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『流れ星 第1話〜第2話』 作者:ヒイラギ / 未分類 未分類
全角3984.5文字
容量7969 bytes
原稿用紙約17.45枚
出会ったと言うより、君は一方的にここへやってきた。

ずっと、
こんな平和な時代へ来れた君は幸せだと思ってたんだよ。





「流れ星」−第1話−




それは突然だった。
私が初めて流れ星を見た時、後ろを向くとそこに君がいた。
まるで、その星と一緒にここへ来たように。
だけどひと目見ておかしいと感じた。
緑の服装に帽子、かるってるリュックサックなんて今ある物とは思えない形。


「ここ・・・」
男の子は不思議そうに辺りを見わたした。
私達二人はお互いに呆然としていた。

「俺、なんでこんなとこ居るんだ?」

そんなこと言われても困る。私が聞きたい方だった。
でもこの人は確かにさっきはこの場にいなかった。
お互い見合ったまま、思い切れなくなって私は口を開いた。

「あの・・どうしてここに居るのか分からないんですか?」
「・・あぁ、俺は・・・訓練から家に帰ってる途中だった。」
「・・・訓練?」
「まぁ、ここは何処だか知らないが女がこんな夜に出歩くなんて、防空頭巾もなしに空襲があったらどうすんだ。」

え・・・防空頭巾に空襲?

「何言ってるの・・・」

その男の子が道に出ようとした時、車が猛スピードでこっちに走ってきた。
普通なら、絶対に道の端に寄るとかするんだけど、男の子はその場に立ち止まっていた。

「ちょっ!!馬鹿何突っ立ってんの!!!」

間一髪私はその子の手を掴んで引っ張った。
まったく何を考えてるんだか。

「ねぇ大丈夫?ていうかあなた、カッコからしていつの時代の人?」

冗談まじりのつもりだった。
男の子は目が点になっていた。
そして、そっと呟いた。

「ここは1945年じゃないのか・・?」










「え、流れ星見たことないの!?」


その進也の声は教室の半径5メートルには響いたと思う。

そんなに驚かなくても・・・と私は言った事を後悔した。
星を見たりするのが好きな私だったが、流れ星というものをこれまで生まれてから一度も見たことが無かったのだ。

「進也は見たことあるの?」
「そりゃぁね、天文学部の一員としてなら当然っしょ。」
「それ同じ天文学部の私にとってはかなりムカつく!」

天体学部部員は3−3では進也と私の二人だけだった。
星の事とかを話してるうちに意気投合し、今では呼び捨てするぐらいの仲だ。

「じゃぁ今日第一公園これるか?」
「え?」
「今日はどっかで流星群が通るからさ、場所は違っても一つぐらい流れ星も通るだろうよ。」
「へぇ〜。で、なんで進也と第一公園で流れ星見ないといけない訳?」
「別に俺が今日行くからそんだけ。あの公園は山に近いし、ぜってー星が良く見える!!さ、お前どうする?」

「・・・行こっかなぁ。」
「おし決まり!夜8時、遅れんなよ〜」

そんなこんなで私は8時ちょっと前、第一公園にやってきた。
空はとても綺麗で星が輝いていた。
そんな星空をずっと見ていたせいか、せっかくの進也の誘いもむなしく、あっけなく私は一つのとても綺麗な流れ星を見てしまった。

すぅっと線を引いて消えた光。



一瞬だけ違う世界に居るような心地よい感覚。
すごく感動だった。











「何ですって・・?」




「だから・・1945年じゃないのかここは?」


「あのぉ、2004年ですけど。」
「・・・・」
「2004年の7月10日ですよ。」

信じられないと言った様子。
口をあんぐりと開けている。
それは私も同様だった。

とにかく、これだけは確認したかった。



「て事はあなたは1945年の人・・・なの?」


「・・・そうだ。」




流れ星を見た感動なんて、もうとっくに消えてしまった。

近くで踏み切りが鳴り出した。
きっとそこで、進也は遮断機が上がるのを待っている。



約束したのに。

いつの間にか、私はその男の子を連れて公園をとび出していた・・・。



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公園の近くにある踏み切りが鳴り出した。


きっと今進也は遮断が上がるのを待ってる。



いつの間にか、私はその男の子を連れて公園をとび出していた・・・









「流れ星」第2話






「木村 総一。」

1945年の人間という男の子はそう自分の名前を教えてくれた。
あと、中学3年生らしい。

「私は、松永 梓。同じ中学3年生よ。・・・ところでどうして2004年に来てしまったの?」

はっきり言って実際、私はこの現状が今になっても信じられなかった。
こんな。まるで漫画じゃあるまいし。

「訓練から帰ってる途中、気が付くとここに来てたんだ。」
「・・・。ほかに何もない?」
「えぇ〜と・・・そういえば流れ星を見た。」

「え・・・。」

「星が綺麗だったんで、 空を見てたら流れ星が一つ見えた。そう・・その瞬間にこっちに来たような気がする!」



     流れ星・・・




私はなんとも言えなかった。
このことを警察や友達に言っても、信じてくれるだろうか。
不安が過ぎった。
だけど、この木村 総一という人に行き場所が在るわけがない。

私が助けるしかないんじゃないのか?




「元の時代へ帰れるまで、うちにいなよ。」

「・・・いいのか?」


「仕方ないっていうか・・・親はあまり家に居ないから大丈夫。」

本当にどうしようもなかった。
この人のためには、私の家に居てもらう事が一番安全だと思ったからだ。

「あ、一つ言っていいか?」
「うん。何?」
「俺のことは総一って呼べ。俺も梓って呼ぶから。」

「・・あ、はい。」



暗くてよく分からなかった顔が、月に照らされていた。
こんな事があっても動揺さえしない。
とても立派な男の子だと思った。


家に向かうまでずっとその人は星を見ていた。


「ここも星が綺麗だ。」











まず学校へ行って教室に入って、荷物を片付けて席に着いた。


公園での思いがけない出来事に、私は進也をほったらかしていた。

前を見ると、学級当番の進也が黒板を消していた。
やばい。
なんとなく怒ってそうな気がした。
と言うより、私が悪いに決ってる・・・。
誤らないとなぁ。


「進也・・?」
黒板けしで黒板を消している進也に近づきそっと声をかけた。
「・・・・。」

反応なし。


「あの・・・昨日はごめん。」

「俺は当番の仕事で忙しいんだ。」

「・・・私、本当に悪いと思ってる。せっかく誘ってくれたのに・・。本当にゴメン!!!!」


私は必死に誤った。
そんな私の様子を見てか、進也は黒板を消すのを止めて小さくため息をついた。


「じゃぁ、なんで来なかった訳?」

「・・え。」

進也はそう優しく私に聞いてきた。
それを言われた瞬間冷や汗が出そうだった。
本当のことを言ったって、信じてくれる筈がない。
息が詰まる。

「・・・用事かなんかあった?」
「ごめん、そうなんよ。急用でさ・・・。」
「そっか、じゃぁ仕方ないな!別に気にしないから。」
「うん。」

そして、私達は席に着いた。

総一は今私の家に居る。
あれから今の時代の事や私の事を説明した。
すっごく驚いてる様子だったけど、まぁなんとかなる。って感じで聞いていた。
服も貸してあげて誰も使ってない部屋で寝るように言った。

総一を守って助ける事が、私一人の力でできるだろうか・・・。
本当は進也にすごく話したくて、一緒に考えて欲しかった。



だけど、




進也はもう私に、流れ星を見ようとは誘ってくれなかった。




その日はそれから部活でも話さなかった。
流れ星、一緒に見よう。って言いたかったけど。



いつも一人分だけの食材を買う私にとってこの日のスーパーは新鮮だった。
飲み物だって、朝食べるヨーグルトだって、いつもの2倍なのだ。
少々出費が多いがそれほどでもない。
私の家には家族はいないがお金は十分あるのだから。


家の前で鍵を開けて入る。
薄汚れている白い靴がすぐ目にとまった。
昨日の出来事が夢じゃなかったと思い知らされた。
その時目線に足が見えてゆっくり上を見た。

「おかえり。」
「・・・・ただいま・・。」

ちょっと笑ってしまった。
ただいまなんて言ったの何年ぶりだろう。

「今日何してたの?ずっと家の中じゃぁつまんないでしょ?」
「ぇっと・・・この箱みたいなのを見ていた。それと本を。」
「あぁテレビね!テレビは箱の中に人が入ってるとかじゃないのよ〜。」
「昨日聞きました、電波でこの映像が伝わってきてるって事を。」

「あ〜そうだったっけ?」
そう言いながら私は夕食の準備にとりかかった。
今日のメニューは肉じゃがだった。

「1945年の今って事は・・・戦争まっただ中じゃない?」
最初総一に公園で会った時に、防空壕とか・・防空頭巾とか言ってたのを思い出してなんとなく聞いてみた。
「そうだよ。まぁ俺の場所は空襲はあまりないんだけどね。」
「へぇ・・・あ、そういえばどこに住んでいたの?山口?」
ここは山口県だった。当然、総一も山口だろうと思った。
「いや、俺は広島だ。丁字橋って知ってるか?」
「う〜んわかんない。」
「じゃぁ広島産業奨励館っていうドーム型建物があるんだけど・・・って残ってんのかなぁ。」
そう言いながら苦笑いする総一。
だが台所でジャガイモを切る私の手がそれを聞いて止まった。

「ドーム型・・・?」

「あぁレンガで出来ている大きな建物だ。まわりには川が流れていて人口も多い。」



1945年、広島、ドーム・・・

これは歴史上にある日本で最も悲惨な出来事を連想させるのに十分だった。
とっさにカレンダーを見た。
今日は7月11日。

あの日はたしか・・・8月6日。


「・・おい、どうかしたのか??」
呆然としている私を不審に思ってか総一が声をかける。

総一の顔を見てちょっと笑う。
「まさか・・ね。」

「ぇ?」
「さぁ!もうすぐ現代の家庭料理が出来るから 、テレビでもみててよ!」




私の不安はその日消える事はなかった。







2004/05/04(Tue)12:38:49 公開 / ヒイラギ
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