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『 天空の曲芸 2』 作者:眼鉄 / 未分類 未分類
全角3692文字
容量7384 bytes
原稿用紙約12.15枚

 異様な爆発音は、村の中心からだった。
「あれは…」
 大量の火器を持って、村を攻撃している集団が居た。アナリスの国旗を象ったバッジを見た所、国の回し者といったところか。
「なんで…。ちゃんと税金は払っているはずなのに!」
 刀を片手に、集団の輪の中へ突っ込んでいく。
「何で村を攻撃するんだ!」
 指揮を取っていた男に、鋼龍はそういう。
「この村は、反国家勢力とみなされた。よって、全員皆殺しだ!」
「誰も国家になんて反発していない!」
「お前、国王の命令に逆らうつもりか!」
 あくまでもくそったれ国王の命令が優先なのか。
 鋼龍は、異常なまでに腹が立った。
「人の命を何だと思っているんだ!」
 それはアナリスに住んでいない人々にとって当然の思いで、誰でも知っておかなければならないことでもある。
 鋼龍は願った。せめてこの者達に、命の大切さというものが理解できるならば、と。
 だが切実な願いでも、神は叶えてはくれなかったらしい。
「命だと…そんなもの、国王の所有物意外何物でもない!」
 指揮をしていた男は、見せしめのために、攻撃対象を鋼龍に絞る。
「お前には教えてやらねばならない。自分が国王の所有物であり、それがそれ以外の何者でもないと…」
 男はそれ以上、戯言を吐くことが出来なかった。
 なぜならば、鋼龍が問答無償で走らせた一閃が、男の腐った脳天を横一文字にしていたからだ。
「た、隊長殿…。貴様、貴重な国王の所有物になんてことを」
 自分の隊長が死んだというのに、何故それでも「国王の所有物」を主張するのか、鋼龍には分からない。
 だが一つだけ言える。
 この世界は狂っている。
「総員、この無礼者を叩き潰せ!」
 剣を持った男達が、一斉に飛び掛る。後ろでは銃を持った男達が、頃合を見計らって発砲する。
「気合、一閃!」 
 横一文字になぎ払い、男達を次々に倒していく。もっとも、無傷というわけにはいかなかったが。
「な、何故ひるまないんだ!?」
 銃弾を受けようとも、斬られ様と、鋼龍がひるむ事はなかった。致命傷ではなかった、というのもそうなのだが、他にも彼女が今、興奮状態にあるというのが一番大きい。
 剣を持った男の死体を一つ盾にして、銃を持った男達に飛び掛る。こういう部隊編成は、隊長が居なくなった時点で乱れるというのが特徴的だ。一番初めに隊長が居なくなったこの部隊は、初めから勝機が少なかった。
 なによりも誤算だったのは、自分達と彼女との力量の差を見抜けなかった事である。
「気合、一閃!」
 怖気づいてしまった銃の男達を倒すのに、そんなに時間は要らなかった。
「…」
 血まみれの大地を、鋼龍は眺める。
 初めて人を殺した。果たしてこれが正しかったのか。
 その答えは、周囲の人々の反応で、導き出された。
「ひ、人殺しだ!」
「どうするの、王国の兵士を殺したら、この村はもう駄目だわ!」
「どうするんだ!」
 非難はすぐに、鋼龍の元へとやってきた。今村人達にとって大事なのは「自分の命を救ってくれた英雄」ではなく「次にやってくる王国からの復讐」なのである。
 鋼龍は血まみれになりながら、呆然としていた。
 物事には時代の流れがある。たとえどんなに正しいことをしても、その時代にとって本当に正しいことなどはないのである。
 これをボックスから聞いたとき、なんなのかまったく分からなかった。
 だが今なら分かる。
 こういうことだったのだ。
「鋼龍、どういうことだか分かるな?」
 哀れむような目で、ボックスは鋼龍を見つめる。鋼龍はもう分かっているから、何も言わず肯いた。
「お前はこの村から永久追放だ」
 初めからそうするつもりだったさ。
 鋼龍は黙ってもう一度肯いた。


 永久追放を言い渡された鋼龍はすぐに村から出て行くこととなる。準備はもう終わっている。初めから出て行くつもりだったのだから。
 だが心残りなのは、この村の行く末である。
「もう、ここには誰も居ないのだろうな」
 ここに住んでいたら、再びやってきた王国の人間に殺される。拷問に拷問を重ねた後に。
 この村は、もうなくなる。住民は受け入れてくれる町や村を捜して、移動していく。 
 永久追放なんかにならなくても、永久に帰ってはこれないのだ。
「鋼龍」
 マリアの声が聞こえてきた。
「すいません…私のせいで」
 そういうと、マリアは微笑む。
「間違っていたかどうかは、あなたが決めるべきことです。いつも言っているでしょう。後悔のない様に生きなさい、と。あなたはあの行動を、後悔しているのですか?」
 諭すように、マリアは言う。
 鋼龍は、答えれなかった。間違っているのかどうか、自分にも分からない。後悔をしているのかも。
 マリアはもう一度微笑む。
「時代の流れには、人は無力です。だからこそ、正しくなくとも、正しくなってしまう答えがある。鋼龍、あなたは本質を見極めることが出来る人間です。私はそう、信じています」
 もう外は、月夜が鬱陶しく自己主張をする時間となっていた。
 鋼龍は、首を振る。
「私はそんなこと出来ない。私はそんなに立派ではない」
 思っていたことを吐き出す。もし見極めれるのなら、あの時、誰も殺さずに何とかできる方法があったのではないだろうか。
 そもそも本質とか、正しいとかなんなんだ。
「それを見極めるのも、あなたです。行きなさい、鋼龍。あなたの志は、決して簡単に果たせるものではない。きっと迷うでしょう。でも、迷ったときには、あなたが本当に後悔しない選択肢を選びなさい。それがおのずと答えになるものです」
 マリアは立ち去った。
 鋼龍は、残っていた。

 そっと村を出て行った鋼龍は、月明かりだけを頼りに街道まで歩いていく。
 コンバットブーツ独特の音だけが、聞こえてきた。
 今日は風も吹いていない。いつも聞こえる虫の鳴き声もない。ただ、コンバットブーツの音が、聞こえる。
 懐かしい音だった。
 そういえば、父はよく、夜中に酒を飲んでは言っていた。
『月の裏側ってよ、どうなってるんだろうな』
 何故そんなことを言っていたのだろうか、と考えていた鋼龍は、はっとした。
「そうか…あなたも同じだったんだ」
 月の裏側は、誰も見たことがない。だが誰もが、月の裏側は表側と同じなのだと決め付けている。
 それが本質で、正しいことなのかもしれない。だが、本当にそうなのだろうか。
 そもそも表とはどっちだ。こっちは裏なのか。それともなんだ。
 それに、今見えている月は、本当の月とは違うかもしれない。
 どちらも嘘で、本当。そして正しく間違っている。
 だってそうだろう。
 誰も裏側を見ていないのだから。誰もそれが間違っていると断言できないのだから。
 リュートもまた、同じことを考えていたのである。
「あなたは、答えを見つけたのか?」
 空に向けてそう言う。
 もしも天国があるというのなら、この声があなたに届くように。
 だって、天国がないとは言い切れないのだから。



 隣町ってどこだよ。
 そのことに気がついたのは、夜が明けてからである。
「隣町っていうくらいだから、隣に進んでいけばいいと思ったのだが」
 そもそも隣に向かって歩くって、その隣が分からないのだから無意味な行動である。
 実は鋼龍、極度の方向音痴である。しかもそのくせ、地図を見るのが大嫌い。よく村でも迷子になっていた。
 街道に沿って歩けばつくだろうと思っていたのだが、街道が途中でなくなって、何故か森になっている。一体街道に何があったのだろうか。うーん。
 アバウトな鋼龍は、とりあえず森を突っ走る事にした。まっすぐ進んでいけば、そのうちなんとかなるものである。
 勿論何とかなるわけもなく、さらに迷子になってしまった鋼龍。
 朝ごはんも食べていない鋼龍は適当になっていた果物を食べる。まあ死にはしないだろう。
 かなりアバウトである。
 右も左も分からなくなった鋼龍なのだが、ここであることを思い出す。
「そうだ、壁に右手をつけて歩けば、出口に出られるとか言っていたな!」
 さっそく壁を捜すが、見つからない。
 当たり前だ、ここは森である。
 一人コントを盛大に繰り広げている鋼龍は、ようやく今の状況がヤバイ、ということに気がついた。
 すでに前途多難(というか単純に鋼龍が馬鹿なだけ)となってしまった鋼龍は、川を捜した。
 とりあえず森から出て生きたかったのだ。川が流れていくほうに向かって歩いていけば、そのうち森から出られるものである。
 だが、川が見つからない。
 本格的に困った鋼龍だったが、彼女の頭の中に「道に迷う」という単語は存在しない。今の状況は彼女にとっては「ちょっと問題あり」という認識しかされない。ちなみにかなりやばい状況です。
 歩くのにも飽きてきた鋼龍は、適当な場所に腰をかける。いい加減森も見飽きてしまった。
 空を見上げる。ああ、今日は晴天。いい風だ。
 現実逃避を始めた鋼龍。
「…」
 そんな鋼龍の前に、一人の男が立っていた。
 もちろん困ったような表情で。
2004/03/31(Wed)16:44:21 公開 / 眼鉄
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■作者からのメッセージ
眼鉄です
 何故か前回異様な空白が出来てしまったので今回は意識しました。
 ビシビシと厳しい突込みをありがとうございます。これからも容赦なくお願いします。
 それでは、感謝とご忠告をしてくださった方に感謝しつつ
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