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『猫と。 1〜7』 作者:九邪 / 未分類 未分類
全角24920.5文字
容量49841 bytes
原稿用紙約83.5枚
 
「マジかよ……!?」
俺は学校帰りの道の途中、裏山で3つの光りの点が目に入った。明らかに松明とかそういうのとは違う。何か神秘的な感じがする。
俺は好奇心に負けて自然に裏山へ歩を進めていた。
そのとき不思議と今日の学校での会話が思い出された。


1話.猫と同棲!?


昨日学校にて
「やぁ雅人。健やかなる眠りからお目覚めか?」
「……眠い」
俺は白峰雅人(しらみね まさと)八重(やえ)高校の1年生だ。今朝、学校で寝ていたのに隣の工事現場のせいで起こされてちょっと不機嫌だ。
今俺に話しかけてきたのは黒峰猛(くろみね たける)。名字が似ているので始めて会った時から何か気があった。
こいつはなぜか宇宙人やら、妖怪やらそういう系の話が好きな男だ。けど友達思いのいい奴だ。親友。そう呼べる間柄だと思う。
「ねぇ、昨日のテレビ見た?」
「……何の?」
俺はぶっきらぼうに答えた。しかし、猛は興奮しているようでまったく気にもしない。
「あれだよ。『怪奇・日本の妖怪ベスト20』だよ。」
「何だそのいかがわしい番組は?お前、いい加減その世界から足を洗った方がいいぞ?」
「なにを!お前なぁ、本当に妖怪ってのは居るんだよ?ただ僕たちが気付いていないだけさ」
「お〜い『白黒コンビ』。何話してんだ?」
「「その名前で呼ぶな!」」
俺と猛が同時に言った。俺たちはその名字と仲のよさから『白黒コンビ』と呼ばれている。俺と猛はあまり気に入ってない。
「なんか用か?良」
烏良一(からす りょういち)通称:良。ちょっと変わった名字のこれまた仲のいい友達だ。こいつは学校一の情報通でいろいろと便利な存在だ。こいつは大の女好きで、学校中の女に声をかけている。しかし、あまりもててはいない。俺のほうがもてるくらいだ。
「まあまあ、そう言わずにさ。いい情報があるんだよ。なんと、あのお堅い1−4の宗方が告白するらしいんだよ。相手はあの3組の木下だぞ!」
「マジかよ?宗方がねぇ。しかも、木下とは……」
「そんな事よりさっきの話しの続き!」
「あぁ、悪ぃ悪ぃ……」
内心、チッと舌打ちした。こいつのオカルト会話は長くなる。だからさっき、良が会話を途切れさせてくれた時は「よっしゃ!」と心で万歳したくらいだった。
「だからだねぇ、妖怪と言うのはいつも僕たちの近くにいるのだよ。ただ僕たちが気付かないだけ。たとえばそこらへんの猫だって、化け猫かもしれないし。教室の壁でさえヌリカベかもしれないんだよ?」
「まさか〜。そんなわけないだろ。それだったら、あの校庭の二宮金次郎も動いたりするのか?」
俺と良は笑った。猛はすねたように顔を膨らませた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「おいおい……冗談だろ?」
俺が裏山で見た物は、明らかに普通の猫より2倍ほどでかい猫だった。
それだけならまだ良いにしても、なにやらぼんやりと青白く光っていたし、なんか空飛んでるんじゃねぇの?って思うくらいジャンプしたりと、確実に普通の猫と違った。猛、スマン。お前の言うことをもっと聞いておけばよかった。たとえば化け猫の倒し方とか。もし生きて帰れたら、明日、猛に謝ろう。そのうち2匹が1匹に襲い掛かっていた。ヤバイ状況だと思う。2匹の猫が1匹の猫を追い詰め、今にも飛び掛ろうとしていたのだった。
俺はとっさに助けに行った。
「ヤメロ!」
俺は飛びかかった猫と、追い詰められた猫の間に入った。その猫は止まらずに俺にぶつかってきた。俺は吹っ飛びがけ下に落ちていった。俺は意識が遠くなっていった――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の日、俺は何食わぬ顔で学校に来ていた。
「ふぁ〜。眠い……」
「君はいつも眠い眠い言っとるのぉ」
大きな欠伸をした俺のもとに猛が来た。なんか変な口調だ。じじくせぇ……
「しかも、何?その顔の引っかき傷は?猫にでもやられたの?」
「あぁ……化け猫にね……」
俺は顔に無数にある引っかき傷をなでる。触れるとまだ少し痛かった。
「何!?雅人、遂に君も妖怪に目覚めてくれたか。くぅ、この日のために切々と君に妖怪の素晴らしさを伝えた甲斐があったよ。思えばそれは僕たちが始めてであった頃からか……あのときの君は――」
猛は俺が妖怪に目覚めたと勘違いして、その嬉しさの余りなにやらブツブツと喋ってる。今話しかけても無駄だ、と思い、俺は良のところに行く。
「おい良、何見てんだ?」
良は自分の席でノートを見ていた。こいつは貴重な休み時間に勉強するタイプじゃないので俺は尋ねてみた。
「んあ?あぁ雅人か。これはな『良一特製・八重高の全て』と言う俺の情報誌だ。これに俺の全ての情報が書き込んである。全校生徒のテストの点から、校長のカツラ疑惑の真偽まで全て、だ。」
「マジで!?すげぇな。で、校長はやっぱりヅラなのか?」
「おっと、お客さん。ここから先はこれもらわないといけねぇな」
良は右手の親指と人差し指を合わせ円を作る。ようは金よこせ、てことだろう。
「どうだい?お客さん。気になるあの子の好きな人。お安くしとくよ?」
「別に俺はこの学校に気になる女なんていねぇよ。」
俺がそう言うと、良はつまらなそうに舌を鳴らす。
「なんでぇ。お前それでも高校生か?もっと青春しろよ」
「大きなお世話だ!」
「………ところでお前その顔の傷はどうしたい?」
「ん?あぁ、ちょっと化け猫に襲われてな」
「何ー!?雅人、お前まで猛と一緒のオカルトブラザーズになっちまったのか?……なんて事だ」
良は口ではガッカリした様子だったがノートに今、俺が言った事を書き込もうとしているのを俺は見逃さなかった。こいつは何か面白いことを知ったら次の日には学校中の生徒が知っているというくらいい降らす奴なのだ。俺は慌てて「冗談だよ。」といって止める。
「―――と言う訳で、僕と君が妖怪好きになったのは運命であって……て、あれ?雅人ーー?」
猛はまだ一人で話し続けていたらしい、今ようやく俺がいないことに気付いたようだ。


「ただいまー」
俺は家のドアを開け、中に入る。
俺はこの高校に入るため上京して独り暮らしをしている。あ、故郷から来た妹の白峰明菜(しらみね あきな)もいるから二人暮らしか……。妹は俺が言うのもなんだが、かなりのお兄ちゃん子で俺を追っかけて家出当然で俺の家に転がりこんできた。妹は中学1年、今は学校に行っている。なら、何で家のドアが開いてるのかって?泥棒?違う違う。まぁ入れば判るって。
「お、雅人。帰ってきたのか」
「あのなぁ、せんべい食いながらテレビ見てんじゃねぇよ」
「いや、この“てれび”なる物が面白くてな。」
家の中には一人の小柄な可愛い女がいた。せんべい食いながら寝ながらテレビを見ている。おばちゃんみたいだ。
こいつは俺の彼女でもなんでもない。ていうか人ですらない。まぁ、途中だった裏山での出来事を話してやろう。


「うぬ、目が覚めたか?」
俺は目を開けたら、目の前には猫がいた。さっきの猫か?どうやらこいつが手当てしてくれたらしい。ん?手当て……?しかも、喋っ…た…?
「ギャーーーーー!!!!!!!!!!!ね、ねね、猫がーー!!」
猫は少々俺の声に驚いたようだが、やがて、叫びまくってる俺に目掛けて一発パンチを御見舞した。これが猫パンチか!!
「落ち着け、このたわけが!」
俺は猫のなんともいえない威厳に押されてピタッと静まった。
「私は『猫又』という妖怪だ。かれこれ200年ほど生きておる。さっきひょんなことから、仲間に襲われての……もう、猫又の里には戻れん。主は私を助けてくれた。よって私もお前を助けた。」
俺は次第に落ち着いていった。猛の妖怪話がなかったら気絶していたかもしれない。猛に感謝……するべきなのか?
「私は仲間を裏切り里を追われた。そして、禁じられている人との交流もしてしまった。私にはもういくところがない……ではさらば」
俺は猫又の悲しげな背中を見て思わず引き止めてしまった。
「なぁ、よかったら俺の家に住まない?原因の半分は俺なんだしさ。」
猫またはこっちを振り返り少しいぶかしげにこっちを見ていた。「何か企んでいるのか?」と言う感じだったが、やがてこちらに寄ってきた。
「おぬしの目は嘘をついていない。私はナエ。しばらく世話になろう……」
「うん、よろしく。」
猛が聞いたら目を輝かして喜びそうな話だと思った。


「む!雅人。これは何だ?」
ナエは電子レンジをぺたぺたと触っている。
「あぁ、それは電子レンジっていって、物を温める機械さ。」
「ほぅ、人間界は便利だのぉ」
そういえばなぜナエが人の姿をしているかと言うと、ナエは200年生きた妖怪だから人に化けるのなど造作もないとか何とか。服は妹のをやった。
しかし、ナエの人間の姿は俺は心当たりがあった。その人が写った写真をじっと見ていたらナエが気付いた。
「何だ?誰だそれは?」
「あぁ、こいつは俺の幼馴染の加藤弥生(かとう やよい)って奴さ。去年引っ越したんだ。「忘れないでね」ってこの写真くれたんだ」
ナエはその写真を見ていた。どうやら自分と似ていると気付いてないようだ。
「惚れていたのか?」
「バ、バッカヤロー。そんなわけあるか!」
「ニャニャニャニャニャ。赤くなって、可愛い奴だのう」
ナエは猫丸出しの笑い声で笑いながらそう言う。俺はますます赤くなった。
「ただいま〜」
妹の声だ。どうやら帰ってきたようだ。時計を見ると、4時半。ちょうどいつもと同じ時間だ。
「ナエ、妹が帰ってきたから隠れてくれ。飯は後で持っていく。」
「うむ、早くしろよ。」
ナエは俺の部屋のタンスの中で暮らしている。朝飯、夕飯は俺が持っていくが昼は俺は学校にいるので、猫の姿でどこかから取って来るらしい。
「お兄ちゃん、ただいまv」
妹が俺に飛びついてきた。
「こら、重いだろ」
「あ〜失礼しちゃうな。あたしこれでも軽くなったんだよ?」
「へっどうだかな」
「そんなこと言うと、ご飯作ってあげないよ?」
「へいへい、悪かったよ」
「よろしい!じゃあ、ご飯用意するね」
妹はエプロンをつけて台所へ向かった。俺は料理が下手で妹が来るまではインスタント食品ばかり食っていた。だから妹が家に来たのは大助かりだ。

「おい、明菜。今日はちょっと味が薄いんじゃないか?」
俺は妹が作った料理を食いながら不満を漏らす。
「しょうがないでしょ。何でか知らないけど、台所からダシの煮干が減ってるんだから。なんでだろうね?お兄ちゃん食べた?」
「バカヤロー!猫じゃあるまいし、そんな物……」
俺はそこまで言ったとき犯人がわかった。
俺は飯を食い終わると急いで終えの部屋へいった。
「おい、ナエ!」
俺はずっこけそうになった。なぜかナエは俺の漫画を堂々と読んでいたからだ。妹が掃除に来たりしたら大変だった。
「コラー。何でタンスに入ってないんだ!?」
「あんな窮屈なところになど入っておれるか!」
なぜかナエは逆切れした。
「だいたい、お主は飯を持ってくるのも遅いし、タンスは汚いし……む、まさか、私を監禁するのが目的?」
「何だそりゃ?どこでそんな言葉覚えたんだよ?」
こいつは昼間テレビばっかり見てるから自然と覚えたんだろう……
「あ、そうそう。お前台所の煮干食った?」
「………食ってないぞ」
「何だ今の間は……?」
ナエは汗を垂らして、わざとらしく俺から視線をそらした。はい、犯人決定。
「お前って奴はー!!」
「うるさ〜いこのたわけが!!」
こうして俺の顔に引っかき傷が増えていくわけです。どう考えてもナエのが悪いと思うんだけど。
兎にも角も、俺と化け猫の奇妙な共同生活が始まったわけである。


2話.化け猫だけに猫かぶり!?


「お兄ちゃん!早く起きないと遅刻しちゃうよ!」
「あ、あと5分見逃してくれ〜」
俺は部屋から悲痛な声を漏らす。俺は父親に似て朝は弱いし、料理も掃除もからきし。妹は母に似て、全く俺と正反対の性格だ。妹は呆れて溜息を着いてから俺の部屋に入ろうとする。俺はドアノブが回る音を聴いた瞬間飛び起きた。
「ワワワ!明菜。ホラ俺起きたからさ。下行っててくれよ。」
俺がこんなに焦る理由。それは部屋には案の定、タンスから落ちて床で寝ているナエがいたからだ。いくら妹でも兄の部屋に知らない女がいるのを見たらさすがにヤバイだろう。俺はナエを足でつついて起こす。
(ナエ。タンスに戻れ!)
俺は小声でナエに言う。ナエはのっそりとタンスに戻る。
「お兄ちゃん。早く来てよね」
「はい………。行ったか?」
俺はドアを開けて妹が下に行ったのを確認すると制服に着替えた。そして、ナエの服を置いていく。
「早くしないと、猛くんと良一くん来ちゃうよ?私も遅刻しちゃう」
「ハファッヘフ(判ってる)」
俺はパンを銜えていたので変な声が出る。そのとき、玄関から声がした。
「お〜い、雅人!行くぞ〜!」
良の声だ。多分猛もいるだろう。
「ホラ!来ちゃったじゃない」
「いってきま〜す」
俺はパンを銜えながら玄関へ向かった。
「御待たせ」
「ったく、毎度毎度、遅いんだよお前は!明菜ちゃんに迷惑だろ!」
「まったくその通りよ。良一くんの言うとおりだわ」
「お、明菜ちゃんおはよう」
「おはよう。じゃあ、お兄ちゃんよろしくね」
妹はまた家に入っていった。
「うん、明菜ちゃんやっぱり可愛いなぁ。誰かさんの妹にはもったいねぇぜ」
「悪かったな……ていうか明菜に手ぇ出すなよ?」
良は俺の問に何も答えなかった。妹はお兄ちゃん子だけど俺も充分兄バカな様だ。
「あ、そうだ。雅人知ってる?きょう転校生が来るらしいぞ」
「おい、そういう話題は情報通の俺からだろう?」
俺と猛は無視して話しを続けた。
「へぇ、男?女?」
「女の人らしいけど」
「マジで!?楽しみだな。美人だといいな〜」
良がニヤニヤしながら何か想像しているようだ。
「まったく、お前の頭には女の子としかないのか?」
「ない!!」
良はきっぱりと言い放った。ここまできっぱり言われると何か言う気も失せる。
「昔から言うだろう?『花とミツバチ、男と女』ってな。男と女は惹かれあう運命なのだよ……」
「な〜に気取ってんだよ」



俺たちは遅刻ぎりぎりの時間で学校に入った。まぁ、その原因は俺なのだが。多分俺がいなかったら二人は楽勝で間に合うだろう?
「ふぅ〜間に合った……」
「おい、雅人。もっと早く起きてくれよな。つき合わされる僕と、良の身にもなれ!」
「悪い悪い。今度から努力するよ」
俺がこの言葉を行ったのは通産で29回目だ。猛と良も判っているのでフゥと溜息をつくだけだった。
「お〜いみんな席につけ〜」
担任の松田(女)が入ってきた。公表している年齢は32だが、猛の情報によると40いってるとか何とか……。10歳近くサバ読むなよ。ていうか騙されるなよ生徒共。
俺は自分の机に座る。後ろには良、横には猛が座っていた。
俺は机に肘をついて、その手にあごを乗せてセンセーの話しを聞いていた。
「今日は転校生が来る。」
(お、猛の言ったとおりだな。)
「入ってきたまえ」
クラス中がざわめく、可愛い転校生だ。しかし、俺は、その転校生を見て、手がずれ頭を思い切り机に打った。俺は余りの痛さに叫ぶ。
「ギャーーーー!!!」
「白峰!うるさい、黙れ」
俺は先生に注意され、まだ痛むデコをさする。
「はい、じゃあ、自己紹介して」
「えっと、海林高校から来た鵺野ナエ(ぬえの なえ)です。よろしくお願いします」
やっぱりナエだ。あいつどうしてこんな所に……しかも、なんかおしとやかな女を演じてるし。ん?待てよ。この流れだともしかして……!
「じゃあ……白峰の隣に座れ」
やっぱり!!
「よろしくね。白峰君」
「………」
俺は何も答えなかった。ナエは不愉快なのか少し顔をしかめて座る。
「鵺野さ〜ん。俺烏良一って言うんだ。よろしく〜」
「あ、よろしくお願いします。」
早速女好きの猛が話しかける。手出すの早!!
「鵺野さんておしとやかだね。」
「ウフフフ、よく言われます」
「よく言うぜ……」
俺がボソリとそういったら、ナエはこっちを向いてニコリと笑った。しかしその笑いはなぜか俺に恐怖を与えた。
休み時間、ナエは質問攻めにあった。海林中とか言う聞いた事ない学校の事を聞いたり、プライベートを聞いたり。ま、ナエは見た目はいいからしょうがない。
昼休み俺はナエを連れて、俺の昼飯スポット、屋上へと向かった。
「ホラよ、昼飯だ。」
俺はナエにパンと牛乳を渡す。
「一体なんで学校に来たんだ?」
「ん?何だ?私が来たら悪いのか?」
俺は一瞬たじろいだ、余りのナエの豹変振りに。
「いや、悪いってことはねぇが…」
「ふん、教えてやろう。私がここに来たのは昼飯のためだ。」
「昼飯?」
「2度言わすな。昼飯だ。お前が煮干を食うなと言うから、こうしてお前と一緒のところに来るほかないだろう?」
「いや、他はかなりあると思うんですが……」
「うるさい」
俺がまだナエに言おうと思ったとき、他の生徒も屋上に来た。
「あ、ナエさ〜ん。一緒にご飯食べませんか〜?」
「よろしいんですか〜?」
ナエはそういって女子生徒のところへといった。
「これぞ、まさしく猫かぶりってか。ハッハッハッハ……」
「よぉ雅人。何一人で笑ってんだ?とうとう壊れたか?」
良が屋上に来た。続いて猛も。俺はちょっと恥ずかしくなってあわてて言った。
「わわわ、え〜とお前ら、ちょうどいいから飯食おうぜ」
俺達は屋上で昼食を取りはじめた。俺と良は購買室で買ったパン、猛は弁当。なんでも自分で作ってるらしい、俺には無理だ。
「いい天気だね。こんな青空の日には『ふすま』が出そうだね」
『ふすま』何でも飛行機を狙う大型の空飛ぶ妖怪だとか…
「おいおい猛……飯食ってるときくらい妖怪の話は……」
「あ、あの雲の形、『土魚』に似てる」
『土魚』地下鉄とか地下にあるものを狙うモグラのような妖怪だとか……なんで俺こんなに詳しくなったんだ?いつも猛の話し聞いてたからかな?
「ダメだこりゃ。」
猛は自分の世界に入った。こうなると誰も連れ出せない、俺は良と話すことにした。
「なぁ、あの転校生のナエちゃんメッチャ可愛くない?俺好みだ〜。」
「まったく、お前はそればっか言って…」
「いいじゃねぇか、昔から言うだろう?『花とミツバチ……』
「だぁ、それは前にも聞いた!!」
どうやら俺の高校生活は大きく変わりそうだ……


3話.ピラミッドは王の墓


昼休みも終わり、午後の授業が始まった。
午後の授業は、数学だ。教師は確か……木田とか言う男の教師だ。俺は数学は嫌いだから殆んど寝ている。だから、余り先生は覚えていないが、確か女たらしだったような……
先生が教室に入ってきた。早速ナエのことに気づいたようだ。
「お!君が噂の転校生か!うんうん、確かにキレイな子だな」
「あ…ありがとうございます。」
ナエは少し木田にたじたじの様だ。俺はざまあ見ろとニヤニヤ笑っていたらナエが俺の笑みに気付いた。俺のほうを向いた顔は「なんとかしろ!」と言わんばかりの顔だった。
「君はどこから転校してきたのだね?」
木田がいつもと違う口調で話す。女子生徒の前だとこうらしい。
「え、あの海林高です……」
「海林高?聞いた事ないな……。どこの高校だい?」
「えと、あの東北の……」
ナエのバカ!これ以上墓穴掘ってどうするんだよ!ナエはマジで困った顔をしている。そして、それに連れて俺をにらむ顔もすごみを増してくる。仕方ない…そろそろ助けてやるか……
「あの先生……」
「何だ!?白峰」
先生は「邪魔するな!」と言わんばかりに俺をにらんできた。だが、それがどうした!ナエのが怖い!
「さっさと授業始めませんか?」
「何だと?」
「いや、だからナ…鵺野にばかりにかまってないで、早く始めましょうよ」
俺がそう言ったらクラスの奴が揃って言い始めた。ナエは人気者だからな。
「そうだ!そうだ!」
「早く始めろよ先生!」
「鵺野さんに迷惑だろ!」
殆んどは男子生徒だった。ナエの人気がよくわかる……。ん?俺の後ろの奴がひときわ声を張り上げてるような・・・…?
「早くやれ!」
やっぱり良か……。そういえばファンクラブ作るとかどうとか言ってような
「ムムム…今始めるつもりだったのだ…!」
木田はそういって授業を始め出した。なんか授業中殺気を込めて俺をずっとにらんでいた。しかも、問題をすごい俺にやらせるし…俺は数学が苦手なんだよ!
「はぁ……」
俺は授業が終わった後、憔悴しきっていた。なれない数学の問題をさせられまくったからだ。俺はこれからずっと数学の時間は当てられ続けるだろう…。あぁ、数学は俺の睡眠時間だったのに
「ありがとう白峰君。たすけてくれて」
休み時間ナエにお礼を言われた。なんか白々しかった。
「ふん。俺はそのせいで数学の問題当てられまくったんだぜ?」
「雅人ー!鵺野さんにそんな口をきくなーー!!」
いきなり、良が俺にドロップキックをかました。俺は椅子から吹っ飛び壁に頭を打った。
「イッテー。何すんだよ良!」
良はナエの手を握って何か言っていた
「鵺野さん、あんな奴の言うこと気にする必要ありませんよ。あいつはいつも寝ていたんです。これで丁度いいくらいです。」
「こら!良。お前だって数学の授業の時、前は寝ていたじゃねぇか。それなのに鵺野が来てからまじめ気取りしやがって!」
「何だと!俺は前からまじめ優等生だったぜ。な、猛?」
「………」
猛は何も言わなかった。しかし、良を見る視線は少し軽蔑が混じっていた。
「ゴホン!とにかく俺は生まれ変わったんだ!雅人、今度のテスト勝負だ!俺の本当の力見せてやるぜ!!」
「おもしれぇ。受けてたってやるよ」
俺と良は前々からクラス最下位を争うほどのレベルだった。自分で言って少し悲しくなるが。しかし、俺は殆んどの授業を寝ていて、良は数学を寝ているとはいえ他の授業は大体起きてる。なのに、寝ている俺とテストは同レベル。つまり、俺のほうが頭はいいのだ。
「二人とも少し落ち着いてよ。」
「邪魔をするな猛。男には戦わなければいけない時があるのだ。見ていてください、鵺野さ……あれ?」
ナエはいつの間にか向こうの女子生徒の集団と話していた。
「鵺野さ〜ん……」
良は悲痛な声を漏らした。ナエは気にもしていない。……悪女。



俺は家に帰って、自分の部屋に行くと、すぐに勉強道具を広げた。机で勉強するのはどれだけぶりだろう。
「よし!やるぞ!」
まずは世界史から始めた。ま、簡単だろうと高をくくっていた。
「えっと、何々…「始皇帝が作った世界最大の建造物は?」そんなのピラミッドじゃねぇの?」
「万里の長城だ、たわけが」
ナエが部屋の窓から入ってきた。ナエは俺と別々に帰る。もし、俺がナエと暮らしてる事がばれたら、俺はクラスの男子に殺されてしまう。
「ハ?何言ってんだ。万里の長城を作ったのは殷の紂王だろ?」
「たわけが!紂王は古代中国の伝説の王だ。そんな記録はどこにもないわ」
俺はそんなバカな、と思い、答えのページを見る。確かにそこには「万里の長城」と書かれていた。俺は気を取り直して次の問題に取り掛かった。
「え〜と、「三大ピラミッドは何王と何王と何王の墓か?」。え?ピラミッドって墓だったの?」
ナエは呆れたように溜息をつく
「阿呆だな……。クフ王、メンカウラー王、カフラー王の三人の王の墓だ。」
「ヘェ……」
「雅人、おぬしもしかして頭悪いのか……?」
その一言は俺のガラスのハートにぐさりと刺さった。俺はうなだれた。
「ふん、おぬしには今日の授業での借りがあるしな。私が教えてやろう」
「本当か?サンキュー」
そこで、俺はハッとあることに気付いた
「お前って……頭いいのか?」
俺はナエに殴られた。パンチ自体は余り痛くなかったが、その後の引っかきはきつかった。
「少なくともおぬしよりは遥かに良いと思うぞ。だてに二百年も生きておらんわ!」
「じゃあ、よろしくお願いします。」
ナエにしばらく教えてもらっていたら、あっという間に時間がたった。そろそろ妹の帰宅時間だ。
「ただいま〜」
やっぱりだ、妹が帰ってきた。俺が珍しく下にいないのに気付き、上に上がってくるようだ。ナエはタンスに隠れる。
「お兄ちゃんただいま〜。あれ?お兄ちゃんが勉強してる!!」
妹は余りの衝撃に後ろによろよろと後ず去った。そこまで驚くか?
「お…お兄ちゃん、熱でもあるの?」
「バカヤロ。良と勝負するんだよ。そのためだ!」
「ふ〜ん……じゃあ、あたしも手伝ってあげる。問題出してあげるね」
妹は教科書をパラパラとめくり、俺に問題を出してきた。俺はしばらくだったがナエに教えてもらったため結構答えられた。妹は感心してるようだ。
「へぇ、お兄ちゃんて結構頭いいのね……あ、ここ間違ってる。」
「何?あってるじゃないか」
「字よ、字。「万里の長城」が「万里の超城」になってる。」
「……あ」



今日はいよいよテスト本番。俺は一夜漬けなどと言う真似はしない。というか出来ない。もし したら、俺は学校で一日中寝ているだろう……
俺はその日は、一人で学校に行った。今は良に会いたくはない。なら猛と行けば?という感じだが、猛は良について行ったようだ。
学校について俺は下駄箱に靴を入れていた良も来た。
「あ」
「あ」
俺たちはしばらくじっとにらみ合った。
「よぅ、調子はどうだ?」
「フン、バッチリさ。何せ俺は昨日一夜漬けで頑張ったからな」
よく見れば確かに良は目の下にクマができていた。それにどことなくやつれていた。
「そう言うお前は?」
「俺は昨日ぐっすり寝たぜ」
「ほぉ、余裕じゃねぇか」
俺たちはしばらくまたにらみ合ったが、やがて、靴を履き替え教室に向かう。教室ではほぼ全ての生徒がテスト勉強をしていた。俺は今日はテストだけしか授業がないから鞄の中は空だった。俺だけ何もしないで机に座っていた。正直、浮いていた。
「よ〜し、お前ら机の上にあるもの全部しまえ。始めるぞ〜」
先生が入ってきてそう言うと、教室は一気に緊張の空気に包まれた。かく言う俺も心臓がドキンドキん言うのが聞こえそうだった。
最初のテストは国語。正直一番自信がない。
ここからの俺はかなり一杯一杯だったので、テスト中のことは悪いが飛ばさせてもらった。では一気にテスト返しから……(すいません)
「……白峰!」
俺は先生に名前を呼ばれ取りに向かった。かなり緊張していたので、俺は足と手が一緒に出ていた。皆がくすくすと笑っている。
「まぁ、お前にしては頑張ったじゃないか」
先生にちょっと気に食わない言葉をもらいテストを受け取る。まだ点数は見ない。良といっせいに見せる予定だ。
「次、烏!」
「は、はひ!」
量も俺に負けず劣らず緊張している。「はひ!」はねぇだろ、さすがに。
「良……」
「雅人……」
俺たちはいっせいにテストを見せ合った。
俺、48点、良は………45点!!俺の勝ちだ!!
「やっ……たーーー!!!」
「クソーー!!3点差か〜」
レベルの低い勝負だった。両方50点いかないとは……
「じゃあ、これから一週間昼飯おごりな。」
「仕方ねぇな……」
量は財布を確認して、俺に一週間おごれるか確認している。少し、ガッカリした表情になった、足りないのか?俺が勝負を受けた理由はこれだ。負けた方は昼飯をおごる。それがルールだ。
「猛はどうだった?」
「ワァ!!」
猛は慌てて隠そうとするが俺と良は見てしまった。92点………。間違いは4問だけ……
「ケッ!!」
「これだから頭のいい奴は!!」
「何だよ!その言い方!僕だって頑張ったんだよ?」
猛は必死に弁解する。
「今回もお前が学年一位だな……なぁ、天才さん?」
良が猛をからかっている時、俺はナエにテストが帰ってきたのを見た。
「おい、鵺野。何点だった?」
俺は覗き込んだ。そのテスト用紙には丸がいっぱい、ついていた。
「100点!!??」
「何ぃ!!?」
俺の言葉にクラス中が驚く。確かにそこには100点のテスト答案があった。
「スゲェーー!さすが、鵺野さん!!」
良が自分のことのように喜んでいる。俺らとは2倍以上の差……。ケッ!ペッ(つばを吐く音)。ナエは俺の方を向いて、俺のテストを見ると、バカにしたような笑を浮かべた。なぜか俺は以上に腹が立った。それと、家に帰って妹にテストを見せたときの反応を考えると、震えが止まらなかった……


「ただいま……」
俺はそろそろと家に入っていった。心なしか声も小さい。家に入ってもシ〜ンとしていたので俺はガッツポーズをとって部屋へ行こうとする。
「お兄ちゃ〜〜ん」
俺はドキッとして声の方を振り返る。そこにはいたのは物凄い笑顔の妹だった。
「何でそんなにこそこそしてるの〜?」
「いや、あの、それは……」
俺があたふたしてると妹は一気に確信を着いてきた。
「テスト見せなさい!!」
「……はい」
俺は妹の何とも言えない迫力に押され、テストを取り出した。俺のテストを見た妹はわなわなと震えた。
「何よこれ!!あたしがせっかく教えてあげたのに、50点も行かないなんて!」
「けどよ〜俺だって頑張ったんだぜ?」
「問答無用!今日から1週間お風呂掃除だからね!」
「明菜〜〜」
妹はプンプン怒りながら、ご飯用意をしにいった。恐らく今日の晩御飯、俺の量は少ないだろう。
「ハハハハハ、相当怒られたようだな」
「あ、ナエ」
部屋にはすでにナエがいた。どうやら妹との会話も聞いていたようだ。
「何でお前が100点も取れるんだよ?」
「ここのできの違いだ」
ナエは頭をトントンと指す。
「で、お前合計何点だった?」
「ふむ、確か5教科で491点だったかな……」
「491!!?」
491点と言えば猛の取った過去最高の493点と2点違いじゃねぇか!こんなのねぇだろ!ナエは殆んど勉強してなかったのに
「見事学年一位だったぞ!」
「それはよぅござんしたね……」
今度のテスト、俺は本気で頑張ろうと硬く心に決めた。


4話.ナエはモテモテ。俺は?


「いってきま〜す」
俺はパンを銜えて飛び出した。いつも通りの俺の朝だ。今日は俺が余りにも遅かったから猛と良は先に行ったと言っていた。
「ふぅ、ぎりぎり間に合った」
「む、雅人」
「あ、ナエ」
俺が息を切らしてゼェゼェ言ってると、やや送れてナエも来た。ナエは学校来るの遅いみたいだな。
まぁ、猫は朝が弱いからな(←適当)
「何だお前も朝遅いんだな」
「ふむ、まぁな……」
そういってナエは下駄箱を開けた。そのとたん、ハートマークなどが書かれた手紙がドサーッと溢れ出てきた。
「またか……。」
「またってお前それラブレターじゃん」
「らぶれたー?」
「えっと、恋文ってことだよ」
俺が説明するとナエはホォと言って全部の手紙を鞄に詰めた。多分、こいつの事だから見もしないで捨てるんだろうな……。
「ナエは本当にモテモテだな」
俺は下駄箱を空けた。すると、ひらひらと一枚だが、ハートの書かれた手紙が落ちてきた。
「あ。」



「なになに、「昼休みに、校舎裏の伝説の樹にて待っています。坂本朔羅(さくら)」か。キレイな字の子だな……」
俺は教室で今朝もらったラブレターを読んでいた。俺の席だと、後ろは良で、隣は猛だから見られる心配がある。ていうか良に見られたらもう終わりだ。だから、俺は教室の後ろで読んでいた。
「なんか、聞き覚えがある名前だな……。なんでだろう?」
そういえば「伝説の樹」について説明しておこう。
「伝説の樹」校舎裏にある、この学校が出来た時からある大きな一本の樹。そこで告白して、成功すると、一生うまくいくと言う伝説があるのだ。しかし、俺はいまどきそんな事を信じる人がいるということに少し驚いた。
「ま、何はともあれ、行かなきゃいけないよな……」
「よっ雅人。何見てんだ?」
「ウワッ良」
俺は慌てて手紙を隠した。
「何だよそこまでビビル事ないだろ?で、何見てたんだ?」
「何でもねぇよ!」
「ふ〜ん、むきになって……。もしかして、ラブレター?」
俺はドキッとした。だが良は冗談で言ったらしく俺の様子に気付いていない。
「まさかな〜。お前に彼女なんか出来たら明菜ちゃんに殺されちまうもんな〜」
そうなのだ。俺が他の女と付き合っていたら確実に妹は俺と口を利いてくれなくなるに違いない。まぁ、どっちにしろ、俺は断るつもりだったが。



昼休み。俺は猛と良にばれないように、後者裏へ向かった。
途中、俺は断る言葉を考えていた。
「僕には他に好きな人が……。だめだ。誤解を生む。君と付き合うつもりはない……。傷つけちゃうかも……」
俺はブツブツ言いながら、後者裏の「伝説の樹」まで来た。まだ誰もいない。よかった、心の準備が出来る。
「なんて言えばいいのかなぁ」
すると、前から一人の女性が来た。正直、不細工だ。デブ、めがね、三つ編み。三拍子バッチリ揃ってる。俺はその女を見た瞬間、今まで考えていた言葉を全て忘れ、一言、正直な言葉が口から出た。
「いやです。あなたは。勘弁してください!」
俺は頭を下げてそう言った。その女は「はぁ」と顔をしかめた。
「何してるの?あんた」
「え?あなたが坂本朔羅さんじゃないんすか?」
「ちがうわよ。もう、失礼しちゃうわ!」
その女はのっしのっしと去っていった。なんか地面が揺れた気もした。
「何だ、違ったのか」
俺はさらに数分待った。すると、今度こそ坂本朔羅と思われる人物がやってきた。
「え〜と、あなたが坂本さん?」
その子はぶんぶんと首を縦に振った。髪の長いかわいい女の子だ。顔を見て判った。この子は生徒会長だ。だから聞き覚えのある名前だったんだだ。確か、学校でも結構人気がある子だ。そんな子が俺に惚れてたとは……
「あ、あの、白峰君。前から好きでした!私とつきあってください!!」
坂本さんはいきなり告白してきた。俺は悪いと思いつつも断りの返事をした。
「ごめん…」
坂本さんは俺の言葉を聞いたとたん目から光る滴を流した。俺は頭が真っ白になった。とても悪いことをした気になった。
「わわわ、ごめんと言っても嫌いな訳じゃないし、これから友達になればいいわけだし、ほ、ほら!まだお互いを良く知るべきだと思うんだよね。俺は、うん。」
俺は必死になって言い訳をし続けた。何か「伝説の樹」からガサガサと音がした。その内、坂本さんはくすっと笑った。そして、坂本さんが何か言おうとした瞬間、
「でよ〜猛。俺そいつに言ってやったんだ。「お前なんか、トラックの……」あれ?雅人?」
猛と良が現れた。ていうか、「お前なんか、トラックの……」の続きが超気になる!!何が言いたいんだ、お前は?
「げ!良?」
以外にも坂本さんが言った。
「む!お前は坂もっつぁん。どうしてここに?」
「その名前で呼ぶな!!」
「あの〜二人はどういう関係?」
俺はおそるおそる聞いた。
「あぁ、こいつとは小学校と中学校で同じクラスだったんだ。いわゆる幼なじみ。お前らは?……ん?待てよ。校舎裏の「伝説の樹」…男と女…赤くなった二人…まさか告白か!!?」
俺と坂本さんはどきっとなった。良はさらに追い討ちを仕掛けた。
「そうなんだろ?あ〜良いよな。雅人はモテモテで。俺も告白されてぇなぁ」
良はわざとらしく溜息をつき、首を横に振る。
「そういえば、何で坂もっつぁんは雅人に惚れたの?」
良のバカ!女の子に普通そんな事聞くか?ていうか、俺も恥ずかしいし。
言って欲しくなかったけど、坂本さんはテレながら言い始めた。
「それはね……。ある日、私は遅刻ぎりぎりで学校に猛ダッシュしてたの。そしたら転んで、足をくじいてしまったのよ……。その時!白峰君が現れて何も言わずに私の前にしゃがみこんでくれて私をおぶさってくれたのよ!!それ以来私は白峰君のことが好きになったわけよ」
「へぇ、こいつがねぇ……」
良は俺をチラッと見た。俺は頭の中で、そのことを考えていた。確かに、足をくじいたのか道路で倒れている女の子をおぶったことはある。しかし、その話には裏がある。実は俺もその時遅刻ぎりぎりで走っていた。そしたら、前の方に足を痛そうにさすった女の子がいた。俺は気の毒だなと思いつつ無視して学校へ行こうとした。その時!なんと俺の靴のヒモがほどけた。俺は結ぶためにしゃがみこんだらいきなりその女の子が俺の背中に乗ってきたのだ!俺は焦ったが、まぁいいかって感じでそのまま学校に行ったという訳だ。つまり、坂本さんのさっきの話は“完全に”勘違いです。
「あの〜―……」
俺が正直に言おうとしたら良が話しを遮った。
「雅人君は優しいですねぇ。そんな手段で一体何人の女の子を騙したのやら……」
良はそう言いながらも、「良一特製・八重高の全て」に俺たちのことを書き込もうとした。やばい!止めなければ!明日には全校生徒がこのことを知ってしまう!!
「コラ!良。なに書こうとしてんの!やめなさい」
俺より先に坂本さんが止めた。坂本さんの方が付き合いは長いから、良の事をよく知ってるようだ。
「へん!やめねぇよ!」
良は逃げていった。坂本さんはそれを追う。そこには俺と猛しかいなくなった。
「……良もバカだなぁ…」
猛がポツリと言った。
「え?何で?」
「知らないの?坂本さんて、女子空手で全国大会出場経験もある凄腕なんだよ?」
「え?」
あの顔、あの細い体でよくもまぁ……人は見かけにはよりませんなぁ


「あれだけギャップのある人も珍しいよな……」
俺は家に帰りながらまだ、猛の言ってた事を思い出し、つぶやいていた。
家に着き、ドアを開け、中に入る。ドアをあけると、なぜか玄関にナエが立っていてニヤニヤ笑っていた。
「そういえば、ここにもいたよ……ギャップの激しい奴…」
「ん?何か言ったか?色男」
「別に………。え?」
いろおとこ【色男】―好男子。美男。俗に言う、モテル男  広辞苑より  何でこいつが俺を色男って言うんだ?…まさか!!
「まさか、お前。知ってるのか?」
「何をだ?今日お前が女に告白された事をか?」
「知ってるじゃねぇか!!何で知ってんだよ!!」
「私は化けといえど猫だぞ?お前が教室の後ろでこそこそと読んでいた手紙を盗み見して、伝説の樹とやらに先回りして、樹に登って聞いていたのだ」
ナエがより一層ニヤニヤ笑う。あの時、上の方で樹がガサガサ音をたてたのはこいつがいたからか!
「てんめぇ……」
「おもしろかたぞ。「わわわ、ごめんと言っても嫌いな訳じゃないし、これから友達になればいいわけだし、ほ、ほら!まだお互いを良く知るべきだと思うんだよね。俺は、うん」だと!ハハハハハ。お前の慌てようといったら!ハハハハハ」
「この野郎!!」
俺はナエに飛び掛った。しかし、いつもの通り、軽くあしらわれ顔には無数の傷あとが……
これから俺はしばらく、ナエにこの事でからかわれ続けた。



翌日。
「オイ!見ろよ雅人!俺にもラブレターだぜ!」
見れば、確かに良の手にはラブレターが握られていた。良は飛び跳ねて喜んでいる。
「本当にお前宛か?」
「本当だって。ほら、」「前々から貴方が好きでした。放課後、体育館で待っています。貴方を想う女の子より」だって。ク〜、可愛い子だといいなぁ」
良はルンルン気分でスキップしながら自分の席に戻っていった。
良がそのラブレターは告白を無茶苦茶にされた仕返しに、と坂本さんが送ったニセモノだと気付くまでしばらくかかりそうだ。それまで、せいぜい夢を見ておきたまえ。


5話.あぁ金髪と関西弁


「ここやな……ここに白峰雅人がおるんやな…」
ドハデな金髪を頭に、関西弁を喋る男が八重高前に立っている。
金髪といえば関西弁、関西弁といえば金髪。この二つは切っても切れない関係。そう、まさに「花とミツバチ、男と女」(by良一)のごとく。
この男は確かに雅人の名前を口にした。さて、どんな関係が?



「お兄ちゃん!起きろ〜!!!」
いつも通りの朝。俺は飛び起きて、飯を食う。
「まったく、お兄ちゃんは朝寝坊しすぎだよ」
「しょうがないだろ。それが俺なんだから」
「なに訳の判んないこと言ってんのよ……。ホラ早く着替えて」
「はいはい」
俺はついでにナエの朝飯を持っていった。ナエは多分腹をすかしてるだろう。
「雅人!今日の朝ごはんは何だ?」
やっぱり
「ああ、これだよ。」
俺はご飯に味噌汁をかけたもの、いわゆる「ねこまんま」を出した。ナエの不満そうな顔に気付き謝る。
「あぁ、悪い。マタタビ忘れてたな。」
「バカにするなぁ!!」
ナエは俺にねこまんまを投げつけた。熱いです。
「お前は私を愚弄する気か?今時、こんな物、本当の猫でも食わんわ!!」
「じゃあ、食わなくても良いよ。せっかく持ってきたのに」
俺が床を拭いて、飯をもって行こうとすると、ナエは俺を止めた。
「まぁ、今日はそれで我慢してやる……」
俺は不満だったが、何か言うと絶対引っ掻いてくるので素直に渡した。
良と猛の声がする。さて、行こうか。



「おい、雅人知ってるか?今日、転校生でが来るみたいだぞ」
「はぁ?またかよ。鵺野も最近来たってのによ。」
「その転校生って男みたいだよ」
猛が言う。こいつも何気に情報通だ。
「つまんねぇな」
「まぁ、いい奴だったら良いけどなぁ」



学校に着き、教室へ。もちろん俺は今から睡眠時間だぜ。この時間が一番俺は好きさ……
俺は意識が遠のいていった。さぁ、夢の世界へレッツゴー!
「……と……さと……黒峰雅人!!!」
「ギャーー!!」
俺は先生にたたき起こされた。せっかく人が気持ちよく寝ていたのに。
「なんスか先生!?せっかく人が気持ちよく寝てたのに……」
「ほぉ〜逆ギレか?いい度胸だな」
「わわ、タンマタンマ!そんな腕ポキポキ鳴らさないで……ね?」
「まったく、お前って奴は……。こほん。今から転校生を紹介する。入ってきてくれ」
俺は、つまんなさそうだったから、また寝ようと机にうつぶせになった。
転校生が入ってきたようだ。ドアが開く音がしたから。
「よっ、しらみー。久しぶりやな。探すのえらい苦労したで、ほんま」
ム!この俺を虫みたいなあだ名で呼ぶ関西弁は!もしかして!
俺は顔をガバッと上げて、そいつを見る。間違いない。なんか金髪になってるけど、紛れもなく
「仁!?本当に仁なのか??」
「覚えとったんかい?良かったわ〜。せや、ワイは紛れもなく阪印仁(さかいん じん)や。」
「君たちは知り合いなのか?」
先生が皆を代表して、尋ねる。
「せや、こいつ昔、関西に住んでてん。そん時の親友や、ワイらは。な、しらみー?」
「その名前は虫みたいだからやめろって昔から言ってるだろ!」
「おぉ、嘆かわしい。昔はあんなにキレイやったお前の関西弁が、今じゃ東京かぶれの標準語になっとる。オヨヨ…お母さん悲しいわ…」
「誰が母さんじゃ、誰が!」
「何言ってんねん。誰があんたを産んだか忘れたの?お母さんがおなかを痛めて産んだのよ?」
「気持ち悪いんじゃ!ボケ!」
気付いたらクラス中が笑っていた。俺と、仁は驚いて目を丸くする。
「なんか君たち漫才みたいだよ」
猛が言った。確かに俺らはボケとツッコミをしてた気がする。やっぱり、俺は関西人か……。そう思ってしまった。
休み時間。仁は女子からの質問攻めにあっていた。仁は顔も良いからな。それに金髪が良く似合ってる。
「チッでれでれしやがって……」
どこにでもいる、クラスの不良が仁をにらんでいた。まぁ、不良だし顔悪いしひがむのも無理ない。
それだけなら良いにしても、そいつらは仁の方に向かっていった。そして、わざと肩をぶつける。
「お〜いて。おい、金髪。慰謝料払ってもらおうか?」
「あん?そっちからぶつかってきといて、何言ってんねん?アホと違うか?」
「あんだと〜!!」
不良は仁の顔を殴った。仁は口から血を流す。あ〜あ、俺知らね
「殴ったな…?」
「何だよ殴られたのが気にくわねぇのか?何ならもう一発殴ってやるか?」
「先に手を出したのはお前や。やから、俺が手を出しても文句は無いな?」
「あん?何言ってんだお前!!」
不良はもう一発殴りかかる、だが仁はそれを受け止めた。
やめときゃ良いのに、もうダメだな。なにせ、仁は………
「調子に乗るんやないで。」
仁は不良のアゴにアッパーを食らわせた。アゴにパンチを入れられると脳に直接……。面倒くさいしいいや…。まぁ、なにせ仁はボクシングで『西日本新人王』だもんなぁ……。プロ目指してるらしいし
「ワイと勝負するのは十年早いわ。出直して来いや、ボンクラ!」
良がふざけて仁の手を掲げてる。仁はまんざらでもないようだ。
何はともあれ、俺の高校生活はまた大きく変わりそうだ。ナエだけで十分なのに……


6話.それはパ・ラ・ダ・イ・ス!!


「遂にきましたな。今日この日が!!」
「……何の話?」
猛がまるで判らないと言う風に尋ねる。俺も全然わからん。
今日は珍しく、3人一緒に来ている。珍しく、というのは一応3人で学校に行く約束なのだが俺がいつも寝坊するので殆んど行ける事はない。今日は珍しく早起きだったので3人で学校に行っているというわけですハイ。
「で?今日何があるんだ?」
「本当に知らないの?それでも学生か?今日からは学生の一年でもっとも楽しみな日……そう、全国の学生が待ち望んでいる日、それを簡単に表すのなら『パ・ラ・ダ・イ・ス』の5文字ですよ!!」
「だ〜か〜ら言いたいことは早く言えよ」
「ふふふ、では教えてしんぜよう……」
良はそう言ったものの『みの〇んた』急にタメまくった。俺はミリ〇ネアは毎週見ていますよ。
「“夏休み”でしょうが!!」
「「あ」」
俺と猛はいっせいに思い出した。そういえば今日は終業式だ。忘れてたよハハハ
「でもさ、別に全国の学生が待ち望んでいるとも限らな……」
「黙れ黙れ!!そんな奴は学生ではない!もしいるとしたら友達のいない奴くらいだ。」
「で、今年はどこ行く?」
「さすが雅人。察しがいいな」
「当たり前だろ。いくら夏休みとはいえお前がそこまで騒ぐのは何か訳がありそうだからな」
確か去年の夏休みは海で、一昨年は良のばあちゃんの家に泊まりに……。よく考えればほとんど良の提案だな
「フフフ、もう決めてあるさ。学校で話してやるよ」


学校では校長のお決まりの長々しいあいさつも終わり、各自教室に戻っていった。教室では通知簿が待っている。ていうか高著言うの話は長すぎる。長すぎて、貧血起こす奴もいるくらいだぜ?
「じゃあ、通知簿も分け終えたので解散とするか……」
教室はドッと歓声に包まれた。やはり1番声を上げて喜んでいるのは良だ。
「まぁ、事故なんか起こしてこれからの一生台無しにしたらアレだしな。事故には気をつけろよ。あとは犯罪にならない程度なら何でもやってもいいぞ。じゃあ、みんな夏休み終わったらまた生きて合おうぞ」

「さぁさ、猛!雅人!集まれ」
良が俺たちを呼び寄せる。
「今朝言ってたやつだな。んで、どこ行くの?」
「今年は……ここだ!」
良はチケットを6枚出した。猛が声を出して読み上げる。
「え〜と、山城ディスミーランド?パクリ臭いな……。この遊園地に行くの?」
「あぁ、そうだ。俺の知り合いにチケットもらったんだ。マスコットキャラもいるんだぜ。たしか……ミッキ●・マウ●スあったかな。」
「なんだよ、その●は……。しかも、あんまり必要の無いところを隠してるし……。」
どう考えてもパクリだよな。いいのか?オイ政府、しっかり仕事しろよ。
「けど、後3人どうするの?僕たちじゃ3人しかいないよ?チケットが勿体無いよ」
「う〜ん、問題はそれなんだよな。誰にする?やっぱり女の子は最低2人はいないとなぁ。」
「その話ワイにも一枚かませてくれや」
いつの間にか〜隙間あいた〜♪じゃなくて……。いつの間にか仁が後ろに立っていた。どうやら今までの話を聞いていたようだ。
「なぁ、いいやろ?カーちゃん」
カーちゃんとは仁が良につけたあだ名だ。烏良一(からす りょういち)→カラス→鳴き声(カー)=カーちゃん。というわけらしい。
ちなみに猛はくろみー。俺はしらみー。仁がつけるあだ名はなぜか他の物に聞こえる。カーちゃん(母ちゃん)、しらみー(虫のしらみ)、くろみー(黒味)と言う感じだ。これは計算して付けているのか、そうでないのか。
「う〜ん、どうしよかっなぁ……」
良がニヤニヤ笑ってそう言うと、仁は右ストレートを良すれすれの位置に叩き込んだ。良は笑った顔のまま硬直する。
「……よろしいですよ。」
「やりぃ!後の二人はさっきカーちゃんも言ってた通り女の子がいいな。お、鵺野なんかどうや?」
「いいね〜。じゃあ、早速誘いに言ってくる。鵺野さ〜ん」
しばらく待っていると、良はどうやら成功したらしく、嬉しそうな顔で戻ってきた。たぶんナエの事だから遊園地がどんな物か知らなくてOKしたんだろうな。
「あと一人はどうするんや?」
「あたしも行きた〜い」
この声は……。いや、落ち着け雅人。ココは高校だ。あいつがここにいるはずが無い…。俺はゆっくり振り返った。予想は……当たった。
「明菜!何でここにいるんだよ?」
「お兄ちゃん忘れ物したでしょ?はいこれ」
妹はそういって弁当を出した。小学生じゃないんだから、弁当をわざわざ届けなくても……。
「お、明菜ちゃん久しぶりやな〜」
「あれ、もしかして仁君?久しぶりね。ねぇねぇ、あたしも連れてって〜〜」
俺たちは妹の願いを断るわけにもいかず、あっさり承諾した。もしかしてこの中で1番強いのはこいつかも。
「じゃあ、来週の金曜集合な。」


あっという間に一週間がたち、今日は約束の日。良がわざわざ俺が遅刻しないように集合時間を遅くしてくれたおかげで、ぐっすり眠れた。あいつもたまには良いとこあるじゃん。
「よっ皆、御待たせ。」
「遅いぞ雅人。せっかく集合時間遅くしてやったのに意味無いじゃん」
「あん?まだ5分前だろ?」
今の時刻は12時55分。集合時刻は1時。間に合っているではないか。
「こういうのは、10分前に来るのが暗黙の掟なの。」
「ふ〜ん、まっいいから行こうぜ」
「……ったく」


電車に乗ること1時間。遂に着きました山城ディスミーランド。
良は小学生のようにはしゃいでいます。結構大きく、人も割りとたくさん。もろパクリなのに人って来るんだなぁ。ジェットコースターや観覧車、メリーゴーランドなど定番な物もちゃんと置いてあります。
「じゃ、まず何に乗るんや?」
「まずはアレでしょう。ジェットコースター!!」
「わーい。やったー」
妹はすごく喜んでいいる。こいつはどうも絶叫系が好きらしい。
猛はなんか青い顔してる。
「おい、雅人。“じぇっとこーすたー”とは何だ?」
「まぁ、簡単に言えばものすごく早い乗り物だよ」
「何だそんなものか。“てれび”ではすごく恐ろしい物と言っておったぞ」
「ま、乗ればわかるよ」
「お〜い、何二人して話してるんだよ。さっさと行くぞ」
入り口の割と近くにあった。なぜか、二人乗り。……おかしいだろ、そんなジェットコースター。
「じゃあ、一緒に乗る人決めるのにジャンケンしよか」
(鵺野さんこい!!)
(お兄ちゃんと一緒にならないかなぁ。)
(しらみーと乗ったら何かおもろそうや)
(誰でもいいや)
(“じぇっとこーすたー”とは二人で乗るものなのか…)
皆様々な思いを胸にジャンケンポンの合図で手を出した。
結果。俺とナエ、良と仁、猛と妹。という組合せ。妹に変なのつかないでよかった。


先頭は俺とナエ。俺たちは乗り込んだ。
「じゃあ、お先に」
「チッ、いいな雅人。鵺野さんと一緒でよ」
お前は奴を知らんからそう言えるんだ。
俺たちの乗り込んだジェットコースターは、ゆっくりと進み始め坂を徐々に登ってゆく。
「む、雅人。この乗り物ドンドン上へ向かってるぞ?」
「あぁ、そういう乗り物だからな。」
やがて、ジェットコースターは頂上についた。ナエは頂上から下を見下ろし青くなった。
「雅人……。まさかここから一気に降りるのか……?」
「あぁ、ジェットコースターだからな」
「何ィ?まさ……」
ナエが何か言おうとした瞬間ジェットコースターは勢いよく落ちた。
「ギャーーーーーー!!!!!」(ほぼナエの声)
ナエは絶叫した。顔もものすごいことになっている。あぁ、カメラがあったらなぁ……。


2番目、良、仁組み。
「つまらんわぁ。何でお前とやねん」
「それはこっちの台詞だぜ。あぁ、鵺野さん」
二人はブツブツ言いながら、ジェットコースターに乗りベルトを締めた。
「さぁ、行くで」
二人を乗せたジェットコースターも発進した。
ジェットコースターが頂上に着いた時、
「ギャーーーーーー!!!!!」
とナエと思われる人の声が聞こえた。
「……」
「……」
二人はあまりの衝撃に、急降下するジェットコースターに乗りながら叫び声一つあげなかった。
「今のって……鵺野さん?」
「……おそらくせやろ」
二人はまさに茫然自失。鵺野があんな声をあげるとは。完全にイメージと違っていた。


3番目、猛と明菜組。
「明菜ちゃん足元気をつけて」
「あ、ありがとう。」
猛は明菜に手を差し伸べる。二人はジェットコースターに乗り込む。
明菜はすごくワクワクした表情だ。今まで同様ジェットコースターは発進し、やがて頂上につく。そこで、ある疑問が芽生えた。
「なんか、前の組の声が聞こえないね」
「うん、あんまり怖くないのかしら……」
明菜はややガッカリした表情だ。やがrて、ジェットコースターは落下した。
「「ギャーーーーー!!!!」」
二人は不意をつかれた為、驚愕の表情をあげ落ちていった。


「はぁ、散々な目にあった……」
猛と妹はぐったりとした表情で、ベンチに座りかかってた。
「ねぇ、あんなに怖かったのに、どうして二人は声を上げなかったの?」
「え?いや、まあね……」
仁と良は複雑な表情をしていた。何か、ナエを見てる気がする。
「で、次はどこに行くんですか?」
ナエが尋ねる。
(やっぱりいつもの鵺野さんだ。さっきのは気のせいだ、気のせい)
何か良と仁の顔が明るくなった気がした。
「じゃあ、お化け屋敷で」
お化け屋敷はジェットコースターから遠くて、歩くのに少し疲れた。
いかにもお化け屋敷って感じで、看板には赤い絵の具でまるで血で書かれたようにお化け屋敷と書いてあった。猛は顔を輝かしている。
組はさっきと同じようにジャンケンで決めたが、なぜかさっきと全く同じ組合せだった。この作者なめてんのか?


「雅人。“おばけやしき”とは?」
「お化けに化けた人がいっぱい出てきて脅かす家のことだ」
「ふむ、それならば大丈夫だ。」
ナエが安心したように息をつく。
「? どうしてだ?」
「私自体がお化けだからな。人が化けたお化けなどに驚きはせん」
あ〜あ、言っちゃった。そういうこと言うやつに限って……
「ギャーーー!!」
驚くんだよなぁ。
「何だ?お化けは怖くないんじゃないのか?」
「お化けはな。だが、“頭に斧の刺さった人”はお化けではない」
見ると、驚かした人は、頭に斧を刺して(もちろんニセモノの斧)血塗れになった人間だった。
「ギャーー!!」
「今度は何だよ!?」
「ちょ、ちょうちんが・・・・・」
「あ?」
その方向には確かにちょうちんが浮かんでいた。待てよ?こういう空飛ぶちょうちんて妖怪にいなかったけ?
「おい、ちょうちんてお化けじゃないの?」
「こんなお化け私は知らん!ギャーーー!!!」
「だ〜もう、うるせーんだよッ!!」
しばらくは何も出てこなかったため二人は静かに歩いていた。すると、ナエが真剣な表情で口を開いた。
「おい、雅人、あの金髪は何者だ?」
「は?仁の事か?仁がどうしたんだよ?」
「あいつからは何か威圧が感じる。恐らくあいつは私が妖怪だと気付いておる」
「そんなバカな……考えすぎだろ」
「……」
ナエは黙り込んだ。それが俺を一層不安にさせた。仁がナエを?まさか。考えすぎだ……


2番目、良、仁組み
「さっきの声はなんだったんだろう……」
「鵺野の声とちゃうん?」
その答えに良はきっぱりと否定した
「いや、鵺野さんはギャーーじゃなくてキャーーってタイプだ!つまりさっきの声は雅人の声だ!」
「もろ、女の声やったで?」
「むむ、雅人達の前にいた人の声だ」
「しらみーの前に人おったか?」
「……」
二人はしばらく黙って歩いていると、草の部分からがさっと音がした。良はビクッと反応する。
「はっはぁ、何やビビッてるんか?」
「ち、違うわい!」
「おぉ、むきになっちゃって。」
その時ガサッとバケネコが現れた。
「ワワワワ!!」
良はとっさに仁に飛びついた。ちなみにナエの悲鳴と良の悲鳴が被ったため二人にナエの悲鳴が聞こえていません。
「離れぇや。何で男に抱きつかれな、あかんねん」
「だ、だって……。ギャーー!!」
「うるさいわ!」
仁は良を殴り飛ばし、無理やり腕からはがした。
「まったくうっとうしいわ」
「おい、先に行かないでくれ〜」


3番目、猛と明菜組
「ちょ、ちょっと猛君、先行かないでよ〜」
「あ、ゴメン、明菜ちゃん」
猛は無類のお化け好き。だから、早く先に行きたいようだ。
「キャーー!!」
目の前に現れたろくろ首に明菜は悲鳴を上げる。
「あ、ろくろ首だ。知ってる?ろくろ首って漁師の夫の帰りを待っている女の事なんだよ。ほら「首を長くして待つ」って言うでしょ?」
「へ、へぇ……」
二人はまた先に進んでいった。すると、今度はちょうちんが現れた。
「キャーー!!」
「今度はちょうちんだ。ねぇねぇ、ちょうちんて中のろうそくの光りが消えると死んじゃうんだよ。あ、このちょうちん、中は電球だ。これじゃ、もとから生きてられないね。ん?どうしたの明菜ちゃん?」
明菜はなぜか膨れた面をしている。
「……猛君と、お化け屋敷に来ても面白くない…」


各自お化け屋敷を堪能したようだ。楽しんだ者や、そうでない者もいるようだが(楽しんだのは猛だけだと思います!!)まだ遊園地は続きます。


7話.観覧車内にて

「皆どうだった?」
「最悪や。何でお前に抱きつかれな……」
「はい、そこ静かにして!」
皆、お化け屋敷から出てきた。猛はすごい楽しんだようだし、仁はなぜか不機嫌だし、ナエはすごいビビってたし、不思議と明菜は顔を膨らましている。
個の後も色んな乗り物に乗った。メリーゴーランドやスプラッジュマウンテンなど。その都度ナエは過剰なリアクションを見せ、楽しませてくれた。
そして、そろそろ帰る時間になった。
「そろそろ時間だな……じゃあ、最後にアレ乗りますか。」
「あれ?」
「観覧車だ!!」
この遊園地の中央に位置する特大観覧車。やはり遊園地の仕上げはこれに限る。
「おっさん、これ何人乗りや?」
仁がカラン者の前にいる係員のおっさんに尋ねる。
「3人乗りだよ」
「3人か……。またジャンケンだな」
厳選なるジャンケンの結果。俺とナエと仁。猛、良、妹に分かれた。
俺たちは乗り込んだ。


「うわ〜ええ眺めやな」
確かに観覧車から見る景色はすごかった。辺りはネオンに包まれ、都会なのに星もチラチラ見える。
「……」
ナエはなぜかずっと怖い顔で仁のほうを見ていた。いつもの猫かぶりはどうした?
「おい、金髪。……お前は何者だ?」
「お、おいナ…鵺野。何言ってんだよ?」
ナエの奴急に素の状態で話しはじめた。仁はこっちを向く。
「お前は私の正体を知っているな?お前は転校してきた時からずっと私を観察するように見ていたな?おかしいとは前々から思っていた……」
「な…おい、ナエ!何言ってんだ!」
「お前はそんななりをしているが、神社か寺の者だろ?」
俺は仁のほうを見た。仁は驚くばかりか少しも気にしていないような表情だった。
「全部お見通しか。せや、ワイは確かに関西の神社の跡取りや。あの学校に来た時からあんたなんか可笑しいとは思っとったんやが、まさか自分から言うてくれるとはな」
おい、仁!本当か?確かにお前のお父さんは神社の神主だったけどよ…」
「……ごめんな、しらみー。ちょっと眠っとってや」
ジンは俺の後頭部をちょいと触った。すると、俺の意識は遠くなっていった。こんなの触っただけで眠らすってマンガとかだけの事じゃなかったのかよ。
「さて、何であんたしらみーとこにいるんや?しらみーを食うのが目的か?」
「……」
ナエは何も答えなかった。
「答えや!しらみーはな、神社の子供やからってみんなに嫌われて友達一人もおらんかったワイに普通に接してくれた、初めての友達なんや。せやから、しらみーを食うのが目的なら……ワイは許さんで!」
ナエは仁の真剣な顔を見、話しはじめた。
「あいつのところにいる理由?そんな物は簡単だ。あいつといると面白いからだ。」
ナエの答えに仁はキョトンとした。そして、嘘か本当か見抜くため、ナエの瞳をじっと見つめた。やがて、仁はフと笑った。
「あんたの眼は嘘をついてない。たぶん真実やろ。まぁ、あんたは食人猫やないしな。判っとったんやけど、どうもしらみーのこととなるとな……。」
仁は照れたように頭をかいた。
「悪かった。あんたを疑って。」
「別にいいさ。妖怪など人に疑われるのが当然なんだからな」
「ハハッ……」
二人が話し終える頃、観覧車は地上についた。と、同時に俺も目を覚ました。この会話は後で、二人に聞いたものだ。ナエと仁は何か不安そうな顔をしていたが俺が「やった!俺以外にもナエの正体を知る人が出来たんだ。あぁ、これで、少し気が楽になる」と言ったら、安心した表情をしていた。
こうして、波乱万丈の遊園地は終わった。この遊園地へ遊びに来た事は今年の夏休みで一番の思い出だ。



2004/04/05(Mon)19:43:33 公開 / 九邪
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■作者からのメッセージ
う〜ん何か微妙ですね……。何か無理矢理っぽいし…

急にシリアスになるし……。やはり、僕はまだまだですね(笑

雅人意外にもナエと普通に話せる人が欲しかったから、仁をそうしたんですが、少し無理があったような。

仁は自分でも好きなキャラなんで、ナエと話せるようになった事によりこれからも出番が増えると思います。

では、また今度(^_^)/~
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