オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『回想』 作者:たろう / 未分類 未分類
全角1749文字
容量3498 bytes
原稿用紙約6.35枚
この女は何を言っているのだ。
さっきから顔を赤くさせて何を言っているのだ。
同じ言葉を何度も何度も繰り返して。
なぜ泣いているのだ。
そんな赤い目で何を訴えようとしているのだ。
手に持ったバックから物が飛び出すくらい、大きな身振りで何を伝えたがっているのだ。
「6番線から厚木行き最終電車が発車します。ご乗車の方はお急ぎ下さい」
君は、泣きながら改札を急いで通り抜ける。
そして一度こちらをチラッと振り返り、また駆け足で、決まって2番目の車両に飛び乗る。
俺はさっきと同じ位置でひとりたたずむ。
電車が動き出し、暗闇の中に消えていくのを見届けるまで。


この女は何を楽しそうに喋っているのだ。
人ごみを避けた暗い帰り道。
いつも俺の右側を歩いて、知らない人の知らない話を繰り返し繰り返し喋って。
ああ、その話はもう聞いたよ。
でも君はいつも楽しそうに笑って話をするんだ。
「それでね、恵子先輩がね・・・」
恵子先輩ってダレ?
でも俺は笑って聞くんだ。
ギュっとつないだ手。
手が冷たい人は心が暖かいんだってね。
君の手はいつも冷たかった。
俺の手はいつも暖かかった。
本当言うと、俺は君の話なんて何一つ憶えちゃいないんだ。


この女は何故いつも恥ずかしそうにするのだ。
人気の無い裏路地のホテル。
高島屋で買ったランチを持って。
人目を気にして、別々に入りましょう。
俺が先に入り口をくぐって、君がすぐ後ろから隠れるように入ってくる。
「部屋空いてますか」
俺がキーもらって、部屋に行くまで、ずっと俺に隠れるようについてくる。
そんなに恥ずかしがることないじゃん。
部屋に入ると、後から入った君がまず鍵をロックする。
「2週間ぶりだね」
靴も脱がないまま、抱きしめあう。
そしてキスをする。
さっき高島屋で食べたアイスクリームの味がする。
この2週間にあった出来事なんか全部忘れさせるような熱い抱擁。


この女は何故ニコニコしているんだ。
春の陽気につつまれた公園の芝生で。
ランチを食べて、木陰にねっころがる。
「ねぇ、腹まくら。しようか」
ニッコリ笑って、俺のお腹に頭をのせてくる。
木漏れ陽がまぶしいから腕で目を覆って。
眠ってしまいそうなポカポカ陽気。
ふとお腹をみると君はすやすや眠ってたっけ。
君が目を覚ますまで1時間、俺は眠ったふりをしていたよ。
いろんな事を考えていたような気もするけど、忘れちゃった。
ただ君の寝顔を見てたら、守らなくちゃ、って思ったんだ。


この女は何故歩くのが好きなんだろう。
初春の夜桜を見て、夏は御苑をおっかけっこしたり、秋には川沿いの道をどんどん歩いたっけ。
いろんなところにつれまわさせたよ。
夕方、路地裏を歩いていたら、堀につきあたって。
欄干から2人して並んで、綺麗とはいえない堀の水に写る夕日を眺めてたっけ。
「あたしと結婚するの大変だよ」
そう大変だったよなあ。
君の両親に会いに行くとき。
何度逃げ出したいと思ったことか。
それから何度も君んちに通ったよなあ。
「結婚させてください」って言うために。


この女はなんて美人なんだろう。
おとうさんにつれられてバージンロードを歩いてくる君。
君は最後の最後まで泣いてたっけ。
披露宴で君が朗読した家族への手紙。
みんな泣いたよ。
「それでは最後に新郎から皆様へのご挨拶です」
半分は忘れちゃった。
でも、君を幸せにするためにどんな事でもしてあげようと思ったんだ。
本当だよ。


この女は何故話しかけても返事してくれなくなったんだろう。
まるで仮面でもかぶっているように。
一緒に生活しているのに、ほとんど話しをしない。
何か悪いことを言ったんだっけ。
そうだ、いっぱい喧嘩してしまったんだね。
思いやりの言葉でさえも拒絶されてしまう。
君はもう俺の事は愛してくれない。
もう他に好きな人ができてしまったのかな。


俺は何故泣いているんだろう。
君を守ってやれなかったから。
君を信じてあげれなかったから。
君を幸せにしてあげれなかったから。
「あたし別れるの慣れてるから」
気丈な君は泣きながらそう言ったっけ。
でも君も俺も離婚は初めての経験だったよ。
俺はただ悔しい。
傷ついた君を信じてあげれなかった自分が悔しい。
何にもできなかった自分が悔しい。
だから毎日泣いているんだ。
2004/02/27(Fri)05:02:51 公開 / たろう
■この作品の著作権はたろうさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
また実体験に基づいた作品です。
よろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除