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『ジョークじゃない恋物語』 作者:夢幻花 彩 / 未分類 未分類
全角1378.5文字
容量2757 bytes
原稿用紙約5.5枚



 駄目です、あなたの事があきらめ切れない。






「彩乃、部活行こ。」
「あ、うん!!」
 私は水月彩乃。吹奏楽が大好きな中学二年生。
「鈴木君、早くいこーよ!!」

 大好きだけど・・・あなたは私の事を友達としか思ってくれない。

「ね、鈴木君」
「なに?」
「大好き」
 周りは、どっと笑う。あなたも一緒に笑う。私の言葉を冗談としか受け入れてくれない。
「俺も〜!!」
 
 誰一人として気付いてくれない。どんなにあなたが好きでも私はこの気持ちを伝える事すら出来ないの・・・


 私たちは幼馴染だった。昔はお互い名前で呼んでいたけど、私はあなたを好きになってから、苗字で呼ぶようになった。あなたは新しい私のジョークとして受け止めた。周囲も同じだった。


 いつも一緒にいるのに・・・「親友」としか思ってもらえない。



 コンサートマスターがハーモニーディレクターを前に叫ぶ。
「チューニングしま〜す!!いつもの順番で二回回してくださいっ!!」
コンサートマスターと言うのは先生がいない時に代わりに指揮をしたりチューニング(楽器はその日の気温や湿度などによって毎日音の高さが変わってしまうのでオーボエと言う楽器やハーモニーディレクターなどで合わせる)
の時に音の高低を確かめる人だ。そしてそのコンサートマスターが、私の友達の佐藤 みなこだ。うらやましい事に彼女は一回の告白で見事彼氏をもつ身になった。私には縁の無い話である。私の場合、ジョークにされてしまうのだから・・・。
「彩乃、チューナーよろしく」
「はいはい」
 ちなみにチューナーは音の高低をめで確められる機械だ。私たちは全員持っている。
「あ、B♭の音ちょっと高いよ」
「嘘?!」
 音階はすべてドイツ語。B♭はシの♭である。私たちにとってはそれは日常語。でもこんななんでも無い会話をあなたと話せることが、嬉しい。

春。
「彩乃、日曜日一緒に映画行かない?その後花見」
「いくいく、ぜったいいく!!」

夏。
「夏コン(吹奏楽の夏のコンクール。年間行事ではこれがメイン)きんしょうとろうね!!」
「もちろん。あ、今度二人で自主レンしとく?」
「・・・そうしよっか」
「ファイト!!」


秋。
「来週彩乃の誕生日だっけ?遊園地いこか」
「やったあ!」

冬。
「彩乃クリスマスプレゼント、ぬいぐるみ!!」
「私は・・・手編みのマフラーだよ」
「お、お前は俺の彼女か〜っ?!でもありがと」
「あはは・・・」

 胸が痛む。



 結局あなたには好きな人が出来た。あなたは私によく相談するようになった。それと同時に私の好きなあなたは、消えた。
「あのさぁ、彩乃」
「何?鈴木君」
あなたは恥ずかしそうに言った。
「もうその鈴木君って言うのやめてくれる?あたし男とよく間違われるんだよね」


 鈴木奈々子。・・・これが、あなたの名前。
 あなたはボーイッシュな女の子だった。ショートヘアにして、男物のジーンズ、ティーシャツ、言葉遣いも男っぽかった。

 どんなにすきって伝えても、誰も本気にしてくれない。当たり前だけど、それが淋しかった。本気で好きだったから。

 でもあなたは好きな男の人が出来た。スカートをはき、髪を伸ばした。言葉遣いも女の子らしくなっていった。私はあなたを、いや、彼女を前のように奈々子と呼んだ。

 
 さよなら。私の大好きだった人。
2004/05/05(Wed)07:11:40 公開 / 夢幻花 彩
■この作品の著作権は夢幻花 彩さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
レズッてる女の子の話です・・・え?私じゃありませんよ!確かに主人公の名前は彩乃・・ペンネームにも本名にも彩の字はありますけど・・・。吹奏楽部の中二ですけど・・・。他の友達に紹介する時に「私のフィアンセ♪」とふざけて紹介する親友いますけど・・・。(え
 恋って難しいですね♪(ホントに私はレズじゃありませんよ!!)
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