテイルだ」
テイルの声は、地下室に響き渡った。テイルのしゃべり方は決してフィンを見下してはいなく、もう普通になっていた。
普段は相手の身分によってしゃべり方を変えるテイルにとって、はっきりとした変化だった。
「まだ何か用か・・・・・・」
フィンの声から、衰弱している様子が感じ取れた。
テイルは、フィンを守れなかったことを悔やみつつ、
「あんた、昨日言ってただろ、息子を守って何が悪い、ってさ。全くその通りだよな、おかしな世の中だよ。俺、あんたを助けようとしたんだけど、昔っから嘘が下手でさ、ヘヘッ、すぐバレちまった。あんたを救えなくて、本当にすまなかった・・・・・・」
二人だけの地下室に、テイルの声が響くと同時に、うっうっ、という泣き声が響いた。
フィンはそれを聞き、少し黙った後、
「・・・・・・助けてくれなんて、頼んでねえよ。だから謝ることはねえ」
無愛想な声でそう言った。しかしテイルは逆に、現実をあるがままに受け入れ、そんな状況でもなおかつ毅然として振舞うフィンという男に、さらに涙を誘われたのだった。
「なぁフィン・・・・・・俺に賭けてみないか?」
涙声でテイルが言った。フィンはすぐさま、「何を?」とたずねた。
テイルは少し間をおいて、
「さっきは失敗したけど、どうにかしてあんたを助けてみせる。だから、俺を信じてみてくれないか? あんたみたいな偉大な男が、くだらない欲のせいで殺されるのはあまりにも惜しい!」
怒りながらそう言った。フィンは衰弱した声で、「どうせ消える命だ。気長に待つとするよ」と答えた。
二人はそれぞれ色々なことを考えながら、別々の牢で時を過ごした。

ヴェンが働き始めた日の夜、ディアの家ではささやかな歓迎会が行われていた。
「本当にいいんですか? 家に泊めていただいても・・・・・・」
ヴェンが遠慮がちにゲンドに言うと、
「ロボットなんだから遠慮すんなって! 楽しくやろうぜ、はっはっは」
ゲンドのその何気ない一言は、ヴェンの心に戸惑いを投げかけた。
ロボットなんだから、か・・・・・・ヴェンはポツリとつぶやいた。
ディアは二人のやり取りを聞いて、
「お父さん、酔ってるからってふざけた事言わないでよ。ロボットだから、とかそういうの差別よ!」
ゲンドはディアの言葉に驚きを隠せなかった。
差別? どうせ感情無いんだから、わからねえんじゃ無いのか? と言おうとしたが、心の中にしまった。
そして、ディアはヴェンの事を人間として見てるんだな―――と少し不安になった。
そんなゲンドを尻目に、「ヴェン、今日は一緒に寝ましょ!」とディアは言い、二人でディアの部屋に向かった。
部屋に着くと、ディアはすぐに、「ヴェン、お父さんも悪気があったわけじゃないの。許してあげてね」と言った。
ヴェンはその言葉を聞き、ゲンドと同じように、ああこの人は自分を人間として見ているんだな―――と嬉しくも不安な気持ちになった。
ヴェンはその夜、なんで僕だけこんな風に、『ロボットだから』とか言われて、悲しい気持ちにならなきゃならないのかな・・・・・・、と夜が明けるまで考え込んでいた。



翌日の朝、いつもの丘にキールは居た。
「よしっ、今日こそディアに告白しよう!!」
何度この丘で同じセリフを言っただろうか。
「っでもな〜・・・・・・」
そしていつものように悩む。しかし、今日のキールは少し違った。
「よし、悩んでばっかじゃラチがあかない。ディアをデートに誘ってみよう!」
キールはそう自分に言い聞かせ、村へと走って行った。

村へ着くと、キールの父親であり、いつも熱心に仕事をする事で有名なジェイが、ヴェンを叱っていた。
「甘ったれた覚悟で仕事すんな!! お前が真面目にやらなきゃ、高い金払って家を建ててもらってるお客さんに失礼だろうが!! 柱一本足りなきゃ死んじまうかもしれないんだぞ!!」
ヴェンはペコペコ頭を下げ、「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も繰り返していた。
そんな様子を見かねて、ジェイに声をかける。
「親父、どうしたってんだよ!」
ジェイはギロりとキールをにらみ、息を荒げながら、お前には関係ない、と言った。
キールは思わず、相手が父親であることを忘れ、
「関係ないわけ無いだろ!! どんな事情かは知らないけど、皆が皆、親父みたいに最初っから完璧な仕事ができるわけじゃないんだよ!!」
普段から思っていたことが、機会を得て怒りとともに溢れ出た。
ジェイは少し冷静さを取り戻した後、
「じゃあ何か、新人だったら、欠陥住宅作って人殺しちまっても許されるってのか?」
キールは言葉に詰まった。
ジェイは、「言葉に詰まるようじゃ、まだまだガキだな、キール。おいヴェン、今日はもう仕事はいい。頭冷やして、また明日から頼む」と言って、自宅の方へ歩いて行った。
ヴェンは安心したような表情を浮かべ、
「キールさん、ありがとうございました。でも、僕が悪いんです。だからもう気にしないでください」
と言ったが、キールは納得できずに、「いや、お前は悪くないよ。明日からも頑張れよ」と励ました。
ヴェンはそれを聞くと、深々と礼をして家の方へ早足で歩いて行った。
(あっ)キールは何かを思い出したように、
「ヴェンっ!!」
と叫んだが、ヴェンの姿はもう無かった。

その日の夜、ディアは、街の皆とヴェンがどう接しているかが気になり、ヴェンの部屋へ向かった。
コンッコンッ、とドアをノックした。しかし、返事は無かった。
ドアに耳を近づけて、中の音を探ってみた。すると、ヴェンの寝息が聞こえた。
ディアは少し安心したような表情を浮かべ、自分の部屋で戻って行った。

ヴェンは起きていた。そして、今のディアの行動で、確信した。
ディアだけが僕を人間として見て、他の人たちは僕を感情が無いロボット、いや労働力として見ている―――
労働力として自分を買ったのだから、それは当たり前のことなのかもしれない。
じゃあ何だ、この感情は。どうして僕だけが叱られて、つらい思いをしてまで働かなきゃならない。
何で僕は、つらい時につらいと言えない。悲しい時に悲しいと言えない。
ねぇ、教えてよ、お父さん―――――
ヴェンは三日目にして早くも、この村を出て行きたい、と思った。



眩しい日の光が差し込み、テイルに朝を伝える。
しかし、テイルの寝起きはすがすがしいものでは無かった。
早いもので、あれからもう一ヶ月も経つのか―――
テイルは、結局この一ヶ月間、何もできなかった自分を悔やんだ。
そして、今日行われる会長選で、スネルが当選することを何としても防がなくては、と焦りを感じた。
ウォンバーは余り積極的に打開策を提示しなかったが、スネルなら何をしでかすかわからない。
今日の会長選の結果で、フィンとタブーロボットの運命が決まるかもしれない―――
不安を胸に、足早に家を出た。

「では、只今より世界ロボット機構会長選を始めたいと思います」
選挙委員が説明を述べている間、会議室は重々しい雰囲気で包まれていた。
立候補している二人の男の表情はまさに対照的であった。
恐らく今日で会長の座を降りることになるであろうウォンバーは、不安げな表情を。
恐らく今まで裏で根回しを繰り返し、ほぼ当選を確実にしているスネルは、不敵な笑みを。
テイルの胸が緊張で高まる。いよいよ投票の時が来た。
投票は紙にどちらかの名前を書き、自分の名前は書かないが、もし自分以外の全員がスネルに投票する手はずになっているのならば、テイルはかなり苦しい状況に追い込まれる。
しかし、このままフィンを見殺しにするわけにはいかない。
テイルは意を決して「ウォンバー」と書き、紙を投票箱に入れた。
委員は、次々と開票し、開票結果をまとめ、ゴホンと咳払いをして静かに言った。
「ウォンバー2票、スネル8票。よって、次期会長はスネル氏とします」
ウォンバーはがっくりとうなだれた。そして、何も言わず会議室を出て行った。
その瞬間、会議室中から拍手と歓声が上がった。
スネルは照れくさそうな顔をして、これも全て皆さんのおかげです、と言って深々と礼をした。
テイルは、ウォンバーに票を入れた人が他にも居たという事実に、ホッと一息をついた。
しかし、結局スネル当選を防ぐことは出来なかった。スネルの次の言葉に、会議室中の視線が集まる。
「どうも、新会長のスネルです。私は前会長と違って、積極的にあの事件を解決に導きたいと思います。具体的な方法を言うと、まず科学者フィンを処刑します。そして、新聞社に、タブーロボットの存在とフィン処刑の事実を伝えます。あのロボットが本当に感情を持っているならば、自分からこちらに姿を現すでしょう」
ついにこの時が来てしまったか―――
いつかこうなる事はわかっていた。しかしまさか新聞という手段を使うとは予想できなかった。
とりあえず、今自分に出来ることはフィン処刑を防ぐことだけしかない。
テイルが考えに考えていると、「処刑執行は明日午後1時。では本日の会議を終了します」とスネルが言った。
タイムリミットはあと24時間。テイルは絶望的な状況に直面したのだった。



キールは、ヴェンの様子を見に来ていた。1ヶ月前から毎日欠かさずヴェンのもとを訪れていた。
「よう、ヴェン。調子はどうだい」
ヴェンは不安げな表情を浮かべ、「今日も怒られました・・・・・」とつぶやいた。
キールは笑顔で、「気にすんなって! そのうち仕事に慣れるさ!」とヴェンを励ました。
しかしヴェンはなお不安げな表情を浮かべ、「そのうちそのうちって言うけれど、もう1ヶ月経つんです。僕はこの村に来てから、まだ誰の役にも立っていません。僕はこの村に来るべきじゃなかったんだ・・・・・・」と泣きそうな声で言った。
キールはすぐに否定しようとしたが、否定できなかった。
なぜなら、近頃村の大人たちが集まり、何やらヴェンの事で会議をしているのを知っていたからだった。
キールは少し考え込んだ後、「俺ちょっと行ってくる」と言って、走り去って行った。

村の集会所へと走っている途中、キールは考え事をしていた。
俺はなんで、毎日ヴェンのもとを訪れているんだろう―――
そしてなぜ、ヴェンを救おうとしているのだろう。
俺は最初、ディアと接近するために、ヴェンのもとを訪れた。
けど、精一杯頑張るヴェンを見て、ディアの事を聞くなんてできなかった、
俺は、どんなに怒られても必死で頑張るアイツに、嫉妬していたのかもな。
よし、今日からアイツは俺の恋のライバルだ。正々堂々勝負してやる!
キールはいつの間にか、ヴェンを人間として見ていたのだった。

村の集会所では、ヴェンの今後について連日話し合いが行われていた。
「この村のためにアイツを買ったのに、てんで役に立ちやしない!! これじゃあ若者の方がまだ役に立つよ。なぁ村長、いい加減目を覚ませよ。最初から、この村にはロボットは必要なかったんだよ。市場に売れば、まだいくらかの金は戻ってくるはずだ」
ジェイが激しい口調で切り出した。他の村民たちも強くうなずいた。
村長は厳しい表情を浮かべ、いつまでもこんな話し合いを続けるわけにはいかんな・・・・・・と思った。
そしてついに、重い口を開いた。
「わかった、わかったよ。わしの考えが甘かった。この村にはロボットは必要ない、か。おぬしらの考えはわかった。けどどうやってヴェンに伝える? まさか正面きって堂々と、お前はもういらない、などと言うつもりか? わしにはできん、そんな残酷な事はできん。ヴェンがわしらに、自分を買って、と頼んだわけじゃないのだ。わしらが勝手にヴェンを買って、そして役に立たないから今度は売ろうとしているのだ。人間というのはなんて勝手なのだろうな」
村長の言葉に、全員が静まり返った。と、その瞬間、勢いよくドアが開いた。
「村長っ!!!!」
キールだった。キールは村長のもとに駆け寄り、
「なぁ村長!! ヴェンはどうなっちまうんだ!? なぁ!! 教えてくれよ!! 売られちまうのか!? そんなのってありかよ!!」と叫んだ。
ジェイ以外の全員が、自分たちの良心が痛むのを感じた。
ジェイはキールをギロりとにらみ、
「お前には関係ないと言ったはずだ!! ガキのくせに正義ぶってんじゃねえ!! これは村の問題なんだ! たとえヴェンが売られようと、それが村にとって必要な事なら俺は迷わずそうする!!」
キールは、もう言葉に詰まらなかった。
「全部が全部完璧なロボットなら、もう人間はいらない! っつーかさ、あんたらはヴェンを労働力としてしか見てないんだろ? まずはヴェンを仲間として、いや人として見てやれよ! あんたらは人を売り買いするのか!? あんたらがやろうとしている事は人として最低の事だ! 正常な人間だったら、心が痛むはずだ! あんたらは異常者だよ! 出来るものなら、俺はあんたらを売り飛ばしてやりてえよ!!」
初めてヴェンと出会った時と違い、今回は同情では無かった。自分が正しいと思うことを、信念を持って叫んだ。
「まるでヴェンが人間みたいな言い方だな。しょせんロボットは感情を持たない。生物とすら呼びがたいあの物体を、お前は人間と呼ぶのか?」
ジェイはキールの怒声をものともせず、静かに言った。
「物体、だと・・・・・・?」
集会所の外で、風が吹いた。木々がざわめく。
「あんたはいつもそうだっ!! 仕事と自分の事以外には全く興味を持たず、家族にだって優しい言葉なんかかけやしない!! 俺はあんたを父親として認めない!!」
キールの怒りはもはや頂点に達していた。
「ラチがあかないな。村長、ヴェンには俺から言っておくよ」
そう言って、ジェイは集会所を後にした。キールはすぐさま、「待てっ!!」と叫んで、ジェイの後を追った。



ヴェンは家に帰ると、激しい虚無感に襲われた。
僕は人の役に立つために生まれてきたんじゃないのか。つらい仕事をして、それでも役に立てないのなら、なぜつらい仕事をするのだろうか。
自問自答を繰り返す。と、そこにディアが姿を見せた。
「どうしたの、ヴェン。元気ないぞっ」
この1ヶ月間、ディアとキールが励ましてくれなかったら、僕はもうこの村にいなかっただろう。
「ねぇディア」
時々、激しい孤独感に襲われる。そんな時、ディアの笑顔で癒されるんだ。
「どうして僕にこんなに優しくしてくれるの?」
ディアの口から、すぐには答えは出なかった。
好きだからだよって言って欲しい、と切実にヴェンは思った。
しかしディアの口から出た言葉は、期待を裏切るものだった。
「私、兄弟いないからさ、ヴェンが弟みたいで嬉しくってさ!」
やっぱり、ロボットを好きになることなんてないんだ―――
わずかに信じていた希望が、一瞬にして消え去った瞬間だった。
そして、ディアが見せた沈黙は本当の感情を隠していることに他ならない、という事実にヴェンは気づかなかったのだった。
ディアは思う。ヴェンをどんなに人間だと思っても、最後のところでやっぱり決断できなかった。
結局私も他の人たちと同じで、ヴェンを悲しませてしまうんだね。
その時だった。ディアは、体を閃光が突き抜けたような感覚に陥った。
え・・・・・・なにこれ・・・・・・痛い、息が苦しい・・・・・・私どうなるの・・・・・・?

青い空、風も無い。二人の男の姿だけが、まるで雲のようだった。
「待てっつってんだろ!!」
キールの叫びが晴天の空に響く。ジェイは振り返り、はぁ、とため息をついてキールの方に歩み寄った。
すぐさまドスッという鈍い音が響き、キールのうめき声が聞こえた。
「がはっ・・・・・・何すんだよ・・・・・・」
キールはひざを地面につけ、少しずつ意識が薄れてゆくのを感じた。
ジェイは、ちっ俺だってこんな荒いことしたくなかったのによ、とつぶやき、
「少し頭を冷やしてろ。その場の感情だけで行動したら、こんな風に痛い目にあうぞ」と言った。
キールはもうろうとする意識の中で、ジェイのもとに誰かが走って来るのを見た。
誰だ・・・・・・ゲンドおじさんか・・・・・・? なに・・・・・・ディアがどうかしたって・・・・・・?
悔しくも、キールの意識はそこで切れた。ジェイはすぐさまディアの家に向かった。
それは、普段は静かなこの村で、これから何かが起こる予兆のようだった。

10

ディアの家に、村中から続々と大人たちが集まってきていた。
「ヴェン!! 何があったんだ!?」
ジェイが駆けつけて、ヴェンにたずねる。
ヴェンは、気が動転し言葉にならなかった。
「二階からヴェンの叫び声が聞こえて、俺が来た時にはもう意識は無かったよ」
代わりにゲンドが答えた。ヴェンはようやく呼吸を整え、
「は、はなしてたら突然倒れたんだ・・・・・・なんでなの? ディアどうなっちゃうの?」
そう言った直後、村の医者がようやく到着した。
すぐさまディアの意識・脈拍の有無などを調べ、呼吸を整えて言った。
「恐らく急性セイレ病だと思われる。ほら、腹のあたりにわずかだが突起があるだろ? この病気は、未だ明確な原因こそ解明されていないが、特効薬が既に開発されている。街の大きな病院に行けばあるだろう。ただ、急がなきゃならん。患者によっていつ急変するかはまちまちだが、必ず48時間以内に急変する。もしそれまでに特効薬を投与できなかったら、確実に死に至る、恐ろしい病気だ」
ゲンドはこの事実を聞いた途端、がっくりとうなだれて涙を流した。
そして他の村民たちも同じように、涙を流した。
ヴェンには何がなんだかわからなかった。
ジェイはそんなヴェンに気づくと、説明を始めた。
「いいか、この村からおよそ500km離れた所に、お前が売られていた街、リーベルがある。あそこに行けば確かに薬は手に入るだろう、だがな、この村とリーベルを結ぶバスは毎週木曜日しか走らないんだ。この村には車なんかありゃしない、歩いて村中行けるくらいだからな。今日は金曜日、つまり俺たちが48時間以内にリーベルに行って戻ってくることなんか不可能なんだよ」
気丈に説明するジェイの頬にも、涙がつたっていた。
「電話して迎えにきてもらえばいいんじゃないの・・・・・・?」
ヴェンは希望を捨てなかった。しかしジェイはすぐに首を振った。
「電話なんかこの村にはねえよ・・・・・・くそっ!!」
ジェイは床にひざをつき、拳で床を殴り、叫んだ。
「新しい技術についていかなきゃ駄目なのかよ!! 古い人間は死んでもしょうがないのかよ!! 古い人間は、楽しく生きることすら許されないのかよ!!」
ジェイの悲痛の叫びが、全員の心に響く。
ヴェンは、ふと、自分なら行って帰ってこれるかもしれない、と思った。
しかし、それを皆に言ったら止められるだろう。
いや、僕なんてもうどうでもいいのかもしれない。
頭で結論が出る前に、ヴェンの体は走り始めていた。
「よすんじゃヴェン!」と村長が止めたが、振り返らなかった。
村人たちは皆、ジェイの発言がヴェンにも向けられていた、という事実に気づかなかった。
しかし村長はジェイの真意に気づいていた。
「ジェイよ。ヴェンはお前の言葉など気にせずに、ディアのために走り始めた。新しい技術があったら、より楽しく生きれる場合がある、とわしは思うよ」
「ロボットが悪口を気にするわけないだろうが。ロボットには感情が」と言いかけて、ジェイはハッと気づいた。
「おい皆。ヴェンはロボットのようでロボットじゃないんじゃないか・・・・・・? 感情を持たないロボットが、なぜディアを助けたいと思う? なぜ自分の体が壊れるかもしれない程のリスクを背負って、人を救おうとする? 思えば今まで幾度かおかしな事があった。あいつは、ヴェンは感情を持っているとしか思えない!」
ジェイの言葉が終わるか終わらないかの時に、ゲンドが強い口調で言った。
「いいじゃないか、そんなこと。あいつは俺たちの仲間で、お前がどんなに新しい技術を嫌おうと、俺たちはあいつを受け入れる。売らせなんかしない! それに、今ディアを救う可能性があるのはあいつしかいないんだ!」
ジェイは、いつも自分に対して意見を言うことの無いゲンドが、自分に反論したことに戸惑い、黙った。
今自分たちにはただ待つことしかできない。村人たちは皆、目の前で消えかかっているディアの命と、それを救うために消えるかもしれないヴェンの“命”、共に助かることを望み、ただひたすら現実を耐え忍んだ。

11

同じ頃、外では日ももう沈みかけ、夕日が美しい光を放っていた。
そんな美しい光に照らされている世界ロボット機構本部の中で、テイルは苦悩していた。
牢へ行く階段の入り口には見張りが二人。たとえそこを突破したとしても、階段の入り口は会議室にある。
不可能だ・・・・・・脱出なんかできるはずがない。ん、待てよ、脱出・・・・・・?
そうかっ!! 無理に脱出させる必要は無いんだ。処刑の時、必ず牢から出ることになる。
チャンスはその時しかない。処刑場はここから1km離れたところにある。
やはり狙い目は移動中か・・・・・・でもどうやって・・・・・・やはり、あれしかないか・・・・・・
へっ、今さらもったいぶることねぇか。脱出させること事態が犯罪だもんな。
あいつは、フィンは俺に大切な事を教えてくれた。
あいつを助けるためなら、俺はどうなったっていい!
テイルは結論を出すと、すぐに世界ロボット機構本部を出た。

しかし、会長室ではテイルの予想外の事態が起きていた。
「来たか、ドルガー」
ドルガーと呼ばれたその男は、銀色に染められた髪をなびかせ、会長室に入って来た。
「何の用ですか、会長」
二人きりの会長室には、緊張感が漂っていた。
スネルは、いよいよだ、とつぶやき、呼吸を整え語り始めた。
「明日の朝刊に例の記事が載る。あのロボットが助けに来るかどうかはわからん、新聞を見ない可能性もあるからな。そこで、お前にはテイルを尾行してもらう。最近のあいつはどうもおかしい、おそらくフィンを脱出させようとでも考えているのだろう。あいつが明日この建物に入ってから、ずっと尾行してくれ。こっちはロボットが来た場合に備えて、対処しておく」
ドルガーは、わかりました、と言い部屋を出て行った。
一人きりになった会長室で、スネルはふと右腕の古傷を見て、昔を思い出す。
「もうすぐだ・・・・・・もうすぐで俺の野望が達成するんだ・・・・・・」

その夜は、満月が一晩中淡い光を放っていた。

12

キールは、朝日が昇り始めた頃にようやく目を覚ました。
「ん・・・・・・あれ・・・・・・俺なんでこんなとこに・・・・・・何も覚えてねぇ」
ふと周りを手探りする。すると、石の下に一枚の紙が敷かれていた。
“こんな所で寝てたら風邪引きますよ。目が覚めたら村長の所に行ってください。ヴェン”
ようやく昨日の出来事を思い出した。途端に、ジェイへの怒りがこみ上げた。
「違う違う、今はそれどころじゃない。ディアに何かあったんだ!!」
湧き上がる怒りを押し殺し、村長のもとへ走った。

「村長!!」
キールがすごい勢いで村長の家に来て、叫んだ。
村長は少し驚きながら、「こんな時間にどうしたんじゃ」と尋ねた。
キールはこれまでの状況を説明した。それを聞いた村長も、今の状況を説明した。
「ディアの所へ行きたい気持ちはわかるが、今はそっとしといてやろう」
キールは、はやる気持ちを抑えられず、「ねぇ村長。俺は待ってるだけしかできないの・・・・・・?」と尋ねた。
村長は、意を決したような表情でキールを見て、言った。
「ならばわしが面白い話を聞かせてあげよう、ほっほっほ」
キールは一瞬戸惑ったが、村長のことだからきっと何か意味があるんだ、と思い、うなずいた。
村長はゴホンと軽く咳払いをして、語り始めた。
「ある村に、フィンという子供が居た。フィンの両親は貧乏で、フィンを養うために必死に毎日働いた。父親はリストラされたのをフィンには言わず、寝る間も惜しんで毎日アルバイトを続けた。その結果、母親は体を壊して早くに死んでしまった。そして父親もだんだんとやつれていった。フィンは小さいながらも、今のお前のように、自分に何かできないか、と必死に考えた。そしてある日、ロボットを作って代わりに働いてもらえば父親の負担は減るんじゃないか、と考えた。フィンはその日から熱心に勉強をするようになった。やがてフィンはロボット研究所に就職し、安定した収入を得られるようになった。そして毎月、父親に仕送りをした。しかしいつしかフィンは、ロボットを作りながら、本当にこれで良いのか、と考えるようになった。フィンは小さい頃から、ロボットを働く道具としてだけではなく、パートナーとして、家族としてのロボットを作りたいと思っていた。そのためには、ロボットに感情を持たせるしかなかった。そしてフィンは、最先端の技術を用いて感情を持つロボットを作った。しかし、感情を持つロボットはロボット業界ではタブーとされており、ロボット機構は生産を全面禁止、開発者を処刑という厳しい制度を設けた。フィンはやむを得ず、そのロボットを父親のいる村へ送った。できるだけ村の人たちには気づかれないように、色々と裏で手を回してね。しかし、フィンがそこまで苦労して送ったそのロボットは、若者より仕事が出来ない、という理由だけで村から追い出されようとしている。もともとそのロボットは働く機能よりパートナーとしての機能をメインにしていたため、働けないのは当然なのにね・・・・・・」
村長の視線は、遥か遠くのどこかに向けられていた。
キールはすぐに、「ねぇ村長それって・・・・・・」と言いかけたが、村長は、ふぉっふぉっふぉ、と笑い、布団に戻って行った。

キールは外に出ると、ふと、一週間ほど前にヴェンに相談された内容を思い出した。
その日もヴェンはジェイに怒られ、役に立たない自分を嘆いていた。
そしていつものように俺はヴェンを慰めた。
確かその時だ、ヴェンは急に真剣な表情をして、俺の眼を見た。
そして、言うのを迷うような表情を見せた後、「感情があるロボットって、変なんですか?」と言った。俺はすぐさま、「え?」と言った。ヴェンは慌てて「僕の話じゃないんですけど、僕のロボット仲間で、感情を持っているロボットがいるんです。そしてそのロボットは、人間に恋をしたらしいんです」と言った。
続けて、「キールさん・・・・・・ロボットは恋をしちゃ駄目なんですか・・・・・・?」と言った。
そう言ったヴェンの声は、震えていた。まるで、人が泣いている時のように。
その時は、ヴェンってなんて優しいやつだ、友達のことにここまで本気になってあげれるなんて、と思った。
けど今、村長の話を聞いて確信した。あれは、ヴェン自身のディアへの恋だ。
ヴェンはきっと一人で悩み、苦しんだに違いない。
けど――俺には、悔しいけど俺にはヴェンの問いに答えることが出来なかった。
俺だって、出来ることならヴェンの願いを叶えてやりたい。だけど、この現代の社会や制度がそれを許さない。
いや、待てよ・・・・・・社会や制度なら、変えられるんじゃないか・・・・・・?
へっ、俺にもやれる事がようやく見つかったよ。なぁヴェン、ロボットは人を愛せるよ。

ディア急変まで、残り0〜34時間。キールはようやく、光の射す方へ歩き始めた。

13

午前六時になると、老人から順に村の人々が起き始めた。
この日は珍しく早起きしたジェイは、朝刊を見て言葉を失った。
すぐさま家を飛び出し、村長の家を目指して走り出した。
途中、ゲンドが合流した。ゲンドは息を切らしながら、「若いやつらはまだ寝てらぁ。俺らだけでさっさとこの問題の対処法を考えよう」と力強く言い、共に村長の家を目指した。

村長の家に着くと、中では村長が寝ぼけ眼で朝食を食べていた。
ジェイは呼吸を荒げながら、「朝飯なんか食ってる場合じゃねえだろ! 朝刊は見たんだろうな!?」
「朝刊? ああ、今日はまだ見とらんかったわ」
村長は、やれやれキールの次はお前らかい、とつぶやき、朝刊を見た。
朝刊の一面には、まるでテロが起きた時のように巨大な文字でこう書かれていた。
“感情を持つロボットついに現る”
『昨夜未明、世界ロボット機構会長のスネル氏が、全新聞社向けに緊急会見を行った。話によると、業界でタブーとされていた人工知能を備えたロボットがある科学者の手によって作られ、ロボット機構は急遽対策を行い、その科学者を本日午後一時に、ロボット機構近辺の処刑場で処刑すると言う。スネル氏はまた、「知能ロボットを人間とどこまで同じように扱うかなど、決めなければならない問題が多数残されており、現段階で知能ロボットを作るのはあまりに危険。科学者が悪を教え込めば、そのロボットは悪の道に走る可能性がある。人間の威信を考えると、知能ロボットの実現はしばらく先になるだろう」としている。ちなみに人工知能システム自体は、ロボット機構の中でも最先端の科学者たちによって研究されており、ある程度完成していると言う。ある関係者によると、「確かに知能ロボットはタブーとされていたが、並の科学者じゃ作れるはずがない。ロボット機構に何らかの形で関わっていたのでは」という。問題のロボットは、未だ見つかっていない』
村長は記事を見終えると、観念したかのように、先ほどキールに話した事を全て二人にも話した。
ジェイは話を聞き終えると、「フィンか。会ってみてぇな、そいつに。この新聞を見た正義感溢れるやつが、処刑をぶっ壊してくれりゃいいのによ。本当の幸せってモンがフィンの目指す先にあるのなら、俺もそいつを見届けてえよ」と言った。
村長とゲンドは、ジェイらしくない発言に思わず笑った。
「な、なにがおかしいんだよ。ちくしょう、新しい技術でも幸せになれるって言ったのは、あんたじゃねえか村長」
村長はふぉっふぉっふぉと笑い、「あぁそうじゃそのとおりじゃ」と言い、また笑った。
ゲンドもしばらく笑っていたが、「このことは、ヴェンには伏せておこう。幸い今ヴェンは居ない。村の皆にも俺から伝えとくよ」と少し真面目な顔をして言った。そしてディアの事を思い出すと、急に居ても居られなくなった。

その頃ヴェンは、走り続けていた。体中からキシッキシッという音が聞こえる。
出発からおよそ15時間ほど経過したが、異常なまでのスピードでヴェンは走っていた。
その甲斐あって、ヴェンの視線の先にリーベルの町並みが写った。ヴェンは少しホッとした。
すぐさま大きな病院を見つけ、実に早く薬を入手した。休む間もなく、ヴェンは再び走り出した。
今自分が休んだら、後で後悔するかもしれない。たとえこの体が壊れようと、ディアの命には代えられない!
ヴェンは強い意志を持って、まっすぐに村を目指した。

そしてまた同じ頃、ある家の一室で、テイルは朝刊を見て愕然としていた。
スネルめ、とうとう動き出したか――不安とともに、少し意外な感じがした。
なぜフィンを処刑してから新聞に載せなかったのだろうか・・・・・・
こんなことを書いたら、誰かが処刑をぶち壊しに行くかもしれないのに。
実際、最近では公開処刑がぶち壊されることが頻繁にあった。もちろんぶち壊したら自分が逆に死刑になる。
見せしめとして屈辱を与える公開処刑という形を、なぜ今回採用したのだろうか。
考えれば考えるほど嫌な想像が頭に浮かぶ。そしてそれは、確信へと変わった。
わざとフィンを逃がす気だ。そして尾行してロボットをも捕まえる気だ・・・・・・
やはり自分がフィンを逃がし、しばらく動向を見て、尾行の不安が完全に消えてからロボットのもとへ連れて行くしかない!

フィン処刑まで残り七時間。運命の時が、刻一刻と迫って来ていた。空には雲は無く、太陽の光だけが地上に注がれていた。

14

ロボット機構本部の地下室にある牢。そこには光は届かず、昼間だというのに暗闇で包まれていた。
フィンは時間もわからず、気が狂いそうであった。
突如ガチャッという音が聞こえたかと思うと、地下室が人工的な光に包まれた。
「フィン、そろそろ処刑場に向かうそうだ」
見張りの男だった。フィンは潔くうなずき、牢を出て会議室に向かった。

会議室にはスネルをはじめ、幹部たちが全員揃っていた。
しかしそこにテイルの姿は無かった。フィンは、それでもまだテイルを信じることをやめなかった。
「やぁフィン博士。気分はすぐれているかい? 我々は処刑場には行かないが、せいぜい美しく散ってもらいたいものだ、ワッハッハ」
スネルの汚い笑い声が会議室に響いた。フィンは何も反応を示さなかった。
両手に手錠をかけられたまま、車に乗せられた。車はゆっくりと走り出した。

ちょうど二度目の交差点に差し掛かった時だった。フィンの耳に、ドォン!! という激しい音が入ってきた。
「なんだっ!?」
運転手が慌てふためく。音の正体は銃弾だった。タイヤを撃ち抜かれた車は制御不能に陥り、道路脇の店に突っ込んだ。バァン! という音を立て、店が崩れる。フィンは何が起きたのか理解できなかった。自分が生きているかどうかさえ、心配になった。心臓に手を当てる。力強く鼓動している。自分は生きていたのだ。
「フィン!!」
車の外から叫び声が聞こえる。テイルだった。テイルは、崩れ落ちた店の破片に埋もれた車の中からフィンを連れ出し、全力で走った。
「待て!!」
背後から男の声が聞こえる。テイルは決して振り向かず、フィンの手をしっかりと握り自分の車に乗り込んだ。フィンは乗り込む際、後ろの光景がふと目に入った。一人の男が自分たちを追っていた。
「銀色の髪・・・・・・まさかな」
二人を乗せた車は、隣町のある工場跡へ向かった。工場跡へ着くと、中には隠れ住むのにもってこいの環境が広がっていた。
「さすが、俺が信じた男だけあるぜ」
フィンは感心し、すぐに布団にくるまった。
「ここしばらく安心して寝れなくてよ」そう言うと、すぐに眠りについた。テイルはホッと一息をつき、フィンでもやはり死が怖かったのだな、と思った。そして自分も布団にくるまり、ゆっくりと目を閉じた。

「ディア!!!」
叫びながら、ヴェンはとうとう家に到着した。時刻は午後九時だった。
ディアのそばには、医者とゲンドがいた。ゲンドはボロボロになったヴェンの姿を見ると、思わず涙を流した。
ヴェンは、まだ温もりを持っているディアの姿を見て、ようやく安心した。
すぐにディアに薬を飲ませた。
「明日の朝には目を覚ますでしょう。もう大丈夫ですよ」
医者はそう言って、家を出て行った。ヴェンは言いようのない喜びに包まれた。しかし、もはや体は限界に達していた。ヴェンはゆっくりと床に崩れ落ちると、静かに目を閉じた。
「おい・・・・・・おいヴェン!? しっかりしろ!!」
しかしゲンドの声は、もはやヴェンには届いていなかった。

15

フィンを助け出してから、早くも一週間が過ぎた。
フィンは日に日に生気を取り戻し、もう十分元気になっていた。
そして、そろそろテイルに過去に何があったか全てを話す時期だな、と思っていた。
「なぁテイル、大事な話があるんだ」
「なんだよあらたまって」
フィンは意を決して、全てを語り始めた。
「実はな・・・・・・一年とちょっと前、ちょうどウォンバーが会長になった直後まで、俺は世界ロボット機構の人工知能プロジェクトに携わっていたんだ。俺は幼い頃に両親が過労で苦しんだのを見て育ったから、人一倍労働ロボットに対する想いが強かった。独自の路線で人工知能を開発していたら、世界ロボット機構に誘われてな。俺はチャンスだと思い、自分の力を最大限発揮した。そして二ヶ月ほどで人工知能は出来上がったんだ」
まだ話し始めたばかりだというのに、テイルの表情は驚きで満ちていた。フィンはさらに続けた。
「当時、人工知能プロジェクトは極秘中の極秘で、開発者以外で知っていたのは当時の会長ルーカスだけだった。ルーカスは真面目な男でな、知能ロボットをどう法律で位置づけるか、それをずっと迷い続けていた。俺はよくルーカスと今後のロボットと人間との関係について語り合ったもんだ」
フィンは感慨深げな表情を浮かべていた。その後何か悪いことが起こったのは、テイルにも予想できた。
「・・・・・・しかしな、そんな日々は長くは続かなかった。会長選でルーカスがウォンバーに敗れたんだ。ウォンバーは金を使い、巧みに会長選を勝利した。けどな、本当に巧みだったのはウォンバーの秘書のスネルだった。ウォンバーはスネルに利用されたんだよ。スネルは自らを副会長というポストに置くことで、裏で動きやすくした。スネルは迷うことなく人工知能をロボットに搭載し、『ゼロ』という名の知能ロボットが誕生した。・・・・・・残念ながら俺が知ってるのはここまでだ。俺はスネルの行動に怒りを覚え、組織から脱退した。その後、風の噂でスネルが知能ロボットを大量生産して何かをやらかそうとしてるらしいと聞いた。もっとも、何が目的なのかはスネル以外の誰にもわかりゃあしないがな」
「・・・・・・あんたの知能ロボットはいつ?」
「あぁ、『ヴェン』のことか。組織を脱退後、俺なりの信念を持って作り上げた。けどな、まずはこの国の法律から変えなきゃいけねえんだよ。だからヴェンには1年間かけて人前で感情を出さないように教えた。本当におかしな話だよ。俺たち人間が感情を表現できなかったらどうなる? 俺はあいつに最低なことを教えたんだよ。しょうがなかったとは言え、今では後悔してるよ。ヴェンは今、俺の親父が村長を務めている村に居る。できるだけ早く、教えてやらなきゃならない。感情の大切さを、温もりを!」
テイルの心に、怒りにも似た思いが込み上げてきた。
「もう尾行はされていないはずだ。行こう、その村へ。スネルは今俺たちがどうにかできる相手じゃない」
フィンはテイルの言葉にうなずいた。二人はその日の晩、ヴェンの居る村へと旅立った。

16

ディアは、もう普段と変わらない生活ができる程まで回復していた。
しかし、ゲンドの「ゆっくり休め。無理をするな」という勧めを受け、今日もベッドで休んでいた。
窓から青空を見ていると、ヴェンとの今までの思い出が夢だったかのように思われた。
ヴェンが倒れ、未だ動かないという現実を、ディアはまだ受け止めることができなかった。
「おう、ディア。ずいぶん元気になったな」
ゲンドだった。いつものようにすりおろしたリンゴを持ってきた。
それをスプーンですくいながら、ふと、ヴェンに好きだと言えなかった事を思い出した。
――あの時私は、頭ではわかっていても、心からヴェンを好きなのかどうか自信が持てなかった。ヴェンがロボットだから、ただそれだけの理由でヴェンを悲しませてしまった。なのにヴェンは、命を懸けて私を助けてくれた・・・・・・
ディアの心は、言いようのない感情でいっぱいになった。
「ねぇお父さん」
そしてその感情を、父に説明してほしかった。ただ答えがほしかった。
ディアは、今自分が感じ悩んでいることを全てゲンドに話した。
ゲンドは記憶を探るように、何も言わず天井を見上げた。
そしてニッコリとディアに笑いかけ、
「Silver Loveだな、そいつは」
「シルヴァー・・・・・・ラブ・・・・・・?」
「そうだ。それはSilver Love、つまり偽りの愛だ。お前は今までヴェンを人間として見てきたつもりだったかもしれないが、結局それは世間体を気にしてただけだったんだよ。けど今お前の中で、ヴェンへの偽りの愛が、本当の愛へと変わり始めてる。お前はそれに戸惑っているだけだ。今お前はようやく、ヴェンを初めて対等に見てやったんだよ」
ディアは確かに、ヴェンへの気持ちが変わり始めているのを感じていた。
同情などではなく、心の底から熱い気持ちが溢れ出てきていた。

ヴェンはキールの家で、いつ終わるかわからない休息を取っていた。
動かなくなったヴェンの髪を、そっとなでる。
今のキールには、それしかできる事が無かった。
聞こえていないとわかっていても、毎日同じ事をヴェンに語りかけた。
「なぁヴェン、俺は人間とロボットが共存できると思うんだ。俺は必ず政治家になってこの国の法律全てを変えてやる! そしたらヴェンももう苦しまなくてすむんだぞ!!」
声の大きさとは反対に、キラリと光る粒がキールの頬を伝った。
ヴェンを強く抱きしめ、さらに涙を流しながら、
「・・・・・なぁヴェン・・・・・・だから目を覚ましてくれよ・・・・・・」
そう言ったキールは、激しい無力感に包まれていた。

17

「ついた、ついたぞ!!」
眠気疲労で限界が近づいていたテイルにとって、朗報だった。
二人の視線の先には、ヴェンがいる村「ムー」があった。
フィンはすぐさま腕時計で時間を確認し、12時か、とつぶやくと、真っ先に村長である父のもとへ向かった。
村は狭く、すぐに村長の家へ到着した。
ドアをノックしようとした時、テイルがふと言った。
「なぁ、ちょっと気になったんだけど、あんたこの村で育ったんだろ? もしあんたが新聞に載っていた男だとわかったら、村民の中に裏切るやつも出てくるんじゃないか?」
「大丈夫だ。俺と親父はこの村で育ったわけじゃない。俺が就職してから親父はこの村に来たんだ。一度、ここへ来たことはあるが、ただの村長の知り合いってことで済むはずだ。それに俺の事は、親父と親父が心を許す人にしか言わないつもりだ」
テイルは安心したような表情を見せて、つぶやいた。
「俺はこういう平和な村で生まれたのかな・・・・・・」
「記憶が無いのか?」
「あぁ、幼いころの記憶が全く無いんだ。いつしか俺は、ロボット機構で働いていた」
フィンはもう少しテイルの過去について聞きたかったが、今はまず目の前の事をすべきだと思い、そうか、と言って今度こそドアをノックした。
「なんじゃこんな夜更けに」
目をこすりながら、村長が顔を見せた。そして、フィンと目が合った。
「よう、親父・・・・・・」
長い沈黙があった。この場だけ、時間が止まったようだった。
テイルには、二人が心と心で会話をし、これまでの空白の時間を取り戻しているかのように感じられた。
テイルは、ちょっと散歩でもいってくる、と言ってさりげなく席を外した。テイルにできる唯一の心遣いだった。

村のはずれの丘で、テイルは朝日を浴びて目を覚ました。
あくびをして、腕時計を見た。朝の七時だった。
村長の家に戻ろうとした、その時だった。
「あんた誰?」
子供の声だった。振り返ると、ブロンド色の髪をした少年がこちらを見ていた。
「おいおい最近のガキは敬語も使えないのか? それに相手の名前を聞く時は、自分から言うのが礼儀ってもんだ」
「キール」
「ほう、良い名前だ。言っとくけど俺は怪しい者じゃないぞ」
そう言っても、明らかに自分を怪しそうな目で見ている。
「おじさん、村の外から来たんでしょ? 俺、外の世界にすげぇ興味があるんだ。俺は大人になったら絶対政治家になって、ヴェンを救うんだ!!」
キールは、しまった、というような顔をした。
「ヴェン・・・・・・? そうか、そうか。良かったなぁキール、話したのが俺以外の人だったら、とんでもない事になってたかもしれない。けどな、安心しろ。俺はヴェンの味方だ。さぁ、一緒に行こうじゃないか」
キールは疑いの目を向けながらも、テイルと共に村長の家に向かった。

18

「話は終わったかい、フィン」
すでに村長とフィンとの話し合いは終わり、二人とも眠そうな目でこちらを見ていた。
「おう、で、そいつは?」
「あぁ、こいつはキールってんだ。ヴェンのことを知っていた」
フィンは驚かなかった。村長に全てを聞かされていたからだった。
テイルは村長の家に残り、村長からこの村で何があったのかを聞くことにした。
キールとフィンは、キールの家に向かった。そう、ヴェンのもとへ。

キールの家に着くと、ジェイが何も言わずヴェンの顔をじっと見ていた。
こちらに気づくと、恥ずかしそうな顔を見せた。
そして、キールの隣にいる男がフィンであるということにすぐに気づいた。
「あんたがフィン、だろ?」
「そうだ。うちのヴェンが色々と迷惑をかけたみたいで、すまなかったな」
フィンはすぐにヴェンの体のあちこちを調べた。すぐにホッと安心したような表情を見せた。
「これならすぐに直る」
キールはその場で喜びのあまり叫びたかったが、ジェイがいるのでやめた。
フィンがテキパキとヴェンを修理しているのを見ながら、ジェイは尋ねた。
「なぁ、新しい技術が普及したら、その方が確実に人は幸せになれるって断言できるか? 他の生物には構わず、環境をどんどん悪くする。それを本当の幸せと呼べるのか?」
「呼べる」
フィンは断言した。ジェイは驚きを隠せなかった。自分の長き悩みに、ついに答えが出ようとしていた。
「今どんなに苦しもうと、この先科学技術が進歩していけば、いずれ永遠の命が得られる時が来るかもしれない。人間は、今はまだ他の生物を構ってはいないかもしれないが、いつかきっと、全ての生命が平等に生きる時代が必ずくる。俺らの役目は、その時代へできる限り早く到達すること、ただそれだけなんだ」
フィンは、ジェイの予想以上に確かな信念を持っていた。ジェイは、結局自分も、今幸せになるための事しか考えていなかったということに気づかされた。
「そうか・・・・・・今より未来のために。そうやって技術は進歩してきたんだな。たとえ今は幸せじゃなくても、いずれ生まれてくる人が幸せになるために・・・・・・」
そう言うと、ジェイはヴェンのそばに寄り、震えながら続けた。
「すまねえなぁヴェン・・・・・・許してくれ・・・・・・」
――親父はただ、古い仕事にこだわっていたわけじゃなかったんだ。親父はやっと、長い迷路から抜け出したんだ。これからはきっと心にも余裕ができて、良い親父になるんだ、きっと。
「よし、直った。ヴェンは空気中の酸素からエネルギーを取り出す仕組みを用いているんだが、そのエネルギータンクが故障していた。しばらくエネルギーが溜まるまで時間がかかるだろう。溜まったら、目を覚ますはずだ」
すぐにキールが聞き返した。
「どれくらい?」
「明日の夜までにはおそらく」
――明日。明日ついに、ヴェンに会える。
「さて、フィン。今日は俺の仲間のゲンドと語り合おうぜ。よっこらせっと」
フィンの返事を待たずに、ジェイはゲンドを呼びに行った。
その晩は、夜遅くまで家の明かりが消えなかった。

同じ頃。「はっはっは、実に愉快だ」
スネルの人を馬鹿にするような笑い声が、会長室に響いていた。
「ドルガー、明日ムーへ行くぞ。この長き問題も、いよいよ終焉の時を迎える」
「わかりました」
スネルは今までの事を思い出していた。ウォンバーを利用し、知能ロボットを作り上げ、野望はもうすぐ達成できるはずだった。しかし、予想外に別のところでも知能ロボットが誕生し、結果的に知能ロボットの存在が国民に知れ渡った。
――まだ俺の野望は実現できる。あのロボットを消し、存在を再び闇のもとにさえすれば。
これ程までに、明日が待ち遠しいと思ったことは無かった。明日になれば、再び自分は野望の実現に向けて動き出すことができる。
ドルガーもまた、明日になれば自分がずっと悩んでいたことの結論が出ると思っていた。

天気は快晴。運命の日が、いよいよやって来た。

19

ゲンドが目を覚ましたのは、昼過ぎだった。ジェイとフィンはまだ寝ていた。
二人を起こさないようにそっと顔を洗い、ジェイの家を出て、自宅へ向かった。
「おうディア、さすがにもう大丈夫だな」
家に着くと、ディアが家事をしていた。
「当たり前じゃない、あんなに寝てたら逆に具合悪くしちゃうわよ」
二人とも笑い、和やかなムードのなったところで、ゲンドは話を切り出した。
「それで、ヴェンの事なんだがな。今夜までにおそらく目を覚ますそうだ」
「良かった・・・・・・」
ディアはホッとしたような表情を浮かべた。そして、確かめたいと思った。
本当に自分はヴェンが好きなのか。自分の気持ちに嘘をついていないのか。
「昼すぎにジェイの家に行こう。もしかしたら早く目を覚ますかもしれないしな」
ディアは強くうなずいた。とびっきりの笑顔だった。

意識が戻り、時計を見ると、既に午後一時だった。
テイルは慌てて布団を飛び出し、居間へ向かった。
「すいません村長さん。疲れがたまっていたもので熟睡してしまいました・・・・・・」
「ほっほ、いいんじゃよ別に。さっきキールが来て、お前さんが起き次第ウチに来てくれと言っておった。急いで準備をしてくれるかね?」
「はっ!!」
テイルは思わず敬礼をして、すぐに準備を始めた。
二人が家を出たのは、それから三十分後のことだった。

同じ頃、国の最高幹部が集まる会議で、ある議題が話し合われていた。
「えー、今回皆さんに集まってもらったのは、世界ロボット機構についてです」
その場には、進行役を含めて三人の男がいた。
そのうちの一人が得意気に言った。
「私の言った通りじゃないか。やっぱり政府レベルの権力を与えるなんて間違っていたんだ。だから私はあの時言ったんだよ、こんな機構の設立には反対だ! ってね」
「今さらそんなこと言ったって過去を変えられるわけではない。それに、この国がロボット開発で他国に遅れを取るわけにはいかんのだ。機構の設立は当然の判断だ。問題なのは、会長のスネルだ。進行役、説明してやってくれ」
そう促されると、進行役はゴホンと咳払いをして話し始めた。
「ここにスネルについてのデータがあります。彼は37年前に起きた、あの大惨事の被害者でした」
男の一人が表情を強張らせて言った。
「まさか、あの奴隷事件かね?」
「そうです。幼い頃に奴隷扱いされた黒人の男が、白人の子供たちを次々とさらい、死ぬまで奴隷として働かせた、あの大量奴隷事件です。あの事件の被害総数はおよそ千人。そのうち半数が死亡しました。事件は全世界の警察が協力することによって幕を閉じましたが、被害者たちの心の傷が癒えるはずはありませんでした。どんなにつらい思いをしたか、想像するのは容易でしょう」
もう一人の男が、ふとつぶやいた。
「犯罪は犯罪を生む。まさにその通りだな・・・・・・」
「そうです。しかも彼はやっかいなことに、その照準を変えました。感情を持つロボットを大量生産し、地獄のような労働を強いて、満足感を得ているそうです。前会長のウォンバー氏が密告してくれなかったら、我々は永遠にこの事件に気づかなかったかもしれません・・・・・・」
会議室が重い空気で包まれた。対象が人間ではない犯罪。今後同じようなことが起きたらどうやって見つければいいのか。そして、どのように裁けばいいのか。誰も答えを出すことはできなかった。
「とにかく、まずはスネルを逮捕しよう。あいつは今どこにいるんだ?」
「部下に尾行させたところ、現在、車で辺境の村ムーに向かっているようです。我々も急ぎましょう!」
すぐに三人は会議室を出て、車に乗り込み、ムーへ向けて出発した。

20

ジェイの家には、ジェイ、キール、ディア、ゲンド、テイル、村長、フィンが集まっていた。
最初に口を開いたのはジェイだった。
「なぁ、ヴェンを邪魔者扱いした俺が言うのも何だけど、ヴェンが目を覚ましたらパーっと祝ってやらないか?」
賛成!!、もちろんだ、やるっきゃないでしょ、賛成じゃ。
次々と賛成の言葉が飛び交った。全員が賛成していた。
フィンはそれを見て、ありがとよ、とつぶやき、微笑んだ。
「よし決まりだ! 早速料理を作ろう。おいキール、八百屋までおつかい頼む!」
ジェイはそう言うと、メモに野菜などの名称を書き、キールに手渡した。
キールはジェイのそんな何気ない行動に、思わず微笑み、家を飛び出した。
しかしキールの視界に入ってきた光景は、とても田舎とは思えない光景だった。
いかにも高級そうな車が一台止まっており、車内から二人の男が出てきた。
一人は偉そうな男で、もう一人は銀色の髪をした男だった。偉そうな男が言った。
「やぁ少年。すまないが、テイル君の所まで案内してくれないか?」
直感で、何か悪い事が起ころうとしている、と思った。恐怖で足がすくみ、動けなかった。
嘘をつこうとしたが、明らかに動揺している今、隠し通せる自信は無かった。
キールのそんな様子を見て、銀色の髪をした男が強い口調で言った。
「俺が優しくしている間にさっさと案内しろ。ガキだからって容赦しないぞ・・・・・・」
言われた通りにするしかなかった。キールは再び家のドアを開けた。
「おうキール、ずいぶん早いじゃねえか・・・・・・ん?」
ジェイの目に、二人の男が映った。忘れかけていた記憶が頭をよぎった。
「スネル・・・・・・何でお前がここに・・・・・・」
三十数年ぶりの再会だった。しかしそれは、思い出と呼べるほど綺麗なものではなかった。
「久しぶりだなぁ、ジェイ。それにテイルもフィンも、知った顔が並んでやがる、くっくっく」
スネルは完全に勝ち誇った表情で、外に出てきてくれるか、と促した。
ジェイはすぐさま、「キール、ディア。お前たちは家にいてくれ。こっから先は大人の話だ。それに村長とゲンドもここで待っていてくれ」と言い、四人を残して、テイルとフィンと共に外に出た。
外は太陽の光が眩しく、風が穏やかに吹いていた。
「先に言っておくが、手荒な真似をしたら俺の隣にいるドルガーが黙っちゃいない。冷静に話し合いをしようじゃないか、くっくっく。まずはジェイ、久しぶりに会えてうれしいよ」
「俺はうれしくなんかないね・・・・・・過去を引きずり、今を見つめることすら出来ないお前なんかに会っても、全くうれしくなんかないよ」
「黙れっ!!!!」
「黙りゃしねえよ。お前はあの事件から全く変わっちゃいない。なぁ、何をやらかそうとしてる? 知能ロボットを大量生産して、お前一体何をやらかそうとしてる?」
スネルは呼吸を荒げながら、ドルガーに小声で指示を出した。
「おしゃべりはもうおしまいだ。フィン、テイル、お前らを今ここで処刑してやる」
ドルガーは二人に近づき、腹を殴った。二人のうめき声が漏れた。
「がはっ・・・・・・はぁはぁ・・・・・・こんなことして、ただで済むと思ってるのか・・・・・・」
「フィン、あくまで強気だな。俺は世界ロボット機構の会長だぞ? このくらいどうってことないね。さぁドルガー、この拳銃で止めをさしてやれ。これは機械でさえ吹っ飛ばすほどの威力だ、頭なんか跡形も残らないだろうよ、はっはっは」
「ふざけんなてめぇ!!」
ジェイは怒りに身を任せ、スネルの胸元をつかんだ。全力でつかんだため、スネルの服が勢いよく破れた。
あらわになった肉体には、無数の傷跡があった。思わず言葉を無くした。
「はぁはぁ・・・・・・その傷跡・・・・・・あの事件って・・・・・・まさかあの奴隷事件・・・・・・」
「死にぞこないが!! テイル、お前は死ぬんだ!! 何も知らなくていいんだよ!!」
スネルは力任せに、横たわっているテイルの腹を踏みつけた。テイルの口からうめき声がもれた。
「ふひゃはははは!! みじめだなぁテイル!! おいジェイ、余計なことをしたお前にも死んでもらうぞ。さぁドルガー、撃て」
ドルガーが引き金に指をかけた、その時だった。勢いよくドアが開いた。
「待ってよ!!!!」
声の主は、ヴェンだった。ドルガーは思わず指をはずした。
「ほう、自分からのこのこ現れるとはな!」
スネルの声に耳を貸さず、ヴェンはドルガーに語りかけた。
「僕にはわかる。君もロボットでしょ? なんでこんな悪いことを、あんな男のためにするの? 君は本当にそれが正しいと思ってるの?」
スネル以外の全員が絶句した。もう既に、ヴェン以外の知能ロボットが普通に活動していた――
ドルガーは引き金に再び指をかけようとした。しかしためらって、震えながら言った。
「会長・・・・・・俺はずっと悩んでました。なんで知能ロボットは会長以外――正確にはフィンもですが――作る人がいないのかって。しかもフィンが作った途端、法律で禁止された。けど俺はここにいるんですよ。禁止されてるはずの俺は、ここで普通に生きているんですよ。わからないことだらけなんです・・・・・・今日ここにきて、もう一人の開発者とロボットに会えば、きっと答えが出ると信じてました。けどわからなかった! そして会長は、答えに最も近い二人を殺して、存在を闇のもとにしようとしてる! 何が正しいんですか!? どうして僕はここにいるんですか!! 教えてください!! じゃなきゃ撃つことなんかできません!!」
ドルガーの真剣な思いをあざ笑うかのように、スネルはため息をつき、
「機械ごときが余計なこと考えるんじゃねぇ。それとも何か、感情を持ったからって人間にでもなったつもりか? 確かに髪を銀色にしなきゃ、外からみりゃ確実に区別はつかない。だけどな、自分自身は確実にわかる。ずっと騙し通して人間界で生きていくつもりか? 不可能なんだよ! お前はロボットなんだ! 俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ!!」
「じゃあなんで!」
ドォンッ!! 一瞬の出来事だった。ドルガーがさらに言い返そうとした瞬間、銃声が青空に響き渡り、ドルガーの腹に風穴が開いた。
「お前には失望したよ。やはり信じられるのは自分だけだ」
ドルガーはもがき苦しみながらも、残りの力を振り絞って言葉を口にした。
「はぁはぁ・・・・・・やっと・・・・・・やっとわかったよ・・・・・・こうやってロボットは・・・・・・利用されるだけ利用されて・・・・・・そして壊される・・・・・・だからそこでせめて悲しませないように・・・・・・感情を・・・・・・持たせないんだね・・・・・・」
「そんなの違うよ! 確かに悲しいことも、つらいこともある・・・・・・だけど嬉しいことや楽しいことだってあるじゃないか・・・・・・僕は自分に感情を持たせてくれたお父さんに感謝してるし、利用なんかされていない・・・・・・全部、全部あんたが悪いんだ!!!」
ヴェンの怒りはもはや頂点に達していた。体ごとスネルに体当たりをした。
「どいつもこいつもなんで俺の思い通りにならないんだ!! くそが!!!!!!」
スネルはドルガーを破壊した銃の引き金に、再び指をかけた。
ドオンッ!!! 銃声は、スネルの放ったものではなかった。スネルは地面に倒れ、吐血した。脇腹あたりから大量の血が出ていた。
撃った男と仲間が皆のもとへ歩み寄ってきて、拍手をした。
「よく戦った。我々は政府関係者だ。スネルは逮捕する。もう君たちは安全だ、おめでとう!」
フィン以外の全員が安堵の表情を浮かべた。フィンは意を決して言った。
「俺は・・・・・・俺はどうなるんですか?」
男はフッと笑い、「本来なら今ここで君は逮捕されるが・・・・・・おっと手錠を一つしか持ってきてなかったよ、はっはっは。――私は大統領になったら、知能ロボットと人間の共存について本格的な策を打ち出すつもりだ。それまで待っててくれ。そうなればきっと、君の作ったヴェン君も暮らしやすくなるだろう」
ようやくフィンが安堵の表情を浮かべた。ドア越しに見ていた村長たちも。
キールは密かに心の中で、いつか俺も変えられる立場に・・・・・・と誓っていた。
ディアはまだ足元がおぼつかないヴェンのもとへ歩み寄り、
「ヴェン、好きだよ」と言った。
二人は優しく唇を交わした。風が快く吹いた。

エピローグ

久しぶりに村を訪れたテイルは、ところどころで機械が使われていることに気がついた。
「便利になったんだなー、この村も」
感慨深げに村を歩き回っていたテイルの視界に、キールが入ってきた。
「おおキール、久しぶりだな。どうだ、勉強は順調か?」
「テイルじゃんか!! 順調すぎて自分でも驚いてるよ。このまま計画通りにいくと、十年後くらいには政府関係者かな!」
テイルはハッハッハと笑い、頑張れよ、と言って再び歩き始めた。
広場へ行くと、ヴェンとフィンともう一人の少年がいた。
「よう皆!! 久しぶり!!」
フィンはあまり驚かなかったが、ヴェンはとても驚き、喜んだ。
「久しぶりです!! あっ、この子は『ニア』って名前で、お父さんが作ったんだよ! 僕の弟です!」
ヴェンには同じ知能ロボットの弟が出来ていた。今となっては当たり前になっているが。
「そうか・・・・・・元気そうでなによりだよ。ところでディアとはあれからどうなったんだ?」
ヴェンは照れながら、「もうすぐロボットと人との間で結婚が認められるようになるんです。そしたら・・・・・・」と言った。
テイルはヒューヒューと騒ぎ立て、またな、と言ってその場を後にした。

村は良い意味で変わり、世界各国では知能ロボットも多く誕生し、色々な法律が作られた。
ロボットの髪を銀色にしなくてもよくなった今、もはや人とロボットを区別する方法は成長するか否かだけである。
ロボットは永遠に生き続け、この世が変わる様、人が死んでいく様を見続ける。
しかしそれこそがロボットしか出来ないことであり、ロボットの使命なのだ。
「今度は百年後にでも来てみるかな・・・・・・」
思わず苦笑いをして、悲しみを隠そうとした。
あれからもう五年が過ぎた。人とロボットは、共に生きていた。
2004/08/16(Mon)12:18:00 公開 / 流浪人
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■作者からのメッセージ
ついに完成しました。皆さんにご指摘いただいたように、矛盾点が多くありますが、楽しんでいただけたら幸いです。感想・批評をお待ちしております。

これからも、皆さんのご指摘をプラスにして成長していきたいと思います。感想をくれた方、どうもありがとうございました!
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