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『アカデミー(Full Ver.)』 作者:真羽 優 / 未分類 未分類
全角5869文字
容量11738 bytes
原稿用紙約18.15枚

 始めて出会った時はたしか入学式の時だ。
 何故だか彼女に気になる。
 あの子は美しいだ。長い黒い髪の毛は質素な黒い制服に良く似合っていた。本物の知性と気品が宿っている顔が無表情のままに氷のように凍らせていた。少しだけ少女の面影がまだ残っていた。彼女は腕の中に首輪が無い小さな子猫を抱いて、ゆっくり撫でている。黒猫の子猫も気持ちよさそうに鳴いていた。でも、何か不自然さを感じていた。
「君もこっちの学部か?」僕は彼女に声を掛けた。
「はい」淡々な口調で言った。表情も全然変わってない、元々無表情だけど。
「その子、君の猫?」
「違います」素っ気無い答えだ。
 冷たい。でも、僕は似合うと思っていた。僕と違って、多分誰より早く卒業するでしょう。

 初めに僕と彼女は親しくない。僕はいつも僕の友人と一緒にいた。彼女も彼女なりにいつも一人にして子猫を抱いているだけだ。でも、僕はいつも彼女の何かに惹かれている。いつも彼女の後を見ている。それでも、僕は入学式以来、彼女に声を掛けなかった。僕と彼女は完全に違うタイプの人だから。
 だが、僕たちには奇妙な縁があるそうだ。あまり意味無いと思うの薬草学のテストが返した日に、僕は寮に帰る途中でアカデミーの後ろにあった庭に彼女に会った。テスト用紙を握って、赤いインクで書いた点数を睨んでいた。初めて落ち込んだ彼女の姿を見た僕は驚いた。氷のような彼女は人らしく感情を出せる事を。
「どうした?点数が悪いなら、今回でがんばれば良い。」僕は彼女に言った。
「…」相変わらず何も言わないが、話す気があるようだ。
「何点?」
「…86点」
「良い成績じゃないか!僕、52点」僕は笑った「今回は頑張らないと、留年される。」
「何で笑えますか?」
「え?」
「何故そんなに気楽ですか?正規にならなくも良いですか?」彼女は僕に問った。
「なりたい。でも、いずれになれるものから、そこまで気を使うつもりはない。できないなら、学部も変える。僕たちには精神の安定さは一番大事なことだ。気楽で良くのほうが良いではないか」
「私にはそう言う余裕がありません。私は他人のように途中で学部を変えられません、私は正規にならなくてはなりません」
「そう」僕は理由を聞くつもりはない。他人の隠す事は聞く意味はないだと思う。ただ知っているなら知れば良い、知らないなら特に気を使わなくても良いのだ。
「貴方は正規にならなくも良いですか?」
「…僕はこの道を選んだ。何より僕に相応しい道。この道に歩き続く。僕は決めた事は諦めない。」
「気楽な人ですが、決心は強いですね。私も決めました。正規になります。だから、私は気楽にしては許せません」
「そう」僕は彼女の傍にいる子猫を見ていた。アカデミーにはペットを飼う人があまりいない。
「ずっと私の後に付いていたから、飼いました。良い子ですよ」彼女は子猫を撫でていた。
「そうだな。賢い子にも見える」
「よく判りますね」彼女は少し顔を緩んだ。
 僕は少し考え直した。想像した彼女のイメージとは少し違う。やっぱ勝手に人のイメージを想像するのはだめか。この事は反省しないと。でも、それもそれでいい。「優しい人だね」僕は子猫に言った。子猫も「にゃ」と返事した。
 彼女の顔は少し顰めた。まるで、聞きなれない事を聞いた。「よくそんな事言えますね。」
「それぐらい判らないと、正規になれないからな」
「気楽な人ですが、鋭い人ですね。でも、今回は間違いましたよ。」
「そうか」僕はただ猫を撫でている彼女を見つめて、微笑んだ。

 それ以来、僕たちは微妙な関係になった。
 前より親しいになったが、友たちとは言えない。でも、僕たちはよく一緒にいて、アカデミーの後ろにあった庭に何は話せず、ただ一緒にそこに座って、空を見るだけだ。彼女も相変わらず友達がいないようだが、今は僕だけに話す気があった。
 時々、僕たちはアカデミーと正規の話し合っていた。何故僕たちはアカデミーに居る。何故アカデミーは僕たちが要る。世界は広げている。命あるものも増えて行く。だから、もっと多くの正規が要る。世界と命あるものたちは正規が要る。正規になる。それは僕たちの目的。僕たちが選んだ道。
 時々、僕もバカな話を彼女に話した。正規になった後、やはり出る時ポーズを決めないとか、どんなポーズの方が良いのか、セリフは何をするとか。時に彼女は何も言わずにただ聞いていた。時に少し呆れたような目で僕を見て、「本当にに気楽な人ですね」を言った。
 でも、殆どの時、僕たちは何も話せなかった。多分お互いの事よくわかるから。
 僕は彼女に正規になってほしい。少し精神や考え方を変われば、彼女ならきっとなれると思った。

「…私たちは平等な心を持って、人々に穏やかな人生をを過ごすために働いています。何処でも、何時でも、誰にも優しくて扱います。それは例え戦場の兵士でも、王城の王様でも私たちには同じなのです。貴方たち持っている今の優しい、平等な心を守るのは一番大切な事です。人を裁く事は私たちの仕事ではない、人を癒して…」神官みたい白いローブを着る女教師は話を続いた。
 僕は先生の話を聞きながら、自然に視線が先生からそらして、彼女の背中に止まった。
 やはり優等生だ。一生懸命に先生の講義を聞いている。成績まあまあの僕と大間違いだ。
「あいつ、変だな」隣座っている友人が小さな声で僕に言った。
「そう?がんばって早く正規になりたいだけだろう」
「でもね、先生たちはよく彼女は無理だと言ったよ。それに、もう何か月ここにいたのに、友達もいないんだよ」後ろの女の子は僕たちに囁いた。
「お前また職員室の外に盗み聞きか!?」友人は呆れた。
「僕と結構話しているけど?」
「それはお前だけだよ!」
「そこ、うるさい!」先生は怒鳴いて、こっちに三つのチョークを投げた。見事に友人と後ろの子の額に当たった。やはり、先生になると、複数のチョークを投げる技術は卒業試験の一つだろう、チョークを避けた僕はそう思った。

「ちょっと待っててもらえますか?」放課後に先生に留められた。
「はい」
「貴方は気楽で良いですが、この成績何とかならないですか?貴方の資質は誰より優れています。特に精神と心理方面は。できれば、今でも貴方に正規にしてほしいですよ。今の正規では足りないです。」先生が説教していった。
「はい、努力します。」僕は真剣で言った。そうすれば、もっと早く説教から解放される。
「分かればよろしいです。これだけの話です。…とこれで、貴方は彼女と親しいですね…?」
「彼女ですか?親しいとは言えませんが、よく会話を交わしています。」
「…よく私が誰を言っているのが分かりますね…やはり資質は良いですね。」先生が苦笑した。「できれば、彼女に説得してもらえますか?…いいえ、ヒントだけでも良いです。」
「何をですか?」
「彼女は正規に向いていないことです。」やはり、そう来た。それでも、希望があると思った。
「多分無理です。彼女頑固ですから。」僕は苦笑した。「もし彼女の考え方が変えれば、正規になれると思います。まだ時間があります。」
「そうですね。彼女と何度も話し合えました。…貴方たち普通の一周期のコースが終わるまでに観察します。でも、彼女には多分無理です…まあ、こちらの事です。もう行っても良いですよ。」先生は悩んでいる顔ままに言った。
「…失礼します。」僕はそう行って、この場所から離れた。

 同じ学年だったが、僕は誰より先に卒業して、正規になった。先生たちの期待どうりに。
 その時、彼女は僕に話しに来た。
「正規になりましたね」
「大変そうだけどな」僕は正規の質素な黒いローブの襟を正している。
「いいですね」彼女は羨ましいそうな口調で言った。初めて感情を出して見せてくれた。
「前から聞きたいが、何故そんなに正規になるのを拘るか?」僕は正規のローブはあまり慣れていない、襟が少しきつい。
「妹がいます。正義感がとても強い子ですが、体が弱いです。」
「それで…?」
「ずっと家に居なくてはならないので、自分の友達も作れません。だから、私はいつもあの子の傍にいました。あの子もずっと私を慕っています。でも、私はあの子を一人にしました。だから、私が…」
 僕はその時彼女の顔見なかった。一気にそんなに自分の話をしたのは普通の彼女らしくない。それども彼女らしいだろうか。でも、多分泣いているような気がした。
「そう」僕が答えた。最後の黒い手袋をはめた。僕は鏡の中にいる真っ黒の姿の僕を見つめた。それが僕の本当の姿。一番相応しい姿。その時、僕は気が付いた。
 僕の目は彼女と違う。
 僕たちは完全に違うタイプの人たちだ。だから、僕はもう正規になった。
 その時、僕は始めてそう思った。彼女は正規になれないかもしれない。

 それから、僕は忙しくて、あまり彼女と会えなかった。正規になった後、先輩たちと一緒に現場の研修をしなければならない、そして他の学部の先輩たちとの研修もある。それでも、僕の初仕事前に、僕は彼女に会いに行った。何故なら、校長からもらった仕事のリスト、僕は多分当分帰られないだろう。しかも、全部特別ケース…
 相変わらずアカデミーの後ろにあった庭にいた。
「久しぶり」僕は挨拶した。時間はあまり僕たちと関係ないだが。
「お久しぶりです。」彼女も返事した。
「僕はすぐにアカデミーからです。当分帰られないそうだ。」
「そうなんですか。」
 僕たちは友とは言えないが、僕たちは誰より相手の事が分かると思った。だからこそ、僕は今の言葉を彼女に話した。
「行く前に、言いたい事がある。」
「何ですか」
「僕は自分らしいで道を進むの方が良いと思うが、もし貴方は変わるのが自分の進め方と思うなら、精神まで変わらなければならない」
「そうですか」彼女は分かっていると思う、僕が言いたい事を。
「じゃ、この子はよろしく。」僕は彼女の足元にいた子猫に言った。「にゃ」の返事を帰った。そして、ここに来た同じ方向にここから離れた。
「いってらしゃい」彼女の声だった。
「行って来ます」僕は彼女に振り向かって、微笑んだ。そして、そこから離れた。

 やはり、彼女は僕の期待を裏切った。それとも、裏切ってなかった。
 彼女は留年した。
 久しぶりにアカデミーに返った時知った事だった。
「ね、聞いた?あの子のこと」アカデミーの前門で二人の少女はひそひそと話し合っている。制服から見ると僕の後輩たちだ。
「誰?」
「よくそのアカデミーの一番凄い先輩と一緒に居たあの子よ」
「あっ、あのアカデミー一番若くて正規になった先輩と?」
「そうそう。あの子よ」
「って何々?」
「あの子、最後の精神試験が不合格だって」
「うそ!あの精神試験!それじゃ卒業できないよ」
「うちの学部は精神試験が不合格人なんでいないよ。あの子は多分始めての」
「普通、もっと先に学部を変えちゃうよね」
「そうよ。でも続くつもりのようだ。どんなに他の試験の成績が良くでも卒業絶対無理なのに」
「変なの」

 僕は彼女に会いに行った。アカデミーの後ろにあった庭に彼女の姿がいた。相変わらず、綺麗な氷の彫刻みたいな人だ。
「卒業できなかったね」僕は言った。僕たちは特昔に知っている事実。期待していないが、現実になった。
 彼女は黙っている。
「まだ原因が分からないか?」僕は彼女に向って訊ねた。僕は知っている、正規になった前に感じた。だから、行った前にその言葉を残した。でも、彼女は多分今でも分からないだろう。
「…」彼女は何も言いせず、ただ傍にいる黒猫を撫でている。
「はっきり言うよ。君が優しすぎる」
「私みたいな人に良くそう言えますよね。貴方は」彼女は苦笑した。氷の仮面はやっと崩れた。
「長い付き合いからだ」僕も苦笑した。
「貴方はいつもそうです。人の心の奥に隠した秘密を気楽で簡単に見つけます。」彼女は僕を睨んでいた。僕は少し微笑んだ。やっと、少し本当の彼女の顔を見えた。
「もう慣れましたわ。って、なぜそれは原因ですか?」
「優しすぎると平等的に人を扱いするのは無理だ。だから、今の君には無理だ」僕は教えた。
「そうなんですか。やはり私はだめですね。」彼女は悲しい目で空に見上げた。「だから、『もし貴方は変わるのが自分の進め方と思うなら、精神まで変わらなければならない』ですか。」
「私たちはそんなに違うですか?貴方も優しい人です。何故貴方なら正規になれますか?」彼女は僕に向かって、僕の目を見つめた。僕たちはお互いのことが良く分かります。彼女は多分僕の奥に隠した本当の僕を見た。色んな表情が出ても、相手の苦しみや喜びが共感できても、僕自身本当の感情は永遠に穏やかで、静止している。僕は他人に同情できない。どんな理由でも。
できれば、助けてあげるが、僕の心は絶対に動揺しない。
「そうですか。それだけですべてが違いますか。」彼女はやっと分かった。何故私たちが完全に違うタイプの人間の理由。
「妹さんの件なら僕が行くよ。アカデミーからのご指名だ」僕はその場から離れて、歩き出す始めたが、止まった。
「教師の白いローブの方が似合うよ」僕は顔を彼女に振り向いた。そして、笑った。「それに、本当にチョークを投げる芸を仕込むのかを教えてくれよ」
「相変わらず気楽な人ですね。貴方は」彼女は呆れた声で答えた。

 久しぶりに休暇を取って、入学式を見に来た。
 教師の白いローブを着ている彼女の姿は全然変わってないが、その時より穏やかな表情をしている。相変わらずあの黒猫は彼女の後に付いている。
 僕は今の姿の彼女が好き。本当の彼女に相応しい姿。
「妹さん、元気?」
「お陰様で、今は新入生になりました」
「こっちの学部?」
「いいえ、審判者になりたいと言いました。あの子は赤い服が似合いますわ。」彼女は微笑んだ。
「そう。やはり、教師になるあの芸は…」
「貴方、良くそんなつまらない事を拘りますね。」彼女は呆れた目で僕を見る。
「やっぱある…?」
「そうですよ」彼女は頷いた。「すいぶん上手くになりました」
「後で拝見して頂きます」僕は笑った。
「やはり、正規はいいですね」彼女は僕の右手に持っている巨大な銀の鎌を見上げている。
「結構重いよ」僕は苦笑した。「妹さんが着いたよ」
 彼女は妹の方に向って、嬉しいそうな声で言った。
「ようこそ、死神アカデミーへ!」
2004/03/31(Wed)21:11:12 公開 / 真羽 優
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