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『アカデミー』 作者:真羽 優 / 未分類 未分類
全角2544.5文字
容量5089 bytes
原稿用紙約8.1枚
始めて出会った時はたしか入学式の時だ。
 何故だか彼女に気になる。
 あの子は美しいだ。長い黒い髪の毛は質素な黒い制服に良く似合っている。本物の知性と気品が宿っている顔が無表情のままに氷のように凍らせている。少しだけ少女の面影がまだ残っている。彼女は腕の中に首輪が無い小さな子猫を抱いて、ゆっくり撫でている。三毛猫の子猫も気持ちよさそうに鳴いている。でも、何か不自然さを感じている。
「君もこっちの学科か?」僕は彼女に声を掛けた。
「はい」淡々な口調で言った。表情も全然変わってない、元々無表情だけど。
「その子、君の猫?」
「違います」素っ気無い答えだ。
 冷たい。でも、僕は似合うと思っている。僕と違って、多分誰より早く卒業するでしょう。

「…私たちは平等な心を持って、人々に穏やかな人生をを過ごすために働いています。何処でも、何時でも、誰にも優しくて扱います。それは例え戦場の兵士でも、王城の王様でも私たちには同じなのです。貴方たち持っている今の優しい、平等な心を守るのは一番大切な事です。人を裁く事は私たちの仕事ではない、人を癒して…」神官みたい白いローブを着る女教師は話を続いた。
 僕は先生の話を聞きながら、自然に視線が先生からそらして、彼女の背に止まった。
 やはり優等生だ。一生懸命に先生の講義を聞いている。成績まあまあの僕と大間違いだ。
「あいつ、変だな」隣座っている友人が小さな声で僕に言った。
「そう?がんばって早く正規になりたいだけだろう」
「でもね、先生たちはよく彼女は無理だと言ったよ。それに、もう何か月ここにいたのに、友達もいないんだよ」後ろの女の子は僕たちに囁いた。
「お前また職員室の外に盗み聞きか!?」友人は呆れた。
「僕と結構話しているけど?」
「それはお前だけだよ!」
「そこ、うるさい!」先生は怒鳴いて、こっちに三つのチョークを投げた。見事に友人と後ろの子の額に当たった。やはり、先生になると、複数のチョークを投げる技術は卒業試験の一つだろう、チョークを避けた僕はそう思った。

 同じ学年だったが、僕は誰より先に卒業して、正規になった。先生たちの期待どうりに。
 その時、彼女は僕に話しに来た。
「正規になりましたね」
「大変そうだけどな」僕は正規の質素な黒いローブの襟を正している。
「いいですね」彼女は羨ましいそうな口調で言った。初めて感情を出して見せてくれた。
「前から聞きたいが、何故そんなに正規になるのを拘るか?」僕は正規のローブはあまり慣れていない、襟が少しきつい。
「妹がいます。正義感がとても強い子ですが、体が弱いです。」
「それで…?」
「ずっと家に居なくてはならないので、自分の友達も作れません。だから、私はいつもあの子の傍にいました。あの子もずっと私を慕っています。でも、私はあの子を一人にしました。だから、私が…」
 僕はその時彼女の顔見なかった。一気にそんなに自分の話をしたのは普通の彼女らしくない。それども彼女らしいだろうか。でも、多分泣いているような気がした。
「そう」僕が答えた。
 その時、僕は始めてそう思った。彼女は正規になれないかもしれない。

 やはり、彼女は僕の期待を裏切った。
 彼女は留年した。
 久しぶりにアカデミーに返った時知った事だった。
「ね、聞いた?あの子のこと」アカデミーの前門で二人の少女はひそひそと話し合っている。制服から見ると僕の後輩たちだ。
「誰?」
「よくそのアカデミーの一番凄い先輩と一緒に居たあの子よ」
「あっ、あのアカデミー一番若くて正規になった先輩と?」
「そうそう。あの子よ」
「って何々?」
「あの子、最後の精神試験が不合格だって」
「うそ!あの精神試験!それじゃ卒業できないよ」
「うちの学科は精神試験が不合格人なんでいないよ。あの子は多分始めての」
「普通、もっと先に学科を変えちゃうよね」
「そうよ。でも続くつもりのようだ。どんなに他の試験の成績が良くでも卒業絶対無理なのに」
「変なの」

 僕は彼女に会いに行った。アカデミーの後ろにあった庭に彼女の姿がいた。相変わらず、綺麗な氷の彫刻みたいな人だ。
「卒業できなかったね」僕は言った。
 彼女は黙っている。
「まだ原因が分からないか?」僕は彼女に向って訊ねた。
「…」彼女は何も言いせず、ただ傍にいる三毛猫を撫でている。
「はっきり言うよ。君が優しすぎる」
「私みたいな人に良くそう言えますよね。貴方は」彼女は苦笑した。氷の仮面はやっと崩れた。
「長い付き合いからだ」僕も苦笑した。
「あなたはいつもそうです。人の心の奥に隠した秘密を気楽で簡単に見つけます。」彼女は僕を睨んでいた。僕は少し微笑んだ。やっと、少し本当の彼女の顔を見えた。
「もう慣れましたわ。って、なぜそれは原因ですか?」
「優しすぎると平等的に人を扱いするのは無理だ。だから、今の君には無理だ」僕は教えた。
「妹さんの件は僕が行くよ。アカデミーからのご指名だ」僕はその場から離れて、歩き出す始めたが、止まった。
「教師の白いローブの方が似合うよ」僕は顔を彼女に振り向いた。そして、笑った。「それに、本当にチョークを投げる芸を仕込むのかを教えてくれよ」
「相変わらず気楽な人ですね。貴方は」彼女は呆れた声で答えた。

 久しぶりに休暇を取って、入学式を見に来た。
 教師の白いローブを着ている彼女の姿は全然変わってないが、その時より穏やかな表情をしている。相変わらずあの三毛猫は彼女の後に付いている。
「妹さん、元気?」
「お陰様で、今は新入生になりました」
「こっちの学科?」
「いいえ、審判者になりたいと言いました。あの子は赤い服が似合いますね。」彼女は微笑んだ。
「そう。やはり、教師になるあの芸は…」
「貴方、良くそんなつまらない事を拘りますね。」彼女は呆れた目で僕を見る。
「やっぱある…?」
「そうですよ」彼女は頷いた。「すいぶん上手くになりました」
「後で拝見して頂きます」僕は笑った。
「やはり、正規はいいですね」彼女は僕の右手に持っている巨大な銀の鎌を見上げている。
「結構重いよ」僕は苦笑した。「妹さんが着いたよ」
 彼女は妹の方に向って、嬉しいそうな声で言った。
「ようこそ、死神アカデミーへ!」
2004/03/14(Sun)06:19:58 公開 / 真羽 優
http://www.geocities.jp/ysanau/
■この作品の著作権は真羽 優さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
この作品は私のホームページにも載っています。
元々書いた時は2000字しか書けないことがあったので、全部書きたい事は入っていません。書き足す時、書きたいことが忘れました。困りました…(汗)
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